(36)201 『Have a good day!7~大好き!田中さん☆~』

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――――PM 4:34 大型グッズショップ店内


日本には、八百長という言葉があるらしい。

八百長 → 事前に勝敗を決めておいた上で、互いに真剣勝負をしているふりをすること。
以前、日本の国技について勉強していた久住さんが、のど輪をかましながらそう教えてくれた。
なんで国技を勉強しててそんな言葉が出てきたのかは知らないが、
とにかくそういうこともあったな、というのを思い出したわけである。

そんな、協会から睨まれても仕方ないことをつらつら考えていると、
その思考に至った原因でもある田中さんが、再度私に話しかけてきた。

「どう、ジュンジュン。やってくれん?」

うーん、そうは言われてもなあ。
他ならぬ田中さんの頼みとあれば聞いてあげたいけど、道重さんだって一応あれでも大事な先輩だし。


助けを求めて周囲を見回しても、この辺はおみやげを物色する人たちばかりで
私たちの会話なんて誰も注意を向けていない。
だからこそ田中さんと光井さんは、ここを内緒話の場所に選んだんだろうけど。

「・・・田中さん、ちょい耳貸してもらえます?」
「え、なん?」

私が返事を迷っていると、光井さんは田中さんに耳打ちをしてみせる。
何か作戦でも伝授してるんだろうか。気になる。


さっき田中さんがもちかけてきたのは

『このあとちょっとしたゲームをするから、ジュンジュンはわざと負けてほしい』

という、言わば八百長だった。
はっきりとは言わなかったが、どうやら田中さんはさっきのシューティングゲームで
道重さんにやり込められたことを根に持ってるようだ。
その仕返しとして、午前中一人でいる時に思いついたゲームを利用して
道重さんをはめようとしているらしい。

復讐の舞台となるのは、お化け屋敷。
まず、負けた人はお化け屋敷に行くというルールでゲームを行う。
光井さんの協力を得て、自分と道重さんが負けるのは決定済み。
そしてお化け屋敷で道重さんと一緒になったところで、思いっきり怖がらせてやるつもりだとか。

言いたいことはわかったが、そこで一つ疑問が生じる。
私は素直にその疑問をぶつけてみた。

『どーして、私も負ケルの?』
『れいなもお化け屋敷はそんなに得意じゃないけん誰か平気な人が一緒におらんとダメ』

即答。
そこまでして仕返しがしたいか。
私は、田中さんの返答に半ば呆れ、半ば感心した。



「わかった、こうしよう!」

二人は密談をやめた。
田中さんが、覚悟を決めたような顔つきになる。


「れいなの言うこと聞いてくれたら、ジュンジュンをれいな城に招待する!」
「マジっすか!!」

れいな城っていえば、今までなんだかんだ理由をつけて入れてもらえなかった田中さんルーム(?)!
とうとうそこに足を踏み入れる許可が、しかも招待って!
招待。それは、おもてなしの心。
私の心も揺らぐ。

二つの未来を秤にかけてみる。
田中さんに笑ってもらうのか、それとも泣いてもらうのか。
私は入城するのか、しないのか。
      • 答えは、決まった。

「ジュンジュン、やりマス!」

進んでいく先はいつだって、胸の高鳴る方へ―――



店を出た一行に、広場でゲームの主旨を説明し終えた頃には、もうだいぶ日が傾いていた。
ムードが整ってきたとばかりに、田中さんは意気揚々と右手を振り上げる。



「トロピカ~ルなドッキドキジュースは涙色!毒を飲むのはいったい誰だ?
 第一回、お化け屋敷行き、決・定・せ~ん!!」
「わー・・・おもしろーい・・・・・・」
「リンリンよりはりキってる田中サン、はじめて見まシタ・・・」

客観的に見てると、盛り上がる田中さんとその他のみんなの温度差が結構すごい。
一対八。「熱」対「冷」。はぶられいなと仲良しメンバー。

当然のことながら、私と光井さんは「冷」の側にいる。
あんまりはりきってたら仕込みがバレてしまうから、というのが田中さんの弁だ。

「まずルールの確認ね。いい?この九個の紙コップのジュースの中には、口に含んだ瞬間
 『まっず!』ってなるやつが三つ紛れとるけん、それにあたった三人が負け。
 で、その負け組三人は、あとでお化け屋敷に入る!以上!質問は!?」
「どうでもいいんだけどさあ、田中っち。よくそんな小道具持ってたね。家から持ってきたの?」
「ううん。そこのお店の“パーティグッズ”ってコーナーに売っとった」
「そりゃあまた都合のいい・・・いや、準備がいいというか・・・」
「じゃ、配るけんね~!」

おっと、出番だ。

「あ、田中さん。そんないっぱい持てへんでしょ。愛佳も手伝います」
「私モー」

こうやってさりげなく田中さんに近づき、ハズレのジュースを教えてもらう。
あとは、光井さんがそれを道重さんに渡し、私は自分でそれを飲めばいいだけ。
計画は完璧だ。
光井さんは問題ないだろうから、私がうまくやれば必ず作戦は成功する。

そう。私が、うまくやれば。




「なんで!?なんで小春が毒に当たっとーと!?」
「なんでって・・・オエ、小春のジュースが・・・ウエ、毒入りだったからじゃないで、すか・・・?」

息も絶え絶えな久住さんに、田中さんは戸惑いの色を隠せない。
そこまで動揺してくれると、こっちもうまくやった甲斐があったというものだ。

「ジュンジュン!これ、どーゆーこと!?」

私は、自分が飲むはずだったハズレの激マズジュースを久住さんに渡した。
最初から決めていたのだ。
お化け屋敷に私は行かない、だからハズレは誰か別の人に、と。

「私、田中サンのためニ、なみだのんだ」
「はぁっ!?意味わからんし!」

れいな城には行きたい。ものすっごく行きたい。
でも、やっぱりズルはいけないと思う。
どうしても道重さんに仕返しがしたいなら、正々堂々向かっていかなきゃ。
だから私は自分の想いを犠牲にした。
田中さんに、正しい心を取り戻してもらうために。


いつでもまっすぐ、だけど不器用。
それこそが、ジュンジュンの大好きな田中さんなんだ。

「いい話みたくまとめんで!ようは裏切りやん!この裏切り者!」
「・・・やっぱり何か企んでたんだ。さゆみ、おかしいと思ったんだー」
「え~、れいなサイテー。さゆがかわいそー」
「へっ?」

おっと、ここらで雲行きが怪しくなってきた。
まあ仕方ないよね。ゲームの仕掛け人がゲームに負けて、「裏切り者」なんて口にしたらね。
さて、私はとばっちりを食わないうちに後ろへ下がるとしよう。

「あれまぁ、れいなはズルしようとしてたんか!・・・んじゃ、ペナルティが必要やね」
「うそ、なんで!?えっ・・・なんで?」

そんなこんなで、とりあえず。

お化け屋敷行きは
田中さん、道重さん、久住さんの三人に確定した。



田中さんとの距離をさらに縮める機会と   「ミテーコハルノカッタパーティグッズー」
お化け屋敷に入ってみる権利を失ったのは     「アハハハハ、ヤバーイコハルサイコー」
確かに痛い。私はホラーが嫌いじゃないだけに。     「ジャ、レイナノペナルティハコレデイクカ」
だけど、そんなことどうでもよくなるくらいに素晴らしい光景が 「ムリムリムリムリ、アリエン、アリエレイナ」
目の前に広がろうとしていた。                   「グフフ、カンニンシマショ、タナカサン」
                                    「フギャーーーー」

計画失敗どころか、小細工がバレてみんなに非難される田中さん。
挙句の果てに、今日の残りの時間は久住さんが買った仮装グッズ――どうみてもお尻に穴が
あいているようにしか見えないちょいエロな衣装――を身に纏う、という罰ゲーム。
      • ヤッッッバ!
なんかもう、むき出しのセクシープリンセスって感じ!

「田中サン、ステキ。こっちみろ」
「ジュンジュン!この裏切り者ォ!あっ、こら、撮影は禁止っちゃん!こら!」
「ハイ、ピース」
「いえーい、ピィ~ス!・・・・・・じゃあなーーい!!」

ああ。
半泣きになってる田中さん、超可愛い。