(36)421 『motor key』

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阻害:他人の能力の発動を抑制する
ただそれだけの能力。
Rやミティのように攻撃に特化したわけでも、吉澤やマルシェのように補助に優れた能力でもないこの能力を私はあまり好きではない

この能力は『相手が能力者』である条件でしか意味をなさないからだ。
それゆえ、部下からは私は弱いと思われている。そんなのは私のプライドが許さない
ボスからその能力に比較して高すぎる地位を与えられているとも噂されていることも知っている。

まあ、たまに陰口を叩いているのを呼びだして「私を倒せたらボスに報告してあげる」といって遊んであげているけどね。
私だってRやGと長年一緒にいるんだから、ただの念動力も強化されている。
そんなことも知らずに私に飛びかかってくるバカどもを軽くもてあそんでやる。
実は、そうやってイライラを発散しているんだよね~ボスが最近、リゾナンターと戦わさせてくれないから~

まあ、それでも私は昔よりはかなり丸くなったと思う。昔は・・・思い出したくもないな
今の手下どもと同じように私はただ昇進することを目指していた。
隙あらば、当時すでに幹部だった圭織や天使を引きづり降ろそうとチャンスを狙っていた。
今はそんなことをしていたことを恥ずかしく思えるほど、心から彼女達を信頼している。

でも、たまに天使からは訊かれる「なんで矢口には存在をあらわす『言葉』がないの」と
言霊を操る彼女らしい考えだ。名は体を表す、全くその通りである。
『天使』『悪魔』『魔女』・・・確かに挙げてみると幹部のなかで名前がないのは私くらいだ。
一時期、私も必死に「名前」を貰おうとしていた時期はあった。多くの手柄を上げるためにいろいろな部隊に参加した。
身長の低さを最大限に利用したり、ちょっとしたセクシーさで危ないところに潜入したこともあった…

今から結構前のことになるかな。詳しい日時は覚えていない。当時の私は昇進することに躍起になっていた。
毎日、己の能力を強化するためにトレーニングルームにこもり、忠実にボスの指示に従っていた。
血にまみれた戦いは嫌いで、奇襲をかけることが私の主な戦法だった。力の無い私には肉弾戦は向いていない、今でも…
それは「阻害」という私の能力を最大限に活かすための作戦でもあった。

突然現れた私に敵は自分の能力を発動しようとする。しかし、私はその前に『阻害』する。
相手がおろおろと戸惑っているうちに至近距離から致命傷を与える。そうやって勝ってきた。


単純明快ながら、単純だからこそ穴がない。興味の無い相手ならほんの数秒で仕事にけりがつく。
いつも転送装置で本部に帰ってくるときの『仕事の早さ』を称賛する拍手に私は酔いしれていた

そんな、ある日私はボスに呼び出された。
ボスに呼び出されるのは①重要な任務を与えられること②説教と相場が決まっていた
しかし、私は何も仕事をミスしていなかったためチャンスが来たと勝手に思い込んでいた

扉が開き、重々しい空気の中、私はボスの正面に立った
「中澤様、お呼びでしょうか?何の任務をすればよろしいのでしょうか?」
いけないと思いつつ、ちょっと唇の笑みをこらえきれないのを感じていた。

「・・・矢口・・・何か勘違いしてへんか?何のために呼ばれたんかわからんのか?」
ボスから出た声は私の予想と全く正反対の暗く、全てを抑えつけるような声であった。
「え、ボ、ボス?何か重要なお話があると伺ったのですが」
うろたえながらも私は声を絞り出して答えた。
「フン・・・あながち間違いではあらへんな。矢口、ちょっと、そこに正座しな」
「な、なぜ、おいらが・・何も悪いことなんてして…」
「ええから、黙って座れ、いうとるやろ!」
ボスに怒られたのは本当に久々であったので、もともと小さい私は一層小さくなり、震えていた
(何かおいら、悪いことしたかなぁ?ボスの言うとおりに動いたよね?)

「矢口、最近、以前にもましてウチらのために働いてくれておるようやな」
「はい、もちろんです。おいらはそれが楽しくてしょうがないんですよ」
「・・・そうか・・・悪いが、矢口、しばらく現場に出ることを禁止する」

その突然の通知に私は衝撃を受けた。なんというかトンカチで頭を思いっ切り殴られたような、牛乳を一気に飲まされたような・・・
「な、なぜですか?ボス?おいらは組織のため、ボスのために骨身を惜しんで戦っているんですよ。何が悪いんですか?」

ボスはゆっくりと立ち上がり、自分の机の上にあった資料をパラパラとめくった。
「矢口、こいつは科学部部長からもらった資料だ。中身は最近の任務内容、要した時間、組織への貢献度を数値化したものだ。
 矢口、あんたの仕事はGを始めたとした幹部クラスに匹敵する値を出している。ただ、一点を除いてやけどな」
「一点?おいらは完璧に仕事を果たしていますよ!何もミスをしでかした記憶はないですよ!」


「その通り、あんたの言うとおりや。矢口、あんたは完璧に任務を果たしている。ただな、お前と一緒に参加させた部下の負傷者数が圧倒的に多い
 あんたがいかに優秀であってもな、あんた一人で出来ることには限りがあるんや」
「・・・ボス、お言葉ですが」
「なんや、いうてみい。聴いたるわ」

その後、正確にどう言ったのかは覚えていない。
ただ、「部下なんてどうでもいい」「死ぬのは自己責任だ」「任務に危険が隣合わせなのは誰もが知っているからそれに対応することが当然」
      • そんなことを言ったことを鮮明に覚えている

そんな私の自分勝手な理屈をボスは途中で邪魔することなく最後まで聴いてくれた。
私の考えを聞き終わった後にボスは立ち上がり、私にただ一言、こう言った

「ついてきな」

私とボスは組織の幹部にしか入ることが許されない区域に向かって歩いていた。当時すでに天使や予言者、Gは幹部であった。
しかし、現在は天才科学者といわれているマルシェもRもAもまだ普通の兵士に過ぎなかった。当然私もそんな区域に入ったことはなかった

ある部屋の前でボスは立ち止り、振り返り私の目を見て言った
「この部屋の中で少し待っとき。すぐに帰ってくるから」
ボスは紫色のマントを翻し、どこかへと走っていった。とりあえず私はその部屋の中に足を踏み入れた。

その部屋は何もない部屋であった。壁は真っ白で床にほこり一つ落ちていなかった。ただだだっ広い部屋だった。
白い壁と家具一つも置いていなく、広さは体育館くらいであった。この部屋で何をするのか私は不安に苛まれていた。

しばらくボーっと立っていると後ろから靴音が聴こえてきた。後ろを振り向くと動きやすい甚平姿のボスがいた。
「待たせたな。矢口、これからあんたを試したいと思う」
「試すってどういうことですか?」
「矢口、あんた幹部になりたいんやろ?どや、チャンスやるわ」
幹部になりたかった私はてっきりこの部屋でお仕置きを受けるものと思っていたので全く逆の提案に一瞬状況を理解できなかった。


「なんや、幹部になりたくないんか?」
「いえ!なりたいです!幹部にしてくれるんですか?ボス、大好きです!」
「せやろ、うち、いい人やろ。だが、条件がある」
「(甘い話なんてあるわけないよな)条件ですか?」

「私と戦って一度でも膝をつかせたら幹部にしてあげるわ。ただし、その前に矢口が気を失ったらウチのいうことを聞いてもらう」

内心、私は簡単なコトと高をくくっていた。
ボスの能力は分からないけれども、当時私は身体能力は最高の状態であったからだ。
奇襲作戦ができなくても1回くらいは膝をつかせられるはずと思っていた。
それにボスは申し訳ないが、すでにその時にはある程度の年齢であったからだ…

「ボス、本当に1回だけでいいんですよね?1回だけで!」
「女にに二言はあらへん。一度だけや。準備体操するからもう少し待ってな」
ボスはアキレス腱を伸ばしながら答えた。
「1,2、3、4、イテテ・・・あ、足つった・・・矢口、足引っ張って」
      • 「楽勝」、そう思わずにはいられなかった。


「おっしゃ、よし、矢口、あんたから来な!手加減はいらへんからな」
「わかりました!本気でいきますよ」
私は駆け出し、ボスとの距離を一気につめた。ボスの能力がわからないが、私を試すならすぐに倒しはしないハズだからである。
右ストレートを出したが中澤は数歩後ろに下がりよけつつ、その軌道を目でおった。
「予想以上にいいパンチ放つな」
「ありがとうございます、ボス」次に放つ蹴りの軌道を考えながらボスの褒め言葉を噛みしめていた。
ひゅんと周囲の空気が震えるような鋭い蹴りはまたしても空振りに終わった。中澤は大きく上半身をそらしてよけた。
その蹴りの反動を利用して私は1回転して左手で裏拳を放った。中澤は私のその拳を右手でしっかりと受け止めていた。

「拳が軽いな、矢口。幹部になりたい気持ちはこんなもんか?」私の拳をにぎりながらボスはそう言い放った。
「軽い?おいらの拳が?」
「せやから、重い拳ってものを教えてあげるわ!」
左手を掴まれていた私は中澤の右のストレートをよけることを出来なかった。衝撃が右頬から全身に伝わった。


小さい私の体は宙を舞い、背中から床に叩きつけられた。たかがパンチ一発であんなに飛ばされたことはなかった。
「矢口、小さくて軽いあんただろうけどそこまで飛ぶとは思わなかったよ。どう、ウチの拳重かったやろ?」
      • 今思い出しても、あれほど重い拳は記憶にない。たった一発のパンチで私は10mほども飛ばされた・・・

「ほら、かかってきな、幹部になれるチャンスを与えてるんやから。」
私は立ちあがりながら、唇を噛みしめた。やはり、ボスは強い。手を抜けない

「ボス、じゃあおいらも本気でいかせてもらいますよ!」
「弱い奴ほど、負けそうになると「本気」で行くというもんだな」
またカチンときた。冷静さを失ったらいけないとは分かっていてもそれを抑えることが出来なかった。

私は自分の能力、『阻害』を『鍵』のようなものととらえていた。
相手の能力を解放している時に私の能力が扉に鍵をかけるように、扉が開かないように、『発動』を『LOCK』する。
同時に私は2つの能力を阻害できる私は右手と左手に1つずつマスターキーを持っているようなものだ。
阻害を発動する瞬間、私は相手の能力の形が見えるようになる。発火能力、念動力etc
1つ1つの能力に見合った形の『鍵』を作り出し、発動しないように『LOCK』する。

その時も私はボスの能力を阻害させようとした。私の目に見えたのは『気を操る』能力
(・・・なるほど、1発にしては重かったのは気を込められたからか・・・)
落ち着いて1つ目の『鍵』でボスの能力を『阻害』した。
これで同じくらいの重さの打撃を受ける必要はない。

「いてて、ボス、やはりお強いですね。でも、勝負はこれからです」
「あんな軽いパンチでやられるほどお前をみくびっちゃいないから安心しなさい。ほら、お姉さんが相手になってあげる」
「…それではお構いなく行きますよ!」
私は地面を勢いよく蹴り、高く高く跳躍した。そして、落下の勢いを利用して中澤に攻撃を仕掛けた。


ボスはそれをかろうじてよけたが先ほどより格段に動きが鈍くなっていた。
「??お、矢口、『阻害』したな」
「はい、『阻害』しましたよ。気はもう使えませんよ」
動きが格段に鈍くなった私は一気に攻めた。
戦いの場を何度も経験した私からしてみれば、勝負をかけることができるのはほんの一瞬
ボスは動きが鈍くなっており、能力は『阻害』されている。どうみても私が優位な立場にいることは明白であった。

右ストレートをうち、その流れで1,2。ボスがそれをしゃがんでかわしたところでしゃがみこみ、ローキックを放つ。
それをかろうじてジャンプしたボスを逃すことなく、体ごとぶつかり、ボスの体をつかんだ

「ボス、さすがのボスでもこの至近距離から念動力を放ったら倒れますよね」
ボスの体をつかんだ私はニヤニヤ笑いを止められなかった。目の前には幹部となった未来が見えていた
「それでは、ボス、幹部の席、いただきますね!」
私は、直接ボスの体に念動力を放った。手から光が放たれ、その衝撃でボスが崩れ落ちる!


      • はずだった。
手から放出された念動力はボスに当たることなく後ろの壁に小さいヒビを与えることとなった。
(ボスはどこに行った?というかどうやって避けたんだ?)

「まだまだやな。矢口」後ろから聞き覚えのある声が聞こえた。
振り向くとボスが何事もなかったように壁に寄り掛かっていた。
「うちの体をつかんだまではよかったけど、勝負が決まったと思って一瞬気ぃ抜いたやろ。あかんで~」
「どうやって、そんなところに…」
「教えたろか?」

一瞬、ボスの影がぼやけたように見え、次の瞬間すぐ私の目の前にボスの顔があった。
そして私の眼は次なる能力の『カタチ』を捉えた
「瞬間移動!」
「そや。誰も能力は1つと言うてへんやろ。ダークネスのボスやで、うちは。能力が2つあっても不思議やないやろ!っと」バチンッ!
言い終えると同時にボスは私の顔を平手打ちし、私は地面に倒れ、ボスは数メートル後ろに移った。

平手打ちされて私は鼻血を出した。口の中も鉄の味がした。
(おかしい、ただの平手打ちがこんなにイタイハズがない…)
先ほどのパンチといい、この平手打ちといい普通のものではなかった。たった二発で私は疲労困憊になっていた。

しかし私にはまだ『阻害』する余地があった。手の平で鼻血をぬぐいながら、私は立ち上がった。
「まだです、ボス、『瞬間移動』も阻害させていただきました。これであなたは速く動けなくなりました」
「ふぅん、そうか、ほな、かかってきな」
阻害されたにもかかわらずボスは全く動揺することもなかった。むしろ、私にかかってこいと挑発してきた。
「まだまだ、おいらは幹部になるまで立ち上がり続けますよ!ウォーー」
残された体力を振り絞りボスに向かっていった。


もうがむしゃらになって攻撃を繰り返した。ボスを倒すには先ほどと同じように至近距離から念動力を放つしかない。
そのためには、なるべく懐に入っていかなくてはならない。一瞬でいいからボスの隙をついていけばいい…
左右、上下と嵐のように攻撃を繰り出した。日々の訓練、戦闘で自然に身に付けた攻撃を何度も繰り返した。
しかし、右ストレートも左ローキックも右ハイキックも全くかすりもしなかった。
わたしはただただ体力を失うだけのこととなった。

「どうした、矢口、さっきから全くうちに当たらへんやんか。これで本気なのか?」
普段ならこんな挑発にはすぐに強がって言うのに、それが出来ないほど疲れ切っていた。息が上がっていた…

「・・・もう、ええわ」
ボスは私の放った右ストレートをつかみ、私の右腕を自分の肩にのせた。
そしてかがみこんで、一本背負いを私に華麗に決めた。
私は綺麗な円を描いて床に背中から叩き落とされた。痛みで一瞬呼吸が止まった。
もう、戦う気力が尽きてしまった。結局私は一度もボスに攻撃をあてることが出来なかった。
これが『幹部』、これが『ボス』・・・底知れぬ恐怖を抱いた。

私を上からボスが覗き込んだ。その目は小さい赤ん坊を愛でるものでも敵として睨んでいるものでもなかった。
「まだ、意識があるようやな。戦いの掟や、失神させてもらうで」

その時私の頭の中の『阻害』していた2つの『能力』が開かれたのを感じた。
「悪いが矢口、あんたの能力『阻害』させてもらうで」
ボスがかがみこみ右手を上げた。
ドスッ…気合の込められたパンチが私のみぞおちに入り、気を失った
(まだ残されていた能力があったのか・・・どうしてだろ・・・ボスが2人いるように見える)


                  ★★★★★★

気がつくと私はボスの部屋のベットで寝かされていた。
「お、起きたか。最後の一撃は二、三日は気絶させる気でいたから、この程度の時間で起きたんはさすがや」
「・・・全くボスには敵いませんでした。もっと強くならないと!ウッ、イテテ…」
「悪いがしばらくは仕事が出来ないようにアバラを何本か折っといたからな」
「負けたからいうことを聞く、ですね・・・でも、おいら、怪我したんですよ。今は何もできませんよ」
そう言った私をボスは声を上げて笑った

「矢口、あんたやっぱおもろいわ。なんか勘違いしてへんか?まあ、それはともかくなんであんたが負けたか理由を知りたいか?」
「それは、能力のレベルの差にきまっ」
「違う」ただ一言ボスは言い放った。
「違うで、矢口、ウチとあんたの能力の強さは同じくらいやし、攻撃するときには一度も能力を使ってない。
 矢口の攻撃を避けるときには気や瞬間移動したけど、矢口への攻撃には何も力ははいってへん」
そういえば『気』を阻害したのに、拳の重さは同じだった…そんなことを思い出していた

「矢口、お前を呼びだした理由は何か覚えているか?」
「おいらと一緒に仕事をする部下が傷を負うことが多い」
「その通りや。矢口、あんたは誰のために戦っているんや?」
「それは、組織のために」
「そう言うが、うちにはそんな気がしないな。矢口、ウチには自分自身のために戦っているように見えた。
 ええか、拳の重さは自分が背負っているものや覚悟の大きさをそのまま反映するんや。
 気持ちのこもった拳が重いのは、それだけの想いがあるからや。
 矢口とウチの一番大きい違いは、背負っているものの違いや。あんたは自分のためにしか戦ってへん。
 うちはな、この組織全てを背負っているんや。超能力者が平和に生きていける世界を作るために…」

「矢口、あんたは自分のことしか見てへん。今はそれでええかもしれん。だがな幹部になったらそれだけではあかんのや。
 自分の下に付くものの命をあんたが預かる。その中には、あんたが大事にしたいと思えるものも出てくるはずだ。
 だが、今のあんたじゃ確実にいつかそいつを失う。そして、後悔をする。うちはそんな矢口を見たくないんや」
私は何も言えなかった。幹部になるために必要なことは実力と思っていた私には考えもしなかった事実に初めて気づかされた。


「さてと、じゃあ、改めて幹部になった矢口に最初の仕事をやるとするか」
「え、え、え、ちょっと待ってくださいよ!なんで矢口、幹部になったんですか?
 っていうか流れ的に幹部にさせないように話しかけていたじゃないですか!」

そこでボスは急に視線を外して、頭をかきはじめた
「いや~そのつもりやったんやけどな・・・
 あんたにとどめ指す時に、しゃがむために片膝を床に付けてしもうたんや。
 しゃがんでから『やってしもうた』って思ったんやけど、気づくの遅かったわ。ハハハ…」
あっけらかんと話すボスを見て私は茫然としてしまった。私が幹部??

嬉しいはずなのに、願っていたのに全然心は晴れなかった
「せっかくですが、この件は辞退させて・・・」
「あかん、女、中澤に二言はあらへんのや!いいから今日から幹部や!ええな」
有無を言わせなそうだったので命令に従うことになった。こうして私は幹部になった。

「それでは矢口、あんたの管轄する部隊を説明する。あんたは『教育部』部長や」
そんな部署は聴いたことがなかったのでさぞかし間抜けな顔をしていたのだろう。
「なんや、その顔?不満か?この部署は今日から作る。目的は若手の戦闘能力の教育と新戦力のスカウトや。
 ウチは知ってるで、矢口が相手の能力を見抜くことができるのを。
 ええか、ウチらの組織には自分の能力を開花できていないもんがぎょうさんおる。
 そいつらを矢口の力で強くさせるんや。ええな。ということでしばらくは対外任務を禁止する。」


                ★★★★★★

それから私は多少生き方を変えた。まず、それまで以上にうざく行動している。
そして、『幹部』という肩書を簡単に出すようにした。声を耳に障るようにした
簡単に『殺っちゃっていい?』って言うようにした。
      • え?迷惑になるって?部下から嫌われるって?

いいのよ、それが目的なの。
私の経験から考えたの。本当に強くなれるのは私を倒そうとする野望を持つはずだから。
幹部だからって何もしないで黙っている者は所詮小物なのよ。幹部になる資格を持つ者は自分の考えをしっかりと持たなくてはならない。
それなら私は嫌われ、嫌われ、部下の士気を高めて見せる。嫌な先輩を超える後輩を待つのもいいじゃない。
通り名を貰わないのもいつも『名前』をちょうだいって言えば、イラっとするでしょ。いい刺激になると思ってね。

実際に吉澤やRは私に戦いを挑んできたしね。それが今や、優秀な幹部じゃない。
私は間違っていないわよね?キャハハハ・・・次は誰が私に挑んでくるのかしら?たのしぃみ~♪

                ★★★★★★

「久しぶりやな。こっちの世界のウチ」
「そうね~あなたとは数ヶ月あっていないかもしれないわね…元気だった?『瞬間移動』の能力のウチ」
「元気やで。ちょっとあんたの能力『借りる』わ。う~ん…よし、『気』入ったわ。肩こり取れたで~」
「だから、そういう風に使うなって何度もいうとるやろ。どこの世界も同じ使い方しかせえへんな…」
「まあ、ええやろ。ウチのおかげであんたの世界の矢口を幹部にするきっかけ出来たんやから」
「そりゃ、そやけどそれとこれは別やろ」
「同じ人間なんやから気にしない約束にしようや・・・しかし、あんたもずるいな~」
「何が?」
「あんた、あの時『わざと』膝ついて、矢口を『幹部』にしたやろ?初めから幹部にする気でいたんやろ?
 だって、わざわざ膝つかなくたって念動力で仕留められたで。あるいは蹴りでもよかったんちゃう?
 条件を『膝を付けさせること』にしたのも『一撃でも攻撃を当てる』ことじゃ出来ないかもしれないと思ったと違うか?」
「・・・どうかしらね?フフフ・・・」