(36)789 『Pandora Box』

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身を寄せ合って、夢や希望を語り合った。恐れや不安も吐き出した。
右も左もわかんない半人前の頃から、同い年の彼女とはいつも一緒にいて、たくさんの話をしてきた。

二人でいなきゃ何もできなかったあたしたちは、おもちゃの箱に言葉を吹き込んだ。
立派な戦士になるために、強さも弱さも全部からっぽの箱の中に詰め込んで、
もう、弱音は吐かないって、もっと強くなるんだって決めた。

簡単に壊れそうな安っぽい鎖と錠を外す鍵は彼女が持って、箱はあたしが持っている。

いつか、大人になったとき、誰の手も借りないで生きられるようになったとき、
この箱を二人で開けてみようと、小指と小指をあわせて約束したあの日。
目には見えなくても、ちっぽけな弱気と力強い希望が、未来の自分たちを励ましてくれるんだって信じてた。

今。箱はまだこの手にある。
古びた鎖は少し引っ張っただけで簡単に切れてしまいそうだ。
だけどあたしはその鍵を外すことはない。あの鍵でしか、この箱を開けることはできないのだから。

思い描いていた未来では、一緒に後輩の背中を支えてあげていたはずなのに。
彼女は、後輩たちの命をその手で狙う冷酷な粛清人。
そんなカンバンを背負うようになったその背中を見つめる。
囚われの身のあたしは、この現実を変える術を持っていない。

あの時、宝箱にしまったたくさんの夢や希望や不安や恐れも何もかも、
きっと今となっては、あたしたちの背中を押してくれるどころか、残酷な現実だけを跳ね返すだろう。

今は、あたしたちにこの箱を開ける資格なんてない。
悪魔のパンドラボックスに変わってしまった宝箱を、もう一度希望の箱に戻したくて。
黒く錆び付いた彼女の手の中の鍵に、また輝きを取り戻したくて。

「…梨華ちゃん、早く、鍵外そうぜ…?」

呟きは、まだ彼女の背中には、届かない。