(39)640 『サプライズプレゼント』

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今日は絵里の誕生日だ。
なのに、絵里は病院のベッドの上にいる。
昨日は検査入院の日で、今日もまだ退院出来ずにいる。
もう検査は終わったのに、念のために今日も入院しなきゃいけないんだって。

「リゾナント行きたかったなぁ」

今日はリゾナントでもパーティーをするらしい。
絵里も行きたかったなぁ。
というか、主役がいないのにパーティーとかおかしくない?
主役はここにいますよー!!
誰かに届けばいいと思いながら、必死に心の中で叫んだ。

「せっかくの誕生日なのにぃ」

ぼやいてみても、返事をしてくれる人は誰もいない。
リゾナントの賑やかさに慣れてしまったせいか、ちょっとしたことで寂しく感じるようになってしまった。

「さゆ早くぅー」

ケーキ買って来てあげるからね、と言って昨日は帰って行った。
いつ来るんだろう。
待ち遠しくて堪らなかった。

―コンコン

そんな時、病室の扉をノックする音が聞こえた。

「はーい」

さゆだと思っていた絵里は、予想外の来客にびっくりして固まってしまった。


「失礼しますー」
「失礼しマス」
「亀井サーン、元気デスカー!」

一気に賑やかになった病室。
まさか、来てくれるだなんて思わなかった。

「みっつぃー、ジュンジュン、リンリン!」
「今日は学校が休みやったので、ジュンジュンとリンリンとお見舞いに来たんです」
「今日誕生日デショ?」
「プレゼントもバッチリデース!」

みんなが来てくれるだなんて全く考えてなかったから、今みんながそばにいることにすごく感動した。
改めて、もう一人じゃないんだということを実感する。

「誕生日おめでとうございます」
「ありがとぉー」

3人からプレゼントを受け取って、ベッドの上に並べた。
嬉しくて嬉しくて、涙が出そうになった。

「今日みんなでパーティーするんでしょ?」
「はい。亀井さんがいないのは残念ですけど・・・」
「本当だよー!主役はここにいるんですけどぉ!」

絵里は今度こそ口に出してそれを主張した。
言っても仕方ないことはわかってる。
それでも、主張せずにはいられなかった。


「亀井サンの分までケーキ食べマス」
「ジュンジュンに任せテ」

自信あり気にそう言う二人を見て、絵里は頬を膨らませた。
絵里だってケーキ食べたい!リゾナントでパーティーしたい!

「なんで絵里入院してるんだろう…」
「病気ダカラデショ?」
「そうだけどぉー!!」

絵里の呟きはジュンジュンにバッサリと切り捨てられてしまった。
ちょっと今のはさすがの絵里も傷ついたよ?
いつか仕返ししてやるから覚えとけよ、ジュンジュンめ。
いつか絵里もジュンジュンのケーキ食べてやるんだから!

「じゃあ愛佳達はそろそろ失礼しますね」
「え?もう帰っちゃうの?」
「はい。後がつかえてるんで」
「あと?」

きょとんとする絵里を見て、3人が楽しそうに笑った。
なに。なんなの。なんなんなんなの。
あ、ちょっとこれ面白いかも。
今度ガキさんに言ってみよう。

「じゃあ、亀井さんお大事に」
「またナー」
「ハッピーバースデー!亀井サーン!」

3人は来た時と同じようにガヤガヤと帰って行った。
また一人になっちゃったなぁ。
みんなが来る前と同じように静かになったけど、絵里の前には色とりどりのプレゼントが置かれている。


うへへ…。
誰もいないけど、ニヤニヤが止まらない。
そこにプレゼントがあるだけで、病室が明るくなったように感じた。

―コンコンコンコンコン

「はいっ、はーい!!」
「失礼しまーす!!」

プレゼントを開けようとしたら、また扉を叩く音がした。
絵里が返事するのと同時に開いた扉から現れたのは、なんとなく想像してたけど…小春だった。

「亀井さーん!お誕生日おめでとうございまーす!」
「ありがとう…あと、扉ノックしすぎだから」

いつものテンションで病室にやってきた小春に、絵里のテンションはついていけなかった。
急にそんなテンションで来られても、さすがの絵里も困るっていうか…。

「またさらに大人に近づきましたねー」
「そうだねぇ。もっと大人っぽくなりたいんだけどねぇ」
「いやー、亀井さん結構大人だと思いますよ?」
「本当に!?どの辺が!?」
「いや、それはちょっと、わかりませんけど」
「わかんないのかよ!」

小春に期待した絵里が馬鹿だった。
この適当な小春に。
絵里以上に適当な小春に。


「これ、プレゼントです」
「おぉ、ありがとう」
「じゃあ小春帰りますね」
「え!もう帰るの?」
「すぐ仕事が入ってるんですよー」
「そっかー。相変わらず忙しそうだねぇ」
「ピューッて終わらせて、夜のパーティーには参加しますから!」
「うん!ってそれ絵里いないんだけどね」
「じゃ!またー!」

絵里の言葉を聞いているのかいないのか、小春はピューッと病室を出て行ってしまった。
なんだか今日はみんなドタバタしてるなぁ。
絵里のベッドの上にまた一つプレゼントが増えた。

―コンコン

どのプレゼントから開けようかと考えていると、また扉をノックする音が聞こえた。

「はーい!」
「絵里!誕生日おめでとーっ!」
「ありがとー、れーな!」

れーなはいつものような笑顔で絵里のそばまで近づいてくると、後ろに隠していたプレゼントを勢いよく差し出した。

「ジャーン!絵里の為にめっちゃ考えて選んできたけん」
「本当に!?ありがとぉ、れーな」

絵里がお礼を言うと、れーなは照れくさそうにどういたしましてと言って笑った。


「じゃ、れーなはもう帰るけんね」
「もう帰っちゃうの?」
「仕事抜け出して来たっちゃん。今日は祝日やけん忙しいと」
「すっごく忙しいと?」
「すっごく忙しいと」
「じゃあしょうがないね。バイバイ」
「そのうち誰か来るけん、楽しみにしとって」
「うん」

あまりにもみんなが次々とやってきて、あまりにもすぐに帰ってしまうから、だんだん絵里も寂しくなくなってきた気がする。
次は誰かなって考えると、ちょっとワクワクするし。
どんどん増えていくプレゼントにも、すごくワクワクする。
それにしても、ケーキはまだかな。

―コンコン

「はーい!!」

来た来た。
ワクワクしながら扉を見ていると、喋り声が聞こえた。
今回は1人じゃないみたいだ。

「絵里ー!誕生日おめでとう!」
「カメおめでとー!」
「ありがとー!」

今度はさゆとガキさんだった。
みんなと同じように、プレゼントを片手に持っている。


「はい、プレゼント!」
「ケーキお待たせー」
「やったー!ありがとぉ!」
「じゃあカメ、もう私たち帰るから」

早速ケーキを開けてみようとしたら、ガキさんが衝撃的発言をした。

「え。さすがに早くないですか?」
「いや、そろそろ帰らないとさ、ほら、パーティーに間に合わないから」
「いやいや。主役は今ここにいるんですけど」
「でもパーティーはリゾナントであるから」

さゆの言葉に、ガキさんもうんうんと頷いている。
いや!おかしいでしょ!
今回ばかりは絵里が正しいと思うんだけど!

「じゃあ、またね」
「ケーキ食べ過ぎないようにね」

適当なことを言いながら、二人は病室を出て行った。
今日って、絵里の誕生日だよね?
今日の主役は絵里だよね?

「さゆとガキさんのバカー!!」

ベッドの上でジタバタしていたら、いきなり病室が光った。
びっくりして何も出来ずにいると、徐々に光が人の形になっていった。

「あ、愛ちゃん!」

光の中から現れたのは愛ちゃんだった。


「能力使って来たこと、ガキさんには内緒な」
「え、あ、はい」

愛ちゃんは必要以上に真剣な表情でそう言った。
そういえば何度かガキさんに怒られている愛ちゃんを見た気がする。
まぁ内緒にするかどうかは今後の愛ちゃん次第ですけど。
だって愛ちゃんで最後だし。
みんなみたいにすぐ帰ったら恨みますよ!

「それじゃあ絵里、プレゼント全部持って」
「え?」
「そろそろ面会時間終わるやろ?終わったら、リゾナント行くで」
「え?え?」
「今日は絵里の誕生日パーティーやるって、さゆから聞いたやろ?」
「え、いや、聞いてましたけど、でも、え?」

え、なに。
なんなんなんなの。

「やから、迎えに来た」
「えぇぇぇぇ!!!!」
「あ、そーや」
「まだ何かあるんですか?」

状況が飲み込めなくて、絵里の頭はパニックだった。
出来ればこれ異常混乱させないでほしい。

「誕生日おめでとぉ」
「遅い!愛ちゃん遅い!」
「うっせー!ほら、早く行くで!」


愛ちゃんに急かされて、わけもわからないままプレゼントを抱えて、気付いたらリゾナントにいた。

「な、え、みんな…えぇ?」
「せーのっ」
「誕生日おめでとー!!!!」

愛ちゃんの声を合図に、一斉にクラッカーが鳴った。
いろんなことが起こりすぎて、絵里の頭の中は既に真っ白だった。

腕の中には必死に抱えてきたプレゼントがあって。
周りにはみんながいて。

「もう…なんなの…みんなのバカぁー」
「ちょ、絵里泣かんといて!」
「ほらー、カメが泣くと愛ちゃんも泣いちゃうからー」
「愛ちゃんは涙もろいけんねー」
「絵里、ケーキ食べよ?」
「亀井さん!小春間に合いましたよ!」
「びっくりしました?」
「早くご飯食べるゾ」
「準備バッチリデスヨ、亀井サン」

涙で前が見えないけど、みんなの声は聞こえてくる。
もうなんなの?
なんでみんなこんなことしてくれるの?

こんなに幸せでいいのかな。
そう思っちゃうぐらい、今幸せなんだよ。

「あり、がとぉ」

泣きながらで上手く言えなかったけど、今の絵里から、精一杯の気持ちを込めて―