(40)196 『東雲に聴こえる声』

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  感じるのみで 生きてきた
  前を見据えて 生きようとした

  一人ではないことに気付き 声が聴こえてきた

  私の声は アナタに聴こえてる?



         ◇◆



空が白み始めた頃、私はなぜか目が覚めた。
ふと目だけを動かし、同居人がいるであろうロフトの方へ向けるが、そこは空だった。
季節が変わり始め、朝方は少し肌寒くなる。
布団を肩まで掛け直し、自然に睡魔に襲われ目を閉じた。

 『…また、ヒトリにするの?』

何処からともなく聴こえてきた声が、閉じかけていた瞼を開かせ、頭を覚醒させた。
布団をめくり起き上がる。部屋の中を見渡してみたが、自分以外、誰もいない。

 『さみしいよ…どこにもいかないでよぉ…』

また、先ほど聴こえてきた声がする。それは近くから、それは部屋の中から。
確かに聴こえるのに、正体は分からなかった。


 「…どこに、いるんや?」

声に出して問いかけてみた。
自分の声だけが響き、すぐにしんと静まり返る部屋はどこか少しだけ不気味だった。
けれどほんの少しだけ、寂しげな様子だった。


        **


目が覚めた時、時計はすでに6時過ぎを示していた。
まどろむ思考の中で、今日は何をしなければいけないのか、店の仕込みなどをぼーっと考えていた。
途端に、思いだしたのは先ほどの出来事。まだ早朝と言えるぐらいの時に起こった、不可思議な出来事だ。

そのせいで頭が高速に回転を始める。
急に覚醒した脳内では、先ほどの出来事が映像として延々とリピートされている。

 「…なんで…」

あれは、少女の声だった。
か細い声で、寂しげに、誰かを求めているような想いを宿した声だった。
問いかけてみた後、少女の声はもう聴こえなくなった。

なぜ、あんなにも近くで聴こえてきたのか。
もしかしたらこの店に近くにいたのか。

今では最早、知る術は何も残っていない。
ただ一つだけ、あの少女の寂しげな声だけが心の中に今でも響いていた。


 『あれは、もしかしたら。
  予想が当たっていれば、先ほどの声の主は。』


私はすぐに布団から出て支度を始めた。
今日はお店を休みにして、声の主を探そう。

あんなにも近くで声が聴こえたのに、黙ってるわけにはいかない。
あの悲壮に満ちた声を、探してくれと言わんばかりの痛烈な声を、私は、見逃すことはできない。

待っていて。もうすぐ、助けに行くから――――――