(42)124 『Come Back KOHARU』

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れいなが帰ってこない

おかしい・・・いつもならもう帰っているはずなのに

れいなが朝のトレーニングに出てから帰ってこない
たまに遅い時はあったが、ここまで遅いことは今までにない
れいなのことは信頼しているが、さすがに不安になる

ダークネスに襲われたか?

カランカラン

「れいな!?」

あたしは待ち望んだベルの音のする方をみる
そこにはやっとの思いで立っている傷だらけのれいなの姿が

「あ・・・あいちゃ・・・ん・・・」

あたしの名前を呼びおえると同時にれいなはその場に倒れこんだ

「れっ、れいな!!どうしたの!?なにがあったの!?」

れいなは意識がなく答えが返ってこない

さゆっ!さゆを呼ばなきゃ!


――1時間後――

メンバーに連絡したらみんながかけつけてくれた
ただ小春だけが連絡がとれなかった

「これで終わりです。あとは意識がもどれば・・・」
「さゆ、ありがとう」

喫茶リゾナントの2階
ベッドで寝ているれいなと治癒しているさゆを6人で囲んでいる
とりあえず傷が完治してひと安心

「みんなごめんね、あとは意識が戻るまであたしがついてるから」

「謝らないの!誰もそんなこと言ってほしくないよ、それにしても・・・
田中っちがここまでやられるなんてね・・・」

メンバーの中で一番身体能力が高く、戦闘には絶対の自信を持つれいな
そんなれいなのこの姿を見れたメンバーが不安になるのも仕方ない

「愛佳が、愛佳がちゃんと予知できてれば防げたのに・・・」
「愛佳、そんな自分を責めなくていいよ、こんなのどうしようもないんだから・・・」

「れいなっ!?」
「れいな、大丈夫?」

しばらく意識は戻らないだろうというメンバーの予想に反し、れいなの意識が戻った


「なんでみんないると?れいなどうしたと?」

「れいなね、今日トレーニングから帰ってきたら傷だらけだったの!なにがあったの!?」

ふと、れいなが考えこむように視線をおとす
するとしだいにれいなの体が震えだした

「れいな、どうしたの!?」
「れいな、ダークネスにやられたの!?」

「こ、小春・・・」

えっ?

「こ、小春にやられた・・・」

小春って・・・?

「れいな、小春に殺されかけたっちゃ!!」

普段強気なれいなの震える姿
小春に襲われたという信じがたい発言
メンバーが言葉を失うには充分すぎる

「た、田中っち、ちょっといきなりすぎて意味がわからない」
「れいな、落ち着いて・・・」

ふぅ・・・とれいなは一息ついた
どうやら震えはとまったみたいだ


「あれは絶対に小春やった、でも様子はどこか変だった・・・」
「変って?」
「なんかれいなのこと『田中れいな』ってフルネームで呼んだり、れいなが小春って呼ぶと
『なんで小春の名前知ってんの』
とか言って襲ってきたっちゃ」

「記憶喪失ってこと?」

「っていうかれいなのことを知らんって感じやったと
小春がれいなを襲う理由もわからんし、れいなも小春と戦う理由もないし、
何を言っても小春からはまともな答えが返ってこんし・・・

れいな必死で逃げてきたと・・・

こんな気持ち初めてやけん」

れいなの体が再び震えだす

「小春が怖かった、小春に敵わんって思った」

れいな・・・小春・・・
衝撃的すぎて、信じられなくて、でも嘘とは思えなくて
なんて言葉をかければ、なんて言葉を発せばいいのかわからない
リーダーとして情けなすぎて自分が嫌になる

「田中っち、誰だって迷えばそういう気持ちになるよ、小春に迷いはなかったんだよね?」

ガキさん・・・ホントしっかりしてるな・・・頼りになるなぁ・・・

「小春本気やった、れいな死ぬって思ったと」


「それでいて、田中っちのことは全然知らなかったんだよね?」
「そんな感じやった」

元ダークネス出身のガキさんならなにかわかるんかも・・・

「ガキさん、なんか心当たりあるんか?」

「おそらく、おそらくだよ!ダークネスの能力者に小春は記憶を消されたんだと思う
わたしみたいな精神干渉を持ってるやつはダークネスにまだいたはず」

記憶を消された・・・?

「最悪、自分の名前、能力しか覚えてないかも、最低でもわたし達と過ごしたここ数年の記憶はないと考えていいかもね」

「そんな・・・記憶を消されたって・・・もうあたし達のことわからないの?」
「うん、今の小春には、わたし達の記憶なんてない、むしろわたし達は抹消すべき敵と教えられてるかも」

そんな・・・

「あくまで推測だよ、可能性は高いと思うけど・・・・・・でも・・・」
「でも?」
「でも、失った記憶を戻すことはできないことじゃない」

一瞬メンバーの雰囲気が明るくなるのを感じる

「さゆみんの治癒、わたしの精神干渉、田中っちの共鳴増幅を使えば凄く大変だけど記憶を戻すことはできると思う

でも・・・

可能性は限りなく0に近い・・・

でも・・・可能性は0じゃない」


可能性があるんならそれにかけるしかないじゃん

「ガキさんそれやろうよ!さゆ、れいな大丈夫だよね?」
「全然大丈夫なの!」
「当然っちゃ!」

「愛ちゃん、でもね、どうやって小春をつれてくるの?小春はわたし達を殺す気でくるのよ?
それに、これもおそらくなんだけど、メンバーが一人でいる時しか襲ってこないと思う
ダークネス的には記憶を失った小春の姿で動揺を誘って優位に立つのがねらいだよ思うのね?
いくらそんな状態でも複数の能力者を相手に勝てる見込みは少ない
そんなところに小春は現れないと思う」

じゃ一人で行けば・・・

「一人でいる時に小春が現れたとしても、現に田中っちがこんな目にあってる
他の子がいったところで結果は見えてるでしょ?」

「ガキさん、あたしが行くよ」

「ちょ、いくら愛ちゃんでも雰囲気の違う小春を目の前にしたら・・・」
「大丈夫やよ、あたしにも覚悟はできてる、動揺はせんよ
それに、ガキさんとれいなとさゆは連れて帰った小春に対応しなきゃいけないし
絵里と愛佳じゃ小春には敵わん、ジュンジュンとリンリンには荷が重すぎる
消去法でみてもあたししかおらんやろ」

ガキさん、みんな、あたしを信じて


――数時間後――

「i914だね?」

リゾナントを出てどれくらい経っただろうか?
とうとう会えた
随分久しぶりに聞いた名前を、よく聞き覚えのある声で呼ばれた

「小春か・・・」

そう呼んで、声のした方へ振り返る
なんともイライラした様子の小春がそこにはいた

「なんなの!?」
「は?」
「なんで!?今朝のネコみたいなやつといい、お前といい、なんで小春の名前を知ってんの!」

『お前』か・・・こんな小春を目の前にして逃げたくなるれいなの気持ちがよくわかる

でも、あたしは逃げるわけにはいかない、小春を連れて帰らなければ!
ガキさんに言われた条件は二つ
『頭に衝撃を与えず、気を失わせる』
『できるだけ小春に失った記憶を意識させる』
そうすることによって、小春の記憶を戻す可能性を上げれるらしい

「ああ、もう!ムカつくなぁ・・・あんたは殺すよ!」

小春が殺気に満ちてわたしに向けられるのがわかる

やっぱり話合いは無理・・・?


小春の能力、電気を発生させ、それを両手にまといわたしに向かってくる
想像以上のスピードにわたしはとっさに瞬間移動を使い回避した

ん?

瞬間移動を使ったあとの小春の様子がおかしい?

「お前、今、消えた?」
「あたしの能力はしらないんか?」
「は?お前の能力?」

ふざけてる、小春は捨て駒扱いか?

けど、確信が持てた

小春はあたしたちを覚えていない
ダークネスは小春を仲間にしたわけじゃない
小春を使ってリゾナンターと戦って最悪小春だけでも消えてくれれば満足といったところだろう
やりかたがきたなすぎるよ

「小春・・・」
「気安く名前呼ばないでくれる?」
「小春、胸にぽっかり穴があいた感じがしない?」
「は?」
「ここ数年の記憶ってある?」
「なんなの?」

返答はいらない

心に直接聞くから


『小春の記憶?ん?言われてみればなにも思い出せない?』

「あたし、小春が思い出せないこと全部知っるんだけどね」
「は?何言ってんの?」

『小春のこと・・・知りたい・・・』

「あたしは高橋愛、小春、あなたの味方よ」
「もーうるさいなー」

『この人が味方?』

「うるさい!うるさい!うるさい!」

小春は頭を抱えて込んで、苦しんでいるように見える
限界・・・苦しむ小春を見てられないよ

次の瞬間、小春が顔をあげたときには、あたしは小春のふところに潜り込んでいた

「ごめん、小春・・・」

軽い一撃じゃ、小春は意識を失わない
小春を傷つけたくない、一撃で済ませたい
あたしは、容赦のない渾身の一撃を小春のみぞおちに放った

崩れる小春の重さを感じながらささえるとあたしは光になってリゾナントに飛んだ

「早くもどらなきゃ」

ズキン


リゾナントに戻るとすぐに小春を寝かせた
さゆが小春の頭に手をかざし、ガキさんも小春の横に座り、れいなが二人の肩に手を置いた
いつ戻ってきてもいいように準備していたんだろう、手際がいい
三人が能力を発動しようとしたとき

「ガキさん・・・胸が痛いよ・・・」

ズキン

「小春を・・・仲間を傷つけることがこんなに痛いと思わんかった」

小春を殴った手の感触、小春を支えた腕の感覚が胸を締め付ける

「ガキさん・・・小春の記憶を戻せたら・・・無茶やと思うけど

小春がれいなを傷つけた記憶を消してほしい・・・

さらに言えば、小春が記憶を失ってから戻すまでの記憶を消してほしい・・・」

ガキさんはニッと笑ってうなずいてくれた

「もちろん、そのつもりだよ」
「ありがとう・・・」
「田中っち、さゆみん行くよ」

三人は瞳を閉じて能力を発動した


あたしは手を握り合わせて瞳を閉じる

あたしにはなにもできない・・・
なにもできないくせになにがリーダーだと思う

ふと、瞳をあけるとあたしと同じように瞳を閉じて祈るようにしている四人の姿が
絵里や愛佳、ジュンジュン、リンリンだって同じように苦しんでるんだ
彼女たちもなにもできない自分が悔しくてしょうがないだろう

そうだ、あたし達に今できることは、仲間を信じること、祈ること

あたしは再び瞳を閉じる

そしてあたし達は祈った



       ――かえってこい!小春!――