(26)271 (俺シリーズ6)

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やはり来るべきではなかった…。
だが後悔してももう遅い。
今、ダークネスの幹部が集う会議室内は、異様な空気が漂い始めている。
その原因は、勿論この俺だ。
「何でお前が来るんだよ?ホント命知らずの馬鹿だな。お前みたいな下っ端が、この部屋に入り込んだりして只で済むと思ってんの?」
正面から向かって左側の一番奥の席に座っていたチビは、俺を見つけた途端に立ち上がり、その甲高い声をこの広い会議室内に響き渡らせた。
うるせーよチビ、俺だって好きで来た訳じゃねーよ…。

「口を慎みなさい矢口。彼は私が連れてきた大事なお客様よ。」
チビの声を全く気にする事なく俺を席に座らせようとする『天使』に、チビのすぐ左隣の席の聖母が苦言を呈する。
「アンタ何考えてんのよ。今、組織の最重要機密を取り扱っている最中よ。矢口の言う通り、彼を連れて来ていい場所じゃないわ。」
さすが聖母、正論だ。そうだよ、俺は此処にいてはいけない人間なんだよ。
なぁ『天使』、頼むからわかってくれ…。
「いいんじゃね別に。減るもんじゃねぇし。」
ぶっきらぼうな物言いで聖母の隣の席のイケメン女が割って入って来た。

おいおい邪魔しないでくれよ。聖母が折角良いこと言ってるのに。
「困りましたねぇ。どうしましょうか。」
正面中央の席に座る白衣の女が、言葉とは裏腹に呑気な表情で呟く。
そんな悠長な事言ってないで聖母の味方をしてくれよ天才科学者さん。
益々張り詰めた空気が部屋を支配する中、右側奥の席のインチキ女だけが相変わらず無表情を保ったまま、瞬き一つせずどこか遠くを見つめている。
全く使えない女だな。ボケーッとしてないでお前も『天使』に何か言ってやってくれよ…。

「兎に角今すぐお前はこの部屋から消えろ!じゃないと今度こそあの世行きだ」
げ!遂に痺れを切らしたチビの掌からまた黒いエネルギーの塊が発生している。
ちょっと待ってくれよ。分かった!今すぐ出て行くから早まらないでくれ…。
「一体何するつもり矢口?彼に手を出そうとするんなら私が相手になるわよ。」
先程までとは別人のような『天使』の凄みのある声と殺気がチビに向けられる。
おいおい幹部同士がこんな場所でやり合うのか?ホント勘弁してくれよな…。


まさに一触即発。その時…。
「は、ハハ!なっち冗談だよ冗談!キャハハ!!」
流石のチビも『天使』と戦っては勝ち目がないと判断したのか、笑って誤魔化すように席に着くしか術はなかったようだ。
「さ、キミは其処の席に座って。猫ちゃんは膝の上にでも乗せておいてあげて」
こうして『天使』からの有り難いご褒美として、俺と子猫は本当に緊急幹部会議に参加することになってしまった。
しかも『天使』とインチキ女の間に挟まれるという、ある意味非常に座り心地の悪い席を用意されたようで…。

「全く何時もの事だけど、なっちの我が儘にも困ったものだわ。」
「心配いらねぇって。いいから、さっさと続きを始めようぜマルシェ。」
「仕方ありませんねぇ『天使』が其処まで仰るのなら…。但し、此処での話は他言は無用です。万が一、貴方が外部に漏らすような事が判明すればその時は…宜しいですね?」
言われなくても分かってるよ俺だって命は惜しいぜ…。
嫌、もしかして会議室から出て『天使』と別れた時点で、口封じで殺されたりして…。参ったな、本当にとんでもない事に巻き込まれちまったぜ…。


「さて『天使』も来られた事ですし、会議を再開しましょうか。」
白衣の女が指を鳴らすと辺りが急に暗くなる。すると室内の中央に9人の少女の立体映像が浮かび上がった。
「そう、先程話にも出ましたが彼女達が我々ダークネス最大の敵リゾナンターです。彼女達との交戦の結果、既に多くの戦闘員を失っています。」
何?コイツらが本当にあの憎きリゾナンターなのか?
魔女や『DD』の連中が簡単に倒されるくらいだから、一体どんな化け物かと思いを巡らせていたのだが、何処にでもいる普通の女の子達じゃないか。
しかもみんな可愛い…。

ん?あれ…?あの背の高い娘はまさか…。そ、そんな嘘だろ…?
「あれ?アイツ月島きらりじゃねぇの?」
「本当だ!何で現役のスーパーアイドルがリゾナンターに混じってんの?」
「さすが皆さん鋭いですね。そう、アイドル月島きらりは彼女の表向きの顔。しかしその正体は我々に敵対する組織リゾナンターのメンバー、久住小春です。」
月島きらり。それは今、人気絶頂のトップアイドル。
小さい女の子達の憧れの的だが、何を隠そうこの俺も月島きらりの大ファンだ。


何人ものアイドルを追いかけてきたが月島きらりほど俺の胸を焦がしてくれたアイドルは、未だかつて存在しない。
その俺のアイドルのきらりが、あの憎きリゾナンターの一味だったなんて…。
「オイラ月島きらり大嫌いなんだよね。そうだテレビの生放送で全国のチビッコが見てる前でコイツを血祭りにしちゃおうか?ウチらに逆らうとどうなるか、いい見せしめになると思うよ。キャハハハハ!!」
あの糞チビ何て事言うんだ…。他のリゾナンター共は兎も角、俺のきらりちゃんに指一本触れたら只では済まさんぞ!!
「彼女を侮ってはいけませんよ矢口さん。久住小春の戦闘能力は相当高いですから。あの『R』も彼女との戦闘で命を落としましたからね。」
白衣の女が告げたその衝撃の事実を俺は中々受け入れられずにいた。

―月島きらりは『R』のカタキ―