(26)614 (俺シリーズ7)

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月島きらり。それは今芸能界で大人気の若手女性トップアイドル。
月島きらり。それは俺の生き甲斐、そして俺の青春そのもの。
俺がダークネスで働いて稼いだ給料の殆どはきらりのグッズ代で消えている。
俺の滅多に鳴らない携帯の着信音もきらりの大ヒット曲『バラライカ』だ。
有給使って、きらりの握手会に参加した事もあったな。
間近で初めて接したきらりのあの笑顔と手の温もりは今でも忘れられない。
そんな俺の大好きなきらりちゃんが、まさかリゾナンターの一味だなんて。
しかも『R』のカタキだなんて、俺は一体どうしたらいいんだよ…。

「その『R』の事だけどさマルシェ、貴方だったら『R』を蘇生させる事も出来る筈でしょ?魔女や『A』も復活させて今度は全員で出撃すれば、勝てない相手ではないと思うけど。」
「勿論、可能ですよ。彼女達の遺伝子は一応、私の研究所に保管してますし。」
何?そんな事が出来るのか?凄い!流石ダークネスの天才科学者。
それにしても聖母は良いこと言うなあ。
そうだよ『R』が生き返れば取り敢えずきらりは『R』のカタキではなくなる。
頼む天才さん、せめて『R』だけでも復活させてくれ。


だが、そんな俺の淡い期待を、白衣の女は冷たい言葉で容赦なく打ち砕いた。
「でも折角の保田さんの提案ですが、私はその案は賛成出来ませんね。彼女達は一度リゾナンターに敗れた欠陥戦士です。組織に不要な欠陥品を再生するなんて、正直言って時間と労力と費用の無駄だと思いますよ。」
{…欠陥品だと…!!?…}
“欠陥品”その言葉を聞いた瞬間、俺は両の拳を机に叩き付け白衣の女を睨み付けていた。
だが白衣の女が俺に視線を向けた直後、またしても激しい後悔が俺を襲う。
「どうされました貴方?何かご意見でも?」


拙い…。また感情を直ぐ表に出す何時もの悪い癖が出てしまった…。
俺の突然の激昂ぶりに隣の『天使』もキョトンとした表情で俺を見つけている。
ヤバい…。この状況、いったい俺はどうしたらいいんだ…?
「アイツは『R』に惚れてたみたいだからな。マルシェにカチンときたんだろ?好きだった女を欠陥品呼ばわりだもんな。酷い奴だぜ。」
「え?よっすぃーマジなのそれ?下級兵の分際で『R』が好きとか本当に身の程を知らないなアイツはキャハハハハ!」
「止めなさい二人とも!彼が可哀想じゃないの。」

『天使』が二人を窘めるも、イケメン女に図星をさされた俺は、ただ俯き赤面するしかなかった。
ああ、恥ずかしい…。でも、あのイケメン女、何故そんな事知っているんだ?
…そうか!“あの男”から聞いていたんだな…。
糞、あの髭野郎め。余計な事までペラペラ喋りやがって…!
「そうでしたか、それは大変失礼致しました。ですが今は大事な会議の最中ですので成る可く私情は挟まないようにして頂けますか。」
「こ、此方こそご無礼をお許し下さい…。」
落ち着きを取り戻し頭を下げた俺を、白衣の女は笑って許した。


それにしてもこの女、嘗ての仲間をアッサリ不要と切り捨てるとは…。
非情というか、崖の上のポニョみたいな顔して本当恐ろしい女だぜ…。
「まあいいわ。それより新垣をいつまでアイツらに潜り込ませておく訳?彼女はスパイとして何か成果を上げているの?」
「彼女の諜報能力は素晴らしいですよ保田さん。最新の報告書には、リゾナンターに関する貴重な新情報を入手したと記されています。」
「え?何?スパイ?どういう事?オイラそんなの知らないんだけど。」

「実はですね矢口さん、リゾナンターの中にスパイを一名送り込んでいるんですよ。流石の彼女達も、まさかサブリーダーの新垣里沙がダークネスの諜報員だとは気付いていないでしょうね。」
何?それは凄い!という事は奴等の秘密はダダ漏れじゃないか!!
ああ、スパイの新垣とやら、俺だけにコッソリきらりちゃんのプライベート情報流してくれないかなあ…。
「で、奴等の貴重なの最新情報て何だ?早く教えろよ。」


「はい吉澤さん。リゾナンターには現在、二人の中国人のメンバーが在籍しているのですが、報告書によるとその内の一人リンリンが、何とあの国家機関『刃千吏』の総帥の一人娘だと判明したそうです。」
何?中国人まで混じってるのか?アイドルのきらりもいるし、リゾナンターてのは一体どういう組織なんだろう…?
「一人娘って事は『刃千吏』の後継者て事?何でそんな重要人物がリゾナンターにいる訳?…まさか奴等と『刃千吏』が同盟を結んだとか?だとしたら拙いんじゃないのコレ?」
チビが珍しく慌てふためいているが、『刃千吏』て一体なんだ?
そんなに凄い団体なのか?

「どうでしょうか?或いは我々が新垣里沙をリゾナンターに潜り込ませたように、リンリンも『刃千吏』が送り込んだスパイだと言うことも。」
「本当かしらねその情報?聞けば新垣の心はかなりリゾナンターに傾いてるとか?そんな人間の言葉を鵜呑みには出来ないわ。」
「心配いらないよ圭ちゃん。ガキさんはとても真面目で責任感の強いコだから、なっち達を裏切ったりしないよ。最後まで任務を遂行してくれるべさ。」
新垣というスパイに対し疑心暗鬼な聖母を『天使』は穏やかな言葉で諭した。


「どっちでもよくね?奴等が手を組もうが両方纏めて潰せばいいだけだろ。」
「いや『刃千吏』は我々と遜色ない戦力と財力を持ち合わせています。彼等が敵になるか、或いは味方になるかで戦況は大きく変わるでしょう。『刃千吏』の真意を探る意味でも、新垣里沙には引き続き諜報活動を続けさせるべきかと。」

おいおい、何だか話が違うぞ?後はリゾナンターさえ倒せば邪魔者は全て消えるって聞いていたのに。
少人数のリゾナンターより、その『刃千吏』て組織の方がよっぽど不気味じゃないのか…?


「あ、そうだ!オイラこの後合コンの予定入ってるんだった。マルシェ、今日はこの辺で会議終わりにしない?」
「お忙しいところ申し訳ありませんが、もう少しだけお付き合い頂けますか矢口さん。後一つ、もっと重要な案件が残っていますので。」
何だこのチビ呆れた…。組織の会議より合コンの方が大事なのかよ…。
まぁそういう俺も一刻も早くこの部屋を出たいのは同じ訳だが。
「『刃千吏』の事よりも重要な案件て何かしらねマルシェ?今日私達をわざわざ集めたのも、もしかしてその事かしら?」

「その通りです保田さん。流石何でもお見通しのようで。」
あれ?何だろう気のせいだろうか?白衣の女の顔付きが何だか変わったような気がする…。
「実はリゾナンターのリーダー高橋愛に関して、大変興味深いデータを得る事が出来まして…。ウフフフ…。」
なるほど…。狂気じみた不気味な笑みを浮かべる白衣の女を見て俺は漸く得心がいった。何故この女がマッドサイエンティストと呼ばれているのかを。