(28)352 『光の抗争-1-』

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   「………アナタを、殺す…」


 これは
   光を手にする共鳴者と、
     新世界を追い求める闇の住人が繰り広げた物語の、最後の瞬間――――


        ◆◆


 「…遅いね。でも、ずっと待ってた…」
 「…ずっと待ってたなんて、ストーカーみたいですね」
 「嫌だなー、何言ってるのさ。高橋こそずっとごとーの背中を追ってたのにね」


場所は、かつて高橋愛の仲間である新垣里沙が囚われ、処刑されようとしていた島-海上の孤島-であった。

天高い空を覆うのは、灰色の雲。
青空は見えず、島も、周りを囲む海でさえ、薄暗い天候の中にあった。

そんな暗い空の下、一際映えるのはそびえ立つ白き十字架。
薄暗い雲でさえ、十字架の白さは消せないように感じられてしまう。
純粋なる信仰心、潔白の真実。
その全てを携える十字架の前には、憎しみと欲望を背負う二人の能力者が対峙していた。


 「ずっとね、考えてたんだ。なんで世界はこんなにも荒れてしまったのか、ってね」


光を手にする共鳴者が憎しみを込めた瞳で睨むのは、
普段通りの態度で目の前に立ち、またもや普段の口癖で話し始めた-闇の住人-後藤真希だった。

 「昔はみんな仲良かった。裕ちゃんが率先して指揮ってくれてさ。
  闇に対抗して頑張ってる姿に、ごとーはいつも尊敬してた。
  かおりんだって、圭ちゃんも、やぐっちゃん、よっすぃ、梨華ちゃんも…
  みんなと一緒になって戦ってさ、昔は頑張ってたもんだよ」


後藤は続ける。
高橋の強い視線を受けながらも、気にしていないとでも言うように。

 「…でも、いつからか尊敬してた裕ちゃんの夢に共感できなくなったんだ。
  いきなり闇を受け入れようとするんだもん。ビックリしちゃったよ。
  …仲間だと思ってたみんなも、少しずつ裕ちゃんに付いて行っちゃうしさ。
  みんなどうして?って感じで、ごとー、脱退しちゃったんだよね」
 「だから、あの時…」
 「高橋たちはごとーにとって可愛い後輩だったよ。だから裕ちゃんたちに捕まらないように逃がしてあげたんだ」
 「…っあーし達が!……どれだけ、悲しかったか…」


握り拳を作り、俯く高橋は昔のことを思い出していた。
同期である小川麻琴、紺野あさ美、新垣里沙と共に後藤に連れられて、組織『M』から離脱した時のことを。

組織内部を完璧に理解するにはまだ幼かった自分でも、なんとなくではあったが何か危ないことがあったのだと感じていた。
そしてそれは的中し、ある日後藤に何の説明も無く、自分たちがいた組織から離脱させられたのである。
組織からの追手と戦いながら、ある街に辿り着き、そこで後藤からいきなりお別れを言われた。
その直後、追手が高橋たちを追い詰め、疲弊した身体では充分に戦えなく、紺野と小川が連れ去られてしまったのである。

あの時の辛さを、苦しみを、悲しみを。
忘れたことなど、一度も無かった。


 「……でもあの追手は、結局は新垣の仕向けたものだったんでしょ?
  かわいそうだよね。仲間だと思ってた同期に裏切られたと気付いた時は」
 「っ…」
 「しかも気付いたのが、5年?6年?経った頃だって言うじゃん。それまでずーっと、裏切られ続けてたんだね」


蔑むような瞳ではなかった。
むしろ、それは憐みの気持ちが含まれた視線。
高橋は自分の不甲斐なさを思い出され、顔を上げられなかった。


 「しかもごとーも知らなかったからなー。後で知った時にはびっくりしたもんだよ」


後藤は昔話を語るような口調で話し続ける。
彼女の真意はまだ、分からない。


 「さあ、話は変わって……なんで、ごとーがここにいるか、だよ」


その言葉に、ゆっくりと顔をあげる高橋の瞳は、またもや憎悪に彩られた。




 「共に新世界を創ろう。ごとーと高橋がいれば、この荒れた世界も新しく生まれ変われるんだ…」