501 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/02(水) 10:59:54 ID:OR8TQB1d
ヤンデレ大全の影響か、月姫の秋葉と琥珀がヤンデレだっていってる奴がいて驚愕した

502 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/02(水) 11:21:23 ID:huVwzGsP
型月にヤンデレはないだろ


503 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/02(水) 11:37:41 ID:+W669WOK
というか、ヤンデレ大全がないだろ

504 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/02(水) 11:38:27 ID:ZjK1imvW
型月(笑)

505 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/02(水) 12:59:49 ID:xt9XoEn+
ん?琥珀√の秋葉も違うか?
志貴を監禁しようとしたり、琥珀とくっついたら琥珀もろとも殺す
みたいなこといってなかったっけ?……あれ、俺、地雷?

506 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/02(水) 13:21:43 ID:Z409B1tR
そーいや前に角煮で叩かれるかなあと思いつつ
ハマーンがヤンデレに見えるって書いたら
賛同してくれる人がいてちょっと嬉しかったなw

507 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/02(水) 15:34:34 ID:n+Tu4O+q
若干、古い作品だがエデンズボゥイのパレラはどうだ?

弟に依存しすぎて弟の恋人と殺しあってるし

508 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/02(水) 18:11:54 ID:cD2n4qjc
桜はヤンデレじゃね?
主人公が大怪我したときは、もっと動けなくなるくらいの怪我をすれば……なんて妄想するし。

アンリに毒されてからは邪悪ヒロインだけれど。

509 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/02(水) 22:50:14 ID:5x0/fYDk
この流れなら言える

ガクトの『Doomsday』は良ヤン曲

510 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/02(水) 23:29:49 ID:UM0aiNSj
狂った果実の美夏はどうだろう

511 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/02(水) 23:30:54 ID:4jEBPYx4
簸川樹里に一票。

512 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/03(木) 01:06:57 ID:U1PwwjuG
A君とA君にベタ惚れなBさんがいたとして、Cさんのちょっとした悪戯心でA君が女性恐怖症になってBさんすら拒むようになったら、Cさんはどうなると思う?
また、Cさんが作ったトラウマによる恐怖症は同世代の女性にしか発症しなくて、
それが原因で年上/年下のDさんとA君がくっつくようになってしまったらCさんの罪はどのくらいになる?

513 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/03(木) 01:17:59 ID:jxk2gvCK
Cまでもヤンデレに目覚める

514 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/03(木) 01:29:34 ID:rGq4XPWH
Cさんを唆して悪戯をさせた黒幕は、Dさん

515 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2008/01/03(木) 01:47:19 ID:czSojKlw
Cの罪は特にないが、Dの罪は重い
そしてBの虐殺の時間が・・・

516 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/03(木) 05:17:02 ID:TEUbWpgk
実はE君(6歳)がA君と突きあいたくてCさんを唆し
さらにBさんにDさんを消させる算段を取って共倒れ狙い

517 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/03(木) 08:03:33 ID:ZIWza5ra
お前達の妄想力レベルの高さに吹いたw

518 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/03(木) 10:48:22 ID:1jtKdRoK
>>473
これニコ動で聴いたぞww

おまえらなら興奮するんじゃないか?
ヤンデレ大好きな俺でもかなり行き過ぎてると思ったwww

519 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/03(木) 11:01:16 ID:qeMYfttV
ヤンデレCD怖い…
ゆりしーのだけはよかった

520 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/03(木) 13:15:57 ID:tCZ5QvOS
ガチメンヘラがヤンデレキャラやるのか

521 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/03(木) 14:27:14 ID:7k0oehCA
>>510
遅レスだが、よう俺 ノシ
ヤンデレ大全は美夏が入っていなかった事が一番残念だったなw

522 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/03(木) 14:53:19 ID:mJywhZWP
>>518
これ全部聞いたけどさ、ヤンデレとは微妙に違う気がするんだが

523 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/03(木) 16:37:55 ID:my1UvAA7
それにしてもこの鬱声優、ノリノリである

524 名前:ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 [sage] 投稿日:2008/01/03(木) 18:35:01 ID:QqWcpa2G
>>418
やってみます

525 名前:病み妻1/4[sage] 投稿日:2008/01/03(木) 18:35:57 ID:QqWcpa2G
え、出張、ですか?
突然に? あさってから?
そうですか……。一週間。長いですね。
たしかあそこの支店には○○さんが行かれる事になっていたのではありませんか?
ええ。この間、総務の××さんから色々お話聞かせていただきました。
私、今でもあの辺のお局さまと仲がいいのですよ。あなたの社内情報は、とてもよくわかります。
あの娘、最近女子寮出て、マンション借りたそうですね。
……さっそく、いい人と同棲ごっこしてみたいのでしょうか?
……ねえ、あなた。
浮気相手の女の子が可愛いのはわかります。
いいえ、否定してもダメです。私、全部、知ってますから……。
でも、あなたは私ともっと仲良くしておいたほうが、……色々と都合がいいと思いますわ。
そうでないと、あなたも、私も、娘も、あなたのご両親も、
きっとみんな困ったことになる……と、思います。
あなたの可愛い娘に、おいしいご飯をたくさん食べさせてあげられる女は誰でしょう?
あなたの大切なご両親が、不自由なく暮らせるようにできる女は誰でしょう?
……浮気相手の、あの娘ではないですよね?
ひょっとしたら、あなたが「出張」から帰ってきたら、
娘が何日もご飯食べられなくて餓死していた……なんてことが起こってるかも……。
ひょっとしたら、あなたが「出張」から戻ってきたら、
田舎のご両親が救急車の呼び遅れで植物人間に……なんてことも起こってるかも……。
そんなこと、困りますね?
ええ、そんなことになったら、私もとても不幸ですわ。
でも、あなたの奥さんって、あなたがいなければ、それだけで一番不幸になってしまうです。
そうなったら、多分、他の不幸なんてどうでもいいって考えてしまう……かも……。
うふふ、覚えておいてくださいね。
……あなたの人生、私が一番幸せにできるんです。
でも、一番不幸にすることもできるかも……知れませんね。

526 名前:病み妻2/4[sage] 投稿日:2008/01/03(木) 18:36:40 ID:QqWcpa2G
あら、あなた。
どうしたのですか、急にお倒れてなってしまって。
お布団、すぐに敷きますから、そこに横になってください。
え? 身体が動かない?
大丈夫ですよ。
――後遺症は残らないくらいの量ですから。
さっきの、煮物、美味しかったでしょう?
あなたの大好物。
お義母さんから習った、味付け。
でも、お義母さんのよりも美味しいでしょう?
私のオリジナルレシピですもの。
隠し味はたっぷりの愛情と、素直になるお薬をほんのちょこっと。
ああ、お水、欲しいのですか?
はい、口移しで飲ませてあげますね。
あらあら、しっかりキスしないと、こぼれちゃいますよ。
そうそう、そうやれば、美味しいお水、飲めます。
ふふ、そろそろ「素直」になってきましたね。
あら、何をおびえてるのですか?
これから何をされるのか、わかりませんか?
……ねえ、あなた、知ってます?
あなたの奥さんが、あなたのこと、どれだけ好きか、って?
わからないのなら、これからたっぷり教えてあげます。
うふふ、おち×ちんは正直ですね。
よく飼いならした犬と一緒。
頭のいい犬は、誰がごはんをくれる相手かちゃんとわかって素直に甘えてくれます。
あなたのおち×ちんも、とっても素直で、とっても素敵。
誰がこのおち×ちんを何年も何年も可愛がってあげてるのか、
ちゃあんと分かってくれてます。
誰とセックスしたら自分が一番気持ちいいか、知ってるんです。
ほら、あなたのおちんちん、
「あんな女のより、奥さんの中に精子いっぱい出して気持ちよくなりたい!」
って、言ってますよ? こんなにおツユまでたらして。
あらあら、どうしたのですか、そんな泣きそうな顔して。
こわい?
私が?
まあ。
あなたの奥さんは、全然こわくなんかありませんよ。
あなたに対して世界で一番優しい女ですわ。
そうですとも。
わたしは、
ねえ、あなた。
よぉく、考えてください。
つまらない「出張」に行って、帰ってきたら何もかも失っているのと、
愛する奥さんと気持ちいい一晩過ごして、幸せな家庭がずうっと続くのと、
あなたにとって、どっちがいいでしょう?
うふふ、考えるまでもないですわね?
愛してますわ、あなた。
──たぶん、あなたが思っているよりも、ずっと、ずっと。

527 名前:病み妻3/4[sage] 投稿日:2008/01/03(木) 18:37:11 ID:QqWcpa2G
はい。ハンカチです。
あ、ネクタイ曲がってますね。
「出張」、とりやめにしてもらうですって?
急に大変ですね。
では、今日ははやく帰ってこられるんですね?
お夕飯……家で食べますよね?
何にしましょうか。
今決まらなかったら、お昼頃にメールください。
じゃあ、いってらっしゃい。
あ、昨日は、「仲良く」して、ありがとう。
私、今朝はとっても幸せですわ。
うふふ、はい。
ちゅう。
それじゃ、いってらっしゃい。

……いってらっしゃい……。
……お出かけのキスは、あなたからはしてくれないんですね。
やっぱりあの女と……。
……ああ、どうしたら、あの人に私の想いが伝わるのでしょう。
恋人になっても。
妻の座に付いても。
子供を産んで、あなたの家を守ってあげても。
あなたは、全然、私だけのものになってくれない。
外堀も、内堀も、二の丸も、三の丸も、城下町も、
時間をかけて、全部、私が埋め尽くして占領したのに、
肝心なあなたの本丸だけが手に入らない。
どうしたらいいのでしょう。
いっそ、全部壊してしまったら……。
外堀も、内堀も、二の丸も、三の丸も、城下町も、全部……。
そうですね。
それが……いいのかも……。
そうすれば、本丸も、きっと無駄な抵抗を止めるでしょう。
そろそろ娘が起きる時間だわ……。
私の可愛い娘。
半分が、あの人でできている、私の二番目の宝物。
でも、一番の宝物が手に入るのなら……手に入るのなら……。

528 名前:病み妻4/4[sage] 投稿日:2008/01/03(木) 18:37:45 ID:QqWcpa2G
すみません、例の出張の件、どうにかなりませんか。
ええ、……はい、妻が……。
あいつ、まだ、病気治ってないみたいで、
まだあの娘が会社にいて、俺のこと狙っているって思い込んでるんです。
ええ、昨日は、相当やばかったです。
なんでも、××さんから直接聞いたって言い張って。
ええ、ええ、わかってます。
あいつの妄想だって。
今回の件、○○に変わって貰えますか。
ええ、すみません。
仲人してくださった部長には、申し訳なく思ってます。
もう少し、時間を下さい。
必ず、なんとかしますから。
あんないい娘、こんなにしちゃったのは俺のせいですから。
あいつのこと、完璧超人だって、甘え過ぎてたんです。
いや、甘えなさ過ぎだったのか。
あいつが、俺の愛情に不安を感じるようになったのは、俺の責任です。
もっとはやく気がついていれば……。

──え、俺に電話、ですか?
幼稚園から?
なんだろう……。

fin

529 名前:ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 [sage] 投稿日:2008/01/03(木) 18:41:38 ID:QqWcpa2G
ヤンデレ奥さんに挑戦してみました。
病み方はライトです。
女の配偶者が本気でヤンデレになったら
社会的にも司法的にも男は逃げようがないですねw

530 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/03(木) 18:48:49 ID:jxk2gvCK
>>473
今気が付いたがシャーリィがいるじゃないか!

531 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/03(木) 18:51:56 ID:KWN+caou
>>522
しょうがないさ
ブームになれば誤解と誤用で言葉なんていくらでも変わっていくんだから
それを乗り越えてジャンルとして定着する日を待とうぜ

532 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/03(木) 18:54:55 ID:77zblm7a
>>529
勃起するほどGJ!
結婚願望ないがヤンデレならありかな、と思っちまったじゃねーか!

533 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/03(木) 18:57:00 ID:7k0oehCA
>>529
エロくて怖くてテラGJ
ゲーパロ専用氏このスレでは初だっけ?

534 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/03(木) 19:19:49 ID:1IR0CeCR
>>529
萌え死にそうだ!!
そう言う妻と結婚してぇぇぇぇsぇwふぁwkぇg

535 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/03(木) 20:05:54 ID:YEf+ryt0
ゲーパロ氏 乙
貴方が書く妻達はいつも俺のド真ん中ストライクだぜ!

536 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/03(木) 20:59:39 ID:qeMYfttV
子供に手をかけるのはちょっと…
あまりにも酷いような…自分がお腹痛めて産んだ子だというのに…

それ以外はいいなぁ…こんな嫁さん欲しい

537 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/03(木) 23:01:13 ID:y9AgtAZG
>>536

ヤンデレではよくあること

538 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/03(木) 23:43:29 ID:LeicVXDj
ゲーパロ氏GJ!!俺のツボにグッと来たぜ!!

ところで最近ヤンデレ曲に凝ってるんだが、何かおすすめない?

539 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/04(金) 00:00:10 ID:C7yN/DGk
歌ならあるが曲は難しい

540 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/04(金) 00:19:44 ID:6S3thTIb
リアルヤンデレはやめとけ。洒落にならないから。
友人の奥さんがヤンデレで、友人から話聞いてるだけで唖然とする。
私は、世界と言葉を足して2で割ったようなかんじと評している。
それに対して別の友人は「他人の奥さんに対して失礼だろ」といったが。

>>536
>>自分がお腹痛めて産んだ子だというのに…
そんなの関係ないから。
友人初婚、奥さん再婚で子供は奥さんの連れ子三人なのだが、
昨年、離婚騒動になったとき、
「子供捨てたら別れないでいてくれる?」と言われたといっていた。
そもそも、子供が離婚の争点ではなかったのに、だ。
とりあえず元鞘になったが、友人が離婚することにしたと話に来たときに、
ストーカーになるだろうから、そのための身を隠す対策まで話していったよ。
こんなのはまだまだほんのひとつの話にすぎない。

ヤンデレは架空の中だけにしとけ。

541 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/04(金) 00:26:20 ID:dkTgBgPM
>>540
リアルヤンデレ奥さんの体験談を聞いてみたいので続きをお願いします
リアルの情報はなかなか手に入らないから貴重だしw

542 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/04(金) 00:28:59 ID:l4+6UsaK
>>539
すまん、言い方が悪かったな。歌でも曲でもオケなんだぜ

543 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/04(金) 00:33:44 ID:QNHBgmFW
特に連れ子に関しては、ヤンデレじゃなくたって
新夫に気に入られるために、連れ子を苛めるなんてよくある話なわけで
虐待事件で夫が捕まって妻が共犯になるような話も年中でてくるしな。

三次は、生活維持のための寄生や
相手への愛情というより自己愛・自分のプライドといった理由が実はほとんどなのもなー。

544 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/04(金) 00:48:10 ID:Ki32tPd0
>>540
むしろバッチコーイだ。

545 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/04(金) 01:18:35 ID:Lpx1AdBl
リアル話はスレ違いだろ……
しかも友人夫婦の話を2chのスレなんかで
住人の娯楽のために吹聴するなんて人としてどうかと思うぞ

546 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/04(金) 02:12:49 ID:NmrwwU0V
だよな…そんな真面目に深刻なリアル話聞きたくないし
しかも、友人の家庭事情を得意気に吹聴してるようにすら見えてむしろ不快

547 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/04(金) 02:27:06 ID:Ki32tPd0
だが私はリアルも大歓迎だ

548 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/04(金) 02:30:56 ID:OMYK91yp
俺は勘弁だな
そういう事語りたいならVIPでやれってな

549 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/04(金) 03:02:00 ID:+47kvmc4
>>525
GJすぐる!!
ゲーパロ氏の書くヒロインはみんな可愛いから困る

>>528
GO!GO!7188の「赤いソファー」とかは?
いいヤンデレだと思うんだが…


550 名前:549 [sage] 投稿日:2008/01/04(金) 03:04:34 ID:+47kvmc4
レス間違えた>>528じゃなくて>>538だな

551 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/04(金) 03:08:03 ID:eABMZsD9
>>525-528
学校であった怖い話のSS版攻略本に岩下嬢と主人公が孫まで作ってる小説思い出したわ

552 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/04(金) 06:11:33 ID:iswosaot
ニコニコにヤンデレの女の子に死ぬほど愛されて眠れないCDがうpされてた
これは良すぎる
http://www.nicovideo.jp/watch/sm1943511
http://www.nicovideo.jp/watch/sm1943188
http://www.nicovideo.jp/watch/sm1942961

553 名前:ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6 [sage] 投稿日:2008/01/04(金) 06:18:20 ID:/zZUav0N
病み妻さんは、いちおう、娘を前にあやしい行動を取っているところを
迎えに来た幼稚園のおねいさんから父親に連絡……という程度でw
本当に手をかけちゃったら連絡は警察から来るでしょうし。

>>551
どのようなお話ですか?
ま、まさか、
旦那を亡くしたヤンデレ妻が、息子と娘を監禁、
「あなたたちは半分ずつ旦那でできてるのだから、
二人で子供を作ったら、100%の旦那が生まれ直ってくれる」と、
姉弟相姦を迫るようなガクブルなお話ですか?

554 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/04(金) 07:20:23 ID:jeEPf23l
おねいさんに死亡フラグが(´;ω;`)

と瞬時に思ってしまった俺ガイル

555 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/04(金) 08:59:23 ID:5Mwfr71S
>>553
ちょっwそれ病み妻ちと狂いすぎww
それで息子じゃなく娘が産まれたらどーなることやら…

556 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/04(金) 11:00:49 ID:1uAm87oV
>>552
それ、まだ発売されてないはずなのにな
そのうち消されるんじゃね?

557 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/04(金) 11:44:50 ID:ujIuh2tb
ヒント:コミケ

558 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/04(金) 15:35:29 ID:O9G7c3UM
>>536
ヤンデレが母親になると超DQNになるんだよな。

559 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/04(金) 17:51:16 ID:rO+KX9gd
そういえば話変わるがガンダムWのノインって隠れてヤンデレっぽくないか?
エンドレスワルツの再会シーンで会ってなかった日数を言うんだぞ
最後に会ってから一年ほど経ってたというのに…

本編ではゼクスにノイン以外女の影がなかったからか、覚醒はしてないが

560 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/04(金) 18:11:37 ID:mtzwjC0R
本保管庫の更新ないなと思ってたら臨時が立ってたのか

561 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/04(金) 19:50:17 ID:8xmsrkOy
報われない思いが熟して熟して熟し過ぎてドロドロになって、監禁とか調教とか
たまには暴力になるのがたまらんのです。

で、何が言いたいってヤンデレに監禁されたいってことですよ

562 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/04(金) 20:07:36 ID:1uAm87oV
俺は殺人とかまで至らない、行き過ぎてないヤンデレが好きだな。

563 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/04(金) 20:38:51 ID:+vHc/2e8
やあ、俺

564 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/04(金) 21:03:19 ID:5Mwfr71S
新年早々荒々しいなお前ら…

565 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/04(金) 21:50:55 ID:g4s0dDZ2
>>562
俺もそっちの方が好みだな

首切りとかあるとウヘァッ('A`)って思うw

566 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/04(金) 22:36:28 ID:fXrKvZ+t
>>553
なんという可愛い奥さん

567 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/04(金) 22:40:33 ID:C8Hmh2GR
>>562
グロはおれもちょっと苦手だな
独占欲が強すぎて心中とかいや

568 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/04(金) 23:00:49 ID:b+xIHtIM
個人的には「見捨てないで!」的なヤンデレが一番ストライク

569 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/04(金) 23:21:37 ID:j8EpDJU4
俺的には「これでずっと一緒だね・・・」とか言って監禁しちゃうヤンデレがストライク

570 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/04(金) 23:27:21 ID:+47kvmc4
話豚切って悪いんだけど、ヤンデレの女の子を受け入れる主人公の話みたいので何かおススメない?
「あなたと握手を」読んでどストライクだったもんで…

571 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/04(金) 23:31:04 ID:PXof3Tr5
>>569
あれ、俺いつ書き込んだっけ…?

572 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/05(土) 00:34:39 ID:Urlgqy0G
>570
最近のだと
リッサ氏の短編作品や『ヤンデレ家族と傍観者の兄』かな?
後者は、連載物だから展開によっては、ヒロインを拒否する可能性があるけど

573 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/05(土) 01:20:00 ID:r7beKh48
>>568
「おねがい、見捨てないでっ!○○さんの次でいいの…。
私は□の側にいられるだけで十分だから」
とか言ってた女の子に
「二番目はもう嫌だよぉ…。□の一番になりたいよぉ…」
なんて言われる展開が好き。
これだけでご飯三杯は食える。


574 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/05(土) 01:23:15 ID:IgllYQNd
なんという俺

575 名前:気に病む透歌さん[sage] 投稿日:2008/01/05(土) 03:03:46 ID:wi0YCo1E

(おなかいたいよう……あたまもいたい……)
女子トイレの個室に閉じこもり、倉井透歌は一人腹を抑えて苦痛に顔を歪めていた。
トイレの窓から、校庭で生徒たちが騒ぐ賑やかな喧騒が聞こえてくる。その楽しげな響きとは対照
的に、透歌の気分はいつも通り最悪だった。
胃の辺りがずきずきと痛む。頭の奥で誰かが鐘でも鳴らしているかのように、周期的な頭痛が襲っ
てくる。手は小刻みに震え目は霞み足は痺れ、吐き気も止まなかった。こみ上げる嘔吐感は、吐瀉物
が喉から出る寸前のところまで上ってきているような錯覚を覚えさせる。
(おくすり、のまないと)
混濁する意識の中、膝の上に置いた鞄に手を伸ばし、中を探る。たくさんの薬が入った専用のプラ
ケースと水の入った水筒を取り出すと、それと一緒にたくさんの小さな物体が飛び出してきて、透歌
の体にまとわりつき始めた。
(ああ、妖精さんだ)
その物体は、七色に輝く薄い虫の羽を生やした、拳ぐらいの大きさの人間だった。妖精である。
各々が妖しげな、あるいはからかうような笑みを浮かべて、透歌の周囲を好き勝手に飛び回る。
透歌は自分の耳を引っ張り、目に張り付いて視界を塞ごうとする妖精たちを無視して、様々な形の
錠剤十数個を、水で一気に流し込んだ。
しばらく目を瞑ったまま身じろぎもせずに待ち、おそるおそる目を開ける。あれほどたくさん飛び
回っていた妖精たちが、影も形もなくなっていた。頭痛や腹痛や吐き気も、かなり和らいだようだ。
(よかった、おくすり、まだちゃんと効いてるみたい)
ほっと息を吐き、薬と水筒をバッグの中にしまいこむ。
先程の妖精は、もちろん現実のものではない。全て幻覚である。
幻覚を見るというのは、大体にして麻薬に手を出しているか精神的な病を患っているかのどちらか
であり、透歌の場合は後者だった。原因もよく分かっている。
(赤塚君……)
閉ざされた視界の中に、一人の少年の顔が浮かび上がる。意志の強そうな瞳と穏やかな微笑を作る
唇が印象的な、優しい風貌の少年である。
彼の名は赤塚幸樹と言い、透歌のクラスメイトである。彼のことを思うだけで、普段は今にも止ま
りそうなほど静かな透歌の心臓は、まるで火がついたように激しく鼓動を打ち始めるのだ。
(冗談を言って笑っている顔が好き。
友達と話してるときの楽しそうな声が好き。
野球のボールを追いかけるときの、真剣な瞳が好き。
部活が終わったあと、夕陽を眺める横顔が好き。
女の子と話すときの、照れくさそうだけど優しい仕草が好き)
闇の中で、赤塚の顔が次々と移り変わる。
彼の多彩な表情や、繊細な仕草の細かいところまで、透歌は全て覚えていた。ほとんど会話すらし
たことがないような仲だが、彼のことをずっと遠くから見つめてきた。
元々、透歌は病気がちな少女だった。小学校中学校と、ほとんどの時間を家で過ごし、同年代の子
供とまともに話した経験など数えるほどしかなかった。
そんな彼女が、今薬を飲みながらにしても公立の高校に通っているのは、間違いなく赤塚のおかげだった。
窓際のベッドに身を横たえる彼女の眼下を、毎日のように駆けていく少年がいた。いつもじっと彼
の姿を追い続けている内に、いつしか透歌はその少年の隣に立ってみたいと思うようになっていたのだ。
幼いころから自分の人生に何の希望も見出せなかった彼女の胸に、生まれて初めて小さな炎が宿っ
たのである。その炎は少しも勢いを衰えさせず、それどころか彼の姿を見るたびにますます激しく燃
え盛った。
そうして生まれた狂おしいほどの情熱を糧に死に物狂いの努力を重ねた結果、透歌は気がつけば彼
と同じ高校に通っていたのだった。
入学してすぐに運良く彼と同じクラスになれたこともあり、透歌の体は以前とは比べ物にならない
ほど健康になっていた。
毎日ちゃんと登校して、彼の姿を遠くから眺めているだけで、世界全体が眩しく輝いているような
錯覚すら覚えたほどである。
無論、ある程度健康になったとは言え体が弱いのには変わりなかったし、元来内気で引っ込み思案
な上に今までまともに人と話したことがなかったせいで友達も出来なかったが、彼女自身は赤塚を見
つめることさえ出来ればそれで十分に幸せだったのである。
そんな幸せな日々も、長くは続かなかった。

576 名前:気に病む透歌さん[sage] 投稿日:2008/01/05(土) 03:04:36 ID:wi0YCo1E

破局の兆候はいくつかあった。
まず、透歌の赤塚への思いが、抑えようもないほどに膨らんできていたこと。
以前も、彼のことを夢に見たり、ふと「今なにをしているだろう」と想像したりすることはあった。
それが入学して三ヶ月もする頃には、透歌の頭の中はほとんど全て赤塚だけで占められるように
なっていたのである。
毎晩夢に見るのはもちろんのこと、路傍の小石から自分とは何の関わりもない海外のニュースに至
るまで、何を見ても彼と関連付けずにはいられないほどである。
また、赤塚の周囲に多数の少女が存在することも、あまり好ましい要素ではなかった。
赤塚の穏やかで温かい雰囲気に惹かれているのは透歌だけではなかったようで、彼の周囲はいつも
華やかな少女たちの声に溢れていたのである。
彼女らはそれぞれ、空っぽの人生を送ってきた透歌とは比べ物にならないほどに魅力的だった。
愛しい彼の恋人としてその隣に立てたら、という透歌の淡い願いは、最初から叶わぬ夢物語に過ぎ
なかったのだ。
とは言え、それらが透歌の心に及ぼした影響は、さほど強いものではなかった。
叶わぬ恋であることなど、初めから頭では理解できていたのだ。
だから、激しい思いを胸の内だけに仕舞っておくことも、彼の恋人になるのを諦めることも、それ
ほど辛いものではなかった。
(そう、それでいいの。わたしはただ、せめてこの三年間の高校生活の間、ずっと赤塚君を見つめて
いられれば、それで)
自分の恋慕の情が届かないことを心の底から悟った後も、透歌のその姿勢はほとんど揺るがなかった。
しかし、それすらも崩れてしまう出来事が起きてしまった。

彼女がその会話を偶然耳にしたのは、一ヶ月ほども前のことである。
いつものように校舎の片隅の窓辺から、校庭で練習する野球部(性格に言えばそれに参加する赤
塚)を見つめた後、下校すべく自分の教室の前を通りかかったとき。
「キモいよなー、倉井」
という、クラスメイトの女子の声が、教室の中から聞こえてきたのである。
どうやら自分の陰口を耳にしてしまったらしいと気付いて、透歌は身を硬くした。立ち去るべきか
と迷っている間にも、教室から次々と自分の悪口が飛び出してくる。
「あー、キモいね、確かにキモい」
「なんかさー、倉井の席の周りだけやけにじめっとしてるんだよね」
「カビ生えそうだよね、あれ」
「何も喋んねーし、休み時間も石みたいに動かないしさ」
「不気味っつーの? 何考えてんだかさっぱり分かんないよね」
「なんかビョーキっぽいよね。近づいたら感染しそう」
「ちょっとやめてよー、あたしあいつと席近いんだからさー」
「あいつ一人だけ隔離してもらえばいいんじゃね?」
そんな会話が、下品な笑いと共に耳に飛び込んでくる。かすかに痛む胸を、透歌はぎゅっと押さえた。
(キモい……きもちわるいのかな、わたし)
今まで、自分のことをそんな風に考えたことはなかったが、人から見ればそうなのかもしれない。
(でも、大丈夫。わたし、きもちわるくてもいい。赤塚君を見つめてさえいられれば、それで)
そう思いなおして、透歌がその場から立ち去ろうとしたとき。
「幸樹もキモがってんじゃないの、あれ?」
(幸樹……赤塚君!?)
突然出てきた思い人の名前に、透歌の心臓が激しく脈打ち始める。
先程とは比べ物にならないほど、教室の中の会話に集中する。
「え、なに、幸樹がどうしたの?」
「あんた気付いてないの? 倉井さー、なんか、いっつも幸樹のこと見てんじゃん」
「うっそ、マジで!? じゃーなに、倉井、幸樹ラブってこと?」
「うっわ、ありえねー! キモすぎだって。マジなんそれ?」
「マジマジ。あの女前髪長くて半分目ぇ隠れてっから分かりにくいけどさー、よーく見ると、いっつ
も幸樹のこと見てんのよ」
「ぎゃー、やめて、マジやめて! なんかあいつの視線ってスゲーねっとりしてそーっ!」
「幸樹かわいそー、呪われてんじゃない?」
「そういう想像しか出来ないよねー。わたしが男だったら、あんなのに好かれてるって知ったら
ショックで自殺するわ」
「だよねー。倉井だよ倉井。マジありえねー」
透歌はゆっくりとその場から立ち去った。

577 名前:気に病む透歌さん[sage] 投稿日:2008/01/05(土) 03:05:17 ID:wi0YCo1E

転げ落ちるように階段を駆け下り、朦朧とした意識のまま歩き続けて、気がつけば家に帰り着いていた。
真っ暗な自室の中、電気もつけずに隅っこにしゃがみこみ、先程聞いた会話を何度も何度も頭の中
で繰り返す。
(きもちわるい。わたしはきもちわるい。赤塚君、わたしを見たら嫌な気分になるんだ)
頭が殴られたように痛み、腹の辺りがずきずきと痛み出す。背中から嫌な汗が滲み出し、全身を悪
寒が襲った。
(どうしよう。赤塚君、わたしが見てたら嫌な気分になるって。ショックで自殺するぐらい嫌だって。
赤塚君が嫌な気分になるのはいやだ。でもわたし、赤塚君をずっと見ていたい。だけどそうすると赤
塚君が嫌な気分になる。赤塚君が嫌な気分になるのは嫌。でもわたし、赤塚君のこと見られない人生
なんて考えられない。だけどわたしに見られると赤塚君が嫌な気分に……ああ、どうしようどうしよ
うどうしようどうしよう)
思考が堂々巡りし、どんなに努力しても答えが出ない。腹痛と頭痛に加えて吐き気もこみ上げてく
る。気がつくと、混濁する意識の中、視界を覆いつくさんばかりに見たこともない生き物が部屋を飛
び回っている。
翌日、透歌はベッドから出ることが出来ずに、結局学校を休んでしまった。

(だけど、わたしはここにいる。わたしに見られると、赤塚君が嫌な気分になると知りながら)
女子トイレの個室の中で、透歌はため息を吐く。
結局のところ、彼女は進むことも戻ることも出来ずに日々を過ごしている。
病院で診てもらったところ、頭痛や腹痛、幻覚等の症状は、全て心因性のものと診断された。透歌
にとっては、いちいち言われなくても分かっていたことだったが。
両親はイジメに遭っているのではないかと勘ぐり、もう学校へは行かなくてもいいと透歌を説得し
た。しかし彼女は絶対に聞き入れなかった。
「わたし、どうしても学校へ行きたいの。こんな風になってしまった理由は言えないけど、またベッ
ドの中で寝るだけの生活に戻るのは絶対に嫌」
そんな風に強く主張したのは、生まれて初めてのことだった。両親にとってもそれは同様だったよ
うで、とりあえずは透歌の意志を汲んでくれた。服薬しながらの通学を認めてくれたのである。
だが、頑張れたのはそこまでだった。苦しみに耐えて学校に通いながら、透歌は状況を何も変える
ことが出来ずにいる。
自分に見つめられると赤塚が嫌な思いをするのなら、せめて近くにいられるだけで満足しよう……
そんな風に思い込もうとするのだが、気がつくと彼の姿を目で追っている自分がいる。
(これじゃダメだ。赤塚君に嫌な思いをさせてしまう)
透歌は必死に自分を抑えようとしたが、赤塚が近くにいるだけで、理性など簡単に吹き飛んでしまう。
(赤塚君が嫌がるって分かってるのに、自分勝手な感情を抑えられないなんて。わたしはなんて汚い
人間なんだろう)
自己嫌悪と絶望感は心の病をさらに加速させ、先週更に三錠ほど薬が増えた。
それでも、透歌は自分の病気の原因を、他人には一言も喋っていない。誰かに話して、それが赤塚
に伝わってしまったらと思うと、怖くてたまらなかった。
(わたしはどうしたらいいんだろう)
バッグを持って個室のドアを開けながら、透歌はぼんやりと考える。
(近くにいると赤塚君に嫌な思いをさせてしまうのに、彼から離れるのには耐えられないなんて)
女子トイレから出る直前、壁にかかった鏡の中に自分の姿を見る。
青白い肌、長い前髪に隠された目元、色素の薄い唇、痩せこけた頬。
(ああ、本当だ、きもちわるい。わたし、墓場から出てきた幽霊みたいだ)
そんなことを考えて、透歌はふと微笑んだ。
幽霊。もしも自分が幽霊だったら、どれだけいいだろう。
そうすれば、誰かに気付かれることなく、本人に悟られて嫌な思いをさせることもなく、ただただ
彼のことを見つめていられるのに。
(幽霊、か。死んだら、幽霊になれるのかな)
異常な考えだと、理性が警告する。だが、自分でもそうだと理解できるほどに異常な思考は、闇に
差した一筋の光のように、ゆっくりと透歌の心に広がっていく。
(そうだ。死んで幽霊になればいいんだ。大丈夫、わたし、こんなに赤塚君のことが好きなんだもの。
きっと、出来るはず。そうだ、死のう、死のう。今日死のう、今すぐ死のう。屋上から飛び降りれば、すぐだ)
決心した透歌は、女子トイレの扉を開けて外に出た。
すぐに屋上に向かおうと踵を返したとき、不意に後ろから声をかけられる。
「倉井さん」
心臓が大きく脈打った。

578 名前:気に病む透歌さん[sage] 投稿日:2008/01/05(土) 03:06:33 ID:wi0YCo1E
(この声……! え、でも、そんなはず……)
かき乱された思考がぐるぐると渦を巻き、透歌は深い混乱の中に叩き落される。
それでも、体はゆっくりと後ろを向いていた。前髪で半ば塞がれた視界の中に、彼の姿が見える。
(赤塚君……!)
透歌は目を見開いた。あり得ない事態に、呼吸をすることすら忘れてしまう。
(なに、なんなの、何が起こってるの? ああ、これも幻覚? おくすり、効かなかったのかな?)
混乱と緊張に身を震わせる透歌に、赤塚は優しく穏やかな微笑を浮かべてみせた。
「ごめんごめん、特に、用があったわけじゃないんだけどさ。あれ、ひょっとして急いでた?」
近づいてくる赤塚に、必死で首を横に振る。彼は「そっか、よかった」とほっとしたように言いな
がら、透歌から二歩ほどの距離を空けて立ち止まった。
「大丈夫? なんか、いつもより具合が悪そうだけど」
心配そうな顔でそんなことを言われて、透歌はますます混乱した。
(ああ……わたし、赤塚君にこんな顔させて……あれ? でも、赤塚君、わたしを心配……? うう
ん、そんなはず……でも……)
とにかく何か言わなければと思い、透歌は必死で口を開く。
「……あの……だ、だいじょぶ、です……」
小さくか細い声だった。ちっとも大丈夫そうに聞こえない。透歌は心の中で自分を呪う。
赤塚の方は特に気にした風でもなく、「それならいいんだけど」と困ったように笑った。
「なんか、倉井さんっていっつも元気なさげだからさ」
「……い、いつも……?」
「そうそう。ほらなんか、凄い痩せてるし、今にも倒れそうな感じでさ……やっぱ、気になるんだよね」
「……気に、なる……?」
透歌の体が、冷水を浴びせられたかのように冷たくなった。
(気になる……! 気になるんだ、やっぱり気になるんだ……! きもちわるいぐらいに痩せてて、
今にも倒れそうな不気味な女がいつも自分のことを見つめてるから気になって、赤塚君いつもわたし
のせいで嫌な気分になってるんだ、わたし、やっぱり赤塚君に嫌な思いを……!)
そうに違いないと覚悟していたことではあったが、本人から直接事実を突きつけられたときの衝撃
は想像以上のものだった。
「……? 倉井さん?」
怪訝そうな赤塚の声が、やけに遠くに聞こえる。遠のく意識を、透歌は必死に繋ぎとめた。
(ああ……せめて、せめて、謝らなくちゃ……! 嫌な思いをさせてごめんなさいって、もう二度と
しませんってちゃんと言わないと……!)
その思いを伝えようと、透歌は必死に口を開く。声の代わりに、涙が出た。
「倉井さん!?」
「……っ……ごめ、ごめんな、さいっ……!」
「お、落ち着いてよ、なんで急に泣いて……っていうか、なに、なんで謝るの? お、俺に謝ってるの?」
「……わ、わたし、赤塚君に嫌な思いを……」
「は? え、俺?」
困惑したように自分を指差す赤塚に、透歌は無言で頷いた。彼は頭をかきながら、なだめるように言う。
「……よく分からないけど、とりあえず、落ち着いて、話してくれないかな?」
「……は、はい……」
まだ混乱の渦中にあったが、ほんの少しだけ気持ちが落ち着いてきた。透歌はしゃくり上げながら、
謝罪の続きを口にする。
「……あの、わ、わたし、こんな青白くて骸骨みたいに痩せててきもちわるくて……な、なのに、い
つも赤塚君のこと見てるから……それで、嫌な思いをさせて……」
人と話すのは苦手だったが、とにかく何とかして謝罪の意志を伝えようと、透歌は思いつくままに
一生懸命喋った。だが案の定上手く伝わらなかったようで、赤塚は眉間に皺を寄せてしきりに首を
捻っている。
「……えーと、まだ、ちょっとよく分からないんだけど……つまり、倉井さんは俺に嫌な思いをさせ
たと思ってて、そのことを謝りたいと思ってる……ってことで、いいんだよね?」
「……は、はい……」
自分の意志が伝わったことにほっとする透歌の前で、赤塚はまだ首を捻っている。
「……あのさ、なんか、誤解してるみたいなんだけど……」
「……ご、誤解、ですか……?」
「ああ。いや、俺、倉井さんのせいで嫌な思いをしたことなんか、一度もないんだけど……?」
「……え……?」
今度は透歌が困惑する番だった。
(どうして……? 赤塚君、嫌な思いをしてないって……でも、わたしのせいで……)
戸惑う彼女をじっと見つめていた赤塚が、不意に声の調子を変えて切り出した。

579 名前:気に病む透歌さん[sage] 投稿日:2008/01/05(土) 03:08:08 ID:wi0YCo1E
「それより、聞きたいことがあるんだけど……」
真剣な声音に驚いて顔を上げると、視界の真ん中に赤塚の瞳があった。透歌が憧れていた、あの
真っ直ぐで意志の強そうな瞳だ。瞬間的に顔が熱くなり、透歌は思わず顔を背けてしまう。だが、赤
塚はそんなことなど気にも留めないかのように言った。
「倉井さんさ。さっき、自分のこと気持ち悪いって言ったよね?」
「……ええと……」
透歌は思い出そうとしたが、必死過ぎたせいか、先程まで喋っていた内容をほとんど思い出せなかった。
「……誰かに、そう言われたの?」
どきりとした。おそるおそる顔を前に戻すと、赤塚は相変わらず、馬鹿正直なほどに真っ直ぐな視
線を透歌に注いでいる。
(ああ……赤塚君の顔が、こんなに近くに……!)
先程とはまた違った意味で、透歌は身動き出来なくなってしまう。
その肩を、不意に赤塚の両腕がつかんだ。呼吸が止まりそうになる。少年らしい細さを残しながら
もしなやかに鍛え上げられた赤塚の両腕が、自分の肩をつかんでいる。彼の手の平の温もりが制服の
布地越しに感じられて、冗談抜きで失神しそうだった。
そんな透歌に、赤塚は力強い声で言った。
「俺は、そんなこと思ってないから」
その声が、透歌の意識を現実に引き戻した。
「確かに倉井さんはちっちゃいし、今にも倒れるんじゃないかって心配になるぐらい痩せてて、いっ
つも元気なく見えるぐらいに青白いけど……」
透歌の肩を握る手に、力が篭った。
「倉井さんは、気持ち悪くなんかない。絶対に。少なくとも、俺はそう思ってるから」
強い感情が込められた言葉だった。その一語一語を、透歌は全身で受け止めた。言葉は血潮に宿っ
て透歌の体内を駆け巡り、まるで魔法のように、彼女の冷たい体を温めた。
(お日さまに抱きしめられたみたい)
心臓が力強く脈打つ音を、透歌は確かに聞いた。赤塚の温もりに、汚い体が浄化されていくのを感
じる。気がつけば、透歌はまた涙を流していた。苦しさや悲しさ以外の理由で涙を流すのは久しぶりだった。
「く、倉井さん? ご、ごめん、俺、なんか変なこと……」
赤塚が慌てて透歌の肩から手を離す。透歌は頬を伝う涙の温かさを感じながら、ゆっくりと口を開いた。
「……ありがとうございます、赤塚君」
「え?」
「……わたし、赤塚君の言うとおり、あまり元気じゃなかったんですけど……赤塚君のおかげで、す
ごく元気になりました」
「そ、そう……?」
「はい……だから、あの……もう、大丈夫ですから……あ、ありがとうございました!」
これが本当に自分のものかと疑うほど、自然に大きな声が出た。目の前の赤塚もこれは予想外だっ
たようで、驚いたように目を瞬いている。気のせいか、頬も若干赤くなっている。
途端に恥ずかしくなってきた。体の熱が顔まで上ってくるのを感じる。
「あ、あの……あの、あの……えええ、えーと……し、失礼しますっ!」
何を言うべきか分からないまま、透歌は踵を返してその場から逃げ出した。
昼休みも終わりに近づき、廊下には徐々に人が増え始めている。普段の倉井透歌を知るわずかな生
徒たちが、我が目を疑うような表情を浮かべる中を、透歌は小走りに走り抜ける。もはや、誰に何を
言われようが、どんな目で見られようが、全く気にならない。心の代わりに体が馬鹿になってしまっ
たようで、空も飛べるのではないかと錯覚するほどに、腹の底から訳の分からない力があふれ出してくる。
(そうだ、もう何も気にならない。あの瞬間の思い出があれば、わたしはこれから一生生きていける!)
確信を抱いて走る透歌のバッグから、薬の入ったプラケースが飛び出し、床に落ちて軽やかな音を立てた。

こうした次第で、倉井透歌は再び元気を取り戻した。
とは言え、基本的に内気な彼女のこと、愛しい赤塚との仲は以前とそれほど変わらなかったようで
ある。この後も透歌は周囲にキモいと陰口を叩かれながらも、それを全く意に介さず、幸せな気分で
赤塚のことを見つめ続けた。
ただ、見つめられる側には若干気持ちの変化があったようで、今度は逆に赤塚の方から透歌を見つ
めることが多くなったらしい。
互いに「相手の気を散らさないように」と過剰なほど気を遣うせいで、目が合うことは滅多にな
かったそうだが、
「こっちのちょっとした仕草が原因で大袈裟に悩む倉井さんが相手なんだから、これぐらいがちょうど
いいのかもしれないなあ」
赤塚は、半ば諦め半分にそんなことを考えたりするそうである。

580 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/05(土) 03:11:43 ID:wi0YCo1E
刺したり斬ったり殺したりしないヤンデレを目指しつつ、
「自分が相手に迷惑かけてるんじゃないかと気に病みすぎる、とかでもヤンデレになんのかなあ」
だのといろいろ考えた結果、なんだかよく分からんものが出来たのでとりあえず投下してみた。

愛されてもまともにならないのがヤンデレなんだろうか。
ヤンデレでも愛されればまともになるんだろうか。
個人的には病んでた人が浄化されて健康になったときのギャップに萌えるんだが、
そういうのはヤンデレに含んでいいものなのかどうかと(ry

悩みはつきませんなあ。

581 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/05(土) 03:24:38 ID:CU/sUzFr
>>580
good job.
赤塚くんの優しさに感動。
もし赤塚くんがここまで優しくなかったり、励ましたりしなければ
倉井さんはずるずると病んでいってしまったんだろうなあ、と考える。
事前で食い止めるという展開はこのスレでは貴重な存在だから、参考になったッス。

582 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/05(土) 03:41:06 ID:hPVfcmeS
>>580良い物が見れた。
例えるなら、キモ姉とキモウトのレズプレイ並に珍しい物だな。

GOD JOB。またこういう暖かいSS書いてくれる事を期待してる。

583 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/05(土) 03:41:41 ID:snBO2NzB
>>580
なかなか新鮮みがあってヤンデレに対する新たな視点も持てるようになったし実にGJッス


584 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/05(土) 04:35:07 ID:4wO/f3Hx
コメント読むまで病気だからヤンデレとかいう洒落かと思ってた

585 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/05(土) 09:56:21 ID:roRhHr26
>>580
GJ
こういうの好きだなあ

586 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/05(土) 10:43:26 ID:i++E2zMv
>>580
GJ

>自分が相手に迷惑かけてるんじゃないかと~
ヤンデレの代名詞みたいに使われてる楓だって「自分は相手にふさわしくない」から病んでったようなもんだし
十分それもヤンデレだと思う

587 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/05(土) 10:51:48 ID:hJ6KMA+X
うむ、いい仕事。
でもやっぱり物足りないと思ってしまったりもする。

588 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/05(土) 12:59:13 ID:UdtzBt2Z
ならその足りない部分をあんたが書いて補完すればいいじゃない

589 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/05(土) 14:52:10 ID:IgllYQNd
>>580
GJです、続きはくるのかな?

590 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/05(土) 17:33:38 ID:zD98KsMj
超グッジョブ!
続編期待

591 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/05(土) 18:06:26 ID:A7NuXFuT
新鮮だなぁと思った GJ

592 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/05(土) 22:56:45 ID:nlIZiIOY
ドラマ見てて思った。
のだめってヤンデレじゃね?

593 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/05(土) 22:59:18 ID:1S8RRNk8
は?

594 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/05(土) 23:34:30 ID:nKxuZuzq
お前は何を言っているんだ

595 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/05(土) 23:40:01 ID:J9Mqxn7w
まあ確かにちょっと情緒不安定なところはあるが。

596 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/05(土) 23:56:38 ID:IgllYQNd
芸術家なんてそんなもんだろ

597 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/06(日) 00:55:09 ID:6sQOg6j8
ヤンデレとメンヘラが区別つかないときはあるよな
散々議論されてると思うがどうなんだろ
暗いメンヘラが恋した場合もヤンデレ扱いになるのかね?

598 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/06(日) 02:17:31 ID:dB+IXdzk
全然違うだろ

メンヘラ→頭の中がお花畑
ヤンデレ→頭の中が意中の人だけ


599 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/06(日) 07:23:09 ID:6sQOg6j8
メンヘラ→のだめ→ぎゃぼー
ヤンデレ→未来日記→ゆっきーゆっきー

つまりこうだな?

600 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/06(日) 07:26:15 ID:i9Uu0K44
少なくとも言えるのは、三次元にヤンデレはいないということだ

601 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/06(日) 10:02:11 ID:l95zkhPw
異常に嫉妬深い女とかはたまにいるけどな

602 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/06(日) 15:22:24 ID:t/Y3dtrL
「○○君が半身不随になればいいのに」
「そうすれば私が一生面倒見てあげられるのに」

とリアルで言った女の子ならいるぞ。

603 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/06(日) 15:43:40 ID:OeCUS3QL
「お兄ちゃんどいて! そいつ殺せない!!」を忘れるわけにはいくまい

604 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/06(日) 15:56:52 ID:t/Y3dtrL
あ、よく考えたら本保管庫の「彼が望むなら死んでもいい」
あれの元ネタがまさに三次ヤンデレだったな

605 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/06(日) 19:01:38 ID:bNewDtk5
>>603
作り話で落ち着いたんじゃなかったか?あれは

606 名前:溶けない雪 ◆g8PxigjYm6 [] 投稿日:2008/01/06(日) 19:05:22 ID:MdISYtqU
流れを切りますが投下

かなり今更だけど
トリつけないでの投下すみませぬ

607 名前:溶けない雪 ◆g8PxigjYm6 [] 投稿日:2008/01/06(日) 19:06:13 ID:MdISYtqU
9
「そういう水無月さんだって、20分前行動じゃないか」
そう言いながら、振り向く。
視界を変えた先に立っていたのは、水無月さん。
「確かにそうだね」
そう言い、水無月さんは軽く微笑む。
そんな表情に一瞬ドキリとしたが、直ぐにいつも通りに戻る。
「まぁ、二人共しっかりしてるという事でいいか。
それで、何を買いにいくの?
さすがに荷物持ちと言っても、数十キロとかの荷物は持てないからね」
少し冗談を言い、水無月さんの反応を伺う。
さすがに、只の買い物で数十キロなどいくわけがない。
そんな事を聞いた水無月さんは、少し考える様な仕草をして、
「分かった、9キロ位に抑えるね」
「え?」
返ってきた水無月さんの言葉に、思わず驚いてしまった。
「冗談だよ。今日は、少し雑貨屋にでも行こうかと」
冗談か…
力にはそこまで自信がなかったという理由から、
安心してしまった自分が少し情けない。



「うわぁ……案外面白い所だね、ここは」
雑貨屋に入った時、思わずそう言ってしまったのは無理もない。
入った瞬間に視界に写る、見渡す限りの物、物、物。
数えきれない程の物が置いてありながら、
ぬいぐるみ、コップ、お菓子、香水、椅子、etc……と、種類もかなりある。
少し遠くから、音量が高い歌も流れてきて、耳に届いてきている。
少し前に流行った曲で、僕は今でも聞いている。
人の姿も、それなりに居る事も分かる位、入り口からでも人が視界に入る。
雰囲気や、中の様子が想像とはかなり違った。
何故かは分からないが、質素なイメージで、
あまり人がいない様なイメージが自分の中で勝手に定着していたのだ。
「あまりこういった所には来た事ないの?」
「いや、来た事はあるかもしれない。
だけど来た憶えが全然ないかな」
来た事があったとしても、その事を全く憶えていなければ来た事がないのと同義だ。
「へぇ……
やっぱり男の人はこういった物にあまり興味がないのかな?」
そう言いながら、水無月さんは目の前の棚に置いてある少し大きめの、
丸い形の豚のぬいぐるみを手にとり、こちらに差し出す。
「多分そうだと思う……かな?でも僕としては、
とりあえずこの店には興味があるよ」
目の前に差し出された、豚のぬいぐるみを手に取る。
「うわぁ………これで2000円もするものなのか」


608 名前:溶けない雪 ◆g8PxigjYm6 [] 投稿日:2008/01/06(日) 19:08:09 ID:MdISYtqU
「結構ぬいぐるみは高いよ。
だから私は買うとしたら、いつも手の平サイズ位の大きさにしてるよ」
「という事は、これは大体サッカーボール位の大きさだから買わないというのか」
手にあるぬいぐるみを元の棚に戻す。
僕の手によって棚に戻ったぬいぐるみは、
寂しげな目でこちらを見ている気がした。
「残念ながら、ね。
もう少し安かったら買っていたと思うんだけど……」
そういうわけだってさ、と、豚のぬいぐるみに視線を送る。
「なるほどね……
ところで、いつまでも同じ棚の前に居るのもなんだから、奥に進もうか」
「じゃあ、あっちからでいいかな?先に見たい物があったから」
水無月さんは右側を指差した。
指差した方向を見ると、どうやらあっちの方には食器類を主に置いているようだ。
「元々僕は付き添いだから、水無月さんの行く方向についていくよ」
「………うん、そうだね。じゃあ、行こうか」
今の間が少し気になったが、
水無月さんが、先程指差した方向に既に歩きだしていたので、足早に追いかけた。


水無月さんの目的の場所に着いて周りを見ると、
さっきは基本的にぬいぐるみをメインに置いてあったのだが、
ここは食器をメインに置いてあるようだ。
目の前の棚で見かける食器としては、コップやご飯茶碗が一見して多い。
「コップでも買うの?」
そんな棚の前でしきりに品を見ている水無月さんを見て、
疑問に思った事をそのまま口にする。
「うん、その通りだよ。と言っても、なかなかいいのが見つからないんだけどね」
「どんなコップが欲しいの?」
「うーん………マグカップが欲しいかな?」「マグカップねぇ…………」
そう呟きながら、周りの棚を法則性なく見回す。
ふと、棚の一番右、上から3段目の棚にある白いマグカップと、
その右隣に配置されている黒いマグカップに目が止まった。
見ると、そのマグカップの表明には色しか目に写らない。
棚に向いている方に模様があるのかと思い、白いマグカップを手に取ってみる。
手に取ってマグカップを右に回しながら見るが、続くのはただひたすらの白。
何も無い事が分かったので、白いマグカップを元の位置に戻し、
今度は右隣に置いてある黒いマグカップを手に取る。
先程の白いマグカップと同様に、右に回しながら見るが、
今度は白と対象的とされり、黒が続くだけ。
模様があるかもしれない、という事に期待していたわけではない。
なので、何もないと分かると同時に、何の未練もなく、マグカップを元の位置に戻す。
そんな今までの僕の様子を、隣で見ていたらしい水無月さんが、
棚に戻したマグカップに手を伸ばし、白と黒、両方を手に取る。
しばらくそれらをじっと、見つめていた後、「これにしよう」
「ん?それでいいの?」


609 名前:溶けない雪 ◆g8PxigjYm6 [] 投稿日:2008/01/06(日) 19:08:50 ID:MdISYtqU
水無月さんは手に持っているマグカップに視線を落とし、
「うん、私はシンプルな物が結構好きだからね」
そう言いながら、マグカップを手にレジに向かい歩き出す水無月さん。
水無月さんの後に付かず離れずの距離を保ち、後ろからついていく。
後ろから付いていくと、先程の真っ白なマグカップを思わず思い出した。
改めて認識させられるが、水無月さんの髪はそれ位に、真っ白でいて、綺麗だった。
後ろ姿を見ると分かる、雪のような純白。
正面から見ると目立ちすぎない程度に見栄えを飾る髪質。
そんな髪からは、
純粋という雰囲気さえ醸し出している気がする。

と、また人の事をじろじろ見てしまっていた。
失礼極まりない。


「買ってきたよ~」
僕に見せる様に、水無月さんは、
ビニール袋を持った手を顔の高さ位まで上げて軽く揺らした。
「マグカップなのにビニール袋なの?」
「あぁー……それはね」
結構耳に残る音を発しながら、
ビニール袋の中から薄い黒の箱を取り出した。

「ちゃんと箱に入ってるよ。
でも、箱に入っているからといってビニール袋に入れるのも、
確かに変な感じだね」
割れ物がビニール袋というのは、
どこかにぶつけただけで直ぐに割れてしまう、という不安が生まれる気がする。
「箱が黒いって事は、それは黒いマグカップ?」
「正解~
正解者には景品としてこのマグカップを贈呈」
僕の両手を掴み、おもむろに水無月さんが手に持っていた箱を、その両手に置く。
「ん?
水無月さんが欲しいから買ったんじゃないの?」
「この黒いやつは違うよ。
これは今日の買い物に付き合ってくれたお礼だよ。
大体、女の子に黒いマグカップは似合わないって」
確かに
「そういうわけだから、遠慮なく貰ってくれると助かるなぁ…」
断られるのを心配しているのか、しきりに貰うように催促してくる。
僕としても、お礼というからには、もらわない方が逆に悪い気がした。
「分かったよ。遠慮なく貰ってく」






610 名前:溶けない雪 ◆g8PxigjYm6 [] 投稿日:2008/01/06(日) 19:10:15 ID:MdISYtqU
「それじゃあ、今日はお開きにしましょうか」
雑貨屋を出た後、直ぐに帰る事になった。
どうやら水無月さんはこれからやる事があるらしい。
しばらく繁華街の街並みをぼんやりと眺めながら、
水無月さんと肩を並べて歩く。

これといった事はなかったと思うが、何故か奇妙な沈黙が生まれていた。
前述した通り、理由は勿論分からない


よく分からない沈黙だった為か
「じゃあ、私はこっちだから」
待ち合わせ場所にいつのまにか着いていた、という事に気付いたのは
僕が帰る方向と違う方向を指さしながら、
僕に話かけた水無月さんの声を聞いてからだった。
「分かった。じゃあまた明後日、学校でね」
「うん、じゃあね」
二人で言うと同時に、各々の帰路に進む。

それにしても、買い物といってもあまり時間がかからなかった。
携帯を開いて時刻を見ると、約3時30分。
水無月さんに会ってから1時間30分位しか経っていない。
用事があったようなので、仕方がないといえば、仕方がないが。

お詫びの様な感じで付き合ったわけでもあるし、同時に親交も深められたと思う。
更に言えば、結構楽しかった。
最後の奇妙な沈黙が気になったけれど。



水無月 雪梨視点より
今日は本当に楽しかった。
隣には健二さんが居て、他愛もない物を二人で探して、
雑貨屋で買った色が違うだけのマグカップを二人で分けて……
これはデートと呼んでも差し支えないと思える。
健二さんはそんな気がなかったみたいだったのが、
残念だったけれど。

本当は、これから喫茶店にでも入って、健二さんと談笑をして、
しばらくしたら景色が綺麗な所にでも行って、
良い雰囲気を作る…………筈だったのに!?


全てがぶち壊された。
楽しくなる、至福の時だっただけに、
それが壊された時に感じる怒りは、相当なものだった。
相当というか、ここまで怒りの感情を持ったのは、
初めての事かもしれない。


611 名前:溶けない雪 ◆g8PxigjYm6 [] 投稿日:2008/01/06(日) 19:12:10 ID:MdISYtqU
でもそんな怒りも今は抑えなければ駄目。
これから壊れた元凶………
ううん、壊してくれた人に会うんだから、怒りの感情のままに
アレに会っては駄目だ。
少し冷静になろう。
今日の事は、近いうちにお礼をすればいいだけだ。
私は待つ、あの――――
「ちょっと待ってくれないかなぁ?」
女が話掛けてくる事を―――――






投下終了
書けてはいたけど、色々あって結局こんなに遅くなったorz
次はもう少し早く時間を見つけて投下します

612 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2008/01/06(日) 19:31:29 ID:yGhd3AuV
GJ

613 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/06(日) 19:48:43 ID:l95zkhPw
投下待ってたよ!GJ!

614 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/06(日) 19:48:44 ID:w6euMmyH
続きにも期待
GJ!

615 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/06(日) 20:40:50 ID:cB2YyUiR
海外ドラマ[CSI・科学捜査班シーズン3]の話で、父親を愛する余り、自分の母親を殺し、「私はパパを愛しています」と断言し、なおかつ想像妊娠で母乳を垂らし、お腹を膨らました娘にヤンデレを見て萌えた俺に後悔は無い!



616 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/06(日) 21:23:27 ID:t/Y3dtrL
>>611
久しぶりの水無月さん、ほのぼのデート……
と思いきや次回が楽しみになって参りました。
あと、次回の投下ではsageてクリ

617 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/06(日) 21:24:34 ID:dB+IXdzk
>>615
二次でやってくれたらネ申だったなw

618 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/06(日) 22:11:45 ID:15I4eDD/
>>615
なつかしい!
去年、その回を元にして一つ書こうって思ったのに結局へたれ根性の俺には書けなかったのを思い出した

あの娘役の女の子は外人の中でも相当な美少女でした

619 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/06(日) 22:40:08 ID:cB2YyUiR
>>618
おお!知ってる人がいた

再放送を寝坊して慌てて見たら丁度、娘が母乳を垂らすシーンだったww

ホント、美少女だし良い娘役だった

事情聴取のやり取りはゾクゾクしたww

あの「お腹には赤ちゃんがいるの!」なんかの演技はサイコーだった


これを気に、書いてみない?

620 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/06(日) 23:05:58 ID:+gi+WNmh
親子モノは気持ち悪い。

621 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/06(日) 23:20:31 ID:KgwAyo8e
>>620
許せない!
あたしとパパを引き裂こうとするなんて!

622 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/06(日) 23:30:47 ID:9z5CGot7
娘を狂わせるほど良い親父を目指…

さなくていいよな…

623 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/06(日) 23:33:54 ID:xwzgwDtW
ちょっとTSUTAYA行ってくる

624 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/06(日) 23:35:19 ID:HV+Auqu4
>>611
スゲェ楽しみにしてたんだ!!
GJ!!!

625 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/07(月) 01:43:24 ID:TRn5NQTL
なによ……>>620……ヤンデレまにあじゃ無かったの?
どうしてこんな所でお父さんとふたりで居る邪魔をするの?
お父さんはわたしだけを愛しているの。
わたしだけがお父さんを愛せるし、わたしだけがお父さんに本当の夢を見させてあげられるの。
だって>>620はお父さんのことを愛する資格なんて無かったもの!!
だからわたしがあのとき……あのとき……!
>>620を……>>620の背中を……!!

626 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/07(月) 02:47:18 ID:qQgGRSWP
615のは何話目?
その巻を借りようと思って調べてみたんだが、わからないので教えて
ください。

627 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/07(月) 03:04:24 ID:dZn94GdP
>>620
モルダー…あなた疲れてるのよ……




親子だから良いんじゃないか!!

628 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2008/01/07(月) 03:09:13 ID:Dwn9Nfj7
流れを切ってすいません。投下します。

629 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2008/01/07(月) 03:10:08 ID:Dwn9Nfj7
第二十三話~令嬢の誤解~

食事を済ませたあと、俺と華はこの町が建てた図書館へと足を運んだ。
移動手段は徒歩。実はさっきまで食事をしていたファミレスと自宅、あと自宅から図書館までの距離は
そう遠くはない。自転車に乗らなくても二十分少々歩けば到着する。
女性に長く歩かせるのは良くないということは経験上知っているのだが、華はどうやら例外であるらしく、
図書館に着くまで疲労を訴えたりすることはなかった。
それどころか上機嫌ですらあった。弾んだ声音で何度実家の素晴らしさを語られたことか。
実家に帰りたくない、というわけではない。だが帰りたいわけでもない。ちょうど中間ぐらいだ。
フリーターとなった今の状況では一旦実家へ戻り態勢を立て直すべきなのだが、退職してからすぐに
実家へ戻らなかったため、すでに悪い方向へ向かってしまっている。
下手をすればこのままずるずるとフリーターのまま、数年間過ごすことになってしまう。
切り詰めた生活を送っていくよりは、就職してそれなりの暮らしのほうがずっといい。
早いところなんとかしなければならない問題だ。
もっとも、今抱えている問題の方がずっと深刻で、恐ろしく解決困難なのだが。

平日らしく、図書館の駐車場には軽自動車が二台駐まっているだけだった。
来館している人間はかなり少ないと見ていいだろう。理想的な状況だ。
華は、俺の隣で周囲を鋭い目つきで見回していた。
「駐車場、ここだけですか? 近くに車が駐められそうな場所なんかありましたか?」
「ここだけだ。他には……駐めようとすればどこでも駐められる」
人が居ないわけではないが、かといって昼に散歩しても誰ともすれ違わない程度の大きさの町ではそんなものだ。
事実、ここに来るまですれ違ったのは車だけだった。
「何でそんなこと聞くんだ?」
「いえ。あの女が来るんなら、車のはずだと思ったので」
「あの女……って、かなこさんか」
「前、一度だけ大学に高級車でやってきたことがあったんですよ。運転手付きでした」
「ああ。あの車ね」
覚えている。やけに丈が長くて、かすり傷一つ付いていなさそうな程に滑らかなボディをした黒塗りの高級車が
この駐車場に駐まっていた。その時はともかく、今はあれが菊川家のものだとわかる。
あの車を見た後で俺は首を絞められて意識を失い、かなこさんとの会食の場へ連れて行かれたのだから。
「あれだけでかい車なら、ここに歩いてくるまで嫌でも目に入ってくるだろ。
それに、このタイミングでかなこさんが図書館に来るはずがない」
無事なのかどうかも怪しいし。大して筋トレもしていない俺が、どうしてそうすることができたか不明だが、
腹に拳を打ち込んで窓の外に飛ばしてしまった。無事かどうかは確認していない。
無事だったとしても、俺が図書館にやってきたタイミングで鉢合わせするとも考えにくい。
俺の身の回りでは考えられないことばかり起こっているが、今だけはそう信じたい。
「来ていたとしても、どうだっていいことですし、ね。私が付いているからには安心ですよ、おにいさん」
「ありがとよ」
四つ歳の離れた従妹に勇ましく頼り甲斐のある台詞を言われたが、俺は平静を装った。
図書館では騒がないでほしいが、いざという事態になったら華は約束なんか忘れてしまうだろうから、
注意することもしなかった。


630 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2008/01/07(月) 03:12:37 ID:Dwn9Nfj7
自動になっていないドアをくぐり抜け、館内へ足を踏み入れる。土足でもオーケーなのはありがたい。
中にいる人間はカウンターの向こうで黙々と仕事を進めている職員だけで、
フロアに用意されている席に座って本を読む人間は誰一人としていなかった。
「あの女の姿も見当たりませんね。よっぽどおにいさんのボディブローが効いたみたいです」
「単に来てなかっただけだろ」
あと、わざと殴ったみたいな言い方をするな。殴ったのは事実だけど、殴るつもりはなかったんだ。
「そうと分かってもゆっくりしてる場合じゃありません。早いところ用事を済ませてきてください」
「お前は? 一緒に行かないのか?」
「私は誰か来ないか警戒しておきます。もしかしたら今から、ってことも考えられますしね」
「わかった。じゃ、行ってくる」
「はい」

華と別れ、カウンターの前へ。向こう側では女性職員がコンピューターに入力作業を行っていた。
遠慮するような静けさのタイプ音が止んでから、職員は立ち上がった。
「返却ですか?」
「いえ、ちょっと聞きたいことがあって。今、いいですかね」
一応確認をとっておく。
職員は一度パソコンの方へ目をやって、また俺へと戻した。
「構いませんよ。答えられることなら」
期待通りの返事をもらえた。左手に持っていた二冊の本をカウンターの上に置く。
「この間、だいたい二週間ぐらい前ですけど、このタイトルが無い本のことを聞きに来た女性がいませんでした?」
「んー……ああ! あの長い黒髪の美人さんですか。覚えてますよ。
いきなりやってきて、これこれこういう本がありませんか、って聞いてきたんです。
その本は以前さらっと読んでいたので内容は知ってましたから。ありますよ、って答えました」
「それから、この本を借りるんじゃなくて」
「ええ。わたくしにこれをくださいませんか、って言ってきました。
くださいと言われても、一応町のものだからあげられないですよ、こっちとしては。
で、何度か問答しているうちに館の責任者が出てきたんで、今度はそっちに聞きに行ったんです。
断るんだろうなと思って見てたら、二三会話するだけで責任者が頷いて、その女の人は本を持って出ていきました」
「どんな話をしていたかは?」
「名前を聞かれて、それに女の人が答えて。で……いきなり態度が変わったんですよね。
女の人じゃなくてこっちの人間が。急にぺこぺこ頭を下げて、なんでもお申し付けください、とか言って。
それから、この本をください、はいどうぞ持っていってください、って感じでした」
「へえ……」
さすが有力者の娘。図書館の館長クラスにまで名前まで知れ渡っているのか。
「その後は本を持って帰っていきました。私が知っているのはそれぐらいです」
で、かなこさんは外に出て行って、帰ろうとしている俺を発見して捕まえたわけだ。
こっち側の本――『無題』をかなこさんが所有することになったのはそこからか。


631 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2008/01/07(月) 03:14:01 ID:Dwn9Nfj7
「他には何か?」
「その本なんですけど、昔からここの図書館にあったものなんですか?」
「んー……どうでしょうね。ずっと昔からここに勤めていたわけじゃないですし。
引き渡した後、関係する書類を見たら館で所有していた期間は不明、って書いてありましたね。
というか、書類そのものが曖昧で。タイトルの無い本なんか普通こんな場所では扱いませんよ」
「誰が寄贈したかとかも、やっぱり?」
「わからないですね。あ、でも…………」
ここで、女性職員が背後を振り返り、次いでフロア全体を見回すように視線を泳がせた。
「どうかしました?」
「……上の人に見つかったらちょっとまずいんです。内緒にしてくださいね?」
そう言って、身を乗り出してきた。俺も少しカウンターへ体を寄せ、耳打ちを聞く態勢を取る。
自然に、俺の視線は横に向くことになる。視線の先には、入り口付近に立つ華の姿があった。
そして、不機嫌な効果音を出しそうな顔に貼り付いている瞳と正面からぶつかった。
なぜ、華の視線が俺に集中しているのだろう。
警戒しているのはかなこさんに対してではなく、俺の動きに対してなのだろうか。
女性職員とはしょっちゅうこの図書館に来ているせいで顔見知りではあったが、お互い名前も知らない。
俺自身、この人と何らかの関わり合いを持とうとは思っていない。華に注意されるようなことはしていないのだ。

入り口から目を逸らす。見えない重圧がかかっているような気がしたが、気のせいにしておく。
「なんか最近、館の責任者の羽振りがいいんですよね。いっつも上機嫌で。
車も買い換えてました。役場に行くとか言って今日も出ていったんですけど、たぶん昨日みたいに
夕方になった頃に帰ってくるはずですよ」
「そりゃ……また、どうしてですか?」
「予想ですけど、さっき話していた女性が来て数日が過ぎた頃からそんなふうなんで、
女の人からお金をもらったんじゃないかな、って。本を渡したお礼みたいな感じで。
きっとその本は特別なもので、あの女性はすごい大金持ちだったりして、とか!」
耳のすぐ傍から弾んだ声音で話しかけられる。顔は見えないが、笑っているような気がした。
入り口の方から床を踏みならすような音が聞こえてきた。が、無視する。
今はそれなりに大事な話をしている最中なのだ。

「あの時の美人さん、知り合いですか?」
女性職員は耳打ちを止め、いつもの貸し出し業務をするときの場所に戻ってそう言った。
「知り合いというか……なんというか。まあ、知り合ってはいるんですけどね」
かなこさんとの関係は、どう言い表したらいいのかわからない。
前世からの恋人だったということはない。それだけは認めたくない。
俺の方は二度と会いたくないと思っているが、かなこさんはその真逆で俺に会いたがっているはず。
金持ちでそのうえ美人の女性から言い寄られている状況だが、生憎俺に受け入れる気はない。
俺はもっと平穏な、金はそこまで持っていなくても生活に困ることのない生き方をできればいい。
欲が深すぎるとろくでもないことになる、ほどほどが一番だ、というのが今まで学んだことだ。
「そうですか。じゃあ、もし今度会うことがあったら私にもちょっとだけ、ほんのちょっとだけでいいから、
本のお礼をください、って言っておいてください」
だが、演技でもこの女性みたいに欲深い方が大胆になれていいのかも。
こんなだから俺は社会的には無職に見える地位にいても平気なんだろうな。


632 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2008/01/07(月) 03:15:45 ID:Dwn9Nfj7
職員に礼を言い、カウンターを離れる。
入り口に向かうと、腕を組んで備え付けの木製の椅子に座っている華がいた。
左足のつま先がいらいらを物語るかのように床を叩いている。そのたびに、破裂音に似た小さな音が鳴る。
「おにいさん、図書館は静かにしなきゃ駄目ですよ。
誰もいないからって、仲良くぺちゃくちゃ喋るのはいただけませんね」
「うるさいのはお前だって同じだろうが。バンバン床を鳴らすんじゃない」
「誰のせいだと思っているんですか」
俺のせいだとお前は思っているんだろう。だがそれは誤解だ。曲解だ。
女性に話を聞きに行っただけでそこまで怒るお前がおかしい。
「もういいです。何にも無かったみたいだし、許してあげます。……それで、なにかいい話を聞けましたか?」
「あんまり。確信が深くなったのは、この本を作ったのも、図書館に預けたのもかなこさんじゃないってことぐらいか」
「ふうん……そんなところだろうとは思ってましたけど」
「どうしたもんかな、ここから」
これ以上話を聞きに行っても大した話は聞けそうにない。
図書館の責任者が戻ってくるのを待ってから話を聞くか?
「帰りましょうおにいさん、実家に」
そうだな。一旦実家に帰って調べ…………待て。

「いきなり何を言い出すんだ。まだ何にもわかってないんだぞ」
「そろそろ気が済んだかな、と思って提案してみたんですけど。まだ、納得できませんか?」
「ちっとも、だ」
華が肩をすくめ、こっちに聞こえる大きさのため息をわざとらしく吐いた。
さらに、指で自分のこめかみを押さえる。
「そんなこと調べたって何にもなりませんよ。今こうしている時間も惜しいぐらいです。
早くおじさんおばさんの居る家に帰って、就職活動に取り組んだ方がよっぽど今後のためになりますよ」
「だから、なんで香織とかなこさんを殴りたくなるのか、って理由がわかって治るまで実家には帰れないだろ」
「その症状が治るという保証はあるんですか?」
「そりゃ…………」
反論するのをつい躊躇った。
治るのか、治らないのか。動くにあたって確認するべきだった要素。
今の今まで、俺は治すことだけを考えていた。だが、治せるという保証はどこにもない。
症状のかかり方からして普通じゃなかった。
今後本に操られないようにする方法なんて、どの医者でもわからないだろう。
こっちの頭を疑われるのがオチだ。
だから、自分の力でなんとかしなければならない。
なにより、俺自身がこんな状態でいるのは嫌だ。これから香織に会えなくなるなんて御免だ。
「治ると信じて動くしかないだろ。治せないという保証はどこにもない」
「その逆の、治せる保証もないですよね」
「確かにそうだが、治せなきゃ俺が困る。お前は困らないんだろうが」
即、華が無言で頷く。本人以外の反応なんてこんなものだ。
もっとも、華の場合はこいつなりの特別な理由があるのだろうが。


633 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2008/01/07(月) 03:17:39 ID:Dwn9Nfj7
「とにかく、俺はまだ調べる。お前、手伝う気がないんなら帰っていいぞ」
「手伝ってるつもりはありません。私はただ、おにいさんの身に危険が及ばないように動いているだけです。
あと、実家に帰るよう促すことも、こうしている目的のひとつです」
なんて不要な存在なんだ。邪魔者兼ボディガードなんて要らん。
「俺の気が変わることはない。そうしているだけ無駄だぞ。今からでも大学に行ってきたらどうだ」
「いえ、大学に通う目的はもう達成しています。
私があの大学を選んだのは、所在地がおにいさんが住んでいる町にあるから、それだけです。
おにいさんの近くに居を構えた今となっては、これ以上通う意味なんかありませんね」
「……あっそう」
そんな調子でいいのか、大学生。
「お前、将来の就きたい仕事とかないのかよ。大学は最後まで通った方がいいぞ。
高卒の俺が言っても説得力ないだろうけど」
「理想はおにいさんの隣に永久就職することです」
……おい。恥ずかしげもなく、しかもこんなときにそういうことを言うな。反応に困る。
「強引な手段をとることも前は考えていましたけど、今となってはその必要もなくなりました。
だって、このままいけばおにいさんは香織さんのところにも菊川かなこのところにも行けないでしょう」
「……俺がこうなったことを喜んでいるのか」
「いいえ。そこまでは考えてないです。おにいさんが危険にさらされることはまったく望んでいません。
でもまあ、結果的におにいさんはまだ無事ですし。それにこのまま行けば…………」
突然そこで言葉を切って、華は固まった。
目は俺ではなく、俺の右斜め後ろ辺りに向けられている。
華が立ち上がる。表情は険しく、怒っていることを露骨に表現している。
その視線を追い、俺も振り返った。

まず、総毛立った。
まさかこんな、俺が図書館に来たタイミングでこの人までが来ることはないと、安心していた。
そう、安心しきっていたのだ。
だから、振り返ったとき、最初に目にした人物がかなこさんだとわかったとき、いきなり袋小路に追い詰められたような気分になった。
「ようやく、見つけましたわ。雄志様」
最初に、かなこさんはそう切り出した。
「見つけた、って」
「ずっと探していたのですよ。気がついたら屋敷から居なくなっていて、それに……そこの女も居なくなっておりました。
これはもう、雄志様が拐かされたのだとすぐに察しましたわ。そして、こうして発見することが叶いました。
……現大園華」
俺の後ろにいる人物に狙いを定め、言う。
「よくもやってくれましたわね。本当に邪魔な存在ですわ、あなたは。いつもいつも邪魔をして」
「それはこっちの台詞です。いつまでもいつまでも、妄想を垂れ流しておにいさんに近づいているくせに」
「妄想、とは?」
「あなたが前世でどこぞのお姫様だった、とかいう虚言ですよ。勝手に思いこむのは構わないんですけど、
それにおにいさんを巻き込むのはやめてもらえ――いえ、やめなさい」
「……ふふっ」
かなこさんが目を細め、口元に手を当てて、上品に笑う。
極上の冗談を言われたときのように、肩まで震わせている。
嘲るようなその笑みは、止めなければいつまでも続きそうだった。


634 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2008/01/07(月) 03:19:36 ID:Dwn9Nfj7
華の大声が後ろから飛んでくる。
「何がおかしい!」
背にしているから表情はわからないが、怒っているということだけはわかった。
振り向いて確認する気はない。かなこさんを前にして、その姿を視界から外してしまうのは躊躇われた。
「いえ。予想が大体当たってしまったもので、ついおかしくなってしまいました。失礼を。
やはり、あなたもそう言うのですね。天野の娘も同じ事を言っておりましたわ。
前世などあるはずがない、の一点張りでした」
「あなた以外の人間は皆同じ意見ですよ。現に、おにいさんだって信じていませんしね」
どちらかと言えばな。もしかしたら違うかも、程度には疑いを持っているが。
「そうでございましょうね。雄志様は昔から、正直になれないお方でした」
「ふん……おにいさんの一番古い過去を知っているのは私だけですよ」
「わたくしが言っているのは、その時のことではありませんわ。
雄志様がわたくしの心と体の両方を守ってくださっていたときのことを言っているのです」
小さな舌打ちの音が背後から聞こえた。
「あなたに話は通じませんね。いつも平行線です」
「前提が違うのでしょう。前世のことを信じているわたくしと、信じない者とで話が通じるはずがありませんもの」
「ですね。はっきり言って、いくら話したって無意味ですね」
「ええ、無意味です。もともと、わたくしはあなたたちのような人間との会話に意味など見いだしてはおりません。
雄志様と話をするときだけ、会話が成り立っていれば構いませんでした」
「……とんだお嬢様もいたもんですね」

華のつぶやきに返事せず、かなこさんは俺に向き直った。
その穏やかな笑みには狂気が隠されている、と心に言い聞かせなければ、こちらまで流されて頬を弛めてしまいそうだ。
「申し訳ありませんでした」
……え。
謝られるようなことをされた覚えもないのに、頭を下げられた?
心構えが弛緩した。置いてきぼりをくらったような気分だ。
「わたくしは、今まで誤解しておりました」
そうでしょうね、とつい言いたくなったが、口には出さない。かなこさんが言葉を繋ぐまで待つ。
「雄志様が望んでおられることを、わたくしは理解していないどころか、今まであのようなことをしてしまって。
本当に、過去のわたくしに折檻してやりたいところですわ」
理解しがたいことを言われ、思考が止まった。俺が望んでいることを、かなこさんは知っている?
望みなんか、俺には特にない。全くないわけではないが、どれも小さな事柄ばかりだ。
日常で、いいニュースが流れて欲しいとか、夕方スーパーに行ったとき安売りされている総菜が残っていたらいいなとか。
まさかそんなことをかなこさんが察するはずもない。話題を持ちかけられたことすらないんだ。
なのに、俺が望んでいることがかなこさんにはわかるっていうのか?


635 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2008/01/07(月) 03:24:00 ID:Dwn9Nfj7
「凡なる人間と同じように、平穏に、ただ天寿を全うするまで過ごすことが雄志様の望むことである、と誤解していたのです。
だからわたくしもそれに合わせ、雄志様の伴侶となり歩む道を進んでいこうと考えておりました」
それこそが俺の望む人生なんですけど。
好きな女性と結婚して家庭を持ち、平凡に一生を暮らせたら最高じゃないか。
先行きの不透明な今の状態、そして現代社会では、そんな人生すら危ういというのに。
「ですが、それは違ったのですね。わたくしの見立て通り、雄志様は愛に生きるお方でした」
愛って。俺のどこをどう見たらそういう見解に至るんだろう。それこそ誤解だ。
これは駄目だ。なにか、違う方向にかなこさんは物事を考えている。止めなければ。
「あの、俺は普通の生き方が好きなんですよ。特に夢がなくても、絶望しないで、小さな幸せを感じられるような生き方がいいんです」
「正直ではありませんね。わたくしはそんなところも好きですわ」
不意に、満面の笑みを浮かべられた。こんな台詞を言われたら胸が熱くなって、言葉が詰まるのは必然だ。
「ですが、もう言葉は要りません。雄志様のお言葉と、行動に矛盾があることに気づきました。
この時代でのわたくしの父、菊川桂造の誕生日パーティーの翌日、雄志様はわたくしを拒絶しました」
「当たり前じゃないですか」
と、華が割り込んできた。
「ベッドに体を固定するような女を受け入れるような男じゃないんですよ、おにいさんは」
「黙りなさい。あなたの出る幕は既にありません。
……それで、なぜ拒絶されたのか、わたくしには理解できませんでした。雄志様はわたくしを求めているはず。
体を重ねれば、雄志様は満足してくださると、そう考えていたのです。浅はかな考えでしたわ」
確かにあの行動は浅はかではあった。その後に首を絞められたこともそう。
「その上、雄志様のお命まで奪おうとしました。あれが、あれこそが、最大の過ちでした。
雄志様は、わたくしに命を奪われることを望んでなどおりませんものね」
「そりゃあ……だいたいの人間はそうですよ」
口を開いてわかった。喉の奥が乾いている。なにか飲み物が欲しかった。
だが、状況は安らぐ暇など与えていない。緩やかな緊張感が俺を縛り続けている。
かなこさんは目を閉じて可愛らしい笑みを浮かべた。
次の瞬間に、目を開けて俺に告げる。俺の望みがいったいなんであるかということを。

「命を奪うべきなのはわたくしではなく、雄志様の方ですものね。
以前、この場所で初めて――いえ、久しぶりに再会したときにわたくしが言った、本のお話に出てくる姫が真に願っていたこと。
それに応えるように、雄志様も願っておられたのでございましょう?」
「……あなた、何を……?」
口を開いたのは華だった。
俺は何も言わない。喉が渇いていたから。
「今朝、雄志様の拳を受けたときに悟りました。わたくしを殺したいと、望んでおられることを。
命を奪い、最期を看取り、存在の全てをその心に刻みたい。
ああ、迂闊でしたわ、わたくしは。愛するお方に殺されることこそが望みだったことを忘れ、幸せを押しつけようとして。
殺されることに怯えていたのかもしれません。許してくださいまし。
……さあ、雄志様。あとは望むままになさいませ」
あと、それよりもなによりも、かなこさんの言っていることが、

「わたくしを、どうぞお好きなように、存分に、望むままに殺し、心に刻み、そして――愛してくださいませ」

最大の誤解だったから。


636 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/07(月) 03:28:31 ID:Dwn9Nfj7
23話はここで終わりです。続きは、当たり前ですが24話になります。
ここからは、選択肢でAの『図書館に行って本を作り直した人物を明らかにすることだ。』を選んだ場合の、かなこルートです。

伝え忘れていましたが、かなこルート完結の後、残りの華ルートも香織ルートも投下します。

637 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/07(月) 04:09:14 ID:rEp8F165
>>636
テラGJ!
華もかなこさんもどちらもカワユスw

638 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/07(月) 12:35:22 ID:3tLy+esm
かなこルートなのに華に萌えてしまった俺ガイル。
でもこれで全ての謎が解かれる……のか?

639 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/07(月) 13:06:02 ID:rvmp/0bD
まとめの「ことのはぐるま」、俺のケータイからだとエラーが出る…
寝る前にベッドで読みたいのに…ちきしょー

640 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/07(月) 13:54:25 ID:/M+IVLFZ
>>639
ファイルシークで見ろよ

641 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/07(月) 14:28:12 ID:rvmp/0bD
>>640
あんた最高

642 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/07(月) 16:30:39 ID:dZn94GdP
>>640に漢をみた

643 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/07(月) 17:35:37 ID:IXqbQoMX
>>640
前から好きでした

644 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/07(月) 17:50:16 ID:v/AqTOSs
>>580
気に病む透歌さんを今日読んで描いてしまった。
http://a.pic.to/r4hna
今は後悔してる。

645 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/07(月) 17:53:00 ID:v/AqTOSs
流れをぶったぎって申し訳ないorz

646 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/07(月) 18:00:11 ID:U+JOTtaU
>>645
とりあえずPC許可を
話はそれからだ

647 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/07(月) 18:00:43 ID:rEp8F165
>>645
とてもGJだから許してあげよう。

648 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/07(月) 18:07:51 ID:/M+IVLFZ
>>645
グッジョブ
字が怖くて良いね

649 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/07(月) 18:08:01 ID:v/AqTOSs
許可しました おっちょこちょいですいませんorz

650 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/07(月) 19:06:13 ID:IXqbQoMX
>>649
ずっと前から好きでした

しかし、後ろから抱き付いて愛を囁いた後、半年くらい放置したくなるくらいのオーラが出てますなァ

651 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/07(月) 20:34:29 ID:OZzSQoe1
>>639
PCサイトビューアー使えよ。

652 名前:580[sage] 投稿日:2008/01/07(月) 21:32:07 ID:ILHRPBHr
>>644
ちょ、おま……今までいくらかSS書いてきたがイラストとかつけてもらったの初めてでしかもこんな可愛いとかどういうこと(ry
リアルで目汁出そうなんですけどw マジでありがとうございました!
やっぱ、目隠れっ娘の前髪の間からぼんやりした(あるいは眠たげな)瞳が垣間見える瞬間が一番可愛いな!

653 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/07(月) 22:33:34 ID:dZn94GdP
>>652
うらやましいなぁちくしょう……

そりゃそうとCoccoってアーティストの曲なんだがな
なんつーか女の負の情念みたいなのをよく歌うアーティストなのよ
なんかヤンデレ風味のある詞も多いし曲も良いからかなりおすすめ

「首。」って曲があるんだがスクデイ知ってる人にはおすすめ
「けもの道」と「白い狂気」とかヤンデレ風味

654 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/08(火) 02:31:03 ID:2nPz589u
あれ、俺いつの間に書き込みしたんだろ

でも個人的には、「My Dear Pig」が最強だと思う
ヤンデレというより気狂い女な気もするけど、その辺はエピソードを脳内補完で
あとは「あなたへの月」あたりもかなぁ

655 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/08(火) 21:29:44 ID:ncnc6mr4
みんなは、ヤンデレと聞くとどんなイメージをする?
スクールデイズみたいなniceboat展開とかカニバリズム?
それとも愛していたけど結局は結ばれなかった、みたいな悲しい恋?

ググると前者みたいなイメージを持ったサイトが結構ひっかかるけど、このスレの人はどうなのかな?

656 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/08(火) 22:00:10 ID:v+ZR/qAM
niceboatなあ。俺「こいつを殺せば自分がこの人の一番になれる」という感じの病み具合好きじゃない。
殺しは要素かもしれんけど正直決め手にはならないと思う。除外工作なら大いにアリだが。
自分の中では妄質的なまでの愛情かね。「この人を物にするためなら・・・」というのにゾクゾク来る。
意地汚さ、もしくははかなさがあれば良し。有る程度の理性が残ってるとなお良し。

657 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/08(火) 22:02:53 ID:EvRRD9+g
猟奇的とかサイコ的なヤンデレよりも、
淫らでエッロエロのヤンデレちゃんの方が好きなんじゃああああ

658 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2008/01/08(火) 22:06:45 ID:+ytqCXIi
・すごく好きだから不安で仕方ない
・主人公(男)が結構裏切る
・理性が負けて、ひどいことをしてしまう でも我に返るとすごく後悔する・落ち込む

こんなヤンデレが好き

659 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/08(火) 22:13:48 ID:CdSmibd5
某楓状態が一番好き

nice boatはあんまり好きじゃないな

660 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/08(火) 22:31:46 ID:MZQrxVya
エロス忘れてた。確かにエロスは大事だ。あ、上で殺しについて挙げたがちょっと補足。
殺してくれるならそれはそれで構わない。だがどうせ殺すなら自分だけ殺して欲しいな。
個人的には女が病み男が狂った状態での心中とか最高。

661 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/08(火) 22:35:47 ID:s89l7rAH
血はなくてもいいから、主人公が世界の全てという依存ぷりがあればそれで

662 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/08(火) 22:46:32 ID:4anah/+A
好みとか聞くなよ荒れるだろ

663 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/08(火) 22:46:59 ID:EqHZPm53
目が濁るのはデフォ?

664 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/08(火) 22:57:07 ID:f52d2UQm
依存してくるけど嫉妬しない奴いないの?
主人公の男の子が他の女犯してたら見張りとかしてくれる奴。
調教の助手とかな。
ただし、捨てられそうになると涙目ですがってくるのがいい。

665 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/08(火) 23:07:27 ID:y2y26D14
それ、そのまんまシィルじゃないか。

666 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/08(火) 23:07:56 ID:7TgDXzJG
最近、あからさまに病んでるキャラよりも
主人公からは少し優しすぎるけど普通かな、程度に見えて、実は見えないところで主人公のおパンテュくんかくんかしてた、みたいなキャラの方がいい気がしてきた。
物騒な女の子はねーちんとゆのっちだけで十分だよ……

667 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/08(火) 23:24:28 ID:x9nYl5Fs
レイプ目

668 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/08(火) 23:56:55 ID:7TgDXzJG
亀もいいとこだが
>>61-69
今日初めて読んだがかなり引き込まれた。
玩具販促漫画家って視点が素晴らしい。
おもちゃという巣に引っかかった無垢な子供を、原作者権限でいいようにするってのが悶絶ものだ。手のひらの上で操られてた、ってシチュが好きなもので……。
こういうノリのをまた読んでみたい

669 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/09(水) 03:07:15 ID:lbQyfeL2
「ちょろいっ!」と操られてるだけの一般人の頭を鉈で一刀両断する娘は物騒と申すか

670 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/09(水) 03:36:51 ID:9yygRAnR
物騒極まりないだろ

671 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/09(水) 07:23:03 ID:ESMHJRRx
物騒だろwwww

672 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/09(水) 16:48:15 ID:AujfBuw/
ゆっきー…

673 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/09(水) 17:21:54 ID:CTOgR6cS
>>665主人公の絶対的な肯定者(善も悪も)キャラは居らんかね?
堕花雨とか桐生メイとかしか思い浮かばん。

674 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/09(水) 23:52:01 ID:g+OZG08r
電波的な彼女ってキチガイデレに見せかけたヤンデレだよな
雨も元から電波かと思えば小さい時のジュウ様の影響が原因だったり
美夜もあれ狂ってるけど、人を寄せつけないジュウ様の側に簡単に居続ける雨に焦ったからあんな行動に出たんだろうし
最後の本音っぽいセリフで、やっぱり純粋にジュウ様が好きなんだろうな。って分かるし


675 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/10(木) 01:06:51 ID:QXkFugVF
流れに乗っかるがオレは『電波的な彼女』みたいな感じ結構好きだな

>>674
わかる。美夜が純粋にジュウ様のコト好きだってわかるから二回目以降読む時は何かスゴく悲しくて泣きたくなる。


676 名前:合わせ鏡 ◆GGVULrPJKw [sage] 投稿日:2008/01/10(木) 03:37:00 ID:uJlu1Z3v
Coccoは大好きだ…。

合わせ鏡、続きを投下します。
>>118が疑問に思うのはもっともなんですが…瑞希は前科者にはなっていないという
ことでお願いします。
専門家でないのでわからないのですが、ちょろっと耳にしたところによると、大した
事件でなくて、家族間のゴタゴタと見られたり、初犯だったりすると、警察
(検察)?の裁量で逮捕しなかったり、逮捕されても起訴されなかったりする
らしいと聞いたことがあるので。
被害届や告訴しないと、あまり警察も動きたくないとか。
ほんとかは知りませんが、そんな感じで。

677 名前:合わせ鏡 ◆GGVULrPJKw [sage] 投稿日:2008/01/10(木) 03:37:44 ID:uJlu1Z3v
お母さんは私にいつも言った。ヒトサマにメイワクをかけてはいけません。
お母さんは私にいつも言った。ヒトサマに恥ずかしいことをしてはいけません。
父親がいなくて、祖母に負けて高崎家から追い出された母は、せめて世間に恥ずかしくない
ようにと、私にいつもそう言った。
多分私のためではなく、世間体のため。
でも、考えてみれば、他人に認められるということは、私を守ることでもあった。
親が一人しかいないと言って、とやかく言う輩はどこにでもいるのだ。
私は、いつもいい子でいた。人様に迷惑をかけることもなく、人様に顔向けできないことを
することもない。そして、誰にも感心される優秀な子供。
他人の目にうつる自分こそが全て。その自分は愛される人間でなければならない、排除される
人間であってはならない。
自分の心など、感情などどうでもよいのだ。他人にとって私が何を考えているかなど、何の意味
も持たないのだから。
だから、弟に恋する変態であってはならない。それは、世間に対し、顔向けのできない恥ずか
しいことだから。
でも、瑞希は、そんな私の迷いを一足飛びに飛び越えてきた。
それが例え、無知に基づく誤謬で、完全に間違った行動であっても……羨ましかった。
それは、私がしたいことで、できないことだったから。

そう、鏡の向こうの自分は、自分と同じ顔をして、自分と違う行動をする。
鏡の右は私の左。鏡の左は私の右。私達は鏡像でしかない。同じように見えても、私と瑞希は
真逆だ。
育ってきた環境も、望むものも、見ているものも、真逆なのだ…。


678 名前:合わせ鏡 ◆GGVULrPJKw [sage] 投稿日:2008/01/10(木) 03:38:19 ID:uJlu1Z3v
自分一人で決めることはできないと、こーたは言った。
話し合って了解をとりたい、両親も、何も言わずにこーたが決めるより、相談して欲しい
と望むだろう、と。
伯父と伯母は、生さぬ仲とはいえ、こーたにとってはかけがえのない、本当の親なのだ。
こーたが望むなら、私が何を言えるだろう。
それに、瑞希がこーたの姉であると、瑞希に知らせるのは、私も望んだことだったのだ。
こーたは、謝ってくれた。水樹が忠告してくれた時に、それを聞いていれば、水樹をあんな
目に合わせることはなかったのに、と。
そんなことを気に病む必要なんてないのに。私に心配される価値なんて、ないのに。


こーたを高崎家の婿にという申し出自体は、もちろん、断るとしても、きっと瑞希は
いろいろな手をこれからもうってくるだろう。
前回の事件で、私もこーたも、瑞希を告訴しなかった。警察も、私と瑞希が姉妹であるという
ことから、穏便な処置をとった。
それは、実の姉を、妹を、犯罪者にしたくないという私達の思いと、高崎家の無言の圧力の
結果だった。
でも、次はあってはならない。それは、私だけの思いではなく、伯父と伯母も同じようだった。
話を聞いた二人は、土日を利用して、すぐに飛んできた。
こーたが本当は「高崎の父」の息子であると、高崎家自体に知らせることは、誰しも
反対だった。
でも、これ以上の彼女の空回りを防ぐためにも、瑞希にだけは伝えるべきではないか。
その思いもまた、誰しも同じだった。

伯父と伯母と瑞希は話し合いの場を持った。
真実を聞かされた瑞希は、想像を裏切り、非常に静かに、現実を受け入れたという。


「水樹、こーたのせいで、いろいろと迷惑をかけたわね」
「…そんな、私はなにもできなかったし、むしろこーたに迷惑をかけたと思う」
伯母さんの料理を久しぶりに堪能した後、私は皿洗いを手伝っていた。伯父さんとこーたは
居間でテレビを見ている。
「そんなこと気にすることないのよ」
伯母さんは、私を元気付けるように笑った。
無力な私。思い出すたびに、胸がちりちりして、黙ってうつむく。
「水樹は女の子だし、なにもなくて良かったわ。こーたのためにも、本当に良かった」
「こーたの、ため?」
「ええ」
伯母さんは意味ありげに笑った。
「こーたは本当に昔から水樹が好きだからね。自分が瑞希ちゃんに付きまとわれるのは
全然構わなかったくせに、水樹が危ない目にあったら、すぐに行動だもの。あのスカした
息子が取り乱す様、見せてあげたかったわ」
「…伯母さん」
いたずらっぽくとんでもないことを言い出す伯母さんの言葉に、私は思わず笑った。
伯母さんは、私が笑ってほっとしたのだろう。さらに軽い口調で言葉を続けた。
「なにしろ、こーたにとって、水樹は、初恋の人だったりするんだから」

679 名前:合わせ鏡 ◆GGVULrPJKw [sage] 投稿日:2008/01/10(木) 03:43:10 ID:uJlu1Z3v
以上です。

680 名前:合わせ鏡 ◆GGVULrPJKw [sage] 投稿日:2008/01/10(木) 03:48:54 ID:uJlu1Z3v
「え?」

私は何か聞き間違えたのだろうか。口を薄くあけたまま、呆けたようにかたまる私の心の裡など
伯母は何も気づかないだろう。私の驚きの意味合いを取り違えたまま、冗談のように言葉を紡ぐ。
「まだあの子が中学の時よ。水樹を絶対お嫁さんにするんだって言いだしてね。子供の言うこと
だし、初恋を無残に摘み取るのもかわいそうだったんだけど……」
まず心配したのは伯父だったのだと。二人で悩んだ上、こーたに私を姉だと告げたのだと、
伯母は言った。
「最初は信じようとしなかったし、あの子、すっかり落ち込んじゃってね。あの大食いの子が
夜ご飯も食べずに部屋にひきこもっちゃったの。でも、次の日の朝、勢い込んで下に降りて
きてね、笑顔で言ったのよ」

『お母さん、水樹がお姉さんってことは、俺と水樹は一生家族なんだね。ずっと、一緒に
いられるんだね!』

その、こーたの笑顔を、私はまざまざと思い描くことができる。
きっと、お母さんが死んだ時に一緒に暮らそうと言ってくれて私が頷いた時の、東京に来る前に
私と一緒に暮らせると知った時の、あの顔に違いないのだ。
私を女としてでなく、一人の家族として案じ、愛し、労わる笑顔。
私を傷つけ、奈落に落とし込む、絶望の笑顔。

681 名前:合わせ鏡 ◆GGVULrPJKw [sage] 投稿日:2008/01/10(木) 03:49:47 ID:uJlu1Z3v
それから後、伯母さんと何を話したかは覚えていない。
でも、きっと上手く切り抜けたのだろう。自分の感情を見せず、他人に不快を与えず、相手に
合わせて話し続けるのは……我を忘れても機能する、私の得意技なのだから。
部屋に入り、電気を消す。ベッドに座る。眠る用意は全て終えたが、床に臥す気にはなれな
かった。
心の中で、今まで感じたことのない暴風が、全てを吹き飛ばし、荒れ狂っている。


伯母さん。どうして、言ったのですか。

いや、どうしても何もない。私とこーたは姉弟で、決して結ばれることなどない。
年上の従姉に対する少年の憧れはそのまま消える可能性は高いけれども、まかり間違って
恋としての形をとってしまえば、どんなに足掻いても待つのは苦しみだけだ。
そんなことは自分が一番よくわかっている。
伯母さんの行動は正しい。私が伯母さんでもそうするだろう。そうしない理由などない。

けれども。

考えてはならないifを私の脳は紡ぎだそうとしている。
もし、こーたが真実を知らず、私への憧れが恋へと変わっていたならば、私はこーたに抱かれて
眠ることができたかもしれない。その先に待っているものがどんな悲劇であろうとも、他人に
顔向けできない禁忌であったとしても……例えこの身が破滅しても、私が本当に望んでいるものが
そこにはあったのではないか。
私は姉でなければならない。弟の幸せを姉として見守ることしか許されない。
それは、半分は私の望みである。誰よりも大切な男性に幸せになって欲しいというのは、誰もが
抱く美しい夢だ。
でも、もう半分は血反吐を吐くような思いで自分につき続ける嘘である。この汚らわしい嘘が
存在する限り、私は決して幸せになどなれない。でも、私がこの世界でまっとうな人間として
生き続けるためには、嘘をつき続けなければならない。


682 名前:合わせ鏡 ◆GGVULrPJKw [sage] 投稿日:2008/01/10(木) 03:50:36 ID:uJlu1Z3v
ああ、そして。
伯母さん、どうして、私にこの話をしたのですか。
選択の余地がないからこそ、何も疑わずに済んだのに。ありもしない希望の光を、夢見ずに
すんだのに。
この大地が針山だと知らなければ、ここが地獄だと知ることはなかっただろうに。

私はその瞬間、伯父を、伯母を、憎んでしまった。
ただ、自分の汚らわしい欲望のために、誰よりも私によくしてくれた恩人の正しい行動を厭って
しまった。
握り締めた右手に、殺意があった。

たとえ、その心を打ち消しても、魂に私の罪は刻まれてしまった。


683 名前:合わせ鏡 ◆GGVULrPJKw [sage] 投稿日:2008/01/10(木) 03:51:32 ID:uJlu1Z3v
マタイ5章

しかし、わたしは言っておく。
みだらな思いで他人の妻を見る者はだれでも、既に心の中でその女を犯したのである。
もし、右の目があなたをつまずかせるなら、えぐり出して捨ててしまいなさい。
体の一部がなくなっても、全身が地獄に投げ込まれない方がましである。
もし、右の手があなたをつまずかせるなら、切り取って捨ててしまいなさい。
体の一部がなくなっても、全身が地獄に落ちない方がましである。


聖書は言う。心の中で姦淫しても罪であると。
大学の授業で聖書を読んだときに、私はうちのめされた。この罪人は私だ。実の弟をみだらな思いで
見ている、許されない罪人。
私は別にキリスト教徒ではない。でも、それいらいこの言葉は私の心に食い込んで離れようとしない。
もう、すっかり覚えてしまった。

そして、今、私は誰よりも恩を受けた人たちを心の中で殺してしまった。
私はどこをえぐり出して捨ててしまえばよいのだろう。
目を?口を?手を?足を?いや、そんなことで私は許されはしない。
私はもう地獄に落ちている。この体の全て、細胞の全て、DNAの螺旋にいたるまでが罪人なのだ。



それからほどなくして、私はそれを、思い知ることになる。


684 名前:合わせ鏡 ◆GGVULrPJKw [sage] 投稿日:2008/01/10(木) 03:53:55 ID:uJlu1Z3v
途中で間違えてしまいました。

水樹の設定=理屈っぽいヤンデレ。常識寄り。
カタいお姉さんが崩れていくのを書きたいです。

685 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/10(木) 04:25:15 ID:1bEeow00
>>684
水樹( ´・ω・)カワイソス
でもこれはハラハラドキドキして来た、GJ!
こういう葛藤の描写ってイイね

686 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/10(木) 07:49:19 ID:1Il9G+q5
>>684
GJ
次回も楽しみにしています

687 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/10(木) 13:34:06 ID:Xx7H6fdy
水樹には幸せになってほしいと思いつつ、
この先どんな病みが来るのかとwktkしてしまう……

ところでもう474 KBなんだな、次スレ立ててきます

688 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/10(木) 13:42:14 ID:Xx7H6fdy
立てました

ヤンデレの小説を書こう!Part13
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1199940017/

689 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/10(木) 19:55:43 ID:ejogiSB2
>>688



690 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/10(木) 21:32:39 ID:0jW5/URE
「みーつけた」

俺はその声を聞いた。2日ぶりだろうか。なんでこんな早く。なんでなんでなんで。
かくれんぼは完敗だ。逃げ切れるどころの話ではなかった。
俺が逃げ始めて2日。彼女が探しはじめて1日だ。有り得ない。
自分の認識が甘かったことを悟ると同時に未来が真っ黒になっていくのが分かった。

「修くんの行くところぐらい分かるよぉ」

後ろの女はころころと笑っている。1日で、東京から長崎に逃げた人間が見つかるか?
そんなバカな。赤い糸ってやつか?もしその馬鹿馬鹿しい話が本当だったとしても
俺とこいつを結んでいるワケがない。そんな筈はない。そんなのは認めない。

「お父様も意地が悪いわ。こんな風に私を試すなんて」

後ろにいる女にストーカー行為を受けていた。ストーカーなんてもんじゃない。
つきまとい、毎日来るメール、電話、部屋にあった盗聴器とカメラ。それだけではない。
俺と接触した女――たかが挨拶でも2、3日は学校に来られないような制裁を与えていた。
ある子は殴られ、ある子はレイプされ、ある子は腕を折られ、ある子は監禁放置された。


そして彼女の父親に呼び出された。
白髪のまじった思ったより年齢を重ねた紳士だった。
娘とかくれんぼをしろ、と。
渡されたアタッシュケースには500万円が入っていた。

5日間逃げ切れば娘は君に二度と接触はさせない。
だが捕まった場合は諦めてくれ。

そう俯きがちの壮年の男性に言われ俺はアタッシュケースをひっつかんでその屋敷飛び出した。


そしてその2日後。
彼女の指が俺の肩にかかる。

「ねえ修くん、これからは幸せに暮らそうね」

実に嬉しそうだ。本当に嬉しそうだ。この上なく嬉しそうだ。
俺は後ろを振り向けないまま、しばらくこの絶望を味わうことにした。


691 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/10(木) 21:33:11 ID:0jW5/URE
勢いで書いた
後悔はしている

692 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/10(木) 21:56:13 ID:3eBdgjbD
さあ、修くんを捕まえるまでの彼女の行動過程を次スレに書き込む準備に戻るんだ

693 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/10(木) 23:07:20 ID:gXF8+qHR
新感覚かくれんぼ
そそられる

694 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/10(木) 23:14:00 ID:leGMajbU
現金のケースに盗聴器か?

695 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/10(木) 23:19:40 ID:0jW5/URE
>>694
惜しい
事前に誘拐して発信機が体内に

696 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/10(木) 23:33:35 ID:l+AJErr1
むしろ超ヤンデレに不可能などない
穏やかな病みを持ちながら修くんへの烈しい愛に目覚めた彼女にとって

697 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/10(木) 23:53:52 ID:3eBdgjbD
10:00 彼女(仮に空子様と名付ける)、行動を解禁される
10:30 昨日、旅立つ修君と偶然会い、公園で2、3言話していた少女を捕獲
11:30 5歳だったが気にせず都内某電車内の吊革に全裸で緊縛して放置
12:00 家でランチ。海鮮ドリアを作る
13:30 学校に到着
14:00 一昨日修君に相談を受けていた同級生に内容を尋問。しかし修君の行き先は聞かず
14:10 箒で性的暴行を加え、屋上に閉め出す
15:00 午後の間食。昨日焼いたクッキー
16:00 偏西風に乗ってくる修君の匂いの方向の変化から、修君の居場所を長崎と特定
18:00 成田空港
20:00 長崎到着
ここまでくれば濃厚な匂いが場所を知らせてくれる

ノリで書いた。反省はしていない

698 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/10(木) 23:57:26 ID:0jW5/URE
>>697
すげええええええ
幼女にも容赦ないとは。というかこーいう緻密なこと俺出来ない。

699 名前:16:00修くんを探す空子[sage] 投稿日:2008/01/11(金) 01:19:00 ID:bwshePJs
空子は髪をほどいてテラスに出た。緩くウェーブのかかった髪が風に靡く。
白い膝丈のスカートがフワッと舞い上がってまるで一枚絵のようだった。
目をつむって神経を研ぎ澄ませる。どんなに遠く離れていても必ず分かる。
修くんの明るい、こちらまで笑顔になるような気配。
風が運んでくれる筈だ。国内にいるなら分かる自信が空子にはあった。

修くんのことを思い浮かべながら風を探る。
捨てられた猫に憐れみの視線を向ける優しさ、底抜けに明るい笑顔、意外にしっかりとついた筋肉、そしてそこに弾ける水……

「いけないわ」

シャワーシーンを思い出して空子は1人顔を赤らめた。心なしか動悸がする。
乱れてしまっては探すことが出来ない。
深呼吸をして気持ちを落ち着けてからもう一度目をつむりなおし、気配を探すことに集中した。

一瞬風の中にはしる愛しい気配。

空子は見逃さなかった。

「見つけたわ、後藤。この方向は九州……長崎ね。すぐ飛行機を手配して頂戴」
「かしこまりました空子御嬢様」

忠実な執事に指示を飛ばすと空子は愛しい気配の方を向いて微笑んだ。

「待っててね、修くん」


――――――――――――――――――

反省はしていない

700 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/11(金) 08:05:20 ID:elJgP89e
いいね~

701 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/11(金) 11:30:38 ID:vIdlfV5X
>>697-699
空子様スゴ過ぎだwwww

702 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/11(金) 21:09:16 ID:nfUVOaeB
ドラゴンボールを思い出した
続きキボン

703 名前:埋めネタ[sage] 投稿日:2008/01/11(金) 21:37:05 ID:oxt0kF95
彼は日々、ブログに日記を書きつづることを習慣にしていた。
何が楽しいのか、と問われるとなんとも答えがたい。
それでも、彼は自分の日記をウェブに公開することが楽しかった。

ブログを書き始めてから数日が経った頃、彼は日記を入力する際に変換ミスをよくすることに気づいた。
そして、パソコンに最初からインストールされている日本語入力ソフトではなく、市販の入力ソフトを
使えば日記を書くのが楽になるのではないか、と思いついた。
思い立ったが吉日という格言にならい、彼は市販の日本語入力ソフトを購入した。
財布の中身がすっと軽くなる錯覚がするほどの金額ではあったが、彼は満足だった。

そのような感じでブログにこり始めた彼は、次第に日記を書かなくなった。
日記ではなく、自分の妄想をブログに載せ始めたのだ。
いわゆる、SSというものだ。
既存の商業作品の二次創作ではなく、自分の頭の中で一から構築した話だ。
SSを書き始めてみると、実は日記よりも楽しいことに気づいた。
日記は、書くに値するネタがなければ書かない、ということを彼は決めていた。
例えば、朝起きて、学校に出かけて、帰ってきて眠る、という一日では日記を書けない。

しかし、SSであれば別だ。
頭の中にふっと思いついた話を書けば、毎日ブログを更新することができた。
SSの内容は、一話完結の短編作品。いや、短編と呼ぶことすらふさわしくない、掌編だった。
一編書くにあたって浪費する時間は三十分から一時間程度。
初日は一時間で二十行程度しか書くことはできなかった。だから、二時間かけてようやく完成させた。
日を重ねていくうちにSSを書くコツをつかみ始めた彼は、早ければ三十分で書き上げられるようになった。
そのことを自覚した時は、友人に自慢したくなった。
しかし、彼がそうすることはなかった。
自分の書いた文章なんて知り合いには見せたくない、見せられない、という思いがあったのだ。

話は離れるが、彼には姉がいた。
一つ年の離れた姉で、自分と同じ大学に通っている。
姉であるが、初めて彼と彼の姉を見る人々は、彼女の方が年下だと勘違いした。
それもそのはず、彼の姉の身長は150cmを下回っていたのだ。
その上、容姿は中学生のように幼かった。
髪の毛は黒く艶々で、鼻は小振りな大きさで、目はぱっちりと開いていた。
加えて、姉の声は小学生かと聞き間違うほどにキーが高く、舌足らずだった。
彼と姉が並んで歩いていると、兄妹というより親子が一緒にいるようだった。
彼ら二人を見る者は、仲のいい親子が並んで歩いている、と微笑ましく思った。
それは、彼の容姿が姉とは対照的に大人びていることも一つの要因だっただろう。
もっとも、当事者である彼と姉は特に気にもしなかった。
彼にとって姉は姉でしかなく、姉にとっても彼は弟でしかなかった。
だが、姉の方には少しだけ問題があった。
見た目は幼いとはいえ、実年齢は二十歳である。とっくに弟離れをしている年齢だ。
なのに、姉は弟にべったりくっついて離れなかった。
まるで、肉体が彼女の精神までも幼くしてしまったように、姉の行動は無邪気だった。
例えば、毎日一緒にお風呂に入ることを弟に要求したり、夜起きた時は一緒にトイレへ行ってくれと頼んできたり。
まるで妹であるかのような甘えっぷり、頼りっぷりだった。
彼はというと、そんな姉を微笑ましく思っているだけだった。
これから先、自分が就職してからも姉がこんな調子では困る、もっとしっかりしてほしい、
と思ってはいたが、それもまだまだ先のことであると気楽に考えていた。

704 名前:埋めネタ[sage] 投稿日:2008/01/11(金) 21:41:04 ID:oxt0kF95
話を戻して、彼が管理しているブログについて語ろう。
彼はSSを書いていたが、次第にネタに詰まるようになってきた。
書き始めて三ヶ月以上過ぎれば、さすがに彼の妄想も底をつき始める。
彼の書いている話は、ちょっと心が温まるような小話が多かった。
だが、そればかり書いていては上手くいかないようになってきた。
日によってはブログを更新できないこともあった。
いくらパソコンの前に居ても、今まで書いてきた話ばかりが浮かんできて、一向にキーボードを打てないのだ。
そんな日は諦めて、話の構成を考えながら布団の中に入る。悔しい思いをしながら。

今回の話は、そんな人並みの悩みを抱える若者が体験した奇妙な出来事だ。


ブログを更新できなかった日の翌日、彼が朝食をとるためリビングへ向かうと、香しい匂いが嗅覚をついた。
テーブルの上には、いつもの朝食よりバリエーションに富んだ料理たちが並んでいた。
白米、味噌汁、卵焼き、焼き魚、漬け物、それとお茶の入った急須が置かれている。
彼の家では姉が料理を作っている。おそらく、今日も姉が作ったはずだ。
だが、いつもならもっと軽めの朝食がテーブルの上にあるはず。
今日は何かの記念日というわけではない。昨日何かいいことがあったわけでもない。
ではなぜ? と思い、彼はキッチンに立つ小さな姉に問うた。

「おはよ! え、なんで今日の朝食が豪華なのかって?
それはね、弟君がなんだか元気なさげに起きてくるんじゃないかな、と思ったからよ」

彼は特に元気がないわけではない。朝の生理現象も体にあらわれていた。
自分が元気だと言うことを伝えると、姉は少し首を傾げた。

「ありゃ、そうなの? んー……ま、私の勘も外れることだってあるってことで。
さ、ご飯食べよ。今日は腕によりをかけて作ったんだから」

姉に背中を押されて椅子に座る。姉は彼の左隣の椅子に腰掛ける。
椅子のサイズは同じだが、二人の間に身長差があるせいで、彼の方が頭一つ飛び抜けて高い。
それでも、姉は彼に向けて箸を差し出して、食べさせようとする。
彼はいつもやめてくれ、と言っているのだが、姉はどうしても聞かない。

「弟君は、私が面倒を見るの。それがお姉さんのつとめなんだから。
その見返りに、お姉さんをハグしてくれればいいよ。こう、ぎゅー……って」

手本を見せるように、自分の腕で体を抱きながら実演する。
姉の言葉を耳に入れながらも、彼は朝食をつつく手を休めない。
姉にそんなことをするような年齢ではない。それに、彼はシスコンでもない。
こんな幼く見える姉に抱きついている様を人に見られたら、彼の評判が下がる。
ただでさえ、友人の間では彼と姉の仲を疑われているというのに、これ以上悪化させるわけにはいかないのだ。
彼が味噌汁を飲む。すると姉が彼の脇腹を突いた。脇が敏感な彼は激しくむせる。

「そうやって無視するのはお姉ちゃんどうかと思うな。自分で自分が冷たい人間だと思わない?
最近は手を繋いでくれないし……私が高校生のころまでは繋いでくれたのに……」

姉の言っているとおり、姉が高校を卒業するまで、彼は姉と手を繋いで登下校していた。
しかしそれは、最大限譲歩した結果だ。
この姉と手を繋いで歩いていても、すでに彼と姉の存在は生徒に知れ渡っているので見られても構わなかった。
高校生活こそ、そうやっていられたが、大学に通うようになってからはそうはいかない。
大学という場所はオープンな場所なので、いろんな人間が出入りする。
そんな場所で、身長差が30cm以上はあろうかという彼と姉が手を繋いで歩いていたら、どんな目で見られるのか。
さしずめ、大学に妹を連れて行って案内している最中、というところだろう。
それならまだいい。通学途中で警官に職務質問される可能性も無いとは言えない。
身分証明書を持っていなかった時、果たして口頭で説明して自分達が姉弟であるということを信じてもらえるのか、
彼には不安でならないのだ。

705 名前:埋めネタ[sage] 投稿日:2008/01/11(金) 21:42:28 ID:oxt0kF95
彼は朝食を食べ終わると、両手を合掌させてごちそうさまをした。
まだ食べ終わっていない姉を置いて、茶碗をひとまとめにしてキッチンの流し台に持って行く。
水を浸した流し台にお椀を入れていると、後ろから姉のすすり泣く声が聞こえてきた。

「うう……弟君が冷たいよぅ……昔はお姉ちゃん大好き、僕将来お姉ちゃんと結婚する、とか言っていたのに……。
どうしてこんな子に育っちゃったのかしら。いつのまにか不良さんと付き合ってたりしていたんだわ……」

姉の言っていることはすべて捏造だと、彼は知っている。
彼は昔、姉のことをお姉ちゃんと呼んだことがなかった。むしろ、妹扱いしていたぐらいだった。
そして、大好きとか、結婚するとか言っていたのは姉の方だった。
彼は小さなころ、お母さんと結婚する、と言っているような人間だった。
今ではもちろんそんなことは言わない。
母とは、困ったときに姉よりも先に相談する程度に親しい。
余談ではあるが、母も弟に色々と相談する。内容は、娘のことに関して。
娘の弟離れを促すため、彼によく協力を持ちかけるのだ。
今までやってきた対策は、彼に恋人ができたと伝えることと、一人暮らしをすると伝えること。
前者に関しては親しい女友達にも協力してもらった。だが、結果は逆効果で、四六時中くっつくようになってしまった。
後者の場合、姉はむしろ喜んだ。なぜかというと、実家を離れて二人暮らしができると思ったから。
このように、彼と彼の母の苦労は水泡となってかき消えてしまった。
今では、母はこの一件に関してあまり触れなくなった。彼はあるがままを受け入れるようになった。
これから先彼ら姉弟がどうなるかは、ひとえに姉の成長にかかっているのだ。

706 名前:埋めネタ[sage] 投稿日:2008/01/11(金) 21:45:32 ID:oxt0kF95
大学から帰ってきて、彼は姉をひっぺがして自室に籠もった。
何をするかというと、自分のブログの更新作業だ。
大学で授業を受けている最中に思いついたネタを、まだ暖かいうちに書き記すつもりだったのだ。
思いついたネタは、今までとは趣を異にするものだった。
彼が今まで自分自身に課してきた、禁忌とも言えるもの。
それは、『妹』に関する妄想だった。
なぜ妹のネタが禁忌であるのかは、言うまでもあるまい、姉のことを思い浮かべてしまうからだ。
だが彼は今日、その禁忌を破る。全ては、SSを書くため、ブログを更新するため。
推敲もほどほどにしながら、手慣れた手つきでタイピングしていく。
帰宅してから二時間ほど経った、午後七時過ぎ。ようやく禁断の妹SSが完成した。
内容は以下の通り。

『僕の妹はとても背が高い。
僕の身長は友人と比べても遜色のない高さだ。だけど、妹はそんな僕よりも背が高い。
正直、自分は同じ家に住んでいる両親から生まれた子供じゃないんじゃないか、とまで思っている。
戸籍謄本はもちろん確認済み。今の両親は僕の実の親だ。
それでも、どうしても疑いが晴れない。きっと、僕が妹に対してコンプレックスを持っているからだ。
弁解しておくと、僕は一般的にイメージの強い、妹を溺愛しているという意味でのシスコンではない。
劣等感を持っているという意味でのシスターコンプレックスだ。
妹のことをどう思っているか、と聞かれたら、僕は返答に困る。
劣等感を持っていますとも、コンプレックスを持っていますとも言えない。
妹のことは大事に思っています、と答えると妹好きのシスコンと思われそうで嫌だ。
妹はいつだって僕を悩ませる。今日だって、そうだ。

「アニキ。そろそろ手ぇ繋いで歩こうよ」

妹様は今日もそうやって僕を困らせることを口にする。
手を繋ぐのは好きじゃない。
だって、10cm以上身長差があるということは、手の位置ももちろん違うわけだから、
僕が妹の手を握ろうとしたら少し肘を折り曲げなければならない。
なんだか、親と手を繋ぐ子供みたいで屈辱なのだ。
僕が妹を無視しててくてく歩いていると、妹が後ろでぼそっ、と呟いた。

「そんなこと言うんなら、また今日も抱きつくからね。……覚悟しといてよ」

この台詞だけを聞くと、世の妹好きの男性に羨ましがられそうだが、僕は嬉しくない。落胆する。
抱きつく、と妹が言った場合、柔道の寝技のような動きでの押さえ込みをするぞ、という意味になる。
この妹は身長に見合ったのか、運動能力に優れている。僕なんかあっという間に取り押さえてしまう。
男なのに、兄なのに、妹に負ける。それはかなりの屈辱だ。肘を折り曲げて妹と手を繋ぐ行為以上の屈辱。
だから、僕は傷の浅い方を選ぶ。その方が、一晩越した翌朝の寝覚めがいいと経験で知っているから。
妹の右手と、僕の左手を繋ぐ。妹の指が、僕の指の間に入り込む。いわゆる恋人繋ぎだ。

「アニキって、私より手が大きいよね。やっぱ、握り心地がいいよ。最高。ご機嫌だね!」

僕はご機嫌じゃない。
ため息を吐いて、学校からの帰り道、同じ方向に向かって歩く人たちに合わせて歩く。
こんな様子を見て、僕と恋人になろうとする人なんかいないよな。
だから僕、妹以外の女の子と手を繋いだことがないんだ。
ブラコンの妹を持つと、本当に苦労する。                                            』

彼は恥ずかしい想いをしながらSSを書き上げた。
途中、姉の顔が思い浮かんで来てどうしても上手くいかなかったのだが、奥歯を噛みしめて踏ん張った。
ブログにSSをアップして、誤字脱字のチェックをする。その後、リビングへ夕食を食べに行く。
リビングでは、姉が先に夕食をとっていた。
しかし、いつもなら用意してくれるはずの彼の分の夕食がなかった。
疑問を顔に出していると、姉が不機嫌そうに口を開いた。

「たまには、自分で夕食を準備したらどう? ……ふん。どうせ、運動オンチで、チビですよ」

707 名前:埋めネタ[sage] 投稿日:2008/01/11(金) 21:48:10 ID:oxt0kF95
翌日も、彼は学校から帰って来るなりパソコンの前に腰を下ろした。
一度妹ネタを書くと、堰を切ったようにネタがあふれ出してくる。
今日は、そのうちでもっとも危険なものを書こうと決めていた。
どれほど危険かというと、それこそ、姉への見方が変わってしまうようなものだ。
彼は、部屋の電気を消してからSSを書き始めた。
灯りがない方が書きやすいと思ったのだ。これから書くものは。

『小柄な妹の体を抱きしめると、腕の中で軽く抵抗されるのを感じた。
けれど、僕は抱く力を弱めない。強く、しかし壊してしまわないように、抱きしめる。

「お兄ちゃん、駄目だよ……私たち、兄妹なんだよ? 兄妹でこんなことしちゃいけないよ……」

もちろん僕だってそれは知っている。だけど、今日はどうしても妹を抱きしめずには居られなかった。
頭の中が沸騰したみたいに熱い。ジーンズの中にあるペニスが痛いくらいに膨張している。
夕食を食べ終わってから、ずっとそんな感じだ。
いつも通りのメニューだったのに、どうしてここまでおかしくなってしまったんだろう。
妹が風呂上がりにバスタオル一枚で歩いている姿なんて、見飽きているのに。
今の僕は、小さな妹の体を壊してしまいたくなるほど、妹に興奮している。
妹に口づける。風呂上がりらしく、唇まで熱っぽかった。

「ぅん、ん……舌、だ、め…………おに、ぃちゃん……んん……ん、ちゅ……」

身をよじりながら、唇を懸命に離そうとしてくる。だけど、もちろん僕は放さない。逃がさない。

「こんなことしちゃ、私、わたしぃ……、我慢できなくなっちゃうよ。あそこが、もう……濡れ、て……」

妹の太ももを撫でる。汗で少し湿っているけど、滑らかな感触なのは変わらない。
手を少しずつ妹の体へと動かしていく。タオルに包まれた体は、風呂上がりだという条件を除いても熱すぎるように思えた。
僕の手が、妹の股間へとたどり着いた。                                                    』

ここで、彼の手は止まった。
無理もない。なにせ、彼は女性経験もなく、官能小説を書いたことさえないのだから。
時刻を確認すると、七時をとうに過ぎていた。
昨日よりも書いた量は少なかったが、書いてしまった以上アップしないのももったいない。
彼はブログに注意書きをしてから、SSを載せた。

リビングへ向かおうとしたら、携帯電話にメールが着信した。
送り主は同じ大学に通う友人。内容はこれからボーリングに行こう、というもの。
断る理由もなかったので、彼はOKだという旨をメールに記し、返信した。
リビングに顔を出すと、姉といきなり目が合った。
姉は昨日とうってかわって上機嫌な様子で、すでに夕食を用意して待っていた。
罪悪感を覚えつつ、夕食はいらない、ということを姉に告げた。
すると姉は、座っていた椅子を飛び越えて彼の元へやってきた。

「そんな! 今日のはとってもイイものが入っているんだよ!
この日がくることを一日千秋の思いで待っていたんだから、食べなきゃ駄目!
え、なんで必死なのか? ……それは、その、ね。あー……変なものは入ってないよ。安心して」

首を傾けつつ可愛らしい笑みを浮かべる姉を見て、彼の第六感とも言うべき感覚が閃いた。
今、姉の誘いを断らなければまずいことになるぞ、という警告が脳内に響き渡った。
それは、今日書いたSSの内容――夕食に媚薬を混入された兄が妹を犯してしまう――が浮かんだせいかもしれない。
姉を無理矢理引きはがし、愛用の靴の踵を踏みつぶしながら外へと飛び出す。
門から出ても、姉の引き留める声が聞こえてきた。
彼がその日に戻らなかったのは、言うまでもない。

708 名前:埋めネタ[sage] 投稿日:2008/01/11(金) 21:58:56 ID:oxt0kF95
翌日、彼は朝帰りをしてから大学へ通い、半ば眠りつつ授業を受けきった。
いつも通りに自宅へ帰り、パソコンの電源を入れる。テキストエディタを前にしながら、彼は腕組みをした。
最近、姉の行動がおかしい。おかしいのは元からだが、情緒が不安定すぎる。
そう、一昨日に妹が登場するSSをブログに載せ始めてからこうなった。
まさか姉がブログを見ているのか、とも思ったが、姉はパソコンを持っていない。ブログを見ているはずがない。
やはり気のせいだと結論づけ、彼は今日も妹SSを書き始めた。
――彼は常識的なことを忘れていた。携帯電話でブログを見ることが可能だということを。
そして、一番大事なことも忘れていた。姉が、彼のことをどれほど想っているのか。
彼への依存心が、姉の心にどれだけ強く根付いているのか。
知ってさえいれば、こんなSSを書くことなどなかったかもしれない。


「私、言ったよね、お兄ちゃん。ずっと私だけを見ていてね、って。
頷いた? 頷いたよね? ……じゃあ、どうしていきなり転校してきた女と仲良く話していたの?
いくら昔から知り合いだったって言っても、そんなこと関係ないんだよ?」

右手の人差し指の爪に、針がさし込まれていく。
まだ先端が入り込んだだけなんだろうけど、これだけで指先から肘までの神経を傷つけられたように痛む。

事の発端は、今日、学校に転校生がやってきたことから始まった。
原田と名乗る女の子は、元気な声で自己紹介をしていた。
僕はその時、窓の外をずっと見つめていた。だから、転校生の女の子を見ていなかった。
それがどうやら転校生の目に留まったらしい。
いきなり僕は抱きつかれた。驚く僕を、転校生は涙目で見つめていた。その顔を、僕は見たことがあった。
小学校四年生の時に、親の都合で引っ越していった女の子がいた。
その子と僕は幼なじみで、ほぼ毎日一緒に遊んだ。時には同じ家で寝泊まりすることもあった。
過去の記憶を思い出してから、僕が彼女のあだ名を呼ぶと、彼女も僕をあだ名で呼んだ。
それから、僕と転校生はすぐに打ち解け、積もる話に花を咲かせた。
僕は突然の再会のせいで浮かれて、油断していたのだろう。
廊下に立って、僕を見つめている妹がいたことに気づけていなかった。
気づけてさえいれば、あんなことにはならなかったのかもしれない。いや――ならなかった。

帰宅している途中、僕と一緒に歩いていた転校生は車道に突き出され、ダンプにはねられた。
呆然とする僕の後ろにいたのは、妹だった。
僕が誰よりも恐れなければならず、誰よりも優先して相手をしなければならない人間。
小学校に入る前から拷問と調教をされてきた僕は、妹に逆らえない。
どうしようもないのだ。妹を前にすると、腰が引けて、脚がすくむ。
僕は、幼なじみのことを思うならば、彼女を突き放すべきだった。
そうしていれば、彼女は命を落とすことなどなかった。

「今日はどうしよっか。尿道にロートを差し込んでぇ、ロウを入れてあげようか?
あは。そんなに怯えなくってもいいよ。痛みをゆっくりじっくり味わわせながらしてあげるから。
もちろん、あとでちゃんと吸い出してあげる。お兄ちゃんの大好きな、私の口で、ね」

口、と聞いただけで僕の股間は固くなってしまう。全て、妹の調教によるものだ。
死にたくなるほどの屈辱と苦痛を与えた後で、慈愛と癒しの心をもって快感を与える。
それが、妹の調教法。僕をのめり込ませ、抜け出せなくさせた狡猾な罠。
今夜もまた、僕の口から猿ぐつわは外れない――――。                          』

709 名前:埋めネタ[sage] 投稿日:2008/01/11(金) 22:01:10 ID:oxt0kF95
妹が出ている意味のない、特殊なSSを彼は書き上げてしまった。
自分の姉がやりそうのないことを思い浮かべていると、こんなネタが思い浮かんだのだ。
ブログにアップして、十分が経った頃、部屋のドアがノックされた。

「……弟君、開けてくれるかな……」

ドアをノックしたのは、彼の姉だった。
すでに時刻は八時近く。いつまでもリビングに来ないから呼びに来たのだろう。
パソコンの電源を入れたままにして立ち上がり、こった背中を伸ばす。
ドアの前にたどり着いた彼は、無防備に開いた。

翌日、彼のブログは更新されなかった。
定期的にブログを訪れていた人たちは、たまにはこんな日もあるだろう、とだけ感想を持った。
管理している彼本人の身を案じている人間など、誰一人としていなかった。


これにて終わり&埋め!

710 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/11(金) 22:23:32 ID:s3HfeAZb
>>709

GJ!
お姉ちゃんkeeeeee!
弟くんのその後が気になるぅぅぅ!


711 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/11(金) 22:39:46 ID:pDZMFXVA
これで500KBかな?
ちび姉やっちまったあwww
ナイス埋めネタ!

712 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/01/11(金) 22:51:05 ID:auji+D04
ちょwwwおまwww

メチャクチャ萌えた! 埋めネタには惜しすぎる! GJ!

では埋めええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ

最終更新:2009年01月13日 16:35