「待て!!」
体育館に光が漏れる。男達はみんな光が漏れ、声が聞こえたほうを向いた。
扉は少しずつ開かれていく。
私を見捨てたはずの兄さんがどうしてと思ったが嬉しかった。だって私はまだ要る存在だと分かったからだ。
「悪逆非道……暴虐の限りのやつらは纏めて始末する!!」
兄さんかと思ったら人影は違った。身長は兄さんぐらいだったがその影は金髪の長い髪をなびかせて変わった女子の制服を着ていた。
え? なにこの痛い人。
「「「だれ? お前?」」」
「あ、あれはアニメの人気キャラの制服姿のコスプレですよ! すげぇ似合ってる!! というか本物!?」
「お前オタクだったのか?」
「アニメ見てるだけでそれはひどいっすよ。キャプテン!」
たしかに似合っている。でもどうしてそんな子はここに? 兄さんが雇うのはおかしい。雇うぐらいなら自分でくると思うけど……
「許せないな。陵辱なんてする女の敵は全員……身の程を分かってもらわないと」
なんか脊髄反射で笑いが込み上げてきた。どうしてだろう。似合っている。違和感もない。違和感がないのが不思議なのかどうしてか笑いが止まらない。
「キモいんだよ! クソ女」
一人の男が女の子に殴りかかる。『体格の差、それに性別の差がある。勝てない』としかしその予想は裏切られた。
少女は少し横に体をずらして避けたところに横っ腹に思いっきり蹴りを入れていた。少女より大きい男は紙のように吹っ飛ばされる。
「ごめんなさい。脚が滑ってしまって」
「あれが滑った!? あれでか!? 確実に狙わないとあんなに鋭い蹴りなんて
お見舞いできないぞ!!」
男のケガなんて気にしない冷酷な顔で私に近寄っていく。どうやらあの人の仕事は私を助けることだろう。
「まてよ! 俺たちに断りもなく近寄んじゃねぇよ」
もう一人の男が横から出てきて殴りかかってくる。いやあの野球部バカだと思う。そんな声上げたら奇襲なんて出来るわけ無い。
不意打ちした男は殴りかかったときの勢いを利用されて背負い投げされる。床に思いっきりぶつかり倒れる。
「すまない加減はできない」
スタンガンなんて物騒なものをクククと笑いながら首筋にお見舞いしている。
びくんと跳ねる男を見るとスタンガンを離す。しかしそのあとに顔を蹴る。人を傷つけるのに躊躇い無いのだろうか?
というか……あの男生きているのかな? なんか危ない気がする。
「あと三人だな。わたしも忙しいんだ。さっさと来い」
一体この人は何ものなんだ? 自分よりも頭一つ分以上大きいやつら相手に引けをとらないなんて。
「お、おいお前行けよ!」
「いやお前の方が握力強いだろ!」
握力って殴り合いにまったく関係ないと思うんだけど……所詮握る力だし……
「落ち着け! 三人で襲い掛かればいいだろ!」
キャプテンと呼ばれた男が当然の作戦を二人にいう。厄介なことになってしまった。さすがに三対一ではきついだろうな。
「そうだよな。別に一対一でなくていいんだよな……」
三人の男はバットを取り出した。もし私が反抗したらバットで殴るつもりだったんだ……。そう思うと寒気が止まらなくなった。
「ふん、武器無い相手に武器を使うというのか。いいだろう。こちらは素手で相手になってやる」
どんなに強くても相手が武器を持って取り囲まれたら終わりだ。
男達が少女を囲む。三人だが図体が大きいので簡単に取り囲める。私は少女が命乞いすると思っていた。しかし違った。
少女は目の前にいる男の腹を殴りつける。男がよろめいた隙に肩を踏み台にしてこちらに飛んでくる。
第二体育館は小さいためすぐにこちらにこれる。少女は懐からナイフを取り出して手の縄と足の縄を切った。
けれども他の二人の男たちが襲い掛かってくる。けれども少女は私の口についているガムテープをとっていた。
とり終えたあとすぐに私に向かい合う。