180 :我が幼なじみ◇solidsnake:2010/10/06(水) 18:31:02 ID:D070YUWU
「風奈、入るぞ?」 
ノックをしても返事がない 
その後、なんどかノックをして呼びかけたが、返事は返ってこない 
「入るからな?」 
俺はそう言って、ドアを開けた 
暗い部屋の中、風奈は部屋の真ん中で、両膝をくの字に曲げ、床に手を付いていた 
「……何?」 
俯いたまま聞いてきた 
顔はよく見えないが、きっと泣いているんだろう 
声が弱々しい……それに、鼻をすする音が聞こえる 
「風奈、少し話しをしないか?」 
俺はできるだけ優しく言った 
「やだ……やだ!お兄ちゃんは信じてくれないもん!!」 
「ごめんな……俺もあの時はいきなりだったから、ろくに話も聞かずに怒って悪かった……」 
続けて言った 
「だから、今度はちゃんと聞くから、何があったか教えてくれないか?」 
しばらくの沈黙の後、風奈はポツポツと話し始めた 
181 :我が幼なじみ◇solidsnake:2010/10/06(水) 18:32:13 ID:D070YUWU
「お家に帰ってきて、お兄ちゃんと遊ぼうと思ってね……お兄ちゃんの部屋に入ったら……」 
「由美子が……その……してたって事か」 
「うん」 
「見間違いじゃなくて?」 
「やっぱり、信じてくれないんだ……」 
何やってんだ、俺は…… 
「あ……ごめん!そんなつもりで言ったんじゃないんだ!」 
「もういい……」 
「本当に違うんだ」 
「もういいもん!……お兄ちゃんなんて、大っ嫌い!!」 
「あ……」 
その言葉に、俺は深く傷付いた 
まさか、風奈に大っ嫌いなんて言われる日がくるなんて…… 
今のは完全に、俺が悪かった。これじゃあ風奈に嫌われたって、文句は言えない…… 
「ごめんな……」 
そう言って、俺は部屋を出た 
最低だな……俺 
あんな聞き方したら、傷付くに決まってんのに…… 
本当……最低だよ…… 
自分が憎い、大切な妹を傷付けた自分に苛ついてくる 
今、風奈を支えてやれるのは俺しかいないのに…… 
「えへへ……これで、しばらくはあんな女の事よりも、風奈の事を考えてくれるよね?……お兄ちゃん」 
182 :我が幼なじみ◇solidsnake:2010/10/06(水) 18:33:18 ID:D070YUWU
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優の部屋 
部屋に戻ると、由美子が心配そうに声をかけてきた 
「どうしたの……?優君……泣きそうな顔してるよ?」 
俺はそんな顔してたのか 
「風奈に……嫌われたんだ」 
「どうして……?」 
心配そうな由美子を無視して言う 
「今日はもう、寝るよ……」 
今日はもう、何もする気が起きない…… 
「優君!」 
由美子が、ベッドに行こうとした、俺の手を掴んできた 
「どうした……?」 
「私は……優君の味方だよ?……だから、悩み事とかあったら、何でも相談していいんだよ?……泣いてもいいんだよ……だから、優君には苦しんでほしくないよぅ……」 
由美子が、泣きそうな声で言った 
由美子はとても優しい、何時だって常に俺の心配をしてくれていた 
改めて、俺は由美子が、如何に人間として良く出来ているかを思い知った 
だから、好きなんだろうな…… 
183 :我が幼なじみ◇solidsnake:2010/10/06(水) 18:33:49 ID:D070YUWU
由美子の優しさに、今にも泣き出しそうになった 
駄目な自分に対する、後悔や怒りとか悲しみ、いろんな感情がごちゃごちゃになって 
それが怖くて、苦しかった、今すぐ泣きたかった 
だけど、泣いてはいけない、そう思った 
それは、人前で泣くという、恥ずかしさから来るものも少しはあるが、何より 
好きな人の前では泣きたくない 
そんな、小学生みたいな理由が殆どだった 
それに、泣ける立場なのは風奈の方だろう…… 
「ありがとう、由美子」 
笑顔でそう言って、俺はベッドに潜り込んだ 
これから、どうしなきゃいけないとか、考えないといけない事はあったけど 
今は何も考えていたくなかった 
風奈……本当にごめん 
そして、ありがとう……由美子
最終更新:2010年10月07日 18:14