社会保障論

●社会保障の概念、範囲、役割
1.社会保障とは
(人が遭遇するリスクを回避・軽減するために用意された制度
(個人のリスクを、大きな集団、あるいは社会全体で分散して負担し、リスクを回避・軽減する仕組み

・社会保険
(社会保障の中心となる部分
(リスクを分散すること=「保険をかける」
(リスクは個人の責任で起こるのではなく、誰にでも平等に起こり得るものなので、皆が平等に負担する
(上記の理念により、それぞれのリスク確率によって負担に差を設けない=強制加入

・社会扶助
(リスクが発生した後に対応する仕組み
(事前に画一的に決めておくことが難しい種類のリスクに対応

2.社会保障概念の成立
・社会保障の起源
(リスクを回避するのは人間の本能=社会保障の起源は社会の起源と同じ
(制度的な社会保障の起源は、イギリスのエリザベス救貧法(1001年)
(「社会保障social security」という言葉が公式な用語として使われたのは、アメリカの社会保障法(1935)が最初。国際労働機関(ILO)の「社会保障への途」(1942)や、イギリスの「ベバリッジ報告」(同年)等により普及
(今日のような社会保障は産業化によって作られた

・産業化と社会保険
(産業化とともに生まれた労働者階級→リスクにさらされる人々
(社会保険=自主的に行われていた救済活動を制度化したもの
(社会保険=「自助」と「職域連帯」を基本としたもの
(最初の社会保険=ドイツ(ビスマルク)の「飴と鞭政策」

・社会保険の普遍化
(産業化とともに、社会保険は当時の先進資本主義国以外へも広まる
(特定の労働者から労働者一般へ。さらに自営業者等へも広がる
(様々な職種に広まったことから、「自助」に加えて「平等」「普遍」「社会連帯」という理念が加わる→普遍化


・市民社会と社会扶助
(こうして時代が進んでいくとともに、市民社会における平等意識が生まれる=スタート台に立つことの平等
(社会に参加できない人たちに対する最低限の保障は社会の責務という考え→権利に裏づけされた公的扶助へ
(貧困の原因別に対策が講じられるようになり、社会福祉が生まれる

3.わが国における社会保障の概念
・憲法25条
(すべての国民は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障、および公衆衛生の工場および増進に努めなければならない

・わが国における社会保障の定義は、#社会保障制度審議会勧告(1950)#に従ってきた
(戦後に確立されたため、貧困対策としての性格が強かった
社会扶助=救貧対策
社会保険=防貧対策
・(現在の)社会保障の意義と目的

(生活の安定=健やかで安心できる生活を保障
(個人の自立支援=自立とは他の人に依存せずに独立した生活を営むこと


家庭や地域の機能の支援

・社会保障の役割と機能
(貧困の予防および救済
社会保険には貧困を#防止#する機能。公的扶助には貧困を#救済#する機能
(所得の再分配
#能力#に応じた所得分配を#必要#に応じた所得分配に変える
(社会の安定と統合
(経済の安定および成長

・社会保険の内容
(リスクを保険事故として想定し、リスクが発生した時に一定の給付が出るように取り決め、そのための保険料を払う制度

(医療保険=疾病や怪我
(年金保険=働き手の死亡、障害、老齢によって収入が途絶えたとき
(雇用保険=失業
(労災保険=労働災害
(介護保険=要介護状態になった場合



・社会扶助の内容
(社会福祉=児童、障害者、高齢者、母子家庭など自立して生活するとこにハンディキャップがある人や世帯に対する自立支援
(公的扶助=健康で文化的な最低生活を保障する制度
(医療・公衆衛生=病気の治療、病気の蔓延を防ぐための施策

・それ以外の、広義の社会保障(社会保障関連制度)
(雇用対策
(恩給・戦争犠牲者支援=国家補償
(医療品・食料品の安全対策
(住宅
・機能別の社会保障の体系
(年金制度=国民年金、厚生年金、共済組合、恩給・援護年金
(医療制度=医療保険、公費負担医療、医療供給など
(社会福祉その他=社会福祉、公的扶助、雇用保険、児童手当など



●社会保障の現状
レジュメ・教科書
・社会保障給付の額(年々増加)
(年金:47兆53%
(医療:28兆31%
(福祉その他:14兆15%
(合計89兆。国民所得比24%。一人当たり給付額69万7400円

*国民所得は1991年から350万ほどで頭打ちなのに対し、社会保障給付費は年々増加し続けている=国民の負担増。財源の困窮

*日本は2005年の時点で高齢化率20.1%で世界一

・社会支出(OECD)
(日本はアメリカについで社会支出が低い
(ドイツ、フランス、スウェーデンが高い

・日本の社会保障の特徴
(高齢者に対する給付の割合が大きく、家族・住宅・失業などに対する給付の割合が低い
(ヨーロッパ諸国に比べて、高齢化が進んでいるにもかかわらず、社会保障の規模は小さい=低福祉低負担型
(急速に高齢化が進んでいるにもかかわらず、社会保障の伸びは鈍化

・日本の社会保障給付費の規模が小さい理由
(統計上の理由=地方単独分が把握できていない、住宅対策が含まれていない
(企業福祉、家族福祉で代替されていた部分が大きい
(医療の単価が低い
*医療費の対GDP比は、日本が7,9%で先進国最低水準。トップはアメリカで15%

・社会保障が増大する要因
(年金:受給者(高齢者)の増加、年金の成熟化
(医療:高齢化、診療報酬の引き上げ(医療の高度化、経費の増大に対応)
(福祉その他:生活保護、雇用保険などは景気の変動に影響される。介護は高齢化とともに増大










●年金
1.日本の年金制度の特徴
・皆年金=20歳以上の全国民が加入
(社会保険方式=事前に拠出して、リスクが発生したら給付をうける
・2階建ての年金制度
(基礎年金と所得比例年金
・賦課方式=保険料をそのまま給付に使う

2.被保険者
第1号被保険者
(20歳以上60歳未満の自営業者、農業者等
(国民年金保険料として徴収
第2号被保険者
(民間被用者、公務員等
(厚生年金保険料率として
(#労使折半#で保険料を負担
第3号被保険者
(第2号被保険者に扶養される配偶者
(本人は保険料を負担せず、配偶者の加入してい#保険者#が負担
*基礎年金の国庫負担割合については、平成16年度から、21年度までに1/3から1/2になる。しかし、恒久的な財源の目処は立っていない


3.年金制度の体系
(国民年金(基礎年金):1~3号が加入
(厚生年金:民間サラリーマン(2号)
(共済年金:公務員(2号)
*厚生年金と共済年金は企業に雇われているもの対象であるから、被用者年金ともよばれる
*公的年金制度を補完するものとして、被用者には厚生年金基金、自営業者には国民年金基金がそれぞれ設置されている
*基金は、国から給付される公的年金(上の3つ)とは別に上乗せしてもらえる年金。基金未加入者より多くもらえる代わりに、基金未加入者が本来負担しない、公的年金の#物価スライド#と#賃金スライド#部分を負担することになる

4.(公的)年金の給付の種類
・給付妥当となる理由
1.老齢になった場合
2.病気や怪我で障害を有することとなった場合
3.年金受給者または被保険者(加入者)が死亡した場合
・老齢(退職)年金・障害年金・遺族年金の給付の呼び名
(基礎年金:老齢基礎年金・障害基礎年金・遺族基礎年金
(厚生年金:老齢厚生年金・障害構成年金・遺族厚生年金
(共済年金:#退職#共済年金・障害共済年金・遺族共済年金

5.年金の財政
・保険料
(厚生年金:総報酬方式で15.35%
(国民年金:毎月1万4660円
・財政方式
(積立方式:自分が現役世代(20~60歳)の時に、自分の年金を積み立てる
(賦課方式:今の現役世代が、今の年金受給者(60~80歳)の年金を負担する
*現在は実質的な賦課方式で運営している

6.基礎年金財政の仕組み
・給付に要する費用は、各制度が被保険者の人数に応じて負担
(国民年金=第1号被保険者の人数
(厚生年金=厚生年金の被保険者(第2号被保険者)とその配偶者である第3号被保険者の人数
(共済組合=厚生年金と同様


●医療保険制度の特徴
1.皆保険、社会保険方式
2.制度分立=職域保険と地域保険に別れていて、さらに職域ごとに分立

・給付と保険料
(医療費の7割を保険から拠出
各保険制度とも7割給付で統一
高額医療費の償還制度もあり
義務教育就学前の子どもは2割負担
70~74歳の一般高齢者も2割負担
75歳以上には特別な制度(後期高齢者医療制度)、普通は1割負担
(保険料は一定の範囲で各保険者が決めることができる
*診療報酬は、まず「医科、歯科、調剤報酬」に分類される。
具体的な診療報酬は、施した医療行為ごとにそれぞれの項目に応じた点数が加算される(出来高払い制)。点数の単価は10円である。
例えば、
盲腸で入院した場合、初診料、入院料×入院日数、手術代、検査料、薬剤料と加算され、医療機関はその合計金額から患者負担分を差し引いた金額を支払い基金等から受け取ることになる。


・医療保険制度の概要
(健康保険
協会けんぽ(旧政府管掌):保険者=政府、被保険者=中小企業被用者
組合管掌:保険者=健康保険組合、被保険者=大企業被用者
(船員保険:保険者=政府、被保険者=船員
(共済
国家公務員:保険者=共済組合、被保険者=国家公務員
地方公務員:保険者=共済組合、被保険者=地方公務員など
私学教職員:保険者=事業団、被保険者=私学の教職員
(国民健康保険:保険者=市町村・国民健康保険組合、被保険者=上記以外の農業者、自営業者、一般住民など
(後期高齢者医療:保険者=後期高齢者医療広域連合、被保険者=75歳以上の者・65歳以上で寝たきり状態にある者


・高齢者の自己負担(平成20~)
(64歳以下:3割
(65~69歳:3割
(70~74歳:2割(現役並み所得者は3割)、経過措置で1割
(75歳以上:1割(現役並み所得者は3割)

・後期高齢者医療制度
(対象:75歳以上の後期高齢者、約1300万人
(公費:5割
(他の医療保険の被保険者(0~74歳)の負担:4割。後期高齢者支援金として
(本人負担:1割

・医療供給体制
(病院=20床以上、診療所=19床以下、または病床なし
(特定機能病院:高度の医療技術の開発、研修
(地域支援病院:「かかりつけ医」等を支援

・医療提供体制の各国との比較
(日本は平均在院日数が欧米の3倍ほど(36.4日)
(病床数は多いが、人口当たりの医師数、看護職員数は低い

・疾病構造の変化と医療体制
(感染症中心の時代
病気は本人の責任ではない
早期診察、早期治療、入院して集中的に治療
(生活習慣病中心の時代
病気は日ごろの生活習慣の結果
短期間での完治は困難、治療をしながら日常生活を続ける

●介護保険
・介護保険以前の介護の制度
(老人福祉として、事後的なサービスを実施
(措置制度=#公#がサービスを提供、民間に委託
(行政行為であった=本人に選択権がない



●社会保障論
・措置制度
(戦後から皆保険に至るまでの保険制度
(公がサービスを提供、民間に委託費用は公が払い、あとで(国民から)費用徴収
(行政行為=本人に選択権がない
(国民と施設の間に公が仲介している状態

国民の保険に対する意識が高まると、国に任せている状態に不満を持つようになる。
(国の財政によって保険の質・量が決まる
(国民が自分で選択できるようにすれば、自分の希望通りの介護が受けやすくなり、事業者間の競争が生まれ、サービスの質が良くなる

しかし、介護などのサービスは大きな費用がかかってしまう

医療制度。若いときから少しずつお金を払い、困ったときに企業が費用を負担すれば解決

介護保険が作られた
当時のキャッチフレーズ「介護の社会化」
(介護保険は、高齢者の自立を目指している

・保険者=市町村
被保険者=第1、2号=/年金の123号
(1号=65歳~
(2号=40~64歳
△徴収
・普通徴収:用紙を配り、銀行から徴収
・特別徴収:例)源泉徴収
(特別徴収の人の方が多い
(65歳以上の人は、(給料から源泉徴収できないので)年金から天引きをする→払えない場合:普通徴収
(2号の人は1号とは違い、組合の人数によって平等に徴収
△給付
(介護保険のサービスを受けるときの一部を払ってくれる(9割=/医療保険は7割
cf)介護サービスが始まって9年目
・誰もが介護保険を受けられるわけではない=/医療保険
(介護が必要であるという認定(要介護認定)を受けなければならない
(介護サービスにないサービスには保険が利かない。レジュメ図参照ex)弁当配達サービス
(要支援と要介護とでは受けるサービスの内容が違う。要支援は「改善」を目的としたサービス中心

・2号被保険者は、高齢による病気しか介護を受けられない。1号はどんな病気であれ介護を受けられる。
(2号に保険料を払ってもらわないと財性的にやっていけない&2号にまですべて適用するとやっていけない
・介護の需用量増加で、地方の財政はどうなるか
(住民次第。高くても良いサービスを除むならそうなる
(最近の基準額は全国平均4260円(年々上がっている)。地域格差が最高ー最低で2倍以上ある
*システム
*医療保険との違いをとらえる
*財政はこのままでやっていけるのか
●社会保障論(データ欠損
(統計的理由=地方単独分が把握できていない。住宅対策が含まれない
(企業福祉、家族福祉で代替されていた部分が大きい=障害者給付、家族給付、失業給付、住宅給付の割合が低い
(医療の単価が安い

・医療費の対GDP費
(主要先進国だと日本最下位、アメリカ1位
(人件費が安い

・社会保障負担率
(これを無視して医療費などの割合を考えるのは間違っている
(租税と国民負担率。日本、負担率をあげた。ドイツ、税金を上げた。
(企業の保険料。あげると、保険料が安い外国に工場を移す/バイトや派遣を雇う、国に雇用が少なくなる、保険料があつまらない。負の循環
最終更新:2009年06月15日 08:33
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