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史上最強のナンバー2 ~ein Unterlehrer~」を以下のとおり復元します。
水銀燈「う…な、何…!?この感じ…!?」 
その日、水銀燈は奇妙な体験をした。 
ベッドで気持ちよく寝ていたときに、いきなりその体がずしんと重たくなった。 
例えていうのなら、誰かが上に乗っているような感じ…それが金縛りではないかと気づいた時、水銀燈の頭の中に色々な考えが交錯した。 
「20歳を超えたら、金縛りに遭わないというのは嘘だったの…?」とか、「目を開けたら、お化けがいたらどうしよう…」とか…。 
しかし、最終的にはこういう結論に達した。 
「いくらお化けだろうと何だろうと、この私の寝込みを襲おうなんて、いい度胸してるじゃない…!」と。 
その刹那、ほとんどマウントポジションを取られているような状況にもかかわらず、相手に殴りかかろうとする水銀燈。 
それをかわすと、水銀燈の上に乗っていた『モノ』は、こう言った。 
?「あ、ビッチ…じゃなくて、『水銀燈さん』…。おはようございます。」 
そこには、この頃の水銀燈にとって最大の敵であった、雪華綺晶の姿があった。 


水銀燈「…あなた、影で私の事…そういうふうに呼んでたのね…!?」 
雪華綺晶「うん、ばらしーにも怒られた…。」 
全く悪びれる様子の無い雪華綺晶。そんな彼女に、水銀燈はこう切り替えした。 
水銀燈「…あなたって、ホントむかつくわね…。人に嫌われるタイプでしょ?」 
雪華綺晶「…ビッチさんには負けますよ…。」 
その言葉に舌打ちをすると、水銀燈はこう言った
水銀燈「…まあいいわぁ…。それよりも、私の部屋で一体何をしていたの…!?それと、あの小賢しい妹はどうしたのよ…!?」 
雪華綺晶「ばらしーは、風邪でお休み…。で、6時45分になったらあなたを起こしてって言われたから、時間まで待ってた…。」 
水銀燈「…そう。じゃあ、仕方ないから学校に行かないとね…。」 
それは、雪華綺晶にとって意外な反応だった。 
あの水銀燈なら、これ幸いとばかりに学校を休みそうなものだが…。 
そんなことを考えながら、じっと水銀燈の顔を見つめていると、それに気がついた水銀燈はこう言った。 
水銀燈「…何見てるのよ…。だって、あのクラスは私のものでもある訳だから、薔薇水晶が休んじゃったら行かなきゃしょうがないじゃない…。」 
しかし、その発言を聞いて雪華綺晶の頭はますます混乱した。 


そして、ちゃんと規定の時間前に登校する2人。 
その2人から薔薇水晶が病欠だと聞くと、真紅はすぐに他の先生を代わりに授業に出すことを決めた。 
その白羽の矢が立ったのは、ほかでもない水銀燈だった。 
水銀燈「…何で、私な訳ぇ?」 
真紅「いいじゃない。あなたは、2時間目と6時間目が空いてるんだから。それに昔、社会科系の授業全てを受け持っていたんだから、薔薇水晶の代わりに授業を進めることも出来るでしょう?それで、他のところは空いてる者が自習時間を見張るということでいいと思うの。」 
水銀燈「やぁよ。薔薇水晶のことは薔薇水晶に任せるのが一番よぉ。今更、私が入っていく余地なんて無いわぁ…。」 
真紅「貴女らしくないわね…。まさか、去年の失敗を未だに引きずっている訳ではないでしょう?」 
水銀燈「…何とでも言いなさぁい…。とにかく私は、授業なんかするつもりは無いわぁ…」 
その後も、水銀燈は頑としてその意見を変えようとしなかった。


その後、自習時間は、何の問題も無く終わった。 
が、雪華綺晶にはどうしても確かめておきたいことがあった。 
真紅はさっき『去年の失敗』と言った。しかし、あの水銀燈…1度私に謝罪したくせに、性懲りも無く何度もちょっかいをかけてくる水銀燈が、なぜたった1度の失敗で、あんなに尻込みしていたのか…。 
それだけが、どうしても気になっていた。 
そして、放課後…雪華綺晶は意を決して、真相を問い詰めた。 
すると、水銀燈はようやく重い口を開いた。 
「…まあ、薔薇水晶の身内であるあなたには、話しておいたほうがいいかもね…。」と言いながら…。


水銀燈「ほら、あの子って自分にコンプレックス持ってるって言うか、どこか自分に自信が無いようなトコがあるのよね…。それでいて、打たれ弱いし…」 
雪華綺晶「うん…だから、私が守ってあげなきゃって思ってる…。」 
それを聞き、「素敵な姉妹だこと」と茶化すと、水銀燈は続けてこう言った。 
水銀燈「…だから、下手に私が授業なんかやっちゃうと、後の反応が怖いのよ…。ほら、人間十人十色なわけだしぃ、もし万が一…薔薇水晶より私の授業のほうがいいなんて言い出す生徒が出たら、それこそ大変なことでしょう?」 
雪華綺晶「…うん。」 
水銀燈「…それに、風邪の症状は軽そうだしぃ…2・3日すれば大丈夫だろうから、替えの授業なんて必要ないと思ったのよぉ。」 
雪華綺晶「え…?何でそんなことが分かるの…?」 
水銀燈「…あなたが、この学校に来てるからよ。もし、熱が40度近くまであったら、あなた薔薇水晶のそばを離れないでしょう?だから、大したこと無いって分かったの。」 


それは、雪華綺晶にとって意外なことだった。 
あれほど敵だと思っていた相手が、まさかこれほどまでに愛する妹のことを気遣ってくれていたとは…。 
おそらく、公然と他人を『糧』と言ってはばからない彼女にとって、人の心…ましてや思春期の男子生徒の心をつかむくらい簡単な事だろう。 
それを使って、元の自分の地位を取り戻すことも出来るはずだし、まして今回はそのビックチャンスだったはず… 
…でも、彼女はあえてそれをせず、それどころか嫌っている真紅に『負け』を認めてまで…己のプライドを捨ててまで、妹を守ってくれた…。 
雪華綺晶「…お姉さま…」 
水銀燈「…え?」 
そう、水銀燈が答えるより早く、雪華綺晶は水銀燈の背中におぶさった。 
雪華綺晶「お姉さまぁー…♪」 
水銀燈「な、何なのよ!?気持ち悪い!!早く離れなさい!!」 
その後、雪華綺晶は決して水銀燈の背中から離れようとせず、水銀燈は仕方なしに薔薇水晶へ助けを求めた。 
そんなことが起こっているとは露知らず、玄関のチャイムの音を聞き、苦しそうに咳をしながら表へ出る薔薇水晶。 
そこに現れたもの…それは、かつてあれほど嫌っていた水銀燈に甘える雪華綺晶と、困った顔をしながらも、何故か少し嬉しそうな水銀燈の姿…。 
そんな2人を、薔薇水晶は最高の笑顔で出迎えた。 


完 


[[翌日>代務]]

 

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