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水銀燈と尾行とめぐ~mercury side~ - (2006/03/30 (木) 22:50:49) のソース

水銀燈「ふぅ…ホント嫌になっちゃうわぁ…。でも、流石に病院の中までは追ってこられないでしょう…。」 
その日、私は学校をサボって有栖川大学病院という所にいた。 
サボった理由は、学校が面倒くさいから。 
少し休むために空いている病室を探し、病院内をさまよっていた時、ある病室から歌が私の耳に入ってきた。 
どこか懐かしげで、それでいてどことなく寂しい感じのする歌…。 
気がついたら、私はその部屋の中にいた。 


めぐ「からたちの花が咲いたよ…。白い白い花が…あら?もしかして、水銀燈先生?」 
水銀燈「…私の事、知ってるの…?」 
めぐ「…そうですよね。私、あんまり学校行ったこと無いし、知るわけ無いですよね…。」 
それが、めぐ…柿崎めぐとの出会いだった。 
最初はおかしな子だと思ったが、話しているうちにこの子は自分と同じだと感じた。 
つまり、めぐも私もどこかが欠落しているのだ。 
私の場合は片親だったことと、いじめが原因だったが、この子の場合はもっと複雑だった。 
両親が別居中で、しかも心臓には重大な欠陥があるらしい…。 
めぐ「私なんて、別にいつ死んでも構わないのに…」 
それが、めぐの口癖だった。 


めぐ「もう、私なんかに構わないで!最初、自分のとこの生徒だって言うことも知らなかったくせに!!」 
ある時、わたしはめぐと喧嘩をした。理由は、私が彼女の自殺願望をいさめたのが原因だった。 
めぐ「いいのよ、教師だからって無理しないで…。どうせあと半年の命なんだし…」 
水銀燈「そうやって、また逃げるつもり?このまま楽に死なせるもんですか…!」 
…すでに、めぐの病状については、医者から嫌というほど聞かされてきた。 
余命が本当に半年しかないこと…。助かるには心臓移植しかないこと…。そしてそれには莫大なお金が必要なこと…。 
でも、どうしてもめぐだけは死なせたくなかった。 
楽しいのはこれからなのに…。それを何も経験できないなんて間違ってる…! 
そんな思いからか、私の口から自分でも思いがけないようなことを、彼女の父親に言ってしまった。 
「めぐの銀行の口座番号を教えなさい。すぐに、手術に必要なだけのお金を集めてみせる」 
と。 


その後、家にあるものを沢山売ってはみたが、お金は全然足りなかった。 
仕方なく、夜の学校の見回りなど不慣れなこともやってみたが、目標額には到底及びそうになかった。 
睡眠時間もかなり削ったため、目のクマはもはや化粧でもごまかしが効かなくなってきた。 
そんな私を見て、めぐは涙ながらにこう言った。「もう、私なんかのために無理しないで」と。 
冗談じゃない…。しかし、もう時間が限られている… 
あと自分に出来ることといえば…この美貌を使って、人のものを奪うことだけ…。 

その時、ふと同じ職場にいる同僚の顔が浮かんだが、それを頭から追い出すように私はこう言った。 
水銀燈「…ごめんなさいね、薔薇水晶…。私は、あなたみたいな良い子ちゃんじゃないの…」 
…今更、後戻りなんて出来ない…。 
こんな事でこの子の明日を掴めるのなら…私はどこまででも堕ちてやる…。 


完
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