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一度寝返ってから目を開け窓の外を見る。月はまだ高い。

今日は満月だったのか、道理で明るいわけだ。眠気も覚めるな。

いや眠れない理由はそんなことじゃない。次起きたらここで起きられるのか。ひょっとしたらすべて夢なのかもしれない。

得体の知れない世界の夢、少し長い夢、無秩序の夢の一部、目を開けさえすれば本来の生活始まる。

ずっと強く願っていたことじゃないか、帰るためだけの行動を今までとっていた・・・・・・・・・

違うのか?

長いため息が小屋の中に残って・・・・・・消えた。

体を起こし、小屋を少し眺める。

空っぽだった本棚には魔法、護身術、生活法など、さまざまな本で埋め尽くされている。

棚には食器、ベッドのすぐ横にはコートがかけてある。

ランプだけがあった小屋とは思えないほどである

すっかり馴染んでしまったな・・・この空間も。伸びをしながら立ち上がる、意外と片付ける性格だったんだな・・・家じゃもっと汚れてるぞ。

んなこと考えてたらすっかり覚めちまった。俺はコートを着、明かりも何も持たずに外に出た。

ドアが開くと同時に目に入る。初めて来た時と変わらない、無限に広がる草原、少し遠くにぼんやりと光る小さな塊、尖塔のような山を除けば後は空に散らばる無数の星々しかない。

時折・・・体を突き抜けるような風。それに合わせて舞う草、星の光を浴びて昼間とはまったく違った色を見せる。

足が前に出る、風は向かってくるのに背中を押している。当ては無い。遠くの光が人里となり、山の頂上が見えなくなろうとも気にせずに足を出す。

結局、それらが見えなくなろうとも足を進め続けた。着いたのは湖。妖精の出る湖とは違って、向こう岸に回れがすぐいけそうな小さく、水面には月を映し出していた。

ミズウミだからか・・・波の音も聞こえるのか。俺は思った。波の音なんて久しく聞いていない。きっと・・・家族旅行以来のはずだ。砂山を作って、泳いで、岩場でかにに爪で挟まれて半べそかいたっけ。ガキだったなあ、俺も。

足元の石を拾って手首だけでやさしく投げた。石が沈む音が聞こえて、月がゆがんだ。

きっと・・・さ、幻想郷(ココ)はこの水面に写る月みたいなものなんだ。手ですくってもとどまらず指の間から零れ落ち後に残るのは水滴だけ。

いずれは終わる。日本の中に潜む限りある、夢。夢の中に現の人は住めっこ無い。

でも、迷うってしまうのは・・・きっと・・・

「どうしたの?」

アリス・・・

「霊夢に言われなかった?夜は出歩くなって。」

少し笑いながら冗談交じりでアリスは言った。

「知ってたの?ここ。」

風でブロンドの髪を浮き、何かがあたったのか右目を閉じ右手でそれを撫で、左手で後ろではためくロングスカートが気になるのか太ももを押さえながら。アリスは湖の月が見えるところ---俺の隣まで歩いてきた。

アリスの並んだ瞬間。体中がしびれる、心臓の、超音波のような音が周期的に何度も、何度も回数を重ねるたびに感覚が徐々に失われそうだった。

「初めて、来た。」

落ち着いて呼吸をするように、しかし途切れ途切れで呼吸になっていないのだが、話す。

「いつも・・・・・・来てるのか。」

「満月のときだけね、晴れてないと行かないけれど・・・・・・」

アリスは風で浮いている髪を左手で押さえながら、こっちの様子など気にせず話している。

やわらかくウェーブがかかったブロンド、卵型の小さな顔に大人っぽいがやや幼さの残るサファイアブルーの目に少しはねた長いまつげ、小筆でさっと書いたような小さな唇、肌はきめ細かく月の光で輝いてさえも見える。やさしめのスカイブルーのドレスにフリルのついた首もとのリボン。

何度も会ってきたのに、目が行かなかった、行かせる事をタブーとし続けた、アリスの姿。

ずっと・・・・・・・・・ずっと、アリスがいとおしかった。

「で、ここに来るとよく見えて・・・・・・」

さらにアリスは近づく、話はまるで耳に届いていない。理性が飛びそうだった。このままさらに引き寄せて、このまま・・・このまま・・・・・・

「なあっ」

大きめの声でアリスを呼ぶ、溺れそうになってちょうど地上の空気を吸うような声だったと思う。迷いと理性と感情がごった返して苦しい、アリスと目が合う、我に返った、戸惑った、困りきった表情をしていた。

「ゴメン」

同時だった。少し遅れて「なさい・・・」と消えそうなアリスの声を残して風の音しかしなくなった。

迷いの苦しさよりもこの時間のほうがずっと苦しかった。もがくことすらできない真っ黒な海に突き落とされたような、絶望感。

「邪魔だったみたい・・・本当に・・・・・・・・・ごめんなさい。」

アリスは背を向ける。俺は・・・・・・俺は・・・・・・

「まってッ・・・・・・く・・・れ。」

すでにアリスは飛んで行った後だった。アリスのなびく髪の後ろから流れた雫が俺の出した手のこうに落ちた。弾けるような音の後には無音しか残らなかった。

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最終更新:2010年03月01日 17:26