池沼の姉を持つ少女
桜が丘高校 二年 平沢憂
私には一歳年上の姉がいます。姉は「知的障害者」です。
私と姉は、小中学校は同じ学校でした。
小学校低学年の頃は、「お姉ちゃん、お姉ちゃん。」とよく姉を慕い、
友達にも、「この人私のお姉ちゃん。」と自慢げに話すほどでした。
しかし、学年が上がるにつれて私の姉に対する思いや態度は段々と変わっていきました。
周りの姉を見る目が違うと気が付き、姉の存在をどこかで恥じている自分がいたのです。
そんなある日、同級生の数人の男子が私のところに来て、
「お前の姉ちゃん意味わからんこと言うし臭いし、嫌いじゃない?」
と、突然姉の悪口を言ってきたのです。
私はその時、(ああ、周りの人はそんなふうに姉を見ているんだ。)と、
とてつもなく大きなショックを受けました。
まだ暑さの残る季節でしたが、全身が震え、鳥肌が立ったことを今でもはっきりと覚えています。
中学生になり、また姉と同じ学校での生活が始まりました。
入学前は、また前のようなことがあるのではないかと不安でしたが、
そんなことはなく楽しい毎日を過ごしていました。
でも、見たくない光景を目にしました。姉が廊下を歩いているだけで、
くすくす笑われているのを見た時は、やるせない気持ちになりました。
それでも他人のふりをする自分に腹が立ち、情けない思いでいっぱいでした。
家での姉は気に入らないことがあると叫び声をあげ、物を投げたり、
私の手を血が出るほどに噛んだりします。
私は姉のそういった行動の意味を理解しようともせず、お仕置きと称して怒声をあびせ暴力をふるいました。
姉は何度殴られようとも、泣きながら、ただただ私の気がすむのを待つのです。
その怯える姿を見るのは辛くその度後悔するのですが、姉は同じ過ちをくり返していました。
ある日、姉がいつものように、大きい声をあげ暴れていた時のことです。
腹の立った私は、いけないと思いつつ、また手を出していました。
すると強い声で、「やめてー。」とはっきりと言ったのです。
それを聞いた時私はハッとしました。
「私は姉を何だと思っていたのだろう。周りの目なんて関係ないんだ。
一番姉を差別的な目で見ていたのは周りの誰でもなく自分だ。」
と気が付いたのです。
それ以来、少しずつ姉妹として分かち合い、支え合えるような関係を築いていこうと思いました。
「知的障害者」のことをよく知らない人に、「どういう人?」と聞かれても、
私は姉のことを、我ままで少し気持ちの表し方が不器用だけど、明るくて優しい人だと言います。
(2011.08.28)
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最終更新:2018年02月13日 21:48