あずなんの悲劇
ある日の午後。
珍しく部活が休みな梓は学校から帰宅の途中にいた。
梓「今日は家でギターの練習でもしようかな」
真面目な性格の梓は部活が休みでも練習のことを考えている。
・・・ふとその時、後ろに不気味な気配を感じ振り返った。
唯「(^p^)」
梓「ぎゃあ!!」
思わず梓は大声をあげてしまった。
それもそうだ突然自分のすぐ後ろに間抜けな涎と鼻水を垂らしたブサイクな池沼がいれば誰でも驚く。
梓(びっくりした・・・この人、確かこの近所で有名な池沼じゃ)
唯はこの近所では悪名高い池沼として有名であった。
万引きの常習犯であり時には自分より弱い子供に悪さを働き警察沙汰になることも度々である。
またこの池沼には憂という妹がいるが梓と憂は同級生であった。
この憂もまたある意味で唯よりもたちが悪いという評判を耳にしている。
前述した通り唯が警察沙汰の事件を起こしても施設送りにならないのは憂によるものだという。
唯と憂は両親不在の二人暮らしをしている。
池沼の姉の保護者代わりの憂は異常なまでに唯を溺愛している。
唯が事件を起こしたとき憂は姉は障害者ということを主張し事なきを得ているのだ。
むしろ被害者は唯のほうであると言い張り、周りを悪者扱いし好き勝手しているのだ。
そういうことで平沢家姉妹は近所でも近づくと碌なことが無いと嫌われていたのであった。
そういうわけで梓は唯を無視して離れようとする。
しかし唯は逃げる梓の後ろにぴったりくっついて着いて来るのだ。
しかも唯は「あう~あう~」と気持ち悪いうなり声をあげてついて来る。
唯「あう~あう~(^p^)」
梓(何でついてくるのよ~!!きもいよ~!!)
この恐怖に堪らず梓は走りだした。
しかし唯もそれにつられて走り出す。
梓はギターという大荷物を背負っていたため池沼を振り払うほどのスピードが出せないでいた。
そしてとうとうばててしまいその場に立ち止まってしまった。
後ろを振り返ると唯はまだいる。
唯「むひぃーむひぃー("p")」
重度の池沼で常人よりも体力が無い唯はとても苦しそうだ。
その苦しむ様子はとても人間とは思えぬ程に醜く梓は更に恐怖した。
しかし流石に池沼とはいえその様子を心配した梓は唯に声をかける。
梓「大丈夫ですか・・・それと私に何か用ですか?」
唯「むひぃーむひぃー("p")」
唯は苦しそうな声を上げるだけで梓の問いに答えようとしない。
そもそもこの池沼に会話が通じるかどうか疑問であるが。
梓「ちょっと・・大丈夫ですか・・」
唯「むひぃーむひぃー("p")」
唯「ゲロゲロゲロブべべボボボ("p")」ビッチャー
梓「きゃあああ」
唯はゲロを大量に吐いてしまった。
ゲロは道路に散らばり悪臭を放つ。
ゲロが跳ね梓の服に付着する。
梓もこれには勘弁してくれと思うのであった。
梓「ちょっと、勘弁してくださいよ!!」
堪らず非難の声を荒げる梓。
唯はというとゲロを吐いてすっきりしたのだろうか呼吸が整い何やら喋り始めた。
唯「ギー太!!(`p`)」
梓「えっ!?」
唯「ゆいのギー太かえす!(`p`)」
梓「ギー太?(ギターのこと?)」
わけのわからない梓であったが突然唯は怒り出し梓に飛びかかった。
そして梓の背負うギターを奪おうとする。
どうやらこの池沼さん梓のギターを自分のギー太だと思い込み取り返そうとしているようだ。
梓「止めてください!!これは私のギターです!!」
唯「だめなの!!ゆいのギー太かえす!!(`p`)」
池沼であるため加減というものを知らず唯は物凄い力で梓に突っかかる。
唯の服は涎と鼻水で汚れており更に先ほどのゲロも付いていて汚い。
そんな有様の誰も触りたくない唯が抱きついてくる。
しかも自分の愛用するギターを盗もうとするのだから梓は堪ったものではない。
梓はもうパニックになってしまった。
唯「ギー太!!ギー太!!ゆいの!ゆいの!(`p`)」
梓「ちょ!離して!!・・・離せって言ってんだろ!!糞池沼!!!!」
バコーン!!!
パニックになった梓は思わず唯に顔面に思いっきり右ストレートを食らわす。
見事にクリーンヒットし唯はぶっ飛んで後ろにあるコンクリートの塀に頭をぶつけてしまった。
唯「・・・("p")」
今のはかなり効いたのだろう。
唯はその場に倒れ動かなくなった。
正当防衛とはいえ流石に心配した梓は唯に声をかける。
梓「あ・・・すみません、大丈夫ですか?」
唯「・・・("p")」
返事がないただの屍のようだ・・・と言っている場合ではない。
梓は焦って唯をつついてみる。
すると僅かだが反応があった。
良かった、生きていたと安堵するのも束の間。
唯「びえええええええええええええ!!ゆいいたい!!("p")」
唯のお得意の池沼泣きが始まった。
馬鹿でかく間抜けな泣き声が辺りに響き渡る。
何事だと近くにいた歩行者達が集まり始めた。
梓「ちょ・・ちょっと(やばい!人が集まってきちゃった!!)」
唯「びええええ!!ゆいわるくないのにぶった!!むーヒッく("p")」
梓「ええー!?(先にちょっかいだしたのはそっちなのに!)」
唯「びええええええええ!!ヒッく("p")」
次第に人だかりができ梓は逃げたくても逃げられない状況に追われてしまった。
唯は一向に泣き止む気配がない。
梓「私は悪くないんです・・この人が・・」
唯「びええええ!!ゆいわるくない!!いたいいー!!("p")」
梓が弁解しようとしたが唯の池沼泣きによりその声は遮られる。
一方で興味本位でこの様子を見物している人は
またあの池沼か・・・と梓に同情の視線を送る人もいれば
唯の間抜けな池沼泣きがツボに入り笑いを堪えている人もいる。
梓はどうしようか悩んでいたその時、物凄い気配を感じ後ろを振り返る。
梓「・・・う、憂・・」
梓が目にしたのは顔を真っ赤にし鬼のような形相で梓を睨み付ける憂の姿であった。
憂「お姉ちゃん・・・何てことするの!!梓ちゃん!!」
梓「そんな・・・私は悪くないのに」
必死に事の有様を話そうとする梓。
唯「びええええ!!ゆい!わるくない!ぶたれた!("p")」
しかし唯が悪くないと主張し憂は梓の言うことを聞こうとしない。
憂「お姉ちゃん、頬が赤く腫れている可哀相に・・・殴られたのね」
梓「確かに殴ったことは認めます、でもそっちがはじめに・・」
憂「まあ!殴ったのね!酷い!障がいをもつ姉を殴るなんてまともな人間のできることじゃないわ」
梓「だからそれは謝ります、でも・・・」
憂「謝ってすむ問題じゃないわ!ああ頭から血が出てる殴られた拍子にぶつけたのね!」
何を言っても受け入れてくれない憂の態度に梓は怒りと同時に悲しみが湧き上がってきた。
梓「うう・・・だから・・・わたしは・・・」
憂「まだ言い訳する気!?救急車を呼んでください!!早く!!」
唯「びええええええええええ!!!("p")」
憂に怒鳴られ救急車が呼ばれた。
事が大事になってしまい焦る梓はとうとう泣き出してしまった。
梓「うえ・・・うう・・・わたしは・・・うう」グスグス
憂「今度は泣き落とし?呆れるわね」
梓「うう違う・・・」ズビズビ
憂「お姉ちゃん、吐いちゃって・・・そんなに酷く殴られたのね可哀相」
梓「それは私のせいじゃ・・・」
憂「みなさーん!!桜ヶ丘高校の中野梓さんは障がい者に暴力を振るうとんでもない子ですよー!!」
梓「止めてよぉ・・・憂・・」グスグス
憂はその後も大声で梓を罵倒し続けた。
数十分後、救急車が到着し大泣きする唯は憂と共に病院に運ばれていった。
梓「どうしてこんな目に・・帰ろう」
後に残された梓はようやく落ち着き家に帰った。
せっかく早く帰れたのに池沼姉妹に振り回され家に着いたのはいつもと同じ時間であった。
梓「ただいま・・・」
梓「今日はもう何もする気にはなれないや・・・寝よう・・・」
とんだ災難に襲われ疲れてすぐ眠りに付く梓。
今日のことは不幸な事故だと忘れようとする。
・・・しかし今日の出来事はこれから起こる悲劇のほんの序章に過ぎなかった。
その晩、梓は心身共に疲れきってしまい夕飯も食べずに風呂に入り眠りにつこうとした。
梓「ああ、明日学校に行きたくないな・・・」
梓はベットの中で今日の出来事を思い出していた。
泣き喚く池沼。
そして鬼のように怒る憂。
梓「うう・・・憂に会いたくないよ・・」
梓と憂は同じ学校の同じクラスの同級生として昔はそれなりの交流があった。
憂は成績も優秀で、性格も良さそうであり梓とも仲は良いほうであった。
しかし、ある日を境に憂の異常性を知ることとなる。
それは憂に池沼の姉がいて介護に追われ部活も出来ず遅刻も多いことを梓が初めて知った時のことである。
梓「お姉さんを施設に入れたらどう?」
その言葉は今となったら確かに無神経であったかもしれない。
しかし梓は決して唯を馬鹿にした訳ではなく憂を気遣ってかけた何気ない一言であった。
・・・が次の瞬間、
憂は顔を真っ赤にして大声で梓に飛び掛ってきたのだ。
憂にとっては唯の悪口、そして施設の話は禁句である。
この時は結局、梓が障がい者の悪口を言ったとされ謝ることとなった。
それ以来、憂から梓に話しかけることは無くなり仲は疎遠となってしまった。
憂と同じ中学の出身者から聞けば憂は成績も良く一見は優等生に見えるが、
唯の事になると豹変し唯と共に近所の評判はあまり良くないという。
そのことを今回の件で身をもって痛感した梓であった。
そんな過去のことを思い出しながら何時の間にか梓は眠ってしまった。
─翌日
いつもの様に目覚めた梓は身支度を整え朝食をとる。
昨日の事もありあまり食欲が無かったが、
昨日は夕飯を食べずにいたし両親を心配させたくなく無理矢理食パンを口に入れる。
そして憂に会いたくなく憂鬱な気持ちながらも学校に向かった。
そんな梓の心配は杞憂となった。
憂は学校を休んだのだ。
教師は特に憂の休みの原因については触れず少し気になったが
とりあえず安心した梓はいつも通りに授業をうけ部活を終え帰宅した。
だが家に着いた梓を昨日の悩みの元凶が待っていた。
梓「う・・憂!!」
憂「あら、お帰りなさい梓ちゃん」
梓「どうして!?今日学校休んだんじゃ」
憂「・・・ええ、誰かさんにお姉ちゃんが怪我させられたからずっと病院にいたのよ」
梓「・・・」
憂「精密検査をしてきたわ」
梓「そんなに酷い怪我だったの?」
憂「・・・いえ、幸いにも異常なしですって」
憂「頭を打ったから脳に異常が無いか心配だったけど」
梓(いや・・・もともと頭がおかしいだろって)
憂「それでね、やっと落ち着いたから今日は病院の検査費や治療費もろもろを請求しにきたの」
梓「・・・ええっ!!」
憂「当然でしょ!!誰のせいで怪我したと思っているのかな?」
梓「ちょっかいは先にそっちが出してきたのよ、私は正当防衛で・・・」
憂「・・・ふざけないで」
憂「だいたい梓ちゃん!お姉ちゃんは・・・」
その後、数十分に渡り口論は続いた。
・・・といっても殆ど憂の罵倒ばかりで梓は口答えできずにいた。
不幸にも梓の両親は共働きで不在であるため梓一人で憂の対応をせざるをえなかった。
結局憂は日ごろの不満と梓の人格を否定する暴言をぶちまけ請求書を渡して帰っていった。
梓「こんなに払えないよぉ・・・」グスッ
そこに書かれた請求額は高校生にとってはかなり高額の請求であった。
余計な心配をさせたくないと思う梓は両親に相談できず眠れない夜を過ごした。
―平沢家
憂「お姉ちゃんを悪く言う奴は許さない・・・」
唯「あう?(^q^)」
憂「ふふふ、ね、お姉ちゃん」
唯「うーい?うれちいの?(^q^)」
憂「何でもないのお姉ちゃん、怪我して可哀相に・・・」
ブブブー!!
唯「あーうんちでたー(^q^)/」
憂「何やっているの!!だから馬鹿にされんだよ!!池沼がア!!!」
バシーン!!
唯「びえーーーーーーーー!!("p")」
憂「あああ・・・ごめん、お姉ちゃん、私ったら!!」
唯「びええええええええええ!!("p")」
憂「ごめんね・・・ごめんね・・・うう・・・」ボロボロ
憂「お姉ちゃんは私が守るって決めたのに・・・ごめんね・・・ごめんね」グスッ
─幼稚園時代の回想
唯「うえーん!!うえーん!!("p")」
園児A「やーい!!やーい!!へんなやつー!!」
園児B「ウンチくせー!!」
憂「やめてよ!おねえちゃんをいじめないで!」
園児C「だって、おかあさんが、ゆいちゃんはみんなとちがっておかしいっていってたもん!!」
唯「あうー!!("p")」
園児D「ね、『あうー』しかいわないし、やっぱおかしいよ」
憂「おねえちゃんはおかしくないもん!!」
園児E「それにゆいのやつ、まだオムツしてるんだもん、おかしいよ」
園児F「ねーウンチもらすんだもん、おかしいよー」
憂「うう・・・おかしくないもん!!」グスッ
先生「こらー!!みんな何しているの!!」
園児A「せんせーだ」
園児B「ゆいちゃんがまたウンチもらしたんです」
先生「あらあら・・・唯ちゃんオムツ取り替えましょうね」
唯「あうー・・・("p")」グスグス
憂「・・・」
先生「・・?憂ちゃん?どうしたの?」
憂「・・・せんせい、おねえちゃんはおかしいんですか?」
先生「・・・そうね・・唯ちゃんはみんなとちょっと違うところがあるわ・・・」
先生「でもそれは全然悪い事じゃないのよ」
先生「さあ行きましょう唯ちゃん、ほら泣かないの!!」
唯「あう・・・("p")」
憂(『わるいこと』じゃないなら、なんでいじめられるの・・・????)
小さい子の世界はとても狭い。
幼少期の憂にとって家の中はその時の世界のほぼ全てであった。
両親は育児放棄でいつも不在気味であり、その世界に唯と二人きりの憂は必然的に姉のことばかりを思うようになる。
そう、憂にとっては唯が全てであった。
その唯が周りと違うというだけで虐められる。
唯といる時間が多いこの頃の憂にとっては唯は普通であるしおかしいことなどない。
世間の言う『普通』が判らない憂にこのことは酷いショックを与えた。
そして誰も信頼することが出来ずに自分が唯を守ることを決意したのだ。
その後も小学校、中学校でも唯は蔑んだ目で見られることは変わらなかった。
その度に憂の決意は固くなり、唯に対する思いもまた強くなっていった。
憂は姉を守ることを生きがいとして今まで生きてきたのだ。
このような歪んだ環境が憂の歪んだ性格と唯への歪んだ愛を生み出してしまった。
今回の梓に対する行動は憂にとっては当然のことであり悪気など何も感じない。
憂「お姉ちゃんは私が守るんだから・・・梓ちゃん・・・もっと後悔させてあげるわ」
そして夜が更けていった。
─翌日、学校で
憂「梓ちゃん、お金持ってきた?」
梓「無理だよぉ・・・あんな大金払えないよ」
憂「ふーん・・・ギター買うお金はあるのに障がい者のお姉ちゃんに払うお金は無いんだね」
梓「・・・それとこれとは別じゃない」
憂「ギターって高いんでしょ?お姉ちゃんも持っているから分かるんだ」
唯は25万のギターを持っている。
といっても演奏が出切る訳でもなくギー太という着せ替え人形と化しているが。
これは唯が欲しがるギターを憂が店に無理矢理クレームをつけ、
唯は障がい者ということを利用し強引に値切って買ったのだ。
憂はこのようにで他の店でも好き勝手やっていることが多い。
これも平沢姉妹の評判を悪くしている一因である。
憂「売ってお金にすればいいんじゃないの?」
梓「冗談じゃないわ!!これは大切なものなの!!」
憂「・・・まあいいわ、とにかく早くお願いね」
梓「・・・」
毎日のように憂の催促が続き、梓は元気が無くなっていく。
その様子を家族や友人達にも心配されたが、
悩みを一人で抱え込んでしまう性格の梓は誰にも相談できずにいた。
―とある日
部活を終えた梓は家に着いた。
何やら騒がしく人の気配がする。
梓「誰か居るのかな?」
玄関を覗くとそこには見覚えのある顔があった。
唯「あう~♪(^p^)/」ギーギー
・・・池沼だ!!
何と梓の悩みの元凶である池沼があろうことか自分の家の玄関に侵入し座っている。
しかもよく見ると手に石を持ち玄関を引っかき、何やら絵を描いて遊んでいるみたいだ。
これは堪ったものではない。
梓「何しているんですか!!」
唯「むひぃー!!あうー!!("p")」
大急ぎで唯を止めさせようとする梓。
しかしリミッターの外れた池沼の力は想像以上に凄く反撃される。
梓「痛い!痛い!髪の毛引っ張らないで下さい!!」
唯「むー!!(`p`)」
梓「きゃあ!!髪の毛を食べないで」
唯「むしゃむしゃむしゃ(^p^)」
中野家の玄関前は修羅場となっていた。
そこへもう一人何者かが現れた。
憂「何しているのかな、梓ちゃん」
梓「憂!!」
唯「あー!!うーい(^p^)」
憂が現れたことで騒動は収まった。
唯「あずなん?(^p^)」
憂「そうこの人は梓ちゃんよ、お姉ちゃん」
唯「きゃきゃ!!あずなん!あずなん!ゆいはゆいでつ(^p^)」
憂「ふふ、お姉ちゃん自己紹介ができていい子いい子ね」
唯「きゃきゃきゃきゃ、ゆいいいこー(^p^)/」
梓「・・・って、ど、どうして二人がここに居るんですか?」
当然の疑問である。
しかし悪びれる様子も無く憂は平然と答える。
憂「また新たに治療費を請求しにね」
梓「なんで私が払う必要が?」
憂「あの時の傷はまだ完治していないわ、完治するまでずっと払ってもらうわ」
梓「そんな・・・冗談じゃない!!」
ここまで好きにされたら梓も黙ってはいない。
直ぐに反論をする。
梓「だったら、こっちもさっき、このお姉さんが傷つけた玄関の弁償料金を払ってもらいます」
憂「・・・証拠は」
梓「・・・はい?」
憂「お姉ちゃんがやったっていう証拠はあるの?」
梓「わ、私が見ているわ」
憂「話にならないわね、そんなの証拠にならないわ、嘘ついて何とでもいえるわ」
梓「・・・なん・・・だと」
憂「こっちは沢山の人が梓ちゃんがお姉ちゃんと争っていたのを見ているわ」
憂「それに比べて何時つけられたかも分からない玄関の傷をお姉ちゃんの仕業にするなんて卑怯ね」
梓「卑怯!?」
憂「それにまたさっきもお姉ちゃんに暴力ふるってたみたいね」
梓「違うわ!それは止めさせようと」
唯「あずなん!ゆいなにもしてないのにぶったー(`p´)」
憂「ほら、お姉ちゃんもこう言ってるじゃない」
唯「あずなん!わるいこ!(`p´)」
梓「・・・」
もはやこの二人に何を言っても無駄だった。
散々梓に対する非難を言った後に請求書を渡し二人は帰っていった。
その後も数日のペースで二人は梓の家を訪ねていく。
梓は部活で遅くなる分、帰宅部である憂に待ち伏せされる形となり逃れることは出来ない。
唯達が訪れるたびに玄関が荒らされた形跡があるが憂に証拠が無いととぼけられてしまう。
この仕打ちに反論したい気持ちはかなりあったが、
正当防衛とはいえ実際に池沼に手を出してしまったことは事実なので、
心の優しい梓は強く言うことが出来ずにいた。
梓は両親が帰ってくる前に後片付けをする羽目となる。
そんな梓に我慢の限界が訪れたのはある日のことである。
いつもどおり部活から家に帰った梓はあるものに驚く。
梓「何これ・・・」
家の玄関の前には奇妙な物体が置かれていた。
恐る恐る近づく梓。
梓「う・・・臭ッ!!」
なんとその物体はウンチであった。
ウンチが玄関前に大量に置いてあるのだ。
梓「なんでこんなモノが・・・犬の糞?」
いや、良く見ると動物のわりにはウンチに全く毛が付着していない。
これは正真正銘の人間のウンチである。
梓「あいつらだ!!」
そう、梓の読みどおりこれは唯のウンチである。
ここで梓を待っている間に唯が我慢が出来ず漏らしてしまったのを憂がここに放置していったのだろう。
その二人はもういないが・・・。
梓「絶対に許さない!」
結局梓は悪臭が漂う大量のウンチを一人で吐き気を我慢しながら処理した。
―その翌日、学校の体育館裏で
憂「何、こんな所に呼び出して、やっとお金払う気になったかな」
梓「・・・いい加減にして」
憂「へ・・・」
梓「訴えるよ」
憂「証拠も無いのに?」
確かに憂の言うとおり、証拠は無い。
このまま争っても池沼を怪我させてしまった私の方が分が悪いだろう。
だが憂達が私に嫌がらせしていることは確信がある。
それにこのままひいてしまったら、また強く出られてしまう。
ガツンと言ってやるんだ!!
梓「私には確信があるしカメラで撮れば証拠ができるわ」
憂「・・・」
梓「映画研究会で借りればすぐに・・・」
おや、憂が俯いて黙っている。
これはいけるか・・・?
憂「・・・ブッ」
憂「ははははははは!!」
え?何がおかしいの?こっちは本気で怒ってるんだよ。
梓「???・・・どうしたの?」
憂「だめよ梓ちゃん、これからカメラで撮るって宣言されているのに何か仕出かすわけないじゃん」
憂「全く、どこまでお人よしなの」
あ・・・しまった。
憂「まあ私は何かしている訳じゃないし、構わないけどね」
この女・・・なんて白々しい。
このまま黙ってなんていられない。
梓「もうやめてよ!!」
憂「・・・ん?」
梓「いい加減にしてよ!!これ以上しつこいと本気で訴えるよ!!」
憂「・・・」
梓「証拠は無いかもしれないけど・・・これ以上は私だって黙ってらんないよ!!」
初めて憂にきつい言葉で反論した。
これには流石の憂も驚いたのか、しばらく沈黙が続く・・・。
憂「・・・」
梓「・・・」
憂「梓ちゃん学園祭のライブに出るんでしょう?」
梓「え、だから何」
いきなり学園祭の話?
何のことだ?
憂「確か軽音部は梓ちゃんを入れてギリギリで成り立っている」
憂「しかも梓ちゃん以外は3年生で次の学園祭は最後のライブ」
憂「今も一生懸命練習しているよね」
梓「・・・」
先輩達の顔が思い浮かぶ。
一生懸命練習する姿。そしてお互いに笑いあっている姿。
憂「梓ちゃんが今、余計なイザコザを起こして学園祭に出られなくなったら他の先輩達にどう謝ればいいのかな?」
憂「こっちが請求した額を払ってもらえれば全て丸く収まるのになあ。」
確かに学園祭までもう時間が無い。
こんな時にイザコザを起こせば練習する時間も無くなる。
もしかしたら何か問題となって最悪の場合ライブに出られなくなるかもしれない。
私一人ならいい、・・でも私が一人抜けただけで軽音部はバンドが出来なくなってしまう。
それ程軽音部は人数が少ない。だが人数が少ない分、部員達の絆も強い。先輩達を見てれば誰もがわかる。
そんな3年生の先輩に迷惑をかける訳にはいかない。
・・・痛いところをつかれた。
憂「とにかく梓ちゃんに変なことを起こす気があるなら・・・」
憂「こっちも全力で潰すよ」
勝てない・・・梓はそう思った。
憂は物心ついた頃からお姉さんを守るためだけに生きてきたんだ。
その為には他人を陥れることなんて躊躇いも無いし、そんな経験も沢山してきたのだろう。
特に人の一番の弱みに付け入る術を熟知している。
そんな憂に、今まで両親や友達に守られてぬくぬくと育った私が敵うはずも無い・・・。
梓「・・・」
憂「・・・梓ちゃん痩せた?あまり無理は良くないよ」
憂「お姉ちゃんの治療費、分割でいいから、早くね」
立ち去ろうとする憂に最後に声をかける。
梓「憂、狂ってるよ」
憂「・・・」
梓「おかしいよ・・・憂」
憂「」ピクッ
一瞬だが憂の表情が強張った気がする。
憂は振り返って言葉を返す。
憂「おかしいことって悪いのかな」
憂「普通じゃなくて何が悪いのかな」
憂「梓ちゃん、私の忠告忘れないでね・・・」
言い終えると憂はもう振り返らずに去っていった。
残されたのは梓一人である。
梓「ぅうー・・・・・」グスグス
梓は絶望に打ちひしがれてしばらく悔しさで泣きながら立ち尽くしたままであった。
―その夜、平沢家
唯「うーい、あちた、あそびたーい!!("p")」
憂「お姉ちゃん、ごめんね明日は遊べないの」
唯「あそんでくらない、ゆい、つまんない("p")」
憂「ごめんね、またあとでね」
唯「う゛ーう゛ー("p")」
憂(フフフ、今日の梓ちゃんのあの顔・・・堪らないわぁ・・・)ニヤニヤ
今日の出来事を思い出し思わずにやけてしまう憂。
その様子を不思議そうに見る唯。
唯「あう?うーい、おかちい?(^p^)」
憂「おかしい?」ピクッ
『おかしい』という言葉に過剰反応する憂。
今日の梓の言葉がフラッシュバックする。
梓『おかしいよ・・・憂』
園児『やーい、へんなやつー』
園児『おかしいよー』
幼稚園時代の記憶も呼び出される。
憂「・・・おかしくねーよ!!」
ボコッ!!
唯「あう!!("p")」
憂「何がおかしいんだよ!!いつもいつもてめーらはよオオオ!!」
唯「うーい!いちゃい!いちゃい!ごめんなたい("p")」
唯をボコボコに殴りまくる憂。
数十分後、我にかえった憂は気絶してしまった唯を見て涙を流す。
憂「・・・・ああああああああああああああああああ!!」
憂「ごめん、ごめんねぇ・・・おねえちゃん」ボロボロ
もう病気である。
しかし憂を止められる人はいない。
今の憂にはこの気持ちを晴らすのに梓に八つ当たりをするしか方法が見つからなかった。
憂「・・・」
憂「まだよ!まだ足りない」
憂「梓ちゃんはまだ反抗的な目をしていた」
憂「絶対に立ち直れないほどに潰すんだから!!」
憂「そうだ、今までだってそうしてきたんだ・・・」
―小学校時代の回想
男子「頭おかしいぞ!!この池沼!!しね!!」
唯「あーん!!あーん!!("p")」
男子「くせーよ糞もらし!!学校くんな!!」
憂「・・・」
壁に隠れて様子を伺う憂。
しかしその表情は怒りに満ちている。
・・・
場面が変わり、辺りに誰もいない廊下。
筆箱とノートを持って廊下を歩くさっきの男子。
と、その前に憂が立ちふさがる。
男子「あ、何だよお前」
憂はその問いに答えず黙ってその男子が持つ筆箱を取り上げた。
男子「なにすん・・・」
と、次の瞬間、
憂は筆箱から鉛筆を取り出し、ニヤッと笑ったかと思うとその鉛筆を自分の腕に思いっきり刺したのだ。
たちまち憂の腕からは血が流れ落ちる。
男子「・・・へ」
あまりの事に呆然とする少年。
そして大泣きする憂。
憂「うわーーーーーーーん!!」
憂の声を聞きたちまち教室から沢山の人が出てくる。
先生「どうしたんですか!!」
憂「うえーーーーん!!この子が私にいきなり鉛筆刺してきたー!!」
男子「え・・・ちがう」
当然違うと反論する男子。
しかし状況から見れば憂が断然有利であった。
先生「じゃあ誰がやったの!!」
男子「こいつが勝手に・・・」
先生「自分で刺すなんて馬鹿なことするわけ無いじゃない!!こっちきなさい!!」
憂「ううう・・・ヒッく(良かったねお姉ちゃん・・・)」ニャッ
その後、男子を学校で見ることは無かった。
・・・
まってなさい梓ちゃん・・・
潰してあげるね・・・
そしてまた夜は更けていく。
その後も憂の梓に対する執拗な嫌がらせは続いた。
結局お金を払っても次々と治療費を請求してくる。
憂は狡猾にも証拠を残すことなくほかにも嫌がらせを続ける。
学校でもその手を休めることは無い。
あらぬ梓の噂を憂が流しているみたいである。
女子高生は噂は大好きなもので直ぐに広まり同級生の冷ややかな視線が梓に突き刺さる。
先生にも呼び出されることがあった。
何でも梓が援助交際をしているという垂れ込みがあったのだ。
どうせまた憂の仕業であろう。
流石に証拠も無く何の罰も受けなかったが、
火のないところに煙はたたないというところだろうか。
教師達の梓を見る目は変わり問題児として見られることになった。
もう梓は精神的にも肉体的にもボロボロであった。
もう私の居場所なんか・・・
このままずっと眠っていたいな・・・
はは・・・
もうやだ・・・
誰かたすけてよぉ・・・
「梓!!」
「おい梓!!」
澪「おいどうかしたのか?」
梓「へ?」
ここは軽音部の部室。部活の真っ最中である。
今声をかけたのは同じ部の先輩である3年生の澪だ。
今の軽音部には梓を含めて4人しかいない。
澪、紬、そして部長の律である。
梓「・・・」
紬「悩みがあるの?梓ちゃん?」
澪「最近、梓元気ないなと思ってな、演奏のほうもな」
梓「・・・ダイエットです」
澪「へ?」
梓「最近ダイエットしているんです。何でもないですよ。気にしないで下さい。」
梓は嘘をついた。
こんなに一生懸命練習している先輩達に余計な心配をかけたくなかったからだ。
律「おいおい梓!しっかりしてくれよ!!学祭もすぐなんだしさー!!」
梓「す、すみません」
普段はあまり練習しない律も張り切っている。
やはり最後の学園祭だからであろうか。
紬「ふふ、梓ちゃん、りっちゃんが張り切っているのは梓ちゃんの為でもあるのよ」
梓「へ?」
紬「来年私達が卒業したら梓ちゃん一人になっちゃうでしょう」
澪「で、次は最後のライブなわけだ」
紬「来年もしかしたら私達のライブを見て軽音部に入る人もいるかもしれない」
澪「律のやつも人一倍張り切ってるってわけだ、部長らしく梓に何か残していきたいんだろう」
紬「梓ちゃんの為に絶対成功、いや大成功するんだってね」フフフ
律「こらー!!お前ら何話してんだー!!」
紬「あらあらいけない」
澪「そういうわけだ、頑張ろうな梓」
梓「・・・」
言えるわけないじゃないですか・・・
そんな顔されて
先輩達に余計な迷惑を・・・
言えるわけ・・・・
梓「うえ~ん」ボロボロ
律「お、おい梓どうした」
梓「ごめんざさい、なんでもないです」グスッ
梓「なんでも・・・うう」グスグス
その後も梓はしばらく泣き止むことができなかった。
今まで一人で苦しんでいて我慢してきた。
それが律達の優しさに触れ感情を抑えることが出来なくなったんだろう。
澪「・・・梓」
紬「何か・・・あったのね」
律「なあ・・・話を聞かせてくれないか・・・」
梓「べ、別に・・・」
律「・・・」
澪「・・・」
紬「・・・」
やっぱり、隠せないですね・・・
梓「・・・じつは」
・・・
律「あんの野郎!!」
澪「梓の弱みにつけこんで」
紬「黙っていられないわ」
軽音部の4人は梓の話を全て聞いた後、部活を中断し平沢家に向かっていた。
梓「先輩方、気持ちは嬉しいんですが迷惑をかける訳にはいきません」
律「何言ってんだ!そうやって一人で悩んでてもこっちが迷惑なんだ」
澪「これはもう軽音部の問題なんだ」
紬「それにかわいい後輩を散々な目にあわせて貰ったお礼をしなくちゃ気がすまないわ」
梓「先輩・・・」
梓はもう何もいうことは無かった。
結果がどうであれこの先輩達と共に軽音部で入れたことを誇りに思い感謝の気持ちで一杯であった。
そして4人は平沢家の玄関前に到着した。
律「押すぞ」
みんな無言で頷く。
律は大きく深呼吸してから力強くインターホンを押した。
ピンポーン
高い音が家の中に響き渡った。
─のはずだが家の中からは何の反応も無い。
澪「おかしいな?」
紬「留守みたいね」
律「なんでぇー拍子抜けかい」
でも憂は帰宅部だし、もうとっくに帰っているはず。
梓「もしかしたら私の家かも・・・」
紬「んーどうするここで待つ?それとも行ってみる?」
律「ん~」
これからどうしようかと考えていた矢先。
ある人物が声をかけてきた。
とみ「何かこの家に用ですかい?」
一人の老婆が見かねて話しかけてきたみたいである。
梓「あ・・あの私達、桜ヶ丘高校のものですがここの平沢憂さんに用がありまして」
とみ「ああ、平沢さん家の憂ちゃんねえ」
紬「失礼ですがあなたは」
とみ「わたしは隣に住んでる一文字っていいますわ」
紬「そうでしたか、こんにちは、琴吹と申します」
とみ「おやおや、ご丁寧に、せっかくだけど憂ちゃんは当分帰ってこないと思うよ」
梓「え?」
動揺する4人。
いったい憂に何があったというのだろうか。
とみ「なんでも唯ちゃんが警察に捕まったとかねえ」
梓「ええ!?」
一体何が起こったのだろうか。
この時まで梓はこの悲劇が意外な形で結末を迎えるとは微塵も予想してはいなかった。
―梓達が平沢家に着く数時間前
唯が警察に捕まった原因は唯を野放しにしたことにある。
憂は梓を陥れるためにあれこれと策を練り唯の面倒を疎かにしていた。
唯は憂に構ってもらえないのが不満になっていたのだろう。
新たな刺激を求め新しい場所へと一人で遊びに行ってしまった。
唯の向かった先は駅である。
ここ桜ヶ丘駅は小さい駅だがそれなりに人はいた。
そこへ奇妙な池沼が登場し、なるべく皆は目を合わせないようにしている。
唯「あう~♪(^p^)/」
唯はいつもと違う新しい環境に大興奮である。
唯「う?」
その時、唯はあるものを発見した。
唯の視線の先にはアイスを食べている幼稚園ぐらいの子供がいた。
一人で居るらしくどうやら母親がトイレにいっているのを待っているらしい。
アイスに目の無い池沼はまっすぐそっちに向かう。
唯「ゆいのあいす~(^p^)/」
男の子「え?」
唯「あいす~よこす!ゆいの!(^p^)/」
男の子「やめてよ!お姉ちゃん!僕のアイスだよ」
唯「だめー!ゆいの!(`p´)」
ドン!!
事件は起こった。
あろうことか、この池沼は男の子からアイスを取り上げようと力いっぱい押し倒したのだ。
運悪く階段の近くに居た男の子は唯の手加減を知らない力で押され駅の階段から転落してしまう。
「キャー!!」
「大変だ!!」
「早く助けろ!!」
一部始終を見ていた駅の利用者達は大騒ぎを始める。
しかし唯は呑気に奪ったアイスを美味しそうに舐めている。
唯「あいす~べろべろ~(^p^)」
「おい!!その池沼を捕まえろ!!」
「怖いよ~」
「大人しくしろ!!こっちこい!!この池沼!!」
唯「う゛ーう゛ー!!(`p´)」
あろうことか池沼は自分の仕出かした事も分からず捕まえようとする人たちに必死に抵抗する。
「てめぇ!!何するんだ!!」
ボコッ!!
唯「あう!!("p")」
男の持っていたバックで思いっきり頭をぶん殴られる唯。
「いまだ!!取り押さえろ!!」
次々に大人の男性が唯にのしかかる。
流石の池沼さんもこれには身動きがとれないでいた。
唯「ビーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!("p")」
「うるせーぞ池沼!!」
「静かにしやがれ!!」
ボコッ!!バキッ!!ズドッ!!
もはや抵抗できない唯だが騒ぐのを止めないのでなおも殴られる。
唯「ゆいわるくない!!("p")」
唯「うーい!!たちゅけてー!!うーい!!("p")」
そのうち駅員さんが到着した。
そして池沼はとうとう御用となった・・・。
憂「・・・え!?お姉ちゃんが!!」
自宅に着いた憂が受け取った知らせは唯が起こした先ほどの事件のことについてである。
大急ぎで署に向かう憂。
憂「すみません!姉は障がい者で悪い事の区別ができないんです」
警察「ん~ですがねぇ・・・」
憂「どうか穏便に・・・」
警察「しかしですねぇ、これは傷害事件ですよ」
憂「そこをなんとか」
警察「一命は取り留めたものの、相手は重症で向こうの親御さんもカンカンです」
憂「でも、姉は障がい者で・・・」
警察「それに障がい者といえ、自分より弱い幼稚園児に手をだしちゃ駄目でしょ」
今までの悪事は目を瞑られてきたが流石に今回は厳しそうである。
というのも事件の目撃者も大勢おり、駅内のビデオに唯の犯行の様子がばっちり撮られている。
唯が100%悪い事は誰の目から見ても明らかである。
警察「それに近隣住民やお店とかからもたくさん苦情がきましてなぁ」
憂「え・・・」
警察「怖い、逮捕しろとか、施設送りにしろ・・おっと失礼、とにかく今までいろいろ迷惑を被ってきたんだと」
憂「・・・」
警察「まあ、そういうわけで、こちらとしても只で帰すわけにはいかんのです」
警察「それにあなたはまだ高校生でしょ」
警察「ちゃんとした唯さんの保護者をよんで話をしますわ、ご両親をね」
憂「そんな・・・そんな、何であいつらが・・・」
警察「それまでお姉さんは預からせてもらいます、では」
今までの憂達の悪事のつけが回ってきたのだ。
今まで好き勝手され不満のたまっていた人たちは今回の事件を機に苦情をまとめて送ってきたのだ。
もはや憂と唯に味方する人たちは誰もいなくなった。
憂「なんで!!なんでよぉおおおおお!!」
憂「お姉ちゃんの面倒を見てきたのは私よおおおお!!」
憂「いまさら何で!何であいつらが!!」
憂「うう・・・わあああああああーーー!!」
憂はただ絶望に打ちひしがれて叫ぶのであった。
―数日後、平沢家
私はあの後からずっと学校を休んでいる。
あの事件以来、家に石を投げられたり、いたずら電話がしょっちゅうかかってくるようになった。
面倒なので家の雨戸を全て閉じ電話線は抜いてある。
時々誰かが尋ねてくるみたいだがお姉ちゃんのはずが無いし関係ない。
あれ以来、何も口にしていない。
しばらくしてあいつらが来た。
家の鍵を開けて入ったのだからきっとあいつらだろう。
今更何しに来たんだろう。
今まで私達をほおって置いて遊んでいて、
今更親の顔なんてしても腹が立つだけだよ。
平沢父「・・・憂」
やっぱりこいつか。
もう顔も見たくないのに。
憂「・・・」
平沢父「怒っているのか俺たちのこと」
憂「・・・」
平沢父「まあ当然か・・・」
沈黙が続く。
平沢父「話がある」
平沢父「・・・母さんとは別れた」
憂「・・・そう」
平沢父「唯が障害を持っていることが判明してから俺たちはどこかおかしくなった」
憂「」ピクッ
平沢父「母さんは今回の件で踏ん切りがついたらしい」
憂「やめてよ、お姉ちゃんは悪くないよ!!」
平沢父「唯は施設に入れる予定だ」
憂「え・・・」
平沢父「もう手続きは済ませてある」
憂「うそよ・・・うそよ!!」
平沢父「お前一人だけに苦労をかけてすまなかった」
憂「・・・やめてよ」
平沢父「なあ、ここを引っ越して俺と一緒に暮らさないか、二人で」
憂「・・・どこよ」
平沢父「憂?」
憂「お姉ちゃんはどこよ!!」
平沢父「落ち着け!!唯はもういないんだ!!」
憂「」
お姉ちゃんはもういない
お姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃん
お姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃん
平沢父「新しい環境でまた一からやり直そう、な?」
憂「・・・はは」
お姉ちゃんを守れなかった。
ふと腕を眺める。
そこには小さな傷跡がある。
お姉ちゃんを守ろうとして小学校にはじめてつけた傷。
こんなもの
ザクッ!!
平沢父「う・・・憂?」
憂は突然立ち上がりリビングにあるハサミを手に取り自分の腕に突き刺した。
何度も何度も狂ったように。
平沢父「憂!!やめなさい」
憂「・・・・・ははははははっははははっはははははははははははははははははははは!!!」
平沢父「・・・憂ィいい!!!」
パーン!!
強烈な平手打ちが憂に炸裂する。
憂「・・・」
平沢父「・・・すまん・・憂?」
憂「・・・・おとーやん、おねーやんどこー(^p^)」
平沢父「憂!!・・ういぃ~・・・しっかりしろオ!!」
憂「あうー、いじめないでー("p")」
何ということだ・・・
憂の精神は完全に壊れてしまった。
憂「あうー、いじめないでー、おねーやんをいじめないでー("p")」
平沢父「ごめんな・・・憂・・・ごめんなあ・・・」ボロボロ
平沢家には壊れてしまった憂と、
只ひたすらに泣いて謝る父親の姿があった。
―あれから約一年後・・・
こんにちは。梓です。
あの事件の後、唯先輩は予定通り強制的に施設に入れられたそうです。
その後については知りませんが、風の噂では入れられた施設で虐待され問題になったそうな・・・。
今では色々な施設を転々としているそうです。
あくまで噂ですので真偽は定かではありませんが・・・。
憂についてはあの後、直ぐに転校の手続きがとられました。
何でも今はどこかの精神病院に入院しているみたいです。
そこでも「お姉ちゃんはどこ」と毎日騒いでいるみたいです。
今はあの平沢家には誰も住んでおらず空き家となっています。
あの時の騒動は嘘のように忘れられ静かになりました。
あの事件の数日後。
私のもとにある一人の男性が訪ねてきました。
―あの事件の後の回想
平沢父「君が中野梓さんだね」
平沢父「すまなかった!!娘達が迷惑をかけてしまって!!」
平沢父「君の先輩達から憂が君にしてきたこと・・・話は聞いたんだ」
平沢父「本当にすまない」
平沢父「お金はかえすよ」
平沢父「本当は憂に直接謝らせたかったんだが」
平沢父「あいつは、もうそんな状態じゃなくてね・・・」
平沢父「・・・俺がちゃんとしていれば、あいつは姉思いの良い妹になって・・・」
平沢父「・・・」
―中学校時代の回想
平沢父「憂!高校合格おめでとう」
憂「・・・別に」
平沢父「凄いじゃないか!桜ヶ丘高校っていったら名門だぞ!!」
憂「そう」
平沢父「なあ、唯のことなんだが、お前が高校に入ったら施設に」
憂「ふざけないで!!」
平沢父「で、でも、大変だろう」
憂「・・・せっかく受かったのも意味がない」
平沢父「・・・憂?」
憂「お姉ちゃんは私と一緒に歩くだけで馬鹿にされるんだ!!」
憂「そんな馬鹿にする奴がいなくなるぐらいに私が立派になるんだ!」
憂「そのために誰にでも自慢できる高校にいって、大学にいって・・・」
憂「でもお姉ちゃんが私のそばにいなくちゃ意味無いよ・・・」
平沢父「憂・・・」
―・・・
平沢父「・・・俺は逃げていたんだな、唯からも憂からも」
平沢父「全く、親失格だよ・・・」
平沢父「・・・あいつは俺よりよっぽど親らしかったのかもな」
平沢父「あいつはただ唯を守ることに一生懸命だったんだ・・・」
平沢父「だが、憂が君や周りにしたことは赦されるべきではない」
平沢父「・・・すまない」
平沢父「赦してくれなんて今更いえないが・・・」
平沢父「いや、俺が言える立場では無いな・・・」
平沢父「すまない・・・」
その後、彼はただ私に謝るばかりであった。
―回想終わり
・・・いくら因果応報とはいえ、
今の平沢家姉妹の境遇には哀れみを感じずにはいられません。
・・・いや、忘れよう。
私が憂に何かできたことなど無い。
・・・私?
そうそう!!
私も、もう高校3年生。
高校生最後の年で部活に勉強に大忙しです。
そうそう、私、軽音部の部長になったんですよ。
一年前のライブは大成功でした。
あの時の歓声そして先輩達の笑顔、涙・・・忘れません。
新学期になって新一年生もいっぱい入部してきました。
今ではジャズ研にも負けないくらいの大所帯です。
新入生のみんなは口々に去年のライブ最高でしたって言うんですよ。
次の学園祭でも大大大成功にむけてやってやるです!!
そんな今日も練習を終えて家に帰る途中です。
・・・そういえばこの道からあの時の『悲劇』が始まったんだなあ・・・。
っていけない、忘れようといったのに。
しかし、あの時は吃驚しました。
振り返ったら唯先輩が真後ろにいるんだもん。
そうそう
ここで
こうやって振り向いたときに・・・
クルッ
唯「(^p^)」
憂「(^p^)」
梓「・・・・え・・・・・」
END
(2010.10.08--2010.10.11)
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最終更新:2019年01月13日 16:26