Change Trick 2

Change Trick vol.2


「何だ?これは?」
 上映が終わった直後、憤怒の形相を浮かべた澪が憂に詰め寄った。
「お気に召しませんでしたか?」
「当たり前だっ。何なんだ、一体。
そもそも憂ちゃん、約束しただろ?身贔屓な編集はしないと」
「身贔屓で編集をした心算は無いんですけどね」
「ふざけるなっ。唯ばかり出てい」
「澪先輩はアファーマティブ・アクションについてご存知ですか?」
 憂は怒号を上げる澪を遮りつつ言葉を返した。
「アファ……?何だ、それは?」
「差別を是正する為に取られる措置の一種ですよ。
ポジティブ・アクションの方が通りがいいのかもしれませんが。
要は冷遇されている被差別者に対して優遇的な扱いをする事で、
差別状態を解消していこうとする措置です」
「あの唯優遇な編集がそれだって言うのか?」
「怒られる程に優遇した心算も無いんですけどね。
出番を増やした程度ですし」
「折角撮ったインタビューを大部分カットしてまで行う事か?
それに、だ。お漏らしした映像まで入れる必要は無いだろ?
あれもアファ何とかアクションの一貫か?」
「いえ、あれは部活のイメージ向上の為ですよ」
「イメージアップ?イメージダウンの間違いじゃないのか?
それも部活だけじゃないぞ、唯にとってもだ」
 実際、軽音部のイメージ降下のみならず、
唯に対する心象も著しく悪いものとなるだろう。
姉を溺愛する憂が唯のイメージダウンに繋がる映像を挿入した事は、
澪のみならず全員に共通する疑問点であった。
「あれは軽音部が障害者に対する介護の心を持っている、
それを伝える部分ですよ。
誰であれ迎え入れる、そういった広い許容性を持った部だというアピールは新入生勧誘にとって非常に有効だと思いますが」
「ねぇ、憂。私達ってさ、音楽やる部であって介護部じゃないんだけど。
知的障害者の人権保護部でも無いよ?
なのにアファーマティブ・アクションだの障害者に対する介護の心だの、関係無いよね?」
 責めあぐねる澪に変わって反駁したのは梓であった。
「でもさ、音楽って無限の可能性秘めてるよね?
人権向上、戦争反対、そういったテーマを国境を越えて届けていった音楽アーティスト、それにあやかるのも悪くないと思ったんだ。
でも……確かに梓ちゃんの言うとおりでもあるよね」
 驚いた事に憂は一歩退く姿勢を見せた。
怪訝と期待を込めて、梓は口を開く。
「じゃあ……」

「うん、再編集の余地はあると思うよ。
確かにお漏らしシーンの挿入は不適切な気がするし、ね。
ただ……軽音部にお姉ちゃんに対して変なイメージ持ってる人が居る以上、アファーマティブ・アクションを全放棄しちゃうのは不味いと思うんだ。
また根拠も無いのに疑われたりしたら御免だし」
 憂は律に視線を向けて、言葉を続けた。
「私もね、ある程度妥協する心算ではいますよ。
軽音部の部員勧誘の為のビデオ、その本分は心得ている心算です。
ですが、やはりその編集やその後の扱いにおいて、お姉ちゃんを差別する結果になってはならない。その危惧もあるんです。
だからある程度のお姉ちゃんを優遇した編集は止むを得ないんですよ。
部長の律さんはどう思われますか?」
「そう……かもね。はは」
「おい律。憂ちゃんも律を巻き込むな。
律に対して言いたい事があるなら、それは全て私を通せ」
「澪先輩は黙っていてください。私は貴女になんて話をしていない。
ねぇ律さん。律さんなら協力してくれますよね?
お姉ちゃんに対して向けられる根拠の無い猜疑、それを排する為に協力してくれますよね?
それがお姉ちゃんを犯人扱いして吊るし上げた咎の報いに繋がると思うんですよ。
律さんが反省して悔い改めるのなら、私だって妥協します。
あの編集したビデオの再編集だって認めてもいい。
お漏らしシーンを消してもいい、インタビューシーンを増やしてもいい、
そう思っています」
 もともと、あの編集のビデオを認めさせる心算は無かったらしい。
敢えて使用に差し障る極端な映像で以って牽制し、それを譲歩の材料とする策だったのだ。
形の上では妥協した事になるが、結局唯の出番は多く確保されるので、憂にとっては望ましい展開となる。
否、妥協の形を取って一旦譲歩した後だからこそ、唯を優越的に扱いやすくなる。
 唯に対して引け目の残る律も巧く巻き込んでいた。
実際に律は
「……分かったよ。協力する。唯に対しては申し訳無いと思ってるしな」
と協力の意を表明した。
「ま、待てよ。大体憂ちゃんも、何時までもあの時の事を引き摺るなよ。
そもそも吊るし上げとかはやってないし、大袈裟過ぎる表現だ。
律も律だ。いい加減あの負い目を引き摺るのはよせよ」
「時間の経過に任せて、お姉ちゃんの負った心の傷は放置ですか。
それに、ですよ。律さんは失敗を引き摺っているんじゃない、失敗した経験を活かして発展的な事をしようとしているんですよ。
知的障害者差別是正、というと大袈裟ですが、少なくとも部員の心のケアには取り組もうとしているんですよ」
「詭弁だっ、そんなものは詭弁だっ。憂ちゃんは唯を優遇したいだけじゃないかっ」

「勝手に決め付けないで下さい。
それに決めたのは律さんです。
ねぇ、律さん、さっき約束してくれましたよね?協力するって。
ちゃんと行動で以って示してくださいよ?
ビデオの編集の結果がどうなるか、楽しみにして下さいね。
それがどう評されるか、楽しみにしてますから」
「ああ……分かってるよ……」
 泣きそうな声で律は呟いた。瞳の端には雫が浮かんでさえいる。
普段快活な彼女からは想像もできない、弱々しい表情だった。
「じゃあ約束も済ませた事ですし、帰りますね。
新編集を受け入れてくれる事、楽しみにしていますから」
 憂は帰りがけに、澪に耳打ちした。
「貴女が守るんじゃなかったんですか?
強くなれるんじゃなかったんですか?
大口叩いたのに期待どおりの役立たず、くすっ」
 澪の頬は一瞬で紅潮した。
憎悪に染まった双眸が去りゆく憂の背中を睥睨する。
胸中滾る憤怒に身を任せて握り締めた拳を────
「澪ちゃんっ」
悲鳴のような叫喚を上げた紬が澪の左手を掴んでいた。
握り締められた拳は、振り上げる前に紬に抑えられた格好になる。
「気持ちは分かるっ。痛い程に分かるっ。 でもお願い、落ち着いて?ね?」
 澪の拳の震えが伝わったように、紬の声は震えていた。
澪は笑顔を作りながらそれに答える。
傍目にも無理に作った笑いとすぐに分かるくらい、歪んだ笑みだ。
「……分かってるよ、大丈夫だよ。
野蛮な事はしないさ……抑えるさ……」
「そう……」
 それでも紬は、憂が完全に部室を出るまで拘束を解こうとはしなかった。
ドアを閉める音が響いた時になって、漸く澪は拘束から解放された。
それと同時に、握り締めていた拳を開く。
「ごめんね、澪ちゃん。憂ちゃんの発言は擁護できないくらい嘲弄的だったわ。それでも」
「それでも暴力はいけない事だ。分かってるよ。ところでムギ、絆創膏持ってないか?」「今日は持ち合わせが無いわ。どうしたの?」
「いや、やっぱりいいよ。絆創膏貼る程の事じゃないしな」
澪はそう言うと、紬に向けて掌を見せた。
「っ」
紬は絶句した。澪の掌には爪が食い込んだ痕がくっきりと残り、所々皮膚を破って淡い赤色を見せていた。
「澪……皆……ほんとゴメンな」
律が俯いたまま、謝罪の言葉を口にした。
「あ、いや。律は悪く無いよ。悪いのは……私だってそうさ。
律を守るだなんて大口叩いておきながら、このザマだ」
 澪は自嘲気味に笑った。
「私だって、憂ちゃんに何も言えなかったわ。ごめんなさい」
 紬の声が澪に続く。
「でも困った事になりましたね。ビデオ編集しようにも、マスターは憂が持ってます。
あれを取り返すか新しく撮り直さない限り、結局憂の望む唯先輩大活躍な阿鼻叫喚のビデオになりますね」
「それ以前に、あの女は言葉巧みに律から言質を取ったからな」
澪の憂に対する呼称が蔑むものへと変わっていたが、誰も咎めなかった。
「結局言いなりにならざるを得ないわけね」
紬が諦めたように口にした。
「ああ、それについては」
梓が言いかけた時、扉の開く音がした。
「あら?どうしたの、皆? やけに暗い顔してるけど」
顧問の山中だった。
「何でもないですよ」
律は無気力に返したが、紬の対応はもう少し丁寧だった。
「先生、今日は吹奏楽部の方では?」
山中のティーカップを用意しながら、言葉を放つ。 実際に今日は来れないと言っていた。
だからこそこの機を狙って、憂が上映日を設けたのであろう。
「その心算だったんだけどね。ちょっと気になる事があって、ね。
本当はもうちょっと早く来れれば良かったんだけど、遅かったみたいね」
「遅かった?」
「憂ちゃんの上映、もう終わっちゃった?」
「ええ、終わりました」
「どうだった?」
紬は答えあぐねた。
澪が代弁する。
「酷い出来ですよ。唯、唯、唯の連発。挙句の果てには、唯が粗相をやらかした映像まで挿入してました。流石にそれは没になって再編集、って事になったんですけどね。
マスターはあの女が持ってますから、多少マシになるだけでどうせ唯尽くしですよ」

「澪ちゃんがそこまで言うのなら、相当みたいね。確かに危惧はあったわ。私ね、貴方達の事が心配で、関わらないと言いつつも吹奏楽部の子を通じて撮影の様子を訊いた事あったの。そうしたら、憂ちゃんの過干渉が凄いらしい、って話訊いてね。
でもそれだけで判断するわけにもいかないから、この前渡されたコピーディスク見てみたの。そしたら…… 貴方達も苦労したみたいね。
でも不幸中の幸いなのが、ちゃんとインタビュー映像や貴方達の映像もあったって事。
安心して?私の方でも編集しておいたから」

そう言うと、山中はディスクを紬に渡した。
「先生……これ」
「まぁ、見本の段階だけどね。
一応見てみて?要望があったら再編集受け付けるわ。
っとごめんね?折角お茶淹れてくれたのに、今日は吹奏楽部の方に時間割かなきゃいけないの。 そろそろ行くわ」
 山中は頼もしげにそう言うと、部室を出て行った。
「取り敢えず、見てみましょうか」
紬は山中のディスクをPCに挿入し、再生した。



結果を言えば、上出来な編集だった。
唯が全く出てこないわけではなく、一応は登場してもいた。
だがそれは無難な場面のみであり、憂の編集にあった過激な場面はカットされていた。
インタビューや音楽の挿入タイミングも上々であり、
最後に猫耳を付けた梓の映像で締め括られている。
「最後が気に入りませんが、上出来ですね。
やればできるじゃないですか、さわ子先生も。
それにあの先生、何気に憂の悪辣さにも気付いたようですしね。
それなら安心です。
うん、この編集を使いましょう」
 梓は明るい声を出して立ち上がった。
だが律は暗い声で返す。
「いや、ゴメン。私は無理だ。憂ちゃんに協力するって言っちゃった手前さ。流石にこれ以上不義理を重ねるわけには……」
「律、何を言っているんだ。
あの程度の事、もう忘れてしまえばいいんだ。
あの女が明らかに無茶を言っている」
「駄目だよ。だからと言って、
唯を根拠も無しに疑った事を一方的に水に流したら、
それこそ憂ちゃんと同レベルだ。ましてや約束破るなんて、な」
「そうは言うけど」
 なおも反駁しようとした澪を手で制止して、梓が言葉を挟んだ。
「澪先輩、律先輩の立場に立って考えれば、
流石に約束反故にもできないでしょうよ。
負い目がある、っていうのは、
律先輩みたいに根は真面目な人には結構致命的ですから」
「だが梓、お前はさわ子先生編集の方を使う、って言ってたじゃないか。
さっきと今で言ってる事が違ってないか?」
 梓は柔和な笑みを浮かべた。
「私に任せて下さいよ。いい考えがあります。
律先輩を守って、そして軽音部の新勧ビデオも用途を為すものに仕上げて見せます」
「何か……考えでもあるの?」
 紬は不安そうに問うた。
その不安を払拭するように、梓は胸を張って答える。
「ええ、あります」

「何……これ?」
 次の日の放課後、軽音部の部室で憂は怒りに震えた声でそう口にした。
「さわ子先生が編集してくれたビデオだよ。
これを新入生勧誘に使う。
憂には悪いけど、憂編集バージョンは没って事になったから」
 梓は悪びれる様子もなく返した。
「なっ。お姉ちゃんが殆ど出てないよ?
こんなの認められないもん」
「憂に認めてもらう必要とか無いからさ。
それに一応、申し訳程度だけど唯先輩も出演してるよ?
でもしょうがないじゃん?唯先輩頭に障害持ってて、
醜悪な事やらかしちゃった映像多いんだもん」
 憂は律に鋭い一瞥を投げた。
「どういう事ですか?律さん。
説明してもらえますか?」
「それは……」
 律は気まずそうに口を開きかけたが、すぐに梓が引き取った。
「律先輩に言ったってしょうがないよ。律先輩は最後まで憂の編集を支持していたよ?
でもね、私が黙らせたんだ。私が強制的に部員を統率して、さわ子先生の編集を推したんだよ。
文句なら私が受け付ける。でも変更は受け付けないけど」
「ふざけないでよ、梓ちゃん。大体梓ちゃん後輩じゃん。
どうして後輩の梓ちゃんが、律先輩達を統率できる?」
 憂の指摘は尤もだが、梓は動じなかった。
逆に自身を滾らせて、力強い言葉で返した。

「それはね、私が部長だからだよ」
「……えっ?」
「知らなかったかな?学園祭が終わった時、律先輩は部長を引退したの。部長は私が引き継いでいたってワケ。
だから律先輩も私の言には逆らえず、さわ子先生の編集に決まった」
「っ」
憂は絶句すると、視線を弱々しく漂わせた。
「あう?うーい、どしたの?(゚q゚)」
憂の劣勢を悟ったのか、唯が不安そうに口を挟んできた。
状況判断能力に欠けていても、憂の弱気を感知する事はできたのだろう。
「何でもないよ、お姉ちゃん……。
梓ちゃん、だからと言って」
「議論する気は無いよ。私は憂に負い目なんて無いから」
 憂の言葉を遮って、一方的に決定を宣告する。
そしてそのまま、次の言葉を放った。
「それとね、憂。一応言っておくと、律先輩は義理を果たしたから。最後まで憂の編集を推してたよ、実際。
そしてね、律先輩は今やただの部員。
部長の私にとっては、可愛い可愛い部員。だからもしこれ以上、律先輩に何か言うなら──」
 梓は憂を見据えると
「──私が許さない」
力強く言い切った。

「ああ、そう。じゃあ私、軽音部辞めるね。
お姉ちゃん冷遇するようなトコ、居たくないから」
憂は自身の退部を駆け引きの材料にしようと試みたようだが、梓には通じなかった。
「どうぞ? まぁ入部さえしていなかったんだけどね、体験入部の段階だったし。何より私が、部長の私がまだ承諾してなかったし」
「梓ちゃん、何言ってるか分かってる?
来年度、一人で三人集めるって事だよ?」
「一人じゃないよ、先輩達が残してくれたビデオがある。 これがあれば、先輩達と勧誘できるって事だよ。物理的にはともかく、精神的にはね。だから、部員を傷つける憂は要らない」
食い下がる憂に対して、梓は毅然と応じた。
「ああ、そう。集まるといいね。変な噂流れないといいね。
障害者虐めてる部活ですよ、そんな噂が流れないといいね」
憂は脅迫めいた捨て台詞を吐いたが、それさえ梓には通じなかった。
「そうなったら潔白証明しないとね。そうだ、あの映像を使おう。唯先輩が漏らしちゃった映像撮ったよね?
汚物の付着したオムツ振り回してたヤツ。
あれを見せれば、障害者に対しても優しく対応するハートフルな部だって証明、できるんじゃないかな?」
「……っ」
憂は絶句した。
実際にあの映像は、唯にとっても憂にとっても不名誉極まりないものだ。
憂がかつて駆け引きの材料として用いた映像が、今度は梓によって脅迫を封じる材料として見事に用い返されていた。
「お姉ちゃん、行くよっ」
「あう?かえる?(゚q゚)
やー、ゆい、もっとあそびたいっ。びぇっ("p")」
「そうっ帰るのっ。こんな所、これ以上居てやる必要ないわ。アイス買ってあげるから、帰ろ?」
「あうー、ゆいかえるー(^p^)
みおた、りった、むぎちゃ、あずなん、ばいばーい(^p^)」
憂は怒気を孕ませた荒々しい足取りで部室を去り、その後ろを唯が呑気な足取りで楽しそうに歩いていった。
帰りに買ってもらえるアイスの事で頭がいっぱいなのだろう。
唯は幸せそうだった。傍から見て悲しくなるくらい、幸せそうだった。
「ええ、ばいばい、唯先輩」
扉の向こうに消える唯の背に向けて、梓は呟いて手を振った。

「これで一見落着、か」
 澪は肩の荷が降りた様に呟くと、椅子に腰を下ろした。
「梓、ありがとな」
礼を言う律に対して、梓は手を振った。
「止めて下さいよ。部長として当然の事をしたまでですし、 それに律先輩から受けた恩をまだ返しきれてないですし」
「見事だったわ。憂ちゃんから要求を受けたのも約束したのもりっちゃん。
なら、別の人間が強制的に望ましい案を決定してしまえばいい。その為に部長という肩書きは有効。
それに部長がチェンジした時期は、どうせ外部からは分からない。
加えてりっちゃんが憂ちゃんの編集を推していたという事実を主張すれば、りっちゃんも憂ちゃん達に対する義理を果たした格好になる。流石よ、梓新部長」
紬の賛美を受けて、梓は頬を赤らめると「偶々思いついたんですよ」と謙遜した。
「しかし、弱ったな。 私が律を守りたかったのに、梓にその役取られるとはな」
澪は寂しそうに笑った。
「軽音部の皆で助け合っていけばいいんですよ」
梓は鷹揚に返す。
「あ、そういえばあのビデオ……。 憂ちゃんも出演していたわ。退部するのなら、出てる部分消さないと」
紬が気付いたように口にした。
「それはさわ子先生に頼みますか。再編集受け付けてくれるそうですし。
ああ、でも最初の全員集合の部分が消えるのか。
その部分は……撮り直しましょうか」
「いい考えだな」
「そうね、とってもいい考えよ」
梓の提案に、澪も紬も賛同した。
そして──
「決まり、だな」
律はそう放った直後に、すぐ訂正した。
「ああ、わり。決めるのはもう私じゃなかった。 私もいい考えだと思うよ」
梓に視線を向けて───
「ほら、チェンジ」と律、句を詠うに紡ぐ。
澪と紬も倣い、視線が梓に集まった。
「決まり、ですね」
梓は頼もしげに胸を張って答えた。

 <FIN>

 (2010.)

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最終更新:2016年07月03日 16:51