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4-2=2

4-2=2


小学5年生の夏休み。憂が朝早くから宿題をこなしていると、両親から祖父の墓参りを兼ねた旅行に行くと唐突に告げられた。
平沢家は裕福な家庭だったが、重度の池沼である長女・唯の介護に追われ家族旅行などほとんどしたことがなかった。
無邪気な憂は大いに喜んだ。
唯の部屋に飛んでいき、むずかる唯を起こす。
寝てる間のお漏らしでウンチまみれになったオムツを替えて、
『こぶた』という滑稽な文字と不細工な豚がプリントされた唯お気に入りの池沼Tシャツを着せてやった。
Tシャツ同様豚柄の唯のリュックにオムツとお尻拭きを詰めている間、唯は大好きなお友達の豚さんに元気に挨拶していた。

唯の朝食と朝のウンチの世話を終え、父から車に乗るようにと声がかかると、憂は唯の手を引いて後部座席に座った。
どこまでも高い夏の青空が広がる絶好の行楽日和だ。
憂の楽しそうな雰囲気が伝播したのか、唯も鼻息を荒くし興奮している。

当時はまだ後部座席のシートベルトは義務化されていなかったが、助手席の母親から唯のシートベルトを締めるように言われる。
池沼故に自分で締めることができない唯の代わりに憂がしようとするが、当時すでに肥満体だった唯は三段腹が苦しいのか暴れて締めることができない。
憂が必死になだめていると助手席から降りた母親が唯の体を押さえつけ強引に締めた。シートベルトは唯の安全のためというより拘束具の代わりなのだ。
唯は唾をまき散らしながら母を罵っている。憂が唯と母のどちらに声をかけるべきかとおろおろしている間に車が発進した。
30分ほどすると、にわかに空が曇り激しい雨がウィンドウを叩いた。

「あーう?(゚ q゚)うんた…うんた…?あう!うんたん(^q^)」

先ほどのやりとりと急な悪天候で興をそがれた憂とは対照的に、意味不明な唸り声をあげていた唯は打って変わってキャッキャとはしゃいでいる。

「うんたん♪うんたん♪うんたん♪うんたん♪(^q^)」

雨をかき分けるワイパーの規則的なリズムに、唯が大好きなカスタネットを叩くお遊戯と通じるものを感じたらしい。
満面の笑みで涎を垂らしながら手を叩く。

「おとーさ、おかーさ!ゆい、うんたんじょーずでつよ(^Q^)/」

父も母も生返事すらせず無視した。ただ一人憂だけが「お姉ちゃん、うんたん上手だね♪」と褒めてやる。

「あーう!ゆいはうんたんじょーずでつ!うんたん!うんたん!(^q^)」

増長した唯はより一層耳障りな大声でうんたん♪する。
リズムなどすでに宇宙の彼方に飛んで行っておりお遊戯にすらなっていなかったが、憂は構わなかった。
唯の笑顔さえあれば他に何もいらなかった。

恒例のお漏らしや嘔吐、唯がサービスエリアで暴行を受けて轢き殺されそうになるなどのトラブルを経て、ようやく墓所付近に到着した。
雨は上がり、強い日差しが戻ってきている。
平沢家の墓はそこに墓所があると知らなければ誰も気づかないような、茂みにひっそりと空いた坂道を登った先の神秘的な場所にあった。
駐車場も事務所もないため入口の脇で車を降りる。

「お母さん、お花買わなくていいの?」

母は聞こえていないのか返事をしない。きっと母の持ったバッグに入っているのだろうと憂は一人で納得した。

「むふー(`q´)ゆいぽんぽんついたれす(`q´)」

唯の『こぶた』Tシャツはゲロと血まみれになってしまったので、今は『おはか』と書かれたTシャツを着ている。

「お姉ちゃん、お墓参り終わったらアイス食べられるよ!」

「あーう!(^q^)/ゆいおーかまーりするれす!(^q^)」

数年前の墓参りでは唯はお菓子の代わりにウンチを供えてしまったが、池沼の唯も少しずつ成長している。もう、そんなことはしないだろう。
中途半端に覚えたトイレの躾けのせいでわざわざオムツを下ろして床にウンチを落としていた唯も、今はちゃんとオムツの中でウンチを漏らせるようになった。
憂は唯の手を引いて歩き出す。父と母はいつの間にかずっと先まで進んでしまっている。

「お父さん!お祖父ちゃんのお墓ここだよ!」

憂の記憶では子供の背丈ほどもある岩を目印にして左に折れたところに墓があるはずだったが、父たちはそこを通り過ぎて先まで登っている。

「むひぃむひぃ("q")ゼエゼエゆいもーあるけないれす("q")ンオエ」

怠惰な性格に加えて極度の肥満児である唯は数百メートルの坂道に根を上げて地面にへたり込み嘔吐した。
憂は唯の背中をさすりながら父の背中に叫ぶ。

「お父さん、待って!お姉ちゃんが!お願いだから待ってよお父さん!」

「…早く来なさい」

父はようやく振り返ると、それだけ言ってまた足を進めた。
唯は嘔吐がようやく終わったところだ。

「びえええええええええええ(>q<)ゆいおーかまーりしない!ゆいおうちかえる!("q")」

いつもの池沼泣きが始まる。
それを聞くと、父は早足で道を戻ってきた。その目は虚ろで表情が読めない。

「あう!(^q^)おとーさ、あいすよこすれす(^Q^)」

父は唯の顔をたっぷり5秒も見つめると、全力でその頬を張った。

バヂン

吹っ飛んだ唯は顔から地面に着地した。

「ぶい゛っ゛ぶう゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛("q"#)」

「お、お父さん!何するの!?」

憂は信じられない思いで父を見た。母が唯を折檻することはあったが、父が唯に手を上げたことはない。
むしろ母の行き過ぎた折檻を止める側だった。
唯の豚鼻からは止めどなく血が流れている。

「はやく…連れてきなさい」

父はそれだけ言うとまた坂を登っていく。
憂には何が何だかわからなかった。

「ぶえ゛っう゛ーい゛…ゆいのおかお、いちゃいいちゃいれす('q'#) 」

「お姉ちゃん、大丈夫!?ごめん…ごめんね、お姉ちゃん」

憂は唯が不憫でたまらなくなり、父の代わりに謝らずにはいられなかった。抱き起して顔についた土をハンカチで拭ってやる。
この日二枚目の池沼Tシャツも血まみれになってしまった。

「お姉ちゃん…歩ける?」

「んふ…ゆいうごけないれす('q'#) 」

「お姉ちゃん…。そうだ!お墓参りが終わったらね、私が豚さんのシール買ってあげるよ!」

「あう(゚ q゚)うーい、ぶたさんしーるくれる?」

「うん!だから、もうちょっとがんばろう?」

「あーう!(^q^)んひっんひっ!うーいいいこれすね(^q^)」

唯はビンタのことなどすっかり忘れて活気づく。

「ふふっ。さ、行こう!お姉ちゃん!」

「あう!うーい、はやくいくれすよ!(^q^)」

二人は再び手を繋いで歩き出した。

大量に迫ってくるやぶ蚊を払いながらしばらく歩くと坂道が途切れ、半円形に開けた平地に出た。
ここはまだ墓地として売りに出されていないのか、周囲に墓は見当たらない。
父たちは草の上に並んで座っていた。

「やっと来たか…」

父がおもむろに立ち上がる。

「お父さん、お墓参りするんじゃないの?」

「お墓参り?あぁ…そうだな…」

憂の中で違和感が膨れ上がった。父はもっとはきはきとした人のはずだ。
今日の両親は明らかにおかしい。

「唯、こっちにいらっしゃい。小さなカマキリがいるわよ」

「あう!(゚ q゚)かまき!ゆいがいきまつよ~(^q^)」ドスドスドス

地べたに座り込んで荒い息をついていた唯はにわかに元気を取り戻し母の元に駆けていく。

「ちょっと、お母さん!」

唯は虫などの小さな生き物を痛めつけて殺すことを何よりも好む。
幼い子供には多くみられる傾向ではあるが、唯は重度の池沼なので小学校高学年になっても治らない。
家族の誰もがその悪癖を嫌悪し、そうしたことを見つけたら唯を厳しく叱ってきた。
しかし唯は叱られれば叱られるほどその鬱憤を無抵抗の生き物を痛めつけることで発散しようとする。
そのためもう矯正は諦め、唯を生き物からなるべく遠ざけることで対処するようになった。
なかよし学級にも唯を生き物と触れ合う授業には参加させないようにとお願いしてある。
それなのに、母は唯の悪癖を目覚めさせようとしている。

「あ~う~(^q^)かまきさ、ゆいでつよ!(^q^)」

池沼汁やウンチやゲロで汚れた丸い手がカマキリを掴んだ。

「んふ!かまきさ、いいこいいこれすね~(^q^)」

唯が手を開くと、すでにカマキリの腹は潰れ弱弱しく足を動かしているだけだった。

「お、お姉ちゃん、カマキリさん可哀想だから離してあげようよ」

夢中になった池沼には誰の言葉も届かない。

「かまきさ、ぬぎぬぎするれすよ(^q^)ぶひっ!ぶひっ!(^q^)プヒヒ」

唯は満面の笑みでカマキリの足を毟り始めた。

「お母さん!どうして…」

憂の怒気をこめた声は急速にしぼんでいく。
母は両手にロープを持ち、唯の背中に迫っていた。

「ん゛ぐお”ふお”お”("q")」

母が唯の首にロープを巻きつけ思い切り引っ張った。デブった身体が持ち上がる。
母の目は血走り、憎悪と歓喜の入り混じった恐ろしく醜い表情をしていた。

「ぶぐ”あ゛”お”お”あ”う゛ーい゛だじ”げ”("q")」

呆然としていた憂が、唯の言葉で我に返った。

「お母さん!何をしてるの!やめて!」

母は手を緩めない。
憂は助けを求めて父を振り返った。
父も手にロープを巻きつけていた。

「ごめんな。死んでくれよ」

憂の背筋が凍りついた。いつから憂の両親は化け物になってしまったのか。

「ぐ゛”ぎ゛”ぎ゛”う゛”ーい゛”!う゛”ーい゛”("q")」

母は手を止めず、唯の顔はうっ血し、紫色になっている。
唯を助けることが先決だと判断した憂は渾身の力で母に体当たりした。
小柄な母はバランスを崩して地面に倒れた。ようやく手が緩み、ロープを離した。

「ん゛ごほっごほっぐうおえっ("q")」

首に絡みついたロープをほどき、四つんばいになってえずく唯の背中をさすってやる。

「お姉ちゃん、大丈夫!?お姉ちゃん!」

「俺と母さん、どちらかの身体に何か問題でもあったのか…」

「えっ」

父が独り言のようにぼそりとつぶやく。

「生まれたときはな、やっぱり嬉しかったんだよ。知的障害があるとわかったときでもな。この子を全力で育てていくと誓ったもんだよ。
 1年後に障害のない子が生まれたときも嬉しかった。でもな、もう限界なんだよ」

「何?何を言ってるの?お父さん」

父は一人で語り続ける。

「お父さんたち、これでも昔は幸せだったんだぞ。順風満帆でいい大学に入ったし、いい会社にも入った。母さんと付き合ってた頃は美男美女なんてもてはやされてな」

「ブヒッブッヒィィィィ(`Q′) おかーさ、ゆるたない!ぬ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ばーかしーーーーねしーーーーーーーーーーーーーーーね(`Q′#)」

回復した唯が馬乗りになって母を叩きだした。
父は苦虫を噛み潰したような顔で唯を見る。

「唯…あいつはな、人間じゃないんだよ。何で俺たちの間にあんな醜い池沼が生まれるんだよ。おかしいじゃないか」

「お父さん!どうしてそんなひどいこと言うの!人間じゃないなんて…ひどすぎる!」

「お前たちが生まれなければな、俺たちはそれなりに楽しくやってたはずなんだよ。そりゃあ子供がいないことを嘆くこともあったかもしれないさ。
 でも、いろんなところに旅行行ったりしてさ。いや、子供にしたってお前たちじゃなければいいんだ。そう、お前たちが生まれてこなければよかったんだよ」

「もうやめて!聞きたくない!」

「お前たちは生まれてきちゃいけなかったんだよ。だから、死んでくれよ」

「ブフッブフッウウウウアウアウアー!(`oo′)」

父がロープを手に唯に近づいていく。

「お姉ちゃん、逃げるよ!早く!」

ロープが唯の首にかかりそうになった瞬間、憂が唯の手を引き、身体が倒れたお蔭で難を逃れた。

「むふうううううう(`oo′)うーい、はなす!ゆい、おかーさゆるたない!(`∞´)」

構わず唯を引きずりながら来た道を駆け戻る。
唯が喚こうと息が上がろうと小枝で切り傷を作ろうと脇目も振らず走った。

気が付くと入口に戻っていた。目の前にはここまで乗ってきた車がある。
振り返るが父が追ってきている気配はない。
思わずその場にへたり込んだ。唯はすでに気絶しており大人しい。
旅行に行くと聞いたときのあのうきうきした気持ちはなんだったのか。今朝のことがもう遠い過去のことのように思えた。

「うーい、あいす、あいす(^q^)」

「ごめんね、お姉ちゃん。もうちょっと待ってね」

憂は街に下りて交番を探していた。
もしかしたらもう両親は正気に戻って憂達を待っているのかもしれなかったが、自分一人で戻る勇気がどうしても持てなかったのだ。
唯は首を絞められたことなどもうすっかり忘れていつものようにアイスをねだっている。
唯の不格好で不衛生で不潔な手から伝わる温もりだけが、憂の支えだった。

(お姉ちゃんは私が守らないと)

容姿も知性も人より豚に近い唯は、理解ある人間が側についていなければすぐ屠殺されてしまうだろう。
自分が唯を守る…その使命感がうずくまって大声で泣き出したい気持ちを抑えていた。

道行く人に尋ねながらしばらく歩くと、人の好さそうな若い警察官が立った交番が見つかった。

「あ、あの!」

「おや、どうしましたか。迷子かな」

「違うんです!あの…お父さんに殺されそうになって…」

「…はい?」

「私たち、お墓参りに来てたんですけど、お父さんたちがおかしくなっちゃったんです」

憂は両親が唯の首を絞めて殺そうとした経緯を話した。
交番の中から年配の警察官も出てきて話を聞いてくれた。
しかしまだ半信半疑の域を出ないようで、二人で顔を見合わせている。

「それで、そのお姉ちゃんっていうのはそちらの人?」

「はい、そうです」

「んひっありさんよわいれす(^q^)ゆい、つおい(^Q^)キャッキャ」

唯は地べたに這いつくばり、蟻の行列を手のひらで潰して遊んでいる。
唯のことを愛している憂でもどうしようもなく不快になったが、今は叱っている場合ではないと思い放っておいた。

「お姉さんは首を絞められて大丈夫だったの?」

年配の警官が聞く。

「お姉ちゃんは知的障害があって…。その、身体が人一倍丈夫で、少しの怪我ならすぐ治ってしまうんです。気絶したらそれ以前のことはほとんど忘れてしまいますし…」

「うん、ありゃあたしかに池沼だな…。あ、いやいやこれは失礼」

実際唯は説明の必要がないほど一目でわかる池沼である。
このいい人そうな警察官にまで池沼故に差別されるのかと内心うんざりしたが黙っていた。

「お父さんたちはまだお墓にいるのかい?」

若いほうが憂の背丈まで身をかがめて尋ねた。

「多分…」

「どうします?」

「ともかく行ってみるしかあんめえ。よし、お嬢ちゃんたち、乗りな」

交番のパトカーで墓所に向かうことになった。
年配の警察官が運転席に、憂と唯は後部座席に乗った。
狭い空間に充満する唯の池沼臭に警察官は顔をしかめたが、何も言わずにいてくれた。

「あの車は?」

墓所に戻ると、平沢家の車はまだ入口の脇に置いてあった。
すでに日は傾き、宵闇が墓所を包もうとしている。

「あ、うちの車です」

「ということはまだここにいるのかな。ふむ…。あっちの池沼…じゃなかったお姉さんはどうする?」

「ぶーぶーさん、うんちおもらしだめれすよ(^q^)んふぅぶーぶーいいこいいこ(^oo^)」

唯は先ほどからずっと豚のリュックに話しかけている。
IQ25のボキャブラリーは貧弱で「うんちおもらし」「いいこいいこ」「ゆいとぶーぶーなかよし」といった単語を延々と繰り返しているだけだが唯は満足なようだ。

「お姉ちゃんも一緒に連れて行きます。途中でバテちゃうかもしれませんけど…」

池沼の唯はじっとしていることができないので、見知らぬ場所に置いていくことは危険だ。
パトカーの中に待たせても散々暴れてシートをウンチまみれにしてしまうだろう。
それに他人がどう思おうと憂は唯の手を握っているだけで安心できた。
再び墓所に足を踏み入れることには漠然とした不安がある。唯と片時も離れたくなかった。

「よーしじゃあ出発だ。なぁに、今頃は君たちにどう謝ろうか考えているところだろうさ」

「はい…。さ、行こう、お姉ちゃん」

「あうーあうーぶーぶー、ゆいもぶーぶー(^oo^)」

憂は親指を鼻に突っ込んで豚鼻の拡張に努める唯の手を取って歩き出した。

途中で案の定唯がゲロを吐いたが、何とか平地の近くまでたどり着いた。
唯が駄々をこねても体格のいい警察官がおぶってあげようと言わなかったのはひとえに唯が池沼だからだろう。

「あの先が平らになってて、そこで、その…」

「そうか。とにかく行ってみよう」

「はい…」

坂道を上がりきると、視界が開けた。
両親はたしかにそこにいた。

「ああ…こりゃあえらいこった…」

父と母は二人並んで仲良く木からぶら下がっていた。
お互いの手を固く握りしめながら。

「お父さん、お母さん…」

憂の脚から力が抜け、膝を折ってうなだれた。

「お嬢ちゃん、見ちゃいかん!」

この光景は逃げ出したときから頭のどこかにあった。
憂を打ちのめしたのは、首を吊った両親の表情だった。

「んふ、おとーさ、おもらししてるでつよ(^Q^)ぶぶぶーくちゃいくちゃい(^q^)…あう!(゚ q゚)おかーさもぶぶぶーでつ!んひっおとーさおかーさわるいこ、おしおきでつ(^q^)キャッキャ」

父と母は、憂が見たことが無いほど穏やかで優しい表情をしていた。
首つり死体は醜いというが、そんなことは少なくとも顔には表れていない。
例え自らの意思で死ぬにしたって、身体は苦しいと訴えるものではないのか?
両親の表情は、まるで死の苦しみ以上の苦痛から解放されたとでも言いたげだった。
父の言葉が蘇る。

「お前たちは生まれてきちゃいけなかったんだよ」

唯が他の人とは違うことはもう知っていた。
ウンチや池沼汁を垂れ流し、豚のような体形で、不細工でマヌケな池沼面の唯は外を歩くだけで嘲笑と侮蔑を浴びた。
唯の奇行は大騒動を巻き起こし、嘲笑と侮蔑は憂たち家族をも巻き込む。
団地に住みながら平沢一家に近所付き合いはなかった。いつからか買い物は離れた街に行ってするようになった。
なかよし学級から一般教室に迷いこんだ唯が憂の名を呼びながら暴れ回りウンチをまき散らした事件の後、憂に友人はいなくなった。
それでも、家族の絆さえあれば大丈夫と憂は思っていた。
世界中から呪われても、家族の篝火があれば生きていけると。
だが、両親さえも憂たちを呪う側だったのだ。
私には、お姉ちゃんしかいないのか―

「うーい、うーい!おとーさ、おかーさ、ぶぶぶーでつ!(^q^)ゆい、おしおきしまちた!ゆいえらい(^Q^) んひっ(×q×)」

唯を強く強く抱きしめた。今は唯の身体に染みついた池沼臭が狂おしいほど愛おしい。

世界が私たちを呪うなら、私は全力でお姉ちゃんを愛してやる。
それが私の、この世界への復讐だ。

つづく (かもしれない)



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最終更新:2011年11月13日 02:43
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