憂「もう夕方なのに、まだ暑いなぁ~。」
憂は先程まで学校の図書館で勉強をしていた。
今日は梓や純と一緒ではなく、一人で校門をくぐりながら呟く。
憂は両手をウチワのようにパタパタさせながら、商店街へ向かっていた。
毎日、勉強に励む憂は文房具店にシャープペンの芯やノートを買いに行くのだ。
憂「(お姉ちゃん、良い子でお留守番してるかな。)」
そんな事を考えながら大きな公園の前を通ると、公園の中に唯を発見した。
『送迎バスから降りたら寄り道せずに家でお留守番をしておくように!』と憂が口酸っぱく言ってきたが聞いた例がない。
唯が寄り道する所は決まっており、この公園がほとんどである。
公園のど真ん中で池沼泣きをしているか、気絶しているかのどちらかが多いのだが、その日は違った。
公園にある金網のゴミ箱に頭から突っ込み、足をバタつかせていたのだ。
周りには4、5匹の犬がおり、ゴミ箱を囲み吠えていた。
唯はオムツしか履いておらず、体中は犬に噛まれた痕がたくさんあり、そこから血が流れている。
憂が口をポカーンと開きながら見ている時も、犬が何回か唯に噛みついていた。
上下の洋服は犬に噛み千切られたのか、ボロボロのズボンは唯の足に引っ掛かって、おしめTシャツはなぜが木から垂れている。
憂は深い溜め息をつき、重い足取りでゴミ箱へ向かった。
憂「本当にお姉ちゃんといると毎日飽きないわ。」
皮肉を言いながらゴミ箱へ近づくと、唯の泣き声が聞こえてきた。
ワンワンワン!
唯「びえぇーーん!わんわんやめちぇ!ゆい、おいちくないでつよー("q")」
憂「そうよ、お姉ちゃんはマズイわよ。ほらっ、シッシッ!」
憂は持っていたバッグで犬を追い払うと、唯に声を掛けた。
憂「お姉ちゃん、何してるの?」
唯「うーい!?うーい、ゆいこわかたよーいたかたよー!("q")」
憂「それより、何をしていたの!?」
唯「ゆい、わんわんとあそんでた(^q^)」
憂「何して?」
唯「おにごこ(^q^)」
憂「お姉ちゃんが犬を追い掛けてたら逆に犬達から追い掛けられたったわけね。」
唯「わんわん、ゆいたべようとちた!わるいこでつ!(`q´)」
憂「誰もお姉ちゃんを食べないわよ。」
唯「あうぅ・・・うーい、たつけて!ゆい、おつむいたいれす("q")」
話している間も唯はゴミ箱に入ったままで、頭に血が登り、ぶたれてもいないのに顔が赤くなっている。
憂「はいはい。よいしょっと!」
スポーン!
ゴミ箱にすっぽり入っていた唯のお腹にはフラフープのように跡がついていた。
憂「ズボン、ボロボロじゃない!犬に噛まれたの?」
唯「あう、わんわんでつ(^q^)」
憂「で、なんでTシャツはあそこにあるの?」
唯「ゆい、ぬいでぽーいしたれす(^q^)」
憂「なんで?」
唯「たかしく、はらおどりおちえてくれた(^q^)」
憂「どんなの?」
唯「こうつるでつよ(^q^)」
憂「いや、やっぱいいよ。見たら叩きそう。」
憂は唯の腹踊りを見たら我を忘れて暴力を振るうと確信していたので止めさせた。
唯「あう!ぶつ、だめ!うーい、たたかない(>q<)」
唯は『叩く』という言葉に過剰に反応した。
憂「ほら、早く着て!」
落ちていた木の枝で唯のTシャツを取り、唯に着せた。
夏は短パンで過ごすことが多い唯だが今日は長ズボンを履いていた。
ズボンの片足は千切れて半ズボンになり、もう片方はダメージジーンズのように破れている。
Tシャツは木に引っ掛かっていただけなので被害はない。
憂「今から文房具屋さんに買い物に行くから大人しくしとくのよ。」
唯「かいものでつか!?ゆい、あいす~(^q^)」
憂「アイスは買わないの!お勉強道具を買うの!」
唯「やー!うーい、おべんきょちない!あいす、よこす(^q^)」
憂「そんなこと言うなら、さっきの犬呼んで来るわよ?」
唯「だめー!わんわん、やーの!ゆい、おとなちくつる!("q")」
憂「騒いだら家でお仕置きだからね!」
憂はそう言うと、鞭を振る動作をして唯を脅かす。
唯「ゆい、いいこだからさわがないれす(^q^)」
そして、二人は文房具屋に到着した。
憂は入ってすぐに「ヤバイ」と思った。
なぜなら、天井から豚の浮輪が吊るされていたからである。
文房具屋に浮輪があるのもおかしいが、夏なので海水浴コーナーが新設されているからだ。
憂はそ?っと後ろを振り向くと、目をキラキラさせている唯がいた。
唯「うーい」
憂「ダメよ!」
憂は先手必勝とばかりに唯の言葉を遮った。
唯「ゆい、まだなにもいてない(`q´)」
憂「あの豚の浮輪が欲しいんでしょ?」
唯「うーい、なんでわかたでつか!?うーい、てんたいでつ(^q^)」
憂「馬鹿でもわかるわよ。買わないからね。」
唯「ほちー!ゆい、ぶたさんほちいでつ!(>q<)」
憂「じゃあ、このお店で大人しくしていたら買ってあげる。」
唯「ゆい、いいこだたらくれるでつか?(^q^)」
憂「そうよ。」
唯「うーい、うそつかない?(^q^)」
憂「お姉ちゃんじゃないから嘘つかないわよ。」
唯「ゆい、ぜたいいいこつる(^q^)」
唯は馬鹿にされていることもわからず、憂の罠にまんまと引っ掛かった。
唯が大人しくしているのは絶対に無理と憂はわかっているのだ。
どうせ、すぐに騒いで憂からお仕置きされるに違いない。
しかし、この時の唯は違った。
何も騒ぎを起こさずに憂の後ろをしっかりついてくる。
「あう~あう~('q')」と言いながら涎は垂らしているが、商品に手を出さないし大声もあげないのだ。
時々、気持ち悪く「んひっ(^q^)」と笑うが害はない。
憂はそんな唯に驚愕し、同時に嬉しく思った。
唯もやれば出来る子なんだ。
成長しているんだ。
そう思いながら憂が見つめる唯はただ単に学校でたかし君がしてくれた腹踊りを思い出して楽しんでいただけだった。
そんな事は露知らず、憂は唯に豚の浮輪を買ってあげようと決めた。
憂は目当ての物を探し終え、海水浴コーナーへ向かった。
憂「お姉ちゃん、良い子にしていたからこれ買ってあげる!」
憂は豚の浮輪を持ち、唯へ差し出した。
唯「あう!?('q')ほんとでつか!?(゚q゚)」
憂「本当よ!」
唯「わーいわーい♪ぶたさんおいで~♪(^q^)/」
憂「お金払うから、あっちに行くよ。」
唯「あーい!ぶたさんはじめまちて!わたちはひらさわゆいでつ!なかよしがっこう・・・(^q^)」
唯は初めて会った豚さんに自己紹介をしながら憂について行った。
店員「3,470円のお買い上げです。」
憂「じゃあ3,500円からお願いします。」
会計をしないといけないので、豚の浮輪は店員さんの手の中だ。
唯は自分の豚さんが悪い事されないかと気が気でない。
ふと、レジ横のワゴンにある物が目に入った。
唯「ああっ!!!!!!(°q°)」
憂は耳を押さえながら振り向くと唯が目をまん丸にして呆然としていた。
憂「どうしたの!?」
唯「ぶ・・・」
憂「ぶ?」
唯「ぶたさんでつー!ちったいぶたさんでつよー!(^Q^)/」
唯はワゴンに入った物を掴み、憂に見せた。
それは、豚の鉛筆削りだ。
おまけに豚の鉛筆が3本付いている。
唯「うーい、こえも!ぶたさんのえーぴつごりごり、もてかえるれす(^q^)」
憂「浮輪を買うからそれは無理だよ!」
唯「ゆい、おりこうちてた!おりこうたんのいうこときく!(`q´)」
唯は憂が怒らずに浮輪を買ってくれたので調子に乗っている。
唯「いうこときかないうーい、わるいこ!おうちでおちおきでつよ(`q´)」
憂「誰がお仕置きだって・・・?」ボキボキボキ
憂は指の骨を鳴らしながら唯に聞いた。
憂「ワガママ言う子はたーーーーっぷり、お仕置きが必要ね♪」
憂は笑顔で握り拳を作り、唯に迫る。
唯「ゆい、いっこでいいでつ(^q^)/」
鬼の憂の顔を見た唯は、超反応で憂の言う事を聞いた。
憂「今日は聞きわけが良いわね♪」
唯「ゆい、おりこー(^q^)」
毎回毎回、ボコボコにされてはたまったものではない。
ボコボコにされるのを回避する為に、唯はたまに超反応を見せるのだ。
憂「じゃあ、浮輪でいいわね?」
唯「あう(^q^)/」
唯は早く豚の浮輪を受け取りたくてソワソワしている。
店員「ありがとうございました!」
憂「はい、お姉ちゃん!豚さんだよ!」
唯「わーい、ぶたさんぶーぶー♪\(^Q^)/」
憂から奪い取るようにもらった唯は大喜びで、涎と鼻水をそこら中に振りまいている。
憂「ふふふ♪これからも良い子にするんだよ?」
豚の浮輪を担ぐように持っている唯を見て憂も自然と笑顔になる。
唯「あう!ゆい、ずといいこれす!(^q^)」
憂「私も欲しい物買えたし。しっかり勉強しなくちゃ!」
憂も目当ての物を買えたようだ。
憂「帰ろうか?」
唯「あい(^q^)」
唯は右手に豚の浮輪、左手に憂の手を握りながら店を出た。
唯「うーい、まんまなんでつか?(^q^)」
憂「今日はお姉ちゃんの大好きなハンバーグだよ!」
唯「はんばぐ!?うーい、はやくかえるれすよ!(`q´)」
憂「ちょっと!急に走らないでよ!」
唯「はんばぐーーーゆいがいきまつよーーー!!(^Q^)/」
二人とも笑顔で楽しそうに帰って行った。
走り疲れた唯がもうすぐ、ゲロを吐くことも知らずに。
==おわり==
最終更新:2016年12月23日 13:10