-[[千早メニュー]]へ ---- いつもよりも早く仕事を終え、自宅に帰ると玄関に春香の靴が置いてあった 千早と話に来たのか、千早の部屋のドアの向こうからは楽しそうな二人の声が聞こえてくる 折角来たんだしコーヒーとお菓子くらい持っていってやろうと思い 二人の好みはどんな感じだっただろうかと思い出しながらコーヒーを淹れた 数分後、コーヒーとお菓子を載せた盆を持って、ノックしてからドアを開けた 「おーい、二人と――」 目の前の光景に一瞬これは何の冗談かと本気で考えてしまった どういうわけかベッドに座った春香が向かいの千早に腕を回してキスをしていた 二人とも恍惚とした目つきで顔を赤く染め、舌を絡めあっている クチュクチュと水っぽい音と共に二人の吐息が小さく漏れる 艶のある唇が触れ合い、絡み合う舌が見え隠れしている様に ゴクリと喉が鳴り、全身が固まってしまった 何秒にも感じた一瞬がようやく過ぎ、二人がこちらの存在に気が付くと 信じられないものを見たかのように驚いた顔をすると反射するように離れた 「な、な、な、なんですかプロデューサーさん!?」 「み、見てたんですか!?」 「まぁ少々、というか何だ?二人はそういう関係?」 口元を隠しながら二人は首を横に振って否定の意思を表した 「ち、違いますよぉ!この前、千早ちゃんに上手なキスの仕方を教えて欲しいってお願いされて…… その……えーっと……あの……」 「春香もそういった経験が無くて、よく分からないから 二人で練習してみようということになったんです。 最初は抵抗が二人ともあったんですけど、段々気持ちよくなってきたというか…… 納まりが利かなくなったと言うか……」 しどろもどろに説明する二人の話から少しずつ状況を理解してみると、 どうやらキスの練習とやらをしたらそれがエスカレートし、その現場に立ち入ってしまったようだった 慌てる二人を何とか落ち着かせようとするも先ほどの二人の顔が脳裏に焼きついて離れない いつもはあまり意識しないが千早がキスする時の顔ってあんなに可愛かったんだなとふと思う さて、どうしたものかと顎に手を当てて思案しつつ、 真っ赤になってクッションを抱きしめながらうずくまる千早を控えめに観察したい今日のこの頃の俺 ---- 風が心地良い春麗らかなある日、私はプロデューサーと桜並木が列なる河川敷を一緒に散歩していた。 季節は移り変わり、この間教えてもらったこの場所も毎回来る度に変わる、前とは違うその景色に私は感嘆した。 散りはじめた桜が風に舞い、その花びらが髪を包む様な、一緒に踊ってる様な…なんだかくすぐられている様な そんな錯覚すら思える中、時折吹き荒れる桜吹雪がますます私達を現世から引き離す。 ふと気がつくとプロデューサーがデジカメを取り出して私を撮っていた。 「綺麗だな…」 「そうですね。散りはじめの桜がこんなに綺麗だなんて」 「千早が綺麗だ…」 はっきり呟くその声に私は赤面した。 「や、やめて下さい…その…照れます…」 「そうか?俺は千早が桃源郷から迷い出た桜の精に見えたぞ」 「もう…」 あぁ…この人はいつもこうだ…。 歯に衣を着せぬその物言いに私は照れつつも内面嬉しさで顔がにやけそうなのを必死で抑えながら歩いていく。 その時、目の前に桜の花びらではなく桜の花そのものが落ちてきた。 驚いて見上げると枝に止まった数羽の野鳥が花の根元を啄めていた。 「プロデューサー、あれは…」 「あぁ、たぶん桜の花弁の根元にある蜜か果肉の元でも食べてるんじゃないか?」 落ちていく花びらに混ざって一緒に落ちる花。そのうちの一つがふわりと頭に落ちてきた。 「お、千早っそのまま動くなっ!」 「えっ?!」 夢中でカメラのシャッターを切るプロデューサーに私は何がなんだか分からずただ戸惑うしかなかった。 やがて撮り終わったプロデューサーがデジカメを逆に向けて今撮った写真を見せてくれた。 そこには桜の花がまるで髪飾りの様に頭に付けながらも引き攣った笑顔の私。 「よーし良いのが撮れた!帰って早速引き延ばして皆に見せびらかそっと♪」 と、スキップしながら行くプロデューサー。私は慌てて追いかける。背中に嫌な汗が流れてむず痒い。 まっ待ってくださいプロデューサー!その顔は駄目ですっせめてちゃんとした顔の… いやいやそうじゃなくて恥ずかしいからやめてくださぁあい……くっ…! ---- 「プロデューサー、ご飯ですよ」 そう言って千早は俺の前に食事を持ってきた 両手を椅子に縛り付けられている俺は食べることができないのだが 「じゃあ…食べさせてあげますね…」 そういうと口に含み、咀嚼したものを口移しで与えてくる たっぷりと舌を絡め、食事を押し込む千早、その顔には恍惚の表情すら浮かんでいる 「私はいつまでも一緒ですから、安心してくださいね」 そう言ってにっこりと微笑む千早、いったいどこで道を間違ってしまったのだろう という想像しながらおかゆ食べてくる ---- 「千早、頼みがある。ちょっとばかし俺と結婚してくれ」 「え、ええ!?プロデューサー、何をいきなり!私、そんなまだ……」 「ああ、ちと言い方が悪かったな」 ある日の昼休み、予想通り千早は頼みごとにかなり動揺していた 突然の申し出に驚いて慌てふためく千早を、落ち着かせると 懐にしまっておいたパンフレットを千早の前に差し出した 「実は知り合いが新しいブライダルホールのオーナーになってな 広告用として新郎のモデルになってくれないかって頼まれたんだ 新婦は好きに決めていいと言われたんだけど、頼める相手がいなくてさ」 「それで私に新婦のモデルになって欲しいということですか?」 「そういうことだ」 「あの……プロデューサーは私で本当に良いんですか? もし、そうなら私にそのモデルをやらせてください」 数日後、ブライダルホールで真っ白なタキシードを着せられると、 千早が準備を終えるまで一人で教会で待つことになった 慣れないことに誘って千早に悪かったかなとぼんやり考えていると、誰かがドアをノックした 「どうぞ、開いてますよー」 「し、失礼します」 「………っ!」 やってきた千早の姿に思わず息を呑んだ。純白のドレスに身を包んだ千早は とても幻想的でありながらも、穏やかな雰囲気に包まれていた 柔らかさと眩しいくらいの魅力に満ちた彼女の姿に、思わず感嘆の念がこみ上げる 「プロデューサー、私、似合ってますか?」 「ああ、すごく綺麗だ」 「ありがとうございますプロデューサー。あの……カメラマンは遅れてくるそうです」 「千早、それにしてもやっぱり凄く綺麗だよ。俺じゃ不釣合いかもな」 「そ、そんなことはないです!私、新郎のモデルがプロデューサーでなかったら……その……」 「え?」 「あの……だから……」 急に顔を赤くしてうつむく千早がどこか初々しくて可愛さのあまり抱きしめたくなる カメラマンが来るまで一緒にいすに座ると、千早がどこか嬉しそうに微笑んでいるのに気が付いた いつか千早が本当にお嫁さんになったときは誰よりも幸せになって欲しいと願いつつ 緩やかに暖かく観察したい今日この頃の俺 ---- ある日の風景7コミュ後、千早に「プレゼントのお返し」と言われて 千早に贈ったのと全く同じ指輪を貰うんだが どうもサイズが中途半端で薬指以外ではしっくりこない でも「せっかく千早から貰ったものだし、付けないわけにはいかないよな」 なんて言って千早とおそろいのリングを二人揃って右手の薬指に嵌めて 「これじゃあ恋人同士みたいですね」って言われたい ---- 「はぁ……なんだかなぁ」 「急にため息をついてどうしたんですか?」 「いや、何故かこの時期は仕事のやる気が出なくてさ」 営業へ行く途中、ぼんやりと空を見上げると何度もため息をついてしまった 心配そうにこちらを見る千早に、なんだか悪いなと思うと余計にため息が出てしまう ふと千早を見ると、彼女は何やら考え事をしているようだった 「プロデューサー、次の営業が終わったら私からご褒美をあげますから頑張ってください」 「ご褒美?」 「はい、今はまだ秘密ですが、これならやる気が出るのでは?」 一瞬、どういうことかと疑問に思ったが千早の言うご褒美とやらがどんなものか気になった どんなものかは分からないが、千早が自分のために何かご褒美をくれると思うとなんだか高揚してきた 「よっしゃ!なら、もう一頑張りいくとするか!」 「ふふ、その意気ですよプロデューサー」 微笑む千早に元気を貰ったのか、先ほどまでの沈んだ気持ちが嘘のように無くなっている しばらくして、千早に手玉に取られたかと思ったが、たまにはそれもいいかと納得しつつ 涼しい風に揺れる髪を抑える千早の横顔を、のほほんと観察したい今日この頃の俺 ----
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