あずさ 5

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――そんな二十歳の誕生日から一年が経って
 新しいPは自分より年下で、見た目的にも自分より幼く、最初は不安を抱いていたものの、
 自分に対して誠心誠意付き合い、生活もまず第一に自分の事を考えてくれて、
 それが仕事の為とはいえ、前任のPとの明らかな差異に、笑顔も増えたあずささん。
 そして誕生日当日、自分を食事に誘ってくれると聞き、期待していたのだが、
 Pが指差したのはまた居酒屋、一気にテンションダウンしたあずささんだったが、
 良く見たら店は貸切状態で、え、と思って入ったら厨房に主人らしき者が一人だけ、
 そしてあずささんが戸惑う中Pが厨房に入って、バイトしてた居酒屋で定休日の今日、
 借りさせてもらったと説明。……冷蔵庫から出てくるのは女性向けのメニューで、
 そのどれも美味しく、ありがたく、Pお手製のケーキが出てきた時は感極まって涙ぐんでしまう始末。
 帰りのタクシー、今日は本当にありがとうございましたー、Pさん料理上手なんですねー、
 あ、あの、今度よろしければ私と一緒にー、とか言ってみたが、Pは寝てた。
 ……あどけない顔の頬に、運転手さんにバレないようにキスするあずささん隊。


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>[八時ちょうどのあずさ2号で]

「6番線ホームに列車が入ります」
アナウンスの後にホーム響くベルの音。そして滑る様に入ってくる特急。
律子さんからの情報によればこの列車にあずささんが乗っている筈…。
僕は先頭車両から目を皿のようにして窓から乗客を伺う。
その中に見覚えのあるアホ毛…いや顔を見つける。いたっ!確かにあずささんだ。
僕はその車両まで走って追う。
やがて止まった列車に飛び込む様に乗り込んだ僕はあずささんを探したー…が見つからない。
おかしい…確かにこの車両だった筈…。ふと窓の外を見るとキョロキョロと周りを見ながら歩いて行くあずささんが…!
慌てて僕は降りようとするが時既に遅く、寸前でドアが閉まってしまう。
やがて動き出す列車に僕はホームの人混みに紛れるあずささんに今日何度目かの届かぬであろう声を上げた。
「あずささぁあぁあん!!」



一週間前、あずささんに今度の誕生日プレゼント何が欲しいですかと聞いたら
「その…プロデューサーさんと二人で温泉旅行…とか、行きたいです〜」
と、ちょっと照れながら答えるあずささんに
「あぁ!すいませんっ最近忙しくて全然休み取れてなかったですね。
よし任せて下さい!疲れに聞く温泉探して一緒に行きましょう」
と答えたら何故かちょっと拗ねた顔をされた。
でも二人で温泉旅行には大層嬉しいらしく、その日からあずささんのテンション上がりっぱなしだった。
そして旅行当日、一泊二日でなんとか律子さんにお願いして休みを捻り出してもらった僕達は
まず列車で目的地に向かうつもりだった…。
ところがちょっと目を離した隙にあずささんは目的地とは反対方向の列車に乗ってしまっていた。
気付いた時には既に遅く列車は走り出していた。僕は慌てて携帯であずささんを呼び出す。
「次の駅で降りて待ってて下さい!必ず迎えに行きますから」


この後、僕はあずささんを探し、再び巡り会えるまで散々列車を乗り継ぐ羽目になった。
律子さんがGPS携帯をあずささんに持たせてくれなかったら多分一生会えなかったとこの時は本気で思った。
何しろ、律子さんがGPSの記録と列車の時刻表とにらめっこしつつ逆算して、
あずささんの位置と目的地を割り出してもいつも寸前ですれ違う状態だった。
そしてようやく最終列車でお互いたどり着いたのは目的地の駅どころか最初の駅。
明かりが消えていく駅のホームに佇むあずささんを見つけた時、何故だか僕らは笑っていた。
あずささんに近づき手を取るとちょっと残念そうにそしてとても嬉しそうに微笑むあずささん。
「とうとうつかまってしまいました〜」
もう旅行どころじゃなくなったけど何故だか怒る気になれない。
夜風が頬をくすぐるかの様に自然と笑ってしまう僕。その時初めて昼から何にも食べてないことに気付いた。
二人して盛大に腹の音が鳴り響く時、何か食べに行きますかと聞くと、
じゃあ屋台のラーメンでもと一緒に歩き出す時、
事務所の律子さんに明日の言い訳どうしようと二人してまた笑ったらお腹がむず痒い。
明日は正座してお小言だぁ…。


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トントントントンという包丁の音で目が覚める
見えるのは確かに自分の部屋の天井なのだが何か違和感
誰か朝食を準備している?
それになんだか安心するような匂いがする・・・
そして気付き、のそのそとベッドから出て今へ向かう
「おはようございますあずささん」
振り向いた彼の笑顔におもわず自分も笑顔になる
「おはようございます〜、私もお手伝いしますね〜」
そんな誕生日翌朝

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