[[千早]]へ [[千早 弐]]へ ---- >[千早と仔犬の物語・完結編] 不幸は突然来た。 朝、いつもの様に出社し、事務所のドアを開けると、皆が集まっている。 いや正確には、ぐるりと一つの物を囲んでいるのだ。重苦しい雰囲気を瞬時に感じとった千早は、 その輪の中に飛び込んだ。 箱の中には仔犬が寝ている様に見えたが、苦しそうに息をしていた。 「…!、お前、大丈…。」 と手をだそうとして、一旦止める。しかし仔犬は威嚇すらしないで横たわっているだけである。 恐る恐る、その苦しそうに息をする身体に触れてみる……。 「………!!」 その痩せた身体はあまりにも残酷だった。 そして千早は解ってしまった。 なぜ仔犬が執拗にその身を触れさせなかったのか、いつも覚悟を決めた凛とした、 それでいてどこか寂しい目をしていたのか。 「…お前、解っていたのね…。」 と口元を撫でる指に僅かに、それでも確かに舐めてくれたその時。 再び閉じた目が二度と開くことはもうなかった。 その日765プロ中のアイドルのテンションはどん底になった。 雨が降っていた。 初めて仔犬に会ったのもこんな雨の日だった。 仔犬を拾った土手の下で仔犬の墓を作ってやり、ミルクを備えて手を合わせる。 不思議と涙が出てこない。悲しい筈なのに……。 「P…。」 「…なんだ。」 「どうしてー…。」 これ以上言葉が出ない。すぐにでも泣き出したいのに、涙すら湧かない自分に呆れてくる。 雨が代わりに自分の頬を濡らしていた。 「どうして、私が幸福を掬っても、すぐに指からこぼれ落ちていくのでしょうか…。」 と、やっと、搾り出す様に千早が呟いた。 Pは何も言わず、黙って肩を抱く。このままでは崩れ落ちそうな自分の身体を支えてくれた。 「この小さい手が掬いきれないのなら、俺が零れ落とさないようにしよう。だから……。」 Pの言葉が途切れる。見るとPが泣いている。頬に伝わる涙を拭おうともせずに…。 すぐにハンカチを出して拭こうとすると、 「先にお前から拭け。」 と言われて、初めて雨ではなく、涙に頬が濡れていた自分に気が付いた。 止まらない…涙が止まらないー…。 後から、後からどんどん湧いてくる涙。ぐいっとPが自分の胸に押し付けてくれる。 優しく頭を撫でてくれる。まるで仔犬を撫でる様にー…。 もう、意識に反して声を上げて泣き出した。 悲しみを押し流さんばかりに、激しく、切なくー…。 窓を叩く雨音に目が覚めた。誰かが涙を拭ってくれた気がした。 気が付くと、自分のベッドの横にPがいた。 「何か嫌な夢でもみたのか?」 コクリと頷くと 「思い出して辛いのなら喋らなくていい。」 と、優しく髪を撫でてくれた。 少し安堵の溜息一つ、つく。 「P…。」 「…なんだ。」 「あの仔犬…、幸福になれるでしょうか…。」 「なれるんじゃないか?たぶん…。」 昨日貰われていった仔犬。別れる時、あずささんや双子達はべそをかき、 千早も別れ際に指を噛み付かないで嘗めてくれた時、少し泣いた。 「まだ起きるには早いからな、眠るまで傍に付いていてやるよ。」 と、優しく頭を撫でてもらい、横になると、布団をかけてくれた。 「この小さい手が掬いきれないのなら、俺が零れ落とさないようにしよう。」 夢で聞いたあの言葉は前にどこかで聞いたようなー…。 と、思いつつも傍にいてくれるPの存在に安心感を感じつつ、まどろみの海に、たゆたう千早であった。 を想像した俺、眠くて目がむず痒い。 ---- 久々に友人達と山奥でサバゲーをやれたおかげで気分爽快!ヒャッハー!なまま帰宅した 千早は俺が疲れてるようなのに楽しそうな顔をしていることに疑問に思ったのか 「一体、何してきたんですか?」と聞くので夜な夜なサバゲーやってきたんだよと答えた よく分からない千早にようはエアガン使った銃撃戦遊びだなと言いつつ 手持ちのエアガン、迷彩服、チェストリグ、ブーツなどなどの装備品を見せてみた 男の人ってこういうの好きですよねと興味深そうに手に取る千早に 着てみるか?と冗談交じりに言うと「そうですねこういうの服を着る機会はそうありませんし」と 珍しく乗り気だ 数分後、思っていたより重いんですねと大きいサイズの迷彩服と装備に着るというより 着られている千早になんだか可愛いなあと思い「うわぁあ!」と胸に手を当てて わざとらしく倒れるてみる 「ど、どうかしましたか?」と目を丸くする千早に 「千早にハートを撃ち抜かれた!切なくてたまらない!」と言ってみたときの千早を のほほんと観察したい今日この頃の俺 千早の香りが落ちるからしばらくは洗わないでくんくんしていよう ---- 自宅に帰ると何やら地元の友人から留守電が入っていた なんか久々だなと思いつつ再生すると俺がハナタレ小僧だった頃から 親しかった友人が昨日、交通事故で亡くなったとのこと 予定を見るとなんとか葬式には行けそうなのでクローゼットの奥から喪服を取り出していると 「喪服を出すなんてどうしたんですか?」と千早が帰ってきた まぁ実は……と友人の葬式に行くことになったことを話しているうちに いつの間にか彼との思い出話をするようになっていた そこでふと自分の目頭が熱くなっていたことに気がついた 突然話すのを止めたのを不思議に思ったのか千早が「どうしたんですか? プロデューサーらしくないですよ」とあまりにも優しく言うもんだから つい我慢できなくなって千早の胸元に泣きついたときの 千早の反応はとりあえず置いといて時には千早にみっとみないところを 見せてもいいんじゃないかと思う今日この頃 千早の胸元ではかーなーり落ち着くのが判明した ---- 千早と営業の帰りに教会の近くを通るとちょうど結婚式をやっていたのか 大勢の人に囲まれて晴れ姿の新郎と新婦が出てきていた 綺麗ですよねと少しだけ羨ましそうに見ている千早が可愛いのでちょっくら一念発起してみる とりあえず早朝は走りこんで足腰を鍛え仕事中に暇が出来たら 所構わず腕立て伏せをすること一ヶ月 「最近、筋トレ頑張っているようですけどどうかしたんですか?」と尋ねる千早に 「好きな女の子にお願いされたら好きな分だけお姫様抱っこしてあげたいじゃないか!」と 期待を込めた眼差しで千早を見つめたときの彼女の反応をムキムキに観察したい今日この頃の俺 街歩いていたら兄ちゃんガタイいいなぁと戦う公務員に勧誘されました