松田亜利沙「大好きを繋ぐレスポンス」


松田亜利沙「大好きを繋ぐレスポンス」


執筆開始日時
2017/10/29


概要


「合格者は二番、四番の方です。呼ばれなかった方は不合格となりますので、お帰りいただいて結構です」

 吐き出した息がうまく吸い込めなくて、えづいてしまいそうになるのを必死で抑える。
 胸につけた五番の番号札にほんの一瞬だけ視線を向けて、俯き加減で席を立った。


「っぅ、ぁ……っ! はっ、はぁ、あ、うぅ……」

 ガタガタと身体を震わせて、不規則に息と嗚咽を漏らして、きっと真っ青な顔をして。
 プロデューサーさんに謝るよりも先に、ありさは目についたトイレの個室に逃げ込んでいた。

 初めて挑んだ劇場の外でのオーディション、惨敗したことは二の次だった。結果が出るよりも前から、ありさはとうに折れていたのだ。

 怖かった。

 オーディション会場が、その空気感が怖かった。審査員さんの視線と□咤が怖かった。
 そして何よりも、周りのアイドルちゃんの絶対に勝つっていうギラギラした闘志が、怖かった。

 大好きなはずのアイドルちゃんを怖いと思ってしまうことが、いちばんいちばん怖かった……!

 思い出したくないと思えば思うほど、息苦しさがまぶたの裏側を掠めていくようで、両腕で体を抱きながら背中を丸めてうずくまっていた。

 長く、息を吐き出す。まだ気分は重たいけれど、そろそろプロデューサーさんのところへ戻らなきゃ。
 オーディションが終わってから、時計の長針は120度ほど回っていた。

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  • 作者◆kiHkJAZmtqg7氏
最終更新:2020年03月25日 22:05
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