静香千早「「アライブファクター」」 【ミリマス】
執筆開始日時
2019/06/30
概要
昼と夜の隙間を貫くような、冷たい風だった。
肘の辺りをさすりながら、静香は舌を唇へとやった。
意識してのことではなかった。乾燥を覚えた時、あるいはそれ以外の時にも、静香には自分の唇を舐める癖があった。
元々は、友人や相棒がよくやる仕種だっただろうか。癖がうつる、というのはどうやら本当のことらしい。
――余計に乾燥するから感心しないわ。
いつか言われたことを思い出す。
コートの右ポケットには愛用のリップクリームが転がっている。以前は女の子らしく鞄の中の更にポーチの中に携帯していたのだけれど、いつの間にかそこが定位置となってしまった。
つつ、とクリームを滑らせる。ぱっぱっ、と唇を合わせて軽く馴染ませる。
わざとらしいくらいの清涼感。
すっ、と鼻が通るような、その瞬間が静香は嫌いではなかった。
ふぅ。
一つ、大きく息を吐く。
――その程度なの、静香。
突き刺すような視線が、静香を冷たく焦がしている。
本番の日が、近付いていた。
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最終更新:2019年07月06日 19:48