馬場このみ「よい夜に、初めての」


馬場このみ「よい夜に、初めての」


執筆開始日時
2019/12/17


概要


馬場このみさんが童貞のプロデューサーとセックスします




諦めならとうの昔に終えていた。女の扱いも上手くて、誰からも慕われて。私よりも年下なのに、私よりもしっかりしてて。そんな彼へ好意を抱いたことも『すでに恋人がいる』と諦めたことも、全て過去のことだった。

けれど

「まぁだ俺は女性と付き合ったことないですしね、どーせ」

話題が弾む中、今期のドラマの話になっていて。話題が進む中、酒に酔った彼は気がついたらそう言っていた。始めは酩酊した故の世迷い言かと思っていた。

「へ……へぇ、でも、女性との接し方とか上手じゃない。劇場のみんなとか、テレビ局の人とも」

「姉と妹がいましたからねぇ、ええ、大学も実家から通ってましたし20年以上そこで揉まれ続けた結果ですよ」

「じゃあその指輪は……」

「ああ、これですか。ま、着けといた方が保護者も安心されると思って。大事な娘さんを預けるわけですからね。バレちゃマズいですしちゃんとしたブランドのを」

右手薬指の指輪を外しながら、彼はそう続ける。今が半個室で、私以外の誰もいないから気が緩んでいるのだろうか。本当はここにもう数人いる予定だったけど、みんな予定が合わずに来なかった。

幸運だ。私以外にも好意を寄せているアイドルはいるし、指輪をみて諦めた人だって多い。私だけは、そうじゃ無くて

はやる気持ちを抑えながら、ウーロンハイを口に含み、飲み下して、息を吐く

「……じゃあ、童貞?」

「ぶほっ!」

プロデューサーはぼんじりを吹き出しそうになった。口元に手を当て、唇を拭うようにして、口の中のモノを飲み下してから

「……あんまり、アイドルがそういうこと言わない方が良いと思います」

と、そうとだけ言った。否定はしなかった。

私は横目で彼を見ながら、空になりかけのグラスを扇ぐ。彼が露骨に話題を変えたけど、どこか他人事のようにしか聞けなくて

注文をしながら、あまり食べ過ぎないように、飲み過ぎないように注意しながら

そろそろ時間も、となるときには、胸の中に張り詰めたような決意が生まれていた

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  • 作者◆U.8lOt6xMsuG氏
最終更新:2019年12月27日 21:09
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