1、人間の里
「やはりここは人間の里、ですね」
「じゃあ、夜に行った方が良いね。しばらく暇だなぁ」
「むぅ…確かに……あっ!それじゃあ、少し昔話をしましょうか」
「昔話?」
「そう、ずーっと昔、まだにとりが生まれる前の話です」
「本当に昔だね……それで、何の話なの?」
「とある人間ととある白狼天狗のお話です。あなたが生まれる少し前ぐらいまでは、妖怪の山でも有名な泣ける良い話だったんですよ」
「へぇ、実話?」
「勿論。ノンフィクションながらその切ないお話には涙する人が続出……あー、もしかしたら私も話しながら泣いてしまうかもしれません」
「しかし、あなたも物好きね。人間なのに妖怪の山に行こうとするなんて」
気が付くと、さっき出会った自称神様が自分を見下ろしていた。
一度は死を覚悟したのだが、どうやら助かったらしい。
「理由がある。お前の様な妖怪には語れない、な」
「だから私は妖怪じゃなくて厄神、好い加減認めなさいよ。さっきあなたが倒れたのも、私が少し厄をあなたにお裾分けしてあげたから。そんな危険な厄をただの妖怪が扱えないわ」
「俺の目的を阻害するなら、妖怪も神様も一緒だ。邪魔しないでくれ」
まだ少し体が重い。
その厄というやつの影響だろうか。
「また山に登ろうって言うの?一応言うと、私は山の妖怪に比べればずっと弱い方よ。私にも負けたあなたが山で生き残れるとはとても思えない」
「さっきは油断したからだ。それに妖怪の方がよっぽど正攻法で攻めて来るから対処もしやすい」
「山は天狗の縄張り。一対一なら勝負になっても、相手は大群よ。人間じゃ間違いなく相手にはならない。折角助かった命を捨てるつもり?」
「誰も助けてくれとは言っていない。あの時殺されても良いつもりだった」
「愚かね。あなたほど生への執着心が無い人間もそうそう居ない。訳を聞かせてもらえる?」
「さっきも言っただろ。語れない理由だ」
「ふーん………じゃあ一応言うけど、最近山に一人、白狼天狗がやって来たの。その天狗、どういう訳か人間の里で暮らしていたみたいね。でもある鴉天狗の目に留まり、そのまま連れて来られたって。なんでも人間の友人が居たらしくて、今も気にしているらしいけど」
「それを知っているなら話は早い。俺はその人間の友人だ。そいつを連れ戻しに来た。唯一無二の親友を、妖怪如きに渡せはしない」
「随分と妖怪に対しての偏見があるのね。過去に何かあった?」
「余計な詮索は身を滅ぼすぞ」
「少しだけ屈折させてあなたに返せそうな言葉ね」
「とにかく俺は行く、邪魔するなよ」
「それは出来ないわね。私は人間の厄を引き受け、人間を守る神様。目の前で死にに行こうとしている人間を見過ごす訳にはいかない」
「くどいぞ」
「だから、私も一緒に行く事にするわ。そうすればある程度なら争いも回避できる」
「何だと?」
「神様は妖怪と戦ってはいけないって取り決めはあるけど、それは逆にも言える事。いざという時はあなたを逃がすのに利用できるわ。それに、天狗にも河童にもある程度顔が利くから、上手く行けば何事も無くその天狗にも会える。あなたには利益しか発生しない筈よ?」
「女を盾にして進めって言うのか?」
「寧ろ、普通に行く限りはあなたが盾よ。まあ、本当にその天狗を助けたいなら、私の助けを借りて行くべきでしょうね」
「………勝手にしろ、俺はお前が居ないものとして行動するからな」
「ええ、それで十分」
「しつもーん」
「はい?何でしょうか」
「まだいまいち泣けません」
「そりゃあ、これからですよ。まあまあ、聞いていてください」
「ところで、ここに出て来る厄神って………」
「雛はそうですねぇ。私が生まれた頃から居る気がします。もう何千年生きているんでしょう。暗いのは本当、昔からですが」
「頑固なところも一緒なんだね」
「そうなんですよ。だから本当、無茶な事をしたりも度々あるんです」
暗い樹海を越えると、一気に視界は開けた。
すぐ真横には大きな川が流れ、紅葉した木々からは木の葉が絶え間なく降り注ぐ。
川の水に赤や黄色の葉が浮かんでは流れて行くのが、妙に印象的だった。
「この辺りは未踏の渓谷、そう呼ばれているわね。と言ってもそれはあなた達人間から見た呼び方。ここに住む妖怪や神様はただ『川』って呼んでいるわ」
「天狗の住処はまだなのか?」
「もっと上、更に上ると九天の滝と呼ばれる滝が見えて来るわ。その辺り。この辺りは河童が住んでいるけど、まあ多分、争いにはならないと思う」
山は上に登る程に急傾斜になっている。どういう訳か厄神(雛という名前らしい)は華奢な外見ながら平気に歩いているが、人間にはどうも進みづらい。
「さっきから鴉が空を飛んでいるな。あれは何だ?」
「鴉天狗の使いでしょうね」
「…俺を見張っているのか?」
「それはどうかしら。鴉天狗の多くは新聞を発行しているわ。そのネタ探しにああやって鴉を飛ばすのよ。多分、今は何処に行くのか考えているんだわ」
「撃ち落す必要は無いか」
「逆に鴉が帰らなかったら、使い主にあなたの事が勘繰られるわよ。まあ、人間の里の様子を調べられても、同じ事になるでしょうけどね。何はともあれ、急いだ方が良いわ」
「あれに見えるのが九天の滝。もうこの辺りは天狗が日常的に居るわ。警戒しながら進むべきね」
「あいつが…四狼が居る場所はわからないか?」
「私は元々、樹海から滅多に出ないわ。それにその天狗のことも言伝に聞いた程度、今何処に居るかはわからない」
「くそっ」
「ただ、白狼天狗はそんなに山の頂の方には行かないわ。それに、その天狗の方もあなたと同じ心情であるとすれば、もしあなたが自分を探しに来た時の為に、出来るだけ時間を稼ごうとする筈だわ。案外、その辺りにひょっこり居るかもしれない」
とは言ってみるが、周囲に妖怪の気配はしない。
やはり、そう簡単に運命というものは出来ていないのだ。
その暗黒面を司っているのだから、それは痛い程理解しているのだが。
「白狼天狗の住処の様な場所はわからないのか?」
「流石にそれは自殺行為よ。集まっている場所に行こうものなら、あなたが私を浚ったとでも解釈されるでしょうね。間違いなく命は無いわ」
「なら、いっそ…」
「一目見て死ぬなんて、愚か者のする事よ。それに目の前で親友だった人間を殺される、相手の身にもなってみなさい。自分は死ぬんだからどうでも良いと考えるのはあまりにも自分勝手で愚か。その自覚があるのかしら」
九天の滝は、轟々と水飛沫を撒き散らしながら落ちる。
もうまもなく夕暮れとなる空の色を映し、茜色に輝く宝石の様に見えた。
話しながらも、互いの歩は進んで行く。通力で足助けしている分、私の方が早い。
「おい、お前は確か厄を司っているんだったな」
「今更ね。その通りだけど」
「厄で人の居所は辿れないのか?俺もあいつも相当不幸な目に遭ったんだ。それを感じたりはしないのか?」
「厄とは、必ずしも万人にとっての不幸ではない」
すっかり、日は赤く染まり、落ちようとしていた。
宵の明星が、狂おしく光っているのが見えた。
「天狗という、妖怪の山という規模で見ればあなたの友人が山に戻ったのは、幸運だわ。それはもう、厄では無い。あなた達の感じていた不幸は、厄でも何でも無かったのよ。現に、あなたからはほとんど厄というものを感じないわ。だから、私に少し近づくだけで厄に冒されるの。それだけ今のあなたは、幸せだと言えるから」
「幸せだと?今の俺がか?」
「ただ――これは、言うべきかしら」
「言え」
「相変わらず高圧的ね。やっぱり、あなたをここに連れて来たのは間違いだったわ。これ以上が無いって程に、今のあなたには死相が見える。夜明け待たずして、死ぬ程の」
死とは、不幸では無い。
自然の摂理として、ごく当たり前の事だ。
それを不幸と感じるのは、生者の勝手な価値観であり、それを超越した者は実に冷淡に審判を下す。
死は、厄などとはおよそ関わりの無い美しいものだ。
しかし、一部の神にはそれが来る時を知る事が許されている。
所謂死神、福神、厄神……人間や妖怪と密接に関わる神だ。
「信じると思うか?」
「私のは、占いでは無いわ。あなたは、死ぬ。このままでは確実に、この道のりは再思の道と同義、じきに中有の道にたどり着く。そして、気が付けば三途の川。そこまで行ったら後戻りは出来ないわ」
「引き返せと言うのか?」
「私個人の意見としては、そう。私は人間の為に生きている様なものだから」
「お前はさっき、命を捨てるなと言ったな?」
「要約すればそうね。意味が伝わっていて嬉しいわ」
「俺の剣は飾りじゃない。生きてあいつに会う」
「出来るかしら。私は力を貸せないわよ」
「これは俺一人の問題だ。頼まれてもお前は巻き込まない」
また一つ、彼の死相が濃くなった気がした。
ああ、私は今までこんな人間を何人も見て来た。
そして、まもなく死んでいった。
止めるべきだ。また気絶させてでも、この男の歩みを止めなければならない。
「あっ、っ!?」
青紫の中に、橙の光が微かばかり残った空。
それを見ながら歩を進めていると、足元で小さな山崩れが起きた。
ほんの少し、脆くなっていた足場が崩れただけだ。
それでも、私を転倒、落下させるのには十分だ。
「おい、大丈夫か!?」
慌てて私を後ろから支えた、まっすぐに伸びる太い腕。
まもなく、それも崩れ去る事となった。
故意に起こした山崩れ。私は後ろから支えられるのを見越して、素人目に見える程に溢れ出る厄を強くしていた。
あまり強いと心不全でそのまま逝ってしまうが、若い男なら大丈夫だ。確かめてみると、気を失っているだけだ。
死相は、少し薄くなっていた。
後はこのまま、麓まで連れ帰る。
そうすれば彼の死相は完全に消える。
また山に登るなどという馬鹿な考えを起こさなければ、天寿を全うする事が出来るだろう。
「ありゃりゃりゃりゃ、雛じゃないですか。どうしたんですか?こんなところまで来るなんて」
後ろから、やたらと明るい声が聞こえた。この声には聞き覚えがある。
「璃夜。久し振りね」
「と言っても、数週間な気がしますが……っと、その殿方は人間ですか。しかし、あなたの厄に触れてしまった……そうお見受けしますが?」
もう、隠す必要も無いだろう。それに璃夜は話がわかる。一部始終を話すだけ話すと、璃夜は軽く頭を捻った後、思い出した様にを手を叩いた。
「ふむ、事態は把握しました。兎も角、私も彼を下ろすのを手伝いましょう。雛の細腕では、苦労される事でしょう」
「ありがとう。助かるわ」
片腕ずつ、彼の腕を肩に掛け、少しずつ山を下る。下山は登るのに比べ楽、と言われるが勢いの付き過ぎてしまう中、人を背負うというのは中々に大変だ。
「しかし、随分な心境の変化ですね。雛、あなたが人間をここまでして止めようだなんて……」
「私は今まで、心の弱さから何人も人間を守れなかったわ。だけど、私も変わらないとのだと、今更ながら思った。……その、第一歩よ」
「大きな一歩です。でも雛、あなたは弱かったのでは無かったと思いますよ。あなたは、優し過ぎたんです。人間の心を尊重し過ぎるが故に、今までの結果を招いて来た……ある意味、その方が厄神としては優れていた、そう言えるかもしれない」
「でも、私はそんな厄神なら必要無いと考えるわ。人間を守れないのに厄神を語るなんて、思い上がりも良いところ」
「やっぱり、雛は優しいですね。私なんかとは比べ物になりません」
「一児の母が何を言うのよ。私のは母性の無い偽善みたいなもの、あなたの優しさこそが本物に思えるわ」
「ありゃりゃりゃりゃ、それを持って来ましたかぁ……でも、聞いてくださいよ雛、最近ウチの文ったら、私の言う事を全然聞いてくれないんです。私はもう子供じゃないんだから~って、一人で大きくなった様な口を叩くんですよ」
「子供は、そんなものよ。あなたにだって、そんな時期はあったわ」
「うーむ、雛は生ける私の家系のアルバムですねぇ。母が生まれた頃にも居たって聞きますし、実際のところ、何歳なんですか?」
「女性に年齢を聞くの?」
「もう、それが恥ずかしいだなんて思わない境地まで来ている風に思いますが……」
「そうね。……でも璃夜、子供は皆一度、自分の命が、人生が自分の為だけにある様に考えるわ。今の文もそうなのでしょうし、……彼も、そうだわ。その命に、どれだけの命が複雑に絡み合っているかもわからないまま」
「雛の言う事は、相変わらずですね。すごく難しい様にも感じるのに、単純な真理とも聞こえる。しかし、子供はその真理が理解できない訳、ですか」
「そう、子供は虚勢を張っているけれど、その本質は弱くて未熟、まだまだ多くの経験を積む必要があるのよ。そして、すぐ傍にある真理に気付けたとき、子供は大人になっているのでしょうね」
「……私は、大人でしょうか」
「どうしたの、自分に自信が無くなった?」
「私も、結婚してしばらく経って、すっかり身も心も落ち着いたのだと思っていました。でも、母に心配を掛ける事も多いみたいです。まだまだ、子供なのでしょうか」
「そう思えるのは、大人の証拠よ。無理に大人になろうとしない、それが成長の証」
「流石雛、言葉の一つ一つに説得力が溢れています」
「今の事が、彼に全て届いていたら良いのにね。でも、子供はそんな説教に聞く耳持たないわ」
「本当、そうです。文と木に括り付けて、一日中雛の有り難いお説教を聞かせてしまいましょうか」
「そんな事をしたら、私が倒れてしまうわ。話すのは得意じゃないのに」
「では、今言われた事を記事にして、読ませます」
「ただの私の持論なのだから、そんなに永く残されても困るわよ」
「困りません。雛は重要文化財、神様国宝クラスの神(ひと)です。経典に収めるレベルですよ」
「……ところで私、まだ例の白狼天狗の事をよく知らないわ。教えてもらえない?」
長くなって来たところで、話題を切る。
それに、この件に密接に関わった者として、話を詳しく聞くのは義務でもあるだろう。
「そうですね。では、私の知っている限りの事を話しましょう。まず、今回の件、それは全て悪い偶然の連続から成り立っています。運命神様の悪戯、とでも言えるのかもしれません。……雛も、ある意味では運命に関わる神様ではありますが」
「悪い偶然、か。正に運命の暗黒面(ダークサイド)ね」
「雛が言うと重みがあります」
事の起こりは十七年前だった筈です。
いきなり話を替えますが、雛は鷹や鷲の神隠しを知っていますか?
知っているなら話は早いです。彼……そう、私達みたいな美少女に肩を貸されて、ぐこーぐこー寝ている彼は正に神隠しにあった少年でした。
まず、これが悪い偶然その一と言えましょう。
そして、二つ目。それは彼が助けられた事です。
人間の話す逸話では、鳥に浚われた子供は天狗になるだなんて言われていますが、そんな事がある筈も無く、巣に持ち帰られた子供はそのまま、餌になってしまいます。
すんでの所で、一人の少年、当時五歳だった白狼天狗が助けたのです。
その勇気ある天狗、それが四狼少年、この度山に連れて来られた白狼天狗です。
彼はそのまま、その同い年の少年を人間の里まで運びました。
それは正に、「運ぶ」が正しいのでしょう。
私の推測が入ってきますが、いくら天狗と言えど、たった五つの子が同い年、同体格程度の子をまともな状態で運べる筈がありません。意識は無かった様ですから、引き摺ったと考えられます。
さあ、何がどう悪い偶然だったのか。
里の目の前まで来たところで、四狼少年がその鳥……もうわからないのですが、恐らく鷲クラスの大きな鳥でしょう。それの報復を受けたのです。
見ず知らずの人間の少年を助けたぐらい優しい少年です、鳥を殺す様な発想、そんな残酷さは持ち合わせていなかったのでしょう。
そこを、助けられてしまったのです。
里の外に出ていて、夕暮れと共に帰って来た大人に。
白狼天狗と一口に言えど、色々と種類はあります。
四狼少年は、比較的人間に近い姿をしていたのですね。
所謂犬耳も生えていませんでしたし、羽も生えていません。
服装に関しても、烏帽子を子供は付けませんし、人間そのものだったのです。
そのまま、四狼少年は人間の里で保護されました。
ここで、クリティカル、致命的な偶然が起きてしまいました。
傷を手当され、目覚めた四狼少年は記憶を失ってしまっていたのです。
彼の見た目は人間そのもの、その後の彼が、気の毒な人間の少年として育てられたのは言うまでもありません。
当然、四狼少年に助けられた子供は、彼と一番の親友になりました。
ならば、何故今まで彼は野放しにされたのか、それも聡明な雛ならもうわかっていそうですね。
ご想像通り、四狼少年の母は息子がもう、この世には居ないものとばかり思っていました。
名前が表すとおり、四狼少年は四番目の子、末っ子だったので、母の悲しみも相当なものだったでしょう。
しかし過去を嘆いても仕方の無い事、まもなくその話も風化して行きました。
ああ、ちなみに四狼少年は記憶を失っても、自分の名前だけは忘れなかったそうです。漢字までわかっていた辺り、少年ながらその聡さが感ぜられますね。
……ここで、最後の偶然を語り、最後とさせてもらいましょう。
四狼少年が健在である事が知られたのは、他でもない、私達鴉天狗の新聞です。
それも……寄りにもよって、ウチの文が撮影協力をした記事です。
まだ文は自分一人で新聞を書いていませんが、ベテランの見習いをしているのはご存知ですよね。
そんな中、文が撮った写真に四狼青年がちらとだけ、写りこんでしまっていたのです。
私には、にわかに信じられませんが親子の絆、縁とでも言えるのでしょうか。
四狼青年の母は、自分の息子を小さな記事の中から発見したのです。
その後の調べで、その青年が四狼であるとはっきりとわかり、今に至りました。
フィクションと言われても、信じられる程のお話ですよね。私も聞いた時、驚愕しました。
……新聞の連載小説で、少しアレンジして書いたらウケるだろうな、という汚れた考えも同時にありましたが。
「ふぅ、もう麓まで来てしまいましたね。どうします?私が人間の里に降りるのは割りと自然になっていますので、ここからは私だけで行きましょうか?雛も往復、疲れたでしょう」
「ありがとう。――私が里まで降りると、あまり良い顔はされないわね。お任せするわ」
「はい、任されました。彼がもう二度と、変な気は起こさない様に鴉を一羽、監視に置いておきましょう。もし変な動向があれば、私と雛……うーむ、今の季節でしたら、穣果(じょうか)や静葉にも伝える様にしておきますか?」
「穣果は確か、出産を控えていたわ。静葉だけで十分ね」
「ありゃりゃりゃりゃ、それは初耳ですね。めでたい事です。となれば、静葉にもやっと妹が出来るのですね」
「次も女の子なら、穣果は自分の役目の一部をその子に背負わせられるわね。今まで散々頑張って来たのだから、早く楽になって欲しいわ」
「ふむ……豊穣の神出産の瞬間、実に面白い記事が書けそうです」
「ちゃんと、お祝いの品とかも持って来るのなら、私が取り合っておくわ」
「はい!今からわくわくが止まりません!」
「取らぬ狸の……」
「ふふふ、私は確実に撮りますよ!今から即行で、パパッと届けて来ます!」
「彼は、荷物では無いのだけどね……」
「文さんの、黒歴史?」
「殴りますよ、と言うかナウ殴ります。符の弐『撃滅のセカンドあややブリット Lunatic』」
「ひゅいっ!?」
「ふむ、そろそろ里に向かえば良い時間になりそうです。また話しながら、ゆっくり行きましょう。どうです?中々に面白いお話でしょう?」
「登場人物の半分を知っているから、不思議な気分だけどね」
「ふふふ、まあそんなもんです。それに、これはあなたに話してこそのお話だと思うので、私も話す事を思い立ちました」
「……なんとなく、わかった気がするよ」
「まだ納得するのは早いですよ。あなたも、このお話の登場人物の一人なのですから」
「………??」
最終更新:2009年05月20日 20:58