最初に異変を起こしたのが、その紅い館。
 新参者の彼女達も、すっかりこの郷に馴染んだ。
 もし異変を解決したのが、巫女でなければ彼女達はどうなっていたのか。
 未だ、身勝手な支配者を続けていたのか…



 昼間が、憂鬱な時間である妖怪は多い。
 太陽の光が天敵な妖怪も居るし、光の中では十分に力を発揮できない妖怪も居る。また、個人的に紫外線というものを気にしている妖怪も居る。
 一番目と三番目に該当する妖怪が、その館では半同棲していた。



「フランドール。椅子に座って。今日の授業を始めるわよ」
 いつも通り、決まった時間に部屋のドアを開けて、住人に呼び掛ける。
 数ヶ月前から続いている儀式だ。
「あ、ルーちゃん。こんにちはー」
 返事を寄越したのはフランドール・スカーレット。この屋敷の主人の妹であり、私の教え子…という事になる。
 ひょんな事から、私と彼女は親しくなり、そのまま成り行き的に彼女の教育係となってしまった。
 人に物事を教える柄では無いと断ろうとしたのだが、半ば強引に決まってしまい、今も抜けられずにいる。
 しかし、別に悪い気はしていないし、これがきっかけでこの屋敷の主人との隔絶も無くなった。
 今更、この良い関係を壊そうとも思わない。
「フラン、ルーちゃんじゃなくて先生、ちゃんとけじめは付けないといけないわよ」
 これもいつも通りの台詞。
「えー、良いじゃない。ルーちゃんはルーちゃんで」
 予想通りの台詞。
「仕方無いわね…じゃあ、それで良いわ」
 いつも、私が折れる事になっている。
 反抗した日もあるが、時間の無駄だと直ぐに分かった。
「やったー、ルーちゃん!」
 ちなみに補足すると、私は生まれてこの方、名前にちゃん付けをされた事が無いし、「ルーちゃん」などと微妙に略した上でちゃん付けされた事も無い。
「今日は、文章表現の日だったわね。前に出した作文の宿題は終わっているかしら?」
「えっ?そんなの、あったっけ?」
 日常的だ。
 今まで、フランドールがまともに宿題の提出が出来た事なんてほとんどない。
「ええ、一週間前にはっきりと」
「あー……そういえば、出されてたかな」
「かなじゃなくて、確かに出しました」
「うぅー……でも、ルーちゃんは優しいから許してくれるよね?」
 吸い込まれそうな大きな瞳で、可愛らしくウィンク、星が飛ぶのを幻視した。
 軽く、鼻血が出そうになったのは言うまでもない。
「うぐっ……い、良いわ。許すから、もうそんな可愛らしい姿を見せるのはやめて」
「やったー!さっすがルーちゃん!!」
 バンザイをして、小さく一跳ね。
 その様子を直視してしまった私の鼻の血管が、無残にも断ち切れてしまったのは言うまでもない。
「きゃー!ルーちゃんがまた鼻血出しちゃった!」
「だ、大丈夫よ。直ぐに止まるから、もうそれ以上可愛い姿は……」
 血を見るのなんて、慣れている癖にあたふたと慌てふためく。
 それだけならまだしも、両手をぶんぶんと上下に振り、まるで羽ばたく様にしている。
 そのまま、部屋の外に助けを呼びに行こうとさえするのだから。
「ルーちゃん!?まさかの第二派っ!?」
 二重に血管の切断が起きてしまった。
 もう流血は止まろうとせず、赤い上質の絨毯の上に更に紅い染みを作る結果となってしまった。





 気が付くと、私はベッドの中に居た。
「あんたの悪い点、そう、最大の汚点。それは………」
「ロリコンなところよ」
 リトルの鋭い声が、狭い医務室に何処までも反響して行った。




続く














あとがき ~ 悪魔の妹

相変わらずのペドっぽさ
犯罪臭しかしない妹様の巻

ちなみに、このお話自体に重要な伏線とかはありません
あってもなくても良いけど、自分が書きたかったので書きました
そんな感じが強いお話なのは、見て取れるかと思います

彼女は、自分もロリになるのにロリコンです
これも血、そういう血筋なのです



最終更新:2009年05月22日 14:03