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雨上がりの憂鬱



 梅雨の中休み、という言葉がある。
 水無月から文月にかけての雨の多い時期の中、数日間だけ雨が降らない日の事を特にそう言う。
 人間達からすれば、それは一時の安らぎ、なのかもしれない。
 しかし、私にとってはそんな事無かった。





 近頃は、防水加工のされた布で作られた洋風の傘をよく見かける。
 誰が広めたのか、それかもう外ではそんな傘が見られなくなってしまったのか。
 確かに、紙とは違い、布を使った傘は耐久性もあるだろうし、和傘に比べれば圧倒的に軽いだろう。
 しかし、そんな洋傘は多くが和傘より圧倒的に少ない数の骨で作られている。
 骨と骨の間隔が広い為、そこに水が溜まり、雨上がりの洋傘は醜く湿っている。
 だが、そんな姿も愛おしく感じてしまうのは、私が単純に傘が好きだからだろうか。



 道具屋の前には、傘立てが置かれている事がある。
 これも、今時の流行である洋傘の為にあるものだ。
 和傘は、下向きに立て掛けてしまうと、水が溜まって穴が空いてしまう。
 その日、既にその店の営業時間は終わっていて、まさか店主が自分の傘を店先に置いている筈も無い。
 私は、その忘れ傘を優しく取り上げ、開いてみた。
 真っ白な布が張られた、高級感のある傘だが、よく見ればそんなに良い布が使われていないのがわかる。木綿辺りだろうか。
 よく見れば防水も剥げている様で、冷たく湿っている。
 この状態ではどうせ、忘れ主も「あら忘れちゃった。でも良いや、あんなボロい傘」とでも罪も無いこの傘を罵っている事だろう。
 私は傘を閉じると、それを持ってまた、次の店へと向かった。
 梅雨の中休み、この時期には忘れ傘が必ずと言っても良い程、傘立てに一つはあるものだ。
 一番多いのでは、五本なんて見た事がある。
 あの時ばかりは、人間への敵意を隠さずには居られず、引き連れていた傘に怯えられたものだ。



 忘れ傘というのは、実に面白い物である。
 忘れられた時点で人を憎むようになるものもあれば、忘れられたという事実に気付かず、のほほんと構えている傘もある。
 そして、自分もかつてはそうであった様に、忘れ主が探しに来てくれるのを待っていて、それが有り得ないと理解すると、次は新しい主が現れてくれないかと、結局はまた待ち続ける傘。
 そんな感情がやがて怨めしさへと変わり、妖怪となったのが私である。
「あ、忘れ傘」
 今度は、さっきの傘とは対照的に紺色の傘だ。
 大きくて重い辺り、男性用で間違いは無い。
 こういう傘を持って行くのは、正直疲れる。
 今日はこの傘で最後になりそうだ。
 と言うも、自分の傘とさっきの白傘、その前に見つけた珍しい和傘で既に手一杯なのだ。
 まだあるであろう忘れ傘達は、忘れ主が取りに来てくれるか、新しい拾い主が現れてくれる事を祈ろう。
 私と同じ様に風雨に曝されて欲しくは無い。



「やぁ、今日も忘れ傘を集めて回っているのかい?」
 後ろからの声に、思わず飛び上がってしまった。いつもこの人はこうだ。
「うん。そういうあなたは、傘も差さずにいつものアレ?」
 昼間から降っていた雨に、その人は服も髪もびしょ濡れだ。
 服が体にぴったりと吸い付いてしまっているのに、気にも留めていない。
「そう。雨の中の散歩は良いね。すごく気分が晴れる」
「空は曇っているのに?」
「上手い事言うね。空は曇っているけど、気分は晴れる。実はあなたもそうなんじゃない?」
 こんな言葉が飛び出すのは、雨に濡れた傘を愛でる様に持って行く私の姿を見ているからだろう。
「その通り、傘はやっぱり、雨に濡れている姿が一番綺麗。雨を元気に弾いて、子供がくるくる回して………」
「それに水溜りをわざと踏み付ける音が合わされば最高のコントラストだね。………なんだか、あなたに会う度に雨の日が好きになる気がするよ」
「そう思ってもらえると、あたしも幸い。今日も会えて良かったわ」
 この人と会うのも、もう何度目なのか。
 毎年、梅雨の時期は勿論。秋も会うし、夏に会う事もしばしばある。雪の降る冬も例外では無い。
「あっ、ところで新しい驚かすネタが出来たんだよ。見て行ってくれる?」
「夏の夜の肝試し………にはちょっと早いね。それに、今から驚かすって宣言したら意味無いんじゃない?」
「あっ………そっか。じゃあやっぱりやめておこうかな」
「意志が弱いなぁ」
「折角だから、葉月になってからにするよ。その方が、感じが出るでしょ?」
「またそれを宣言しちゃったから、意味が無いんだけどね」
「あっ………じゃあ、不意打ちでまた今度」
「そうそう、それで良いんだよ」
 その人は、いつも通りの苦笑を見せた。
 何となく、苦労の多そうな彼女には、この表情が不思議とよく似合う。
「ところで………私達、まだ自己紹介もしてないよね」
 私が切り出すと、彼女は意外そうな顔をした。
 どうやら、自分ではもう名乗っていたつもりだったらしい。
「ああ………そう言えばそうなのかな」
「あたしは多々良小傘。あなたのその座りまくった肝を、何時か飛び上がらせてやる傘お化けよ」
「その日は、何時になったら来るのかなぁ……………妹紅。藤原妹紅、そう呼んでくれたら良いよ」
「じゃあもこたん、次に会ったらよろしくね」
「も、もこたん………?」
「可愛い渾名でしょ?私はたたらんで良いよ」
「…………遠慮させてもらうよ。小傘」
「あー………残念」





続く?









あとがきという名のからかさ後光(安定スペル)

星蓮船初マイジャスティスがもここが…だと…

小傘の設定を読み、真っ先に「これは妹紅と組ませるべきだ」と思ってしまいました
同時にケロちゃんも上がったのですが、こっちは早苗さんに付いてますし、何かあれかな~と思ったので

まあ、どっちにしてもその理由はいえぜぶさんですね。本当によくわかります


イメージは永遠のメロディのもこたん
まだ、永夜抄前のお話という設定


ところで、どうぶつの森でたたらんの傘を再現するのは無理…ですよね…


この「たたらん」、何故か出て来てしまい、なんかもう定着してしまいそうです

普通なら下の名前を取りそうなものを、何故か苗字
でも「こがさん」って変じゃない?という考えです
普通に小傘ちゃん辺りでも良さそうなんだけどなぁ



それにしても、オッドアイ良いね。
何が良いって、色々良いよ。うん



最終更新:2009年05月13日 07:14