半人半霊 ~ Dual Soul
Scene1 妖々夢
『おい、今回の件、それで良いのか?』
「良いも何も、幽々子様が望まれている事だ」
『お前はあいつの操り人形って訳か?』
「身の程を弁えろ。幽々子様をあいつなどと……」
『主の誤りを正すのが従者だと思うが?』
「幽々子様は誤られてなんていない」
『半身たる俺より、あの気持ち悪い女の意見を認めるってのか?嫌われたもんだな、俺も』
「だから口を慎め。いくらお前でも斬るぞ」
『へいへい、俺を斬ったら、あんたもどうなるかわかったもんじゃないがな』
「わかっている。そんな事はさせるな」
『わかりましたよ。半人様。俺はあんたやあんたの主人にこれ以上干渉する事をやめよう』
「それで良い」
『ただ、戦う事もしないからな。あんたの力だけで敵は何とかしろよ』
「初めから、お前は当てにしていない」
『そうですかい。じゃあ、俺は半人様の戦いっぷりを見学させてもらいましょうか。』
「まさか、人間が冥界にまで来るなんて……」
『最近の巫女は、随分とアクティブだな』
「でも、好都合だ。あの人間は、ここに来るまでになけなしの春を集めて来ていた」
『あんたの取りこぼしを、態々持って来てくれた訳だ。やる事は決まってるんだろ?』
「ああ、その春を……一つ残らず、刈り取ってみせる」
『ここまで来たって事は、あのちんどん屋も返り討ちに遭ったって事だ。その辺りの妖怪を斬るって程度の話じゃないぞ?』
「心配されなくても、一人でやれる。今までただの一日も、剣の修行を欠かした事は無い……」
『幽々子様を守る為、か?』
「茶化すな」
『ま、精々頑張るこった。ただ、俺にはどうもあの巫女が一人で殴り込みに来たとは思えない』
「どういう意味だ?」
『さあ、様々な状況に対応出来てこそ、護衛役じゃないのか?』
「仲間を連れて来た……?」
『ああいうタイプは、仲間とはツルまないな。しかし、勝手に付いて来るって可能性はある』
「統率の無い相手に敗れる程、私の剣は未熟じゃない」
『時の参謀は、統率の取れた軍隊程、楽な相手は居ないって言ってた気がするけどなぁ。まあ、滅茶苦茶な民兵も雑魚でしかないのだが
、盗賊団とかは結構厳しい相手らしい』
「ッ!?何者だ?」
『おっと、これ以上の口出しはやめておこう』
「何時の間にここまで来た……?」
気配も感じさせないまま、背後に一人の女が立っていた。
「ついさっき、平然と歩いて来たのですけど?」
上品な笑みを見せ、手元に銀の手鏡をチラつかせる。
それがナイフであると認識出来た時、既にそれは目前まで飛来していた。
「くっ!」
直ぐに楼観剣で叩き落し、一方で白楼剣を構え、肉迫する。
少し押し出せば、そこには急な石段がある。飛び道具を使う相手と言えど、圧倒的優位に立てるのは明らかだ。
相手も後ろに下がるのは不利と見て、横に軸をずらした上で銀の飛沫を散らすが、全て楼観剣で切り払う。
その数、十、二十、三十……どうも現実的な数には思えない。
しかも、石畳に落ちた音はほとんど聞こえない。どうも様子がおかしかった。
足ならば負けていない、当初の目的とは外れ、こちらが石段を背にする形となったが、楼観剣の間合いに捉える事には成功した。
最後の足掻きとばかりに投げられるナイフを白楼剣で撃墜し、楼観剣を一思いに叩き降ろす。
確かに、剣先は女を捕らえていた……筈だった。
「積み(チェックメイト)よ」
気が付くと、首元に女の銀の得物が突きつけられていた。
「どういう……からくりだ?」
速さではこちらが勝っていた。あの距離、あの速度で降ろされた刀を避け、背後を取るだなんて、人間でも、恐らくどんなに高位の妖怪
でも不可能だ。
「そうね。冥土の土産に……あら、上手い事言ってしまったわ」
『メイドが冥土で冥土の土産か……』
「からくりと言ったわね。そう、私は確かに大きなからくり細工を動かしたわ。信じられない程に大きな」
『時の歯車ってやつか。人間技じゃないな。魔女か悪魔の類か?……そんな特異な人間が本当に居るかもしれないが』
「少し、アンフェアー過ぎないか?」
『それも含めて、相手の策だと思うがなぁ……ちなみに俺は最初に背後を取られた時点で見抜いたぞ。あんたにゃ知らせる気が無かった
が』
「じゃあ、最近流行りの決闘法で第二ラウンドとでも?」
「望むところだ」
『おい妖夢……って、それだと俺もだ。半人、それって滅茶苦茶お前が不利ってわかってるか?お前は剣気で戦うが、相手は投げナイフ
の専門家だぞ?速度、精度、数、どれも勝負にならない。しかもナイフは時を止めて回収されてるみたいだしな』
「五月蠅い」
『頑固な奴だ。万に一つもお前の勝ち目はなくなったぜ』
「さて、決まったのね?では、ここはシンプルに一枚のルールにしましょう。どうやら、私の後にも後二人、控えているみたいだし、あな
たの疲労を考えればそれが一番だわ」
『尤も、半人が勝てれば、の話だが』
「わかった」
『一応、助言ぐらいはしよう。使うのは「天人の五衰」にしておけ。こいつは真剣に不味い相手だ。巫女は「二百由旬の一閃」で何とか
出来るだろうし、もう一人居るらしいが、こいつ以上じゃないだろう。「妖童餓鬼の断食」で十分仕留められる筈だ』
「お前に指図されるまでもない。私は人界剣『悟入幻想』だ」
『こいつ、完全に本気になってやがるな……今までで初めてなぐらい、目がぎらついてるぞ……って、お前正気か?今のでこいつの強さ
は……』
「私は幻符『殺人ドール』。早速始めましょうか」
「くそっ!マスタースパークを潰されるなんて、有り得るのか……?」
魔力の限りを収束されて放たれた鮮烈な光の波を、五色に彩られた剣気が、完全に相殺、そのまま術者に襲い掛かった。
『こいつは、必死になる程冴え渡るタイプだったか……成る程、五衰を残したのは正しい選択だった』
「私の勝ちだ。春を残して、去ってもらおうか」
「残念だったな。正直、そろそろ負ける予感がしてて、霊夢に春度は全部渡した後だ。もうちょいしたら、鬱陶しい程の春を連れて来るだ
ろうぜ」
『ハズレその二。あのメイドは春度を総無視して来てたんだから、随分間抜けな話だ』
「その巫女に勝てば良い話だ。それに、これを残して来れた」
『「一念無量劫」、これは確かな一枚だ。ただ、お前の精神もがりがり削る事になるから、長続きしないのが欠点だな』
「戦いは早期決着、一瞬で終わらせる」
間も無く、巫女は現れた。
『馬鹿程、春度を集めて来てやがる。ここまで来たのは、森羅結界でも発動したからか?冬の寒空を、あんだけの陽気を持って飛んでれ
ば、超自然的な結界みたいな物が無意識に発動していてもおかしくは無い』
「だが、冥界は既に春。特にこの白玉楼には巫女(あなた)の持って来た以上の春が存在する!」
『半人、春と春度は別物だ。森羅結界は発動するかもしれない。一度当てたからって油断するな。実質二回斬る必要がありそうだ』
「二回じゃない、六回は斬ってやろう。地獄道・餓鬼道・畜生道・修羅道・人間道・天道……輪廻を転生し、好きな道へ落ちるが良い!六
道剣『一念無量劫』!!」
「いきなり斬りかかって来るなんて、非常識じゃない?夢符『二重結界』!!」
『ああ、こりゃ負けたな』
Scene2 萃夢想
『結局、春雪異変は巫女によって解決、西行妖の封印も解けず、見事企みは失敗に終わった訳だ』
「…………すまない」
『何を謝ってるんだ?俺とあんたは二心同体、それもメインはあんたの方だからな、俺は助言をする事はしても、最終的にはあんたに全
てを委ねる。今に始まった事じゃない』
「お前はもしかして、幽々子様と西行妖の関係を知っていたんじゃないのか?だから、止めさせようと……」
『俺もあんたと同じ、その記憶なんてほとんど無い。ただ、もしかしたら俺は本能的にその事を理解していたのかもしれない。一種の勘
みたいなもんだと思っていたが』
「そうか……」
『ところで、今日はアレなんだろ?』
「ああ、斬りに行く」
『何処の辻斬り犯だよ』
「怪しい連中ばかりだ。兎に角片っ端から真偽を確かめて行かないと」
『それには当然、やり合うんだろ?……前はすっこんでたが、今回は気分も乗っているからな。俺にもやらせてくれよ』
「お前が出ると、少しやり過ぎになる可能性があるが……まあ、その方が心強いのも確かだ」
『半人と半霊、二人で約一人前だからな。俺とあんたが本気で協力すれば、今以上の強さになるのは絶対だ』
「まぁ、それなら良いけど……」
『まあ、泥舟に乗った気で居ろって訳だ』
「何時でも、私だけ脱出出来る準備をしておかないとな」
「そんな訳で幽々子様、粗方斬って来ました」
「それで、何か解決したの?」
「はい!人……いや、鬼助けです!」
『お前、日本語になってないぞ。……えーと、つまりはアレです。鬼っ子一人、楽しませてやれる席を用意してもらえませんかね?あい
つ、まだまだ遊び足りない様で。満足すれば、この騒ぎもやめてくれるでしょう。その後は、紫様辺りに任せてもらえれば、良い感じにな
るんじゃないでしょうか?旧知の仲って言いますし』
「そ、そうです!正にその通り!」
「ふぅん……面倒臭いわ」
『ズコー』
「随分古典的な反応ね。七割り増しだわ」
『一応聞きますと、何が?』
「好感度」
『半人!聞いたか!これで幽々子様ルートは確定だな!』
「茶化さないでくれ……えーと、幽々子様?」
「そんなの、また巫女達にやらせれば良いじゃない。それか、妖夢あなたが一人でやりなさい」
「ええー……」
『承知しました。お気遣い、ありがとうございます』
「やっぱり、人間の妖夢より霊の妖夢ね。察しが段違いに良いわ」
「ええっ!?ど、どういう事だ!?」
『んー、お前にはわからないかもしれないが、同じ霊としてわかるんだよ。例のちんどん屋にもう手を回しておいてくれたんだよ。後は
斬った相手にお詫びを入れつつ招待して、お前が最高の料理を作れば、今までで一番の宴の出来上がりだ』
「おっ、おおっ!!」
「……自分が利用されているという事には、気付かないのかしら」
『馬鹿ですから』
Scene3 永夜抄
「で、どっちですか?」
「こっち……いや、あっちかしら」
「竹林ならそっちだ」
「ええ、そっちよ」
「…………」
『…………』
『おい、半人……』
「半霊、もうお前の言いたい事はよ~くわかった。だから、もうやめてくれ」
『まだ何も言ってないが……』
「二心同体、わかってる。本当によくわかってるから」
『…………魔法使いって、何に喩えれば良いのかな』
「は?」
「動くと撃つ!」
「あら妖夢、今度はとん○りコーンよ」
『まさかの商標名が来た!』
「間違えた。撃つと動くだ。今すぐ動く」
「えー……こほん。邪魔をするのはやめてもらおうか?」
「夜をおかしくしているのはお前らなんだろ?」
「それ以上に月が狂ってる。お前にはわからないのか?すぐ近くに見える狂った月が」
「見えないな。だから夜が明けるまで動いてやる!」
『相変わらず、こいつとは気が合いそうだ』
「敵になびかないでくれ……」
「あら妖夢、とん○りコーンよ?相手をしてあげても良いじゃない。主に食事的な意味で」
「お願いですからやめてください」
――夜の白玉楼
「幽々子様、結局なんで、態と負けてやったのですか?」
「異変解決は、人間達の専売特許でしょ?私達がそのお株を奪う訳には行かないわ」
『俺が思うに、正直飽きて来たんじゃ……』
「お腹もすっかり、膨れてしまった訳だしね~」
「……幽々子様」
「巫女と紫が一緒にやるんだもの、絶対に解決するわ」
「え?私達が会ったのは、魔法使いだけじゃ……」
「あなたは本当に未熟者ね」
「……半霊、どういう事なんだ?」
『知るか。俺は霊に関する事以外は大体お前と同じ様なもんだ』
「もう、あの魔法使いも家に逃げ帰っている所よ。紫達が倒したから」
「え?……そ、そうなんですか?」
『俺に振るな』
Scene4 花映塚
『半人、暇だ』
「私も暇だ」
『なぁ、斬りに行かないか?前の異変の時みたく』
「何を斬りに行くんだ」
『そうだなぁ……花、とか?』
「…………?」
『何で春に鶏頭なんて咲いてるんだよ』
「あっ……」
『何で桜と一緒に秋桜が咲いてるんだ?』
「……この違和感、そうだったのか」
『まぁ、ぶらりと辻斬り旅行と洒落込もうじゃないか。そんなに切羽詰った異変とは思えない』
「……そうだな」
「で、成果は?」
「これからは、辻斬りを自粛します。特に花には」
『自然を大切に、だな』
Scene5 文花帖
「おい半霊!本気で行くぞ!」
『何目くじら立ててるんだよ。禿げるぞ』
「禿げない!それより、全力で行かないとお前が危ないんだぞ!」
『……?』
「天狗の写真機だ!あれに撮られたら、魂が抜かれる!それはつまり、お前があの中に閉じ込められるという事なんだぞ!?」
『…………良いから、お前は屋敷で寝とけ』
「人智剣『天女返し』!!」
「おおっ!シャッターチャーンス!カシャリ!」
「半霊ーーー!」
『ノイローゼか?』
Scene6 風神録
『平和だなー』
「平和だな」
『何か、異変が起きないかな』
「そうほいほい起こってたまるか」
『だなぁ』
Scene7 緋想天
「『成仏得脱斬』!!」
「ぐわーやーらーれーたー」
「勝った!」
『……俺の出番は?』
「ああ、すまない。忘れてた」
『……折角、天人とやり合う機会だったってのに、出番無しとは辛い話だ……』
「あ、安心してくれ!次に戦う機会があったら、必ず出番をやるから!必ず!」
『……約束だぞ?』
「ああ!」
「(…………何、この、馬鹿共)」
「さあ、そんな訳であの時のやり直しとましょう!」
「今度は本気で行くわよ。精々頑張りなさい」
『俺!俺だよな!活躍するのは勿論!』
「『天女返し』!!」
「『天道是非の剣』!!」
『アッルェー?』
「くっ!ならば『成仏得脱斬』!!」
「ついげきの緋想の剣でダメージは更に加速した!」
『おい、俺に決闘させろよ』
「ならば最後だ!『楼観から弾をも絶つ心の眼』!!」
『来た!俺の出番スペル来た!これで戦える!』
「面倒ね。『天地開闢プレス』っと」
『ふみゅっ!?』
Scene8 地霊殿
『………………』
「夏の事、まだ怒ってるのか?」
『あれってつまり、俺を身代わりにしたって事だろ……汚いなさすが侍きたない』
「いや、私もあれで決めるつもりだったんだ。しかし、急に要石が……」
『急か?』
「急や」
『急なら仕方ない』
「そうそう」
『と言うとでも思ったかッ!?アホめッ!』
「みょっ!?」
『何情けない声出してるんだよ』
「突然、飛び掛って来たりするからだ」
『それより、神社で何かやってるらしいぞ?』
「ああ、紫様がどうたらって……」
『お前は首を突っ込まないのか?』
「お呼びでない」
『そうか……』
「残念なのか?」
『最近、STGに出られないからな』
「メタ発言はやめてくれ」
『あーあ、その辺に異変は転がってないのか?』
Scene9 星蓮船
『平和だな』
「平和だ」
『未確認飛行物体でも飛んでないか?』
「そんなもの、そう都合よく……あった」
『……斬り込みに行くか?』
「いや、花の異変からこっち、辻斬りは……」
『つまらないな』
SceneEX 紅魔郷
『おい半人、何時から顕界はこんなになったんだ?』
「知るか、私だって驚いてる」
『これは……紅い霧か?』
「兎も角、幽々子様に報告するか」
『あの人が、動いたりしそうには無いけどなぁ』
「…………否定出来ない」
『それより、しばらく様子を見てみないか?……これはもしかすると、初のスペルカードルールを使った戦いが見られるかもしれない』
「そうか……後学の為に、見てみるか」
『なんとなく、俺達に必要な事な気もするからな』
ScenePH 妖精大戦争
『半人!来たぞ!異変だ!』
「……?」
『妖精達の大戦争だ!今から傍観しに行くぞ!』
「……そんなに見たいのか?」
『ああ!久し振りに楽しそうな事件だからな!』
「……お前、キャラが変わったな」
『毎回口調の安定しないお前に言われたくない』
最終更新:2009年06月14日 23:05