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語る必要も無い零話





 この度は、わたくし、ミネアがイタリア海軍ヴェネツィア支部の紹介をして行きたいと思います。
 ミネアも働き始めて一年、すっかりここの事は覚えてしまいました。
 ですので、本日はヴァンさん、天華さん、それから……えーと?
「リリアだ。何故に僕の名前を覚えようとしない?」
 ああ、リリーさんとか言ってましたね。
「“とか”とは何だ、“とか”とは」
 すみません、ミネアは興味の無い方の名前は覚えられないタイプなんです。
「どういうタイプだ。君が女性で、しかも少女でなければとっくに手が出ているぞ」
 ひぇっ!?や、やめてくださいっ!
「…………名前ぐらい覚えよう。僕もちゃんと覚えてるから、ミネア」
 はい。リリアさん。
 で、出鼻を挫けれてしまいましたが、ミネアはめげません。粘り強さも取り得です。
 まずは、絶対に覚えるべき場所の案内からして行きましょう。
 正面玄関から入り、左手に見える階段を登り、二階へ。
 右手にある通路を直進し、突き当たりで右折。そのまま真っ直ぐ進んだ所にあるのが支部長室となります。
 基本的に大佐はこの部屋に居ますので、絶対に場所を覚えて下さい。
 では、少し内装も……大佐、お三人を連れて参りました。
「ん、入って」
 はい。一応、皆さんも入るときはノックなり何なりしてくださいね。
 大佐は気にしませんが、楓さんは軽くイラッとされるので要注意です。
「ミネア、私は別にそんなの気にしませんよ。ただ、あなたが今まで無断で入った回数はきちんと記憶していますが」
 ひぃぃっ!?
 や、やっぱり楓さんはこういう事には生真面目過ぎます…………
 あ、もうご存知とは思いますが、向かって右の茶髪の美しい方が拾詩楓さんです。
 大佐の仕事のお手伝い……と言うか、大半を引き受けていらっしゃる方です。
「ミ、ミネア。そういう事は説明しないで良いと思うけど?」
「フルーレ、嘘は吐けませんよ」
 という具合です。
 大佐は見ての通り、見た目幼いですがミネアの倍近い年齢ですので、ご注意を。
「何を!?」
 そして、楓さんは民間人という扱いを受けていますが、権限は大佐と同等です。
 まあ、軍服も着ていらっしゃるので忘れられる事は無いと思いますが。
「職権乱用はしませんので、ご安心を」
「あたしがしているみたいな発言はやめてもらえるかな!」
「え?してなかったの?」
「そんなの…………してますです。すみません」
 見ての通り、楓さんには頭が上がらないのが大佐です。
「うぅ…………」
 では続いて、医務室にご案内しましょう。
 怪我をしてしまったら、急いで行ってください。
 痛くても直行してください。一瞬で治りますので。
 正面玄関から案内した方が良いですね。
 右に直進し、突き当たりも右折。左手に医務室が見えます。
 エレンさん。お邪魔しますー
「はい、どうぞ」
 と言う事で此処が……あー、やはり男性職員が数人溜まっていますね。大した怪我も無いのに。
「違うんすよ少尉!これは恋の病なんす!」
「そうっす!俺の少佐への想いはエタニティなんです!」
 …………これでも、優秀なんですよ。普段は。
 エレンさんは、淫魔だとか夢魔だとか呼ばれるリリムなだけあり、女性のミネアから見ても非常に魅力的な容姿をしています。
 これなら、男性が鼻の下をお伸ばしになっても仕方がありませ……あれ、ヴァンさん。大丈夫ですか?
「もう、今まで散々美人は見て来たから大丈夫だよ」
 顔に冷や汗だらだらです。
 ああ、後頭部にリリアさんの銃が突きつけられています。
 ついでに言えば、首元に白々と光る物があります。天華さんのナイフですね。
 お二人とも壮烈な美人ですが、やはり不安なところもあるのでしょうか。
 エレンさんと並んでも遜色は無いと思うんですがねぇ……
 とりあえず。空気がいまいちなんで次に行きましょうか。
 エレンさん、お邪魔しました。
「ヴァンさん……でしたね。怪我をされましたら、どうぞご遠慮なく」
 ああ、微妙な追い討ちを……ヴァンさん、遂に頭を抱え出しました。
 ここはミネアが癒して……
「ごめん、そっとしてて」
 わかりました。
 次は、食堂ですね。行き方は簡単、この医務室の丁度反対側です。
 来た廊下を真逆に行けば、百人単位で入られる食堂が見えて来ます。
 こんな都会にあるのに、結構値段はリーゾナブル。下っ端職員のお財布にも優しいのです。
 ちなみにミネアは二番目に高いB定食率が高めです。
 給料日なんかは、A定食率の味を堪能したりもするのですが。
 あ、ここには特に紹介すべき女性は居ないので、ご安心を。
 ちなみに「食堂」と聞けばおばちゃんを連想しますが、ここの食堂はお兄さんが切り盛りしています。
 まぁ、ヴァンさんにお熱なお二人には紹介する必要ありませんね。
 ……あれ、またヴァンさんが落ち込んでしまいました。
 続いては……うーん、ミネアの部屋は最後にしますか。
 この建物は、実は渡り廊下で研究施設とも繋がっているのです。
 そこには、大佐の妹さんであるアイリスさんが勤めていて、まぁ、極々稀に出勤されます。
 一々確認しませんが、西の突き当たりならばどの階からも行ける様になっているので、必要ならどうぞ。
 ちなみにアイリスさんは二階の一室で研究をされているので、覚えておかれると良いかもしれません。
 えー、そして図書室。
 これは三階の東にあります。
 やたら滅多に大きいのですごく目立ちます。
 ……ミネアはあんまり行かないので、これ以上の事は言えません。
 そして、最後に尉官室を。
 ご存知とは思いますが、この支部はそれほど大きな軍事施設とは言えず、士官の数も少ないです。
 フルーレ大佐=楓さん、サロス中佐、エレン少佐、アイリス大尉、そしてわたくし、ミネア少尉ぐらいしかいません。
 さっき言いました通り、アイリスさんはほとんど出勤をしませんので、尉官室はミネアの私室と化しているんです。
 場所は、二階の東。割りとちっちゃいんですが、仕事をする上ではまるで困りません。
 デスクも三人程尉官が務める事を見越して用意されたのか、何故か三つあります。
 基本的にミネアはここに居るので、用があれば何時でもどうぞ。
 っと、まだ説明すべき事はありますね。
 さっき士官は少ないと言いましたが、下士官もすごく少ないのが特徴です。
 そもそも、ここはローマからも離れていますし、そんなにばりばり戦う事を目的には作られていませんからね。
 一応、最低限の指揮官と兵が居れば、本隊が来るまで戦えるだろう、程度です。
 研究施設を直結させてしまう辺りからも、戦う気が無いのはおわかりになると思いますが。
 とまあ、軍曹二人を紹介しておきます。
 下士官室におられるので、直接会いに行きましょう。
 これは、尉官室の直ぐ隣です。
 言わばお隣さんですね。
 がちゃり。
「はにゃっ!?しょ、少尉、ノックぐらいしてくださいよ~」
 あー、すみませんすみません。ついつい忘れてしまいました。
 えー、彼女。ミネアぐらい短めの茶髪をした人が、ネラデレイス軍曹です。
「ああ、あなた達が例の……あたしの事はネラとでも、ネレイとでも呼んでくださ……あれ、位はどうなるんですか?」
 えーとですね、一兵卒に過ぎない扱いになりそうです。
「とでも呼んで良いよ」
「途端に上からになった!?」
 ヴァンさん、ナイスツッコミです。
 ネラは下の者にはとことん偉そうにします。
「なんてね。年も近いみたいだし、友達感覚でどうぞ」
 ちなみにネラは今年で二十三になります。
 そろそろ行き遅れが心配になってくる年頃です。
「少尉っ!!」
「…………そうか、僕は一生独身か……」
 あー、ネラだけに飛ばしたジョークのつもりが、リリアさんまで間接攻撃してしまいました。
 いえいえ、そんな事はありませんよ。大佐もまだですし。
「少尉、フォローになってませんよ。人間とそれ以外を同じ基準で見るのは」
 あらら、そういえば人間さんでしたね。ミネアが妖怪なのでその意識があんまりありませんでした。
 その奥の金髪が、ラジローア軍曹、ラジャって呼ばれていますね。
「今は寝てるけどね」
 ラジャはまあ、士官と呼ばれる人の中ではサロス中佐に次いでの男性、言わばハーレム状態となっています。
 どこかのヴァンさんを思わせる人ですが、学者気質の朴念仁でして、ミネア達も張り合いが無いというものです。
「ミ、ミネアちゃん?」
 あれ?ミネア、何か失礼な事を……?
「少尉は無邪気に無自覚で皮肉るから、要注意よ」
「もうわかりました…………」
 とまあ、こんなもんです。
 それでは、これでミネアの支部案内を終わりにします。お疲れ様でしたー。



最終更新:2009年08月14日 18:19