- 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2007/02/21(水)03:42:47.16
ID:rzDkEoc0
- 【花見】
みーちゃんは、ベランダで盆栽を育てている。
ガーデニングとかおしゃれな感じじゃなくて「盆栽」になるところが、なんだかみーちゃんらしい。
最初は「どうして盆栽?」と思ったけれど、こうして毎日見ていると、なかなか面白い気もする。
そろそろ暖かくなってきて、桜のシーズンになる。
間近で見ると、少しずつつぼみがふくらんできているのが分かる。
みーちゃんも、花がつくのを楽しみにしていた。
なのに。
それを――割ってしまった。お天気が良かったから布団を干そうとして、引っかけて落としてしまった。
慌てて拾い上げてみると、根本の所から完全に折れてしまっていた。
「ん――――」
「ごめんなさい」
「……」
「ごめんなさい」
「ん、いや、まぁ良いよ。しょうがないし」
「…………」
「……」
「……(しょんぼり)」
「……分かった。じゃあ、ちょっと買い物行ってきて?」
「買い物?」
「ただいまー……」
「おかえり」
言われたとおり白いハンカチを買ってくると、みーちゃんは台所で何か作っていた。
「何してるの?」
「ん、まぁ見てなって」
お鍋で何か煮ている。見ると、バラバラになった桜の枝が入っていた。
「さて、上手くいくかどうか」
そう言うと、みーちゃんは何かをお鍋の中に入れた。その瞬間、
ぱっ、とお湯が鮮やかな桃色に染まった。
「すごい! え、今、何したの? どうして?」
「さぁ、どうしてでしょう。あ、ハンカチ出して」
「え、あ、はい」
袋からハンカチを出して渡す。
「桜ってね、花だけが綺麗に見えるけど、そうじゃないの」
「ふうん?」
「花が咲く前から、幹とか枝の中がピンク色に染まっていく。それが一気に外に出るから、桜はあんな綺麗な色になるの」
「へぇ……すごいね」
「まぁ、受売りだけど。というわけで、花が咲く前の枝ってけっこう色が出るんだ」
みーちゃんは、そう言ってハンカチを輪ゴムでくるくるとまとめた。
それを、ゆっくり桃色の液の中に漬ける。真っ白だったハンカチが、薄桃色に染まっていった。
さいばしで液から上げる。
「……薄いな。やっぱり枝が足りなかったかな」
「ううん。綺麗」
「そう? まぁ、重ねて染めればいいし。今度台風がきたときにでも枝広いに行こうか」
「うんっ! ……ありがと!」
「ん」
濡れたハンカチをベランダに干す。
淡いピンク色に染まったハンカチに、すぐそこまできている春を想った。
《了》
最終更新:2007年02月21日 18:12