「討滅の獄(とうめつのごく)」の編集履歴(バックアップ)一覧に戻る
討滅の獄(とうめつのごく)」を以下のとおり復元します。
【初出】
2006年発行電撃コミックス 灼眼のシャナⅡ with “GRIMOIRE”初回限定版附属小冊子「グリモア」に掲載
イラスト : 灰村キヨタカ

【構成】
一段22桁二段組45ページ。内挿絵が2ページ。
表題と共にシャナのイラスト。もう一枚は封絶を張るノトブルガのイラスト。

【概略】
電撃文庫「灼眼のシャナ」の世界観における、過去に起こったとある騒動に端を発する事件の顛末。
もしくは、引き離された恋人を探し続ける少女の、永きにわたる歩みの結末と与えられた一つの答えの物語。

【解説】
寄稿先である「灼眼のシャナ」本編、世界背景、登場人物などについては「シャナ」本編を読むか[[こちらから>http://www1.atwiki.jp/sslibrary/]]調べてください。
ただし、ネタバレを含んでいるので自己責任でどうぞ。
必ずしも「シャナ」本編を読んでいなくても話の流れ自体はある程度理解できるが、両方の作品を読んでいると鎌池和馬氏のノリで「シャナ」の世界を読むことが出来るので一粒で三度おいしい作品と言える。
(ただし「シャナ」作品内においては整合性が取れない等の理由から公式扱いはされてはいないのであまりおおっぴらに語ることはお勧めしない)


 以下ネタバレ含む

【登場人物】
契約者と紅世の王は以下の通り
『炎髪灼眼の討ち手』シャナ――――“天壌の劫火”アラストール
『弔詞の詠み手』マージョリー・ドー――――“蹂躙の爪牙”マルコシアス
『万条の仕手』ヴィルヘルミナ・カルメル――――“夢幻の冠帯”ティアマトー
『儀装の駆り手』カムシン・ネブハーウ――――“不抜の尖嶺”べヘモット
『末路の語り手』シュルス・レルリス――――“筆記の恩恵”ペネムエ
『潜める追っ手』ノトブルガ――――“秘説の領域”ラツィエル

“ミステス”坂井悠二
吉田一美
田中栄太
佐藤啓作

【内容】
冒頭、語り出しは一つの事件がいきなり始まる。
本編は大きく二つに分けられ、前半部分では鎌池和馬氏お得意のギャグパートで進められる。
契約者から手ひどい仕打ちを受ける紅世の王の姿が見られるのはめったに無いことであるので貴重なシーンともいえる。
(もっとも、普段とあまり変わらない関係の者たちもいるが)
後半部分では一転シリアスになり、原作本編を思わせる戦闘描写が続く。
その後、結末部分は「禁書目録」でもよく目にする、相手側の事情とそれに対する応対が語られる。
敵対する相手をただ切り捨てるだけではなく、その先の道を示そうとするのは執筆した鎌池氏の意向であろうか。
萌えと燃えの両立がなされている作品と言える。

【あらすじ】
  某日、御崎市外縁にて一人のフレイムヘイズが消滅する。
  男の名はシュレス・レルリス。
  単独にて世の中を渡り歩き、敵を討滅していくだけの力と能力を持ったフレイムヘイズである。
  だが、何故かその身に契約し封入した“紅世の王”の力を使うことができず、逃げ惑うことしかできず、ついに、何
者かによって斃される。
  その最期、
 「……何故俺に刃を向ける、フレイムヘイズ!!」
  という言葉を残して―――。
  
  場面は変わり、日曜日の陽気の中御崎市内にある坂井家の居間にてある会議が開かれていた。
  居間のテーブルの上に“コキュートス”“グリモア”“ペルソナ”“サービア”の神器が並べられ、それらを通してそれぞれの“紅世の王”らが語り合う。
  その内容は“不抜の尖嶺”べへモットによってもたらされたひとつの知らせについてのもの。
  それはフレイムヘイズ同士の争いがあること、それが一週間でおよそ五十もの被害を出しているということに困惑と驚愕を表す一同。
  そのことから連想される過去に起きたある一つの事件について語られる。
 
  『討滅の獄』事件
  ――それは十六世紀に起きた『大戦』直後の混乱の一つ。
  『大戦』によるフレイムヘイズ全体の数が減ったこと。
   そして、新たに人間が“王”と契約を結ぼうとして“王”の方が人間に協力することに尻込みしていたとき、フレ
   イムヘイズ不足を解消し、敵対する“王”を確実に封じるためのある宝具が作られる。
   この宝具『討滅の獄』は人間の方から“紅世の王”と強引に契約を結ばせるもので、“王”が紅世とこの世のど
   ちらにいても関係なく、人間側が『この“王”と契約する』と勝手に指名することで強制的にフレイムヘイズとな
   る。しかも、これによって強引に契約させられた“王”は契約者が死んでも紅世に帰ることはできず、かといって
   この世で顕現を行うことも封じられるために前後からの圧力に耐え切れずに破裂して討滅されることとなる。
   この『“王”を確実に封じ、そして絶対に逃がさない』機能によって手始めにフレイムヘイズを量産して戦力を増
   やし、それでも敵わない強大な“王”が現れたときには人間という器にその”王”を封じ込める手段は、この世に
   いる“王”はもとより紅世からこの世に自侭な“王”が渡り来る風習さえ無くなるかもしれない、世界のバランス
   を保つことに関して効果的な方法と期待された――――筈だった。
   実際には『人ではないもの』になった時や『強大な“紅世の王”に遭遇し、消滅の手前まで追い詰められた』こと
   によって討滅の意思を失った即席フレイムヘイズたちが徒党を組んで自侭に力を振るうようになったため、結局そ
   れら即席フレイムヘイズ達に対する『討滅』が行われ、七十人ほどの即席フレイムヘイズ達が切り捨てられる結果
   となった――。
 
  (なおこの説明がなされている間、マルコシアスが不用意に揶揄してマージョリー・ドーに神器“グリモア”を引っ
   叩かれたり佐藤や田中が風呂を覗いた話に反応してついでに制裁を受けたりロリコン疑惑をかけられてアラストー
   ルが神器“コキュートス”ごと鍋で煮られたり同じくロリコン疑惑をかけられたべヘモットが神器“サービア”を
   引っ張られて悶絶したり鍋の火加減を見ようとしたヴィルヘルミナがうっかりヘッドドレス型神器“ペルソナ”を
   鍋に落として焦がしたりといったことがある)
 
  居間の隣でそれらの説明を耳に入れた(ついでに“王”たちの騒ぎを見ながら)坂井悠二はそもそもこのテーブルに
  これら“王”たちの意思を表出させる神器を集めさせた理由をカムシンに問いただすと、『神器の持つ特性を探る』
  ことだという。自在法とも宝具とも違う“紅世の王”の力をわずかに顕現させる道具、力や意思の双方向伝達性、つ
  まり神器は『契約者の体内』から『外の世界』へ一方的に力や意思を流すだけでなく、逆に『外の世界』から『契約
  者の体内』へ力や意思を送ることもできるのか、と。
  その答えから、悠二は神器を介して直接フレイムヘイズの中で休眠している“紅世の王”に干渉できることの意味に
  ついて、さらにそこから一連のフレイムヘイズ殺しの力、そしてそれに対処するためにどんな手段を講じなければな
  らないのかを推察する。
  そして、一つの決意をする――――。
 
  場面は再び夜。
  御崎市のギリギリ外側、大戸の端、両年の中心部からわずかに離れた工事現場、そこにたたずむフレイムヘイズを殺
  す討滅者“秘説の領域”ラツィエルの契約者、『潜める追っ手』ノトブルガの前に一つの“ミステス”が姿を現す。
  それは右手に『贄殿遮那』、左手にしおりのようなものを五枚持った坂井悠二だった。
  得体の知れない“ミステス”、『贄殿遮那』から“天目一個”への連想、ただのトーチにしては多い“存在の力”の
  総量、高度な自在法を編みこまれた左手の符、紅世に関する一般人以上の知識を見せられて警戒心を錯覚させられた
  ノトブルガは『封絶』を展開、戦闘の準備をする。
  彼女の呼びかけに応え、“レオナルドゥスの解放”が出現する。
  それはペンダントに添えるような細い鎖が彼女の両手に何重にも巻きつき変化した鎖でできた十本の爪。
  それこそがフレイムヘイズ殺しの正体。彼女の中にいるラツィエルが持つ本来の力をより一層引き出した“神器”。
  その爪の音を聞き、爪の輝きを浴びるだけで、相手の神器は壮絶に加圧され“紅世の王”の強制解放と副作用として
  のフレイムヘイズの内側からの爆砕を誘発する。こうして内側からの破裂に怯えてまともに“存在の力”を振るえな
  くなったフレイムヘイズに対して自爆誤爆を煽るか鉄爪で割るかすることがノトブルガの手であった。
  この、対フレイムヘイズ戦において『だけ』絶対的なアドバンテージを持つ彼女はまさにフレイムヘイズの天敵とい
  えるため、フレイムヘイズではない“ミステス”である悠二がノトブルガと相対したのだった。
  カムシンから『大戦』直後、『討滅の獄』事件で討伐組として一緒に戦ったノトブルガの名前と神器の力、彼女が
  『討滅の獄』を破壊して逃げたことを聞いて。
  対するノトブルガは自身の目的のために悠二を討とうとする。
  とっさの判断、紙一重の反応、綱渡りのような戦いの末に本来フレイムヘイズに相手にされないはずの悠二はノトブ
  ルガを下す。
  瀕死のノトブルガに対し悠二は尋ねる。彼女が他のフレイムヘイズを襲っていた理由、自分が『贄殿遮那』を振るっ
  た理由が正しかったのかどうかを確かめるために。
  ノトブルガは語る。自身がこのような凶行に走った理由を。
  自分は、『約束の二人』と同じなのだと。
  ――かつて、『大戦』以前に名を馳せた“王”がいた。
    この世と紅世を自由に行き来するための自在法を研究し、完成すれば海外旅行の感覚で世界と世界を渡り行くこ
    とができ、それぞれお互いにもっと相手の良いところを発見できるはずだ、と考えていた“王”であったが、    『討滅の獄』で無理矢理人の中に封ぜられてしまったこと。
    慕っていた“王”の手がかりを求めて歩き回り、宝具『討滅の獄』を破壊しても即席フレイムヘイズたちの契約
    が解けることは無かったため、フレイムヘイズをこじ開けて中身を取り出すために神器”レオナルドゥスの解放”
    を改良したこと。
    本来はその後『高貴な居場所(ノビリアクム)』という自在法を使って『“王”を紅世に帰さない』や『この世に再顕現
    できない』封印機能を遮断するための結界を張るつもりであったこと。
    その『高貴な居場所』を開発するために五百年以上を費やしたこと。
   『討滅の獄』事件でその“王”が討滅されてしまっていたかもしれないこと、そうでなくてもその長い間に“紅世
    の徒”に殺されていたかもしれないこと。
    それでも諦めきれなかった為に“レオナルドゥスの解放”を改良し、『高貴な居場所』を開発してすぐにフレイ
    ムヘイズを捜しては片っ端からこじ開けて確かめ、人違いと分かると保護もせずに“王”を見捨ててきたと――。
  やがて瀕死の重傷を負った彼女の話が終わると、不意に、彼女の中にいる“王”ラツィエルが強制顕現をして悠二に
  一矢を報いようとする。
  まだ生きているうちから強引に顕現しようとすれば完全にノトブルガは死ぬが、『今まで歩んできた道以外はとるこ
  とができないだろう、この生き方が認められないのなら何も実らない』と言い張るラツィエルに対し、悠二は武器を
  捨て『フレイムヘイズを殺さずに何とかする方法を考えろ、ノトブルガに力を貸し、彼女がどんな思いで歩んできた
  か誰よりも詳しく知っているお前が道を示せ!』と叫ぶ。
  結果、ラツィエルの顕現は中断され、一連の事件は一応の収束を迎えることとなる。
  その一部始終を封絶内に張った隠蔽の結界の中から見届けたカムシンはノトブルガに対する処置を決める。
  契約を交わして討滅の道具となったフレイムヘイズはこの世からいなくなったものとして扱われるため『大局的な破
  滅』には至らない、私情で五十人以上フレイムヘイズを葬ったノトブルガがそれ以上の働きをすればそれを許す、と。
  シャナ、マージョリー、ヴィルヘルミナらにカムシンから事後処理の指示が出され、それをめぐって結界内に同席し
  た吉田一美を伴った小さな騒ぎが始まる。
  それを横目に見ながら、カムシンはべヘモットと話す。
  ――ノトブルガが長年追い求めていた“紅世の王”の契約者を自身が掴んでいたこと。
    そのフレイムヘイズも『討滅の獄』事件と同じく使命感を折られて自侭に力を振るっていること。
    折を見てそれを討滅するが中の“王”に害が及ばぬよう『高貴な居場所』をノトブルガから聞き出してから行うこと。
 
 
    そして、それらはフレイムヘイズを五十人以上殺しておいて、なお正しき道を歩むことができたとき、その正しさに
    免じてノトブルガに教えてやろう、と――。

[[【序文】>【序文】]]

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