【種別】 特殊能力 【元ネタ】 World Rejecter ＝「世界を拒絶する者」 【初出】 新約十三巻 【解説】 [[上里翔流>上里翔流(かみさとかける)]]の右手に宿っていた力。 [[木原唯一>木原唯一(きはらゆいいつ)]]に奪われてしまっていたが、[[上里勢力>上里勢力(かみさとせいりょく)]]により取り返された。 現在は腕から切り離した状態のまま、上里がクーラーボックスに入れて保管している。 対象を『[[新天地>新たな天地]]』と呼ばれる異世界へ追放し、その存在を現世から抹消し事実上の死を与える。 魔術師(魔神)達の、今ある世界を諦めたい、旅立ちたいという幻想が生んだ力であり、 [[上条当麻>上条当麻(かみじょうとうま)]]の右手に宿る[[幻想殺し>幻想殺し(イマジンブレイカー)]]と同質にして対極の力だとされている。 理想送りが上里へ宿ったのは、11月の上旬。[[第三次世界大戦]]が終結し、[[グレムリン]]の行動が表面化し始めた頃。 彼が明確に自分の力と認識したのは、上条との邂逅の2、3日前。[[サンジェルマン]]との一件が発生していた時期である。 理想送りは幻想殺しと同じく、魂の輝きに惹かれ、上里には宿るべくして宿ったと推測されているが、 上里本人は[[魔神>魔神(まじん)]]達の身勝手な願望を押し付けられ、 その結果として自分の運命や自分に関わった少女達の自由を歪めたキッカケであると解釈している。 理想送りの効果を受けた者は、現世から『[[新天地>新たな天地]]』へ送られる。 上里による新天地の暫定的な説明として、フィルムのコマ数の例え話がある。 曰く「世界はどこまで広がれるか」という問題に対し、容量の限界を100%と定義すると、 人の意識の中で構築された世界は100%の内の、ほんの20%～30%だけでしかない。 そのため、新天地はその残った空き容量で構成されている… とのこと。 故に、所謂「平行世界・パラレルワールド」の類や、[[位相]]とはまた違うものである。 しかし、上里が如何にしてこの新天地にまつわる、作中世界の構造に関する観念を得たのかは不明である。 (恐らく[[上里勢力>上里勢力(かみさとせいりょく)]]の少女達が解析したのだろう。) 発動条件は幻想殺しと対照的にかなり複雑。 使用時には「新たな天地を望むか」というワードを、標的に対して投げかける必要がある。 (もっとも無言で消している場面もあるため、小声、もしくは心の中で言っても発動する様子) 重要なのが、対象が「今の世界に執着しながら別の世界を求める」意思を持っていること。 上里はこれを『願望の重複』と呼んでおり、発動条件の中で最も大きなウェイトを占める。 ｢恋人と幸せになりたい、と考えながらもハーレムを崩したくない」といったような、 矛盾、対立する願望を持つ者に対し発動し、今ある世界にしがみつきながら同時に破滅願望も抱えている人間に 能力の対象とする取っ掛かりを見つける事ができる。 が、「現世に留まり続ける意思」がブレない者には効果を発揮しない。 例えば、[[パトリシア＝バードウェイ]]は「命を賭けてでも姉を救う」という強い信念の為に影響を受けず、 知性を与えてくれた七人の始祖達の想いを携え、 [[木原>木原一族]]として揺るぎない信念を持っていた[[木原脳幹>木原脳幹(きはらのうかん)]]もまた効果を受けなかった。 幻想殺しとは違い、右手そのものではなく右手の作る影が効果の起点となっている。 [[娘々>娘々(ニャンニャン)]]が指先に吸い込まれるように消えたのは、触れた部分の影が起点になっていたため。 光量や光源の角度を変化させれば、影絵の要領で照準を調節できる。 密着部分に影が生じるため、当然幻想殺しと同じように直接触れる事でも発動できる。 射程は幻想殺しより遥かに広いが、影を起点にする特性上、例えば前方に傘をかざすなどして影を他所に移すことで、攻撃から身を守ることは可能。 また、理想送りが追放するのは、人間だけでなく『願望の重複』に該当する者の被造物にも効果を発揮する。 劇中では石鹸の泡、風力発電のプロペラ、脳幹が使用した[[対魔術式駆動鎧>対魔術式駆動鎧(アンチアートアタッチメント)]]、 さらにはネフテュスの埋め込もうとした[[位相]]まで難なく消し飛ばした。 学園都市に潜入しても察知されなかった点から考えると、[[滞空回線>滞空回線(アンダーライン)]]も無力化した可能性がある。 異能のみに効果を発揮する幻想殺しと違い、風力発電のプロペラや石鹸の泡といったありふれたモノから、 『魔神』や『対魔術式駆動鎧』、『位相』など、 幻想殺しとは比較にならないほど広い範囲を対象にすることができる。 なお&bold(){幻想殺しと直接衝突した場合、理想送りの効果が優先される}ようだが、 実際には上条の右手を吹き飛ばした直後、[[その奥にあったモノ>竜王の顎(ドラゴンストライク)]]に襲われて返り討ちに遭っている。 これは理想送りの機能が、表層から深層へと順番に効果を発揮するものだった事から、幻想殺しを消し飛ばした直後、理想送りが力を発揮するまでのわずかな時間差で反撃を受けたことが原因。 また、使用者本人の意思で『新天地』に送った存在を、自在に右手から現世に呼び戻せる...と思われたが実は上里の「袖から暗器を取り出すのって格好いいな」という理由から繰り出されたトリックによるブラフ。 作中では、娘々が人間によって消滅したというあり得ない状況に混乱した[[ネフテュス]]に制服の右袖に仕込んでいた[[ヌアダ]]の『銀の左手(アガートラーム)』を取り出した。 ネフテュスの仮説によれば、 上条当麻が魔神全体を救う道から外れて、[[オティヌス]]個人の『理解者』になってしまったのが原因で発生した能力。 「幻想殺しにすがり続けても安心は得られない」 と真のグレムリンの魔神達が無意識下で思ってしまったことで、それに代わる力の出現を願ったために上里の右手に宿ったと考えられる。 「あらゆる魔術師の夢」とされる幻想殺しへの思いがこうも簡単に右往左往してしまうのは、 [[魔術>魔術(まじゅつ)]]業界の勢力は99.9%魔神が占めており、数だけなら少ないが、 一人一人の力が桁違い過ぎて人間の魔術サイドが占める割合など髪の先にも満たないから、らしい。 その性能故、地の文では『究極の一撃』と評されており、 条件さえ揃えば幻想殺しや「神」すらも消し飛ばすこの異能は、「攻撃力」という点に関してはほぼ右に並ぶものが無い。 [[木原唯一>木原唯一(きはらゆいいつ)]]をして「質量保存の法則も相対性理論もぶち抜いている」 「何故原子崩壊に伴う大爆発が起こらないのか不思議でならないレベル」と言わしめている。 また、理想を叶え、救済を与えるという観点から、『しあわせを操る右手』と形容されることもある。 この点でも、上条当麻に不幸をもたらす原因と目されている幻想殺しとは対照的である。 [[幻想殺し>幻想殺し(イマジンブレイカー)]]が幻想の破壊で現実を呼び戻す盾であるならば、 この能力は対象を異世界へ送り、現実を否定する矛であると言えるだろう。 ...と、強力無比な能力ではあるが、この能力は『願望の重複』が有ると判断すれば、 &bold(){所有者をも新天地に飛ばしてしまう}という致命的な欠点が存在する。 実際に魔神への復讐に疑問を持った上里は、右手を除き新天地に送られてしまっている。 その為、所有者自身も一つのぶれない意思を常に持ち続ける必要がある。 なお、不幸などのデメリットはもたらさないが、能力自身が持ち主に牙を剥くという点で 欠点すらも幻想殺しと対照的となっている。 幻想殺しが、例え腕ごと切り離されても一応は効果を永続的に発揮するのに対し、 こちらは右手の影を照準に、「新たな天地を望むか?」と対象に問うことで初めて効果を発揮するため、 使用者の脳と右手の神経接続が必要不可欠である。 また、幻想殺しには「上条当麻の右手にのみ幻想殺しが宿る」 というルールに基づき、右腕を損傷したり、または切り落とされるなどした時に、 破損した右腕周辺を再生させ、肉体から離された右手から力を失わせる、などのセキュリティのようなものが存在するが、 新約十五巻にて理想送りが上里の右手首ごと切断され、[[木原唯一>木原唯一(きはらゆいいつ)]]に能力を奪われた際には、 上里の右手が再生することはなく、奪われた右手から理想送りの力が失われることもなかった。 しかし、この時唯一は[[サンジェルマンウィルス>弱毒性サンジェルマンウィルス]]を用いて、奪った右手を「自分の右手である」と認識させていたので、 自己欺瞞によってセキュリティの抜け穴を掻い潜り、幻想殺しのようにならなかった可能性がある。 そもそも理想送りに幻想殺しのようなセキュリティルーチンが存在するのか、 あるいは存在しても理想送りが上里を所有者として品定めしている段階だったため適用されなかったのか、 いずれにしろ幻想殺しよりも事例が少ないため不確かなことも多い。 ただし、これは唯一が裏技を用いていたが故の事態であり、もしも唯一が奪った上里の右手を正しく「他者の右手である」と 認識した上で振るっていた場合には、幻想殺しよろしくセキュリティが作動したかも知れないという 逆説的な推測が成り立つのも事実である。 【参照】 →[[禁書世界の時間論]] ----
