一方通行

「悪りィが…こっから先は一方通行だ。侵入は禁止ってなァ!!」

とある魔術の禁書目録8巻

「俺が弱くなった所で、別にオマエが強くなった訳じゃねぇだろォがよ。あァ!?」

とある魔術の禁書目録8巻

「……、分かってンだよ。こンな人間のクズが、今更誰かを助けようなンて思うのは馬鹿馬鹿しいってコトぐらいよォ。まったく甘すぎだよな、自分でも虫唾が走る」

 大体をもって、この世界の住人はどいつもこいつも救いようがない、甘いだけで優しくない芳川桔梗、誰かを守ろうとした男に一瞬のためらいもなく鉛弾をぶち込んだ天井亜雄、そして一万人もの人間を殺しておきながら今更人の命は大切なんですとか言い出す一方通行。
こんな腐った世界の人間が、今更人に救いを求めるなんて、間違っている。人に救いを与えようと思うなんて、馬鹿馬鹿しいにもほどがある。
そんなことぐらい分かっている。
こんな世界の住人だからこそ、痛いほどによく分かっている。

「けどよォ」 

「このガキは、関係ねェだろ」

「たとえ、俺達がどンなに腐っていてもよォ。誰かを助けようと言い出すことすら馬鹿馬鹿しく思われるほどの、どうしよォもねェ人間のクズだったとしてもさァ」

「このガキが、見殺しにされて良いって理由にはなンねェだろうが。俺達がクズだって事が、このガキが抱えてるモンを踏みにじっても良い理由になるはずがねェだろうが!」

何となく分かった。『実験』を止める為に操車場にやってきた、あの無能力者レベル0の気持ちを。一笑に帰すほどの甘ったれな考えで命を賭けるにしてはあまりにもくだらない、妹達を助けると言う理由だけで立ち上がってきたあの男。
生まれたときから住んでいる世界が違うヒーローのように見えたが、違った
この世界に主人公なんていない。都合の良いヒーローなんて現れない。黙っていたって助けは来ないし、叫んだ所で救いが来るとも限らない。
それでも大切のものを失いたくなければ。散々待っていたのに助けがやってこなかったからと、くだらない理由で失いたくなければ、なるしかないのだ。
無駄でも無理でも、分不相応でも。
自分のこの手で、大切なものを守り抜くような存在に。
主人公のような、行いを

「確かに俺は一万人もの妹達をぶっ殺した。だからってな、残り一万人を見殺しにして良いはずがねェンだ。ああ奇麗事だってのは分かってる、今更どの口がそンな事言うンだってのは自分でも分かってる!でも違うンだよたとえ俺達がどれほどのクズでも、どンな理由を並べても、それでこのガキが殺されて良い事になンかならねェだろォがよ!!」

とある魔術の禁書目録5巻
最終更新:2012年01月28日 20:22