【名前】鬼部亜紋(もののべ あもん)
【性別】男
【所属】魔術
【能力】『阿用郷の鬼一口』、『於爾の大歳神』、『鬼加美』
【能力説明】
「鬼とは如何なる存在か」を発端とし、出雲風土記にて最古の鬼と謳われる阿用郷の鬼に結び付けた魔術。
この魔術では鬼を「あやふやな存在であり、人の認識によって人を喰らう鬼となった」を定義付けている。
普段は鬼部の周囲をうろつく霧となっている。この霧には認識阻害機能が付いており、隠密活動などに向いている。
認識阻害機能を解除すると、それは魔力を宿す不自然な霧となる。魔術を齧る者のみならず霧の現象そのものに違和感を抱く者達が現れるだろう。
警戒、敵意、殺意、恐怖、怒り等々様々な負の感情を抱かれる事によって霧は存在感を得、一つ目の鬼の顔となる。
古来より鬼の力を持つ妖怪は人を喰らう伝承が数多く存在する。肉体を喰らう者、心を喰らう者、影を喰らう事で人の命を貰うなどという伝承も各地に点在する。
魔術『阿用郷の鬼一口』では、出現した一つ目の鬼が影を食べるとその部位が動かなくなり、肉体を食べられるとどうなるかは明白である。
人の負の感情を食べ続ける度に(物理的にも魔術的にも)強大化する一つ目の鬼の顔だが、逆に言うと「鬼?あぁ、そんなもんこれで簡単に倒せるわー」とか「鬼?鬼だ!おおお!!会いたかったぜ!!」とか、負の方向に感情が移動しない思考回路の持ち主相手だと単なる認識阻害機能付きの霧でしかなくなる。
島根県に鬼村という場所がある。鬼村は鬼神や鬼一族が暮らす村と謳われ、村に存在する神社では大歳神を祀っている。この大歳神は鬼神と同一視されており、鬼一族から信仰を受けていた。
大歳神は豊穣神であり、大歳神の祟りは豊穣に関わる植物によって顕現する。神にとって祟りの対象となる者は神を畏れない者にある。
神への信仰は裏返せば神への畏れである。大歳神を畏れない者=鬼(神)を恐れない者と定義し、『阿用郷の鬼一口』が効かない相手に使用する。
鬼という存在や力を恐れない者程効果が高くなり、神の御業である豊穣の象徴たる植物が地中より生えてくる。
蔓を携える異様な植物は松葉のような鋭さと竹のような生命力の高さを持ち、ある時は剛力を宿す槍衾になり、またある時は蔓に絡め取った者の生命力を吸収する触手になる。
また、大歳神は方位による縁起を司る権能も持つ事から所謂『虫の知らせ』のような迫る危険を察知する感覚を研ぎ澄ます効果もある。
妖怪の鬼を前面に出す『阿用郷の鬼一口』と神の大歳神を前面に出す『於爾の大歳神』はワンセット扱いであり、双方の欠点を補う為相互補完性能は高い。
島根県奥出雲町に鬼の試刀岩と呼ばれる岩が存在する。かつて鬼が刀の試し斬りをしたとされ、周囲に亀裂を起こさず綺麗に真っ二つに両断されている。
この伝承から『どんな鬼が』、『何の為に』、『誰を想定して』、『どのような効果を』、『本気で振るえばどのような結果に至るのか』を計算して製作された霊装。
鬼包丁のような形状で鍔が無く、柄巻も存在しない無骨な刀剣。刀身は全長2メートル強。刀身の中心部に空く円状の穴は一つ目を現す。鞘は鬼部の影である。
霊装に魔力を通すと円状の穴に球状の一つ目が出現する。刀身の色や刃紋は魔力の量や注入の加減で変化し、刃紋からは刀身の色に応じた煌びやかな光が輝く。
鬼とは元来人を喰い、思うが儘に暴れる妖怪である。鬼が刀を作る鍛冶伝承はあっても鬼が人の武器であり、鬼を退治する為にも使用された剣を振るう伝承は殆ど存在しない。
なおかつ、試し切りにも関わらず周囲に亀裂をおこさず破壊力を刃が触れる部分へ一極集中させて大岩を両断した『破壊力』と『繊細さ』の融合は本来鬼に似つかわしくない芸当である。
『どんな鬼』、想定するは阿用郷の鬼と同一視される鍛冶の神でもある天目一箇神、『何の為に』、想定するは鬼を殺せる力や術を持つ者に対抗する為、『誰を想定して』、鬼を殺せる力を持つ者とは鬼と同じ人外の者、鬼を殺せる術を持つ者とは人間、『どのような効果を』、想定するは節理を見極める『瞳』と相反する力の『融合』とした。
『鬼加美』は天目一箇神の御力を最大限に発揮する為に製作された、相反する力を融合させる刀剣である。使用時には使い手である鬼部は自身の体に身体強化術式を施す。
鬼の膂力の象徴である『破壊力』と武具を製作する鍛冶神の象徴である『繊細さ』を併せ持つ『鬼加美』は無駄な破壊を周囲に振り撒かず、刃に触れる部分だけを両断する。
伝承元の試刀岩は節理に伴う両断であった事から刀身の中央部に出現した一つ目はエネルギーの筋道を見極め、刃紋に『川』や『山』の魔術的記号を付与し、融合させた『破壊力』と『繊細さ』を宿す刃で以てエネルギーを逸らしたり断ち切る事を可能とする。
刃紋から放たれる光にも『川』や『山』の魔術的記号が宿っており、振るう刀身の軌跡や斬撃を与えた箇所に光が滞留する事によって様々な“流れ”を分散したり誘導したり堰き止めたりできる。
『本気で振るえばどのような結果に至るのか』の行き着く先、阿用郷の鬼や河川・山を作り出したダイダラボッチとも同一視され、天叢雲剣を作りたもうた鍛冶神天目一箇神の力を宿す『鬼加美』の本領。
それは全力(=魔力消費大)で振るう場合に限って発動する、刀剣そのものや刀剣を振るう主、刀剣に宿る異能に悪影響を及ぼす逸話への耐性を意味する『鍛錬』である。
【概要】
魔術結社『
神道系出雲派』に所属する魔術師。鬼部家現当主。千年以上の歴史を持つ鬼部家始まって以来の異端児と称される。魔法名『心で鉄塊を打つ探究者(Fora191)』。
鬼部家はとある特殊な生き様を貫徹する、代々鍛冶を司る家系なのだが鬼部亜紋が当主となってからは刀剣のネット販売に精を出すようになった。
神秘性を謳う魔術結社に所属していた経歴、伝統工芸を嗜む者特有のネット時代とも謳われる現代社会への不適応ぶり、それらを露呈する家の者達に大層不満を持っていた鬼部亜紋は当主になった途端に己の野望である刀剣販売店『鬼部屋』を設立、『鬼部屋』の代表として伝統的な日本刀のみならず包丁製作や顧客の要望に応じた創作刀剣の受注を承るようになった。
「神秘性?何それ?おいしいの?」と言わんばかりの現当主の行動に当初は反対が多数を占めていた鬼部家だったが、伝統工芸や伝統芸能が時代の流れによって段々と廃れていく現状を何とか打破しようと必死に抗う鬼部の姿勢に次第に感化された。
最近ではアニメで登場する刀剣を再現したり刀剣の鑑賞会を開いたりするばかりか刀剣や包丁を扱う海外の業者にコンタクトを取り、個人的に良製品を輸入して技術を学ぶなどその貪欲な姿勢は今も変わらない。
事業も好調な事もあって今や『出雲派』有数の金持ちとなった鬼部家だが鬼部自身は大概財布の中身がスッカラカンである。鬼部は非常に気前が良い(=金遣いが荒い)ので、開催した
パーティや合コンなどでは何時も鬼部が全員分を奢る。
本人は「俺ァ宵越しの銭は持たねぇ主義だ。ダッハッハ!」などとのたまっているが、丁髷スタイルの受けが悪いのか女にはモテない。参加した合コンで女性と良い関係になった事は一度も無い。
「時代が最先端を走る俺に付いてこれないだけだ。坊さんがあのツルッツルスタイルでモテる時代なんだ。丁髷だってイケる!そういう時代が来る!ダッハッハ!」などと嘯いているが時代遅れ過ぎるだけなのではないかと周囲では噂になっている。
神秘性を軽んじていると当の鬼部家の人間からも見做されている鬼部だが、鬼部ほど神秘性を重要視している者は中々存在しない。
扱う3つの主要魔術の内2つが、他者が抱くあやふやなモノ(=神秘性)依存の魔術である事からしても伺えるだろう。
鬼部にとって神秘性とは「人間が心の内に抱くロマン」であり、それを探究し続けていく事こそが自身の生き様であると捉えている。
そもそも鬼部家はとある特殊な生き様を千年以上貫徹し続けてきた一族であり、それは『模造(レプリカ)から本物(オリジナル)を越える道を探究する』というものである。
レプリカが氾濫している世の中において、そのレプリカがオリジナルのどの要素を模倣したのか、どの技術を別技術で代替しようとしたのか。
本物を模倣し模造品を作る従来の思考とは一線を画し模造品から本物に使用される技術・要素を探究・発見し、オリジナルとは別方向へ開花させた一品を作り出そうとした考古学的な思考を持つ一族こそが鬼部家であり、鬼部亜紋は一族が千年以上前から初志貫徹してきたロマン溢れる生き様を体現しているのである。
源平合戦の折、敗走を重ねた平家の人間や平家に与した者達を匿ったり援護したりした者達がいる。世に言う『平家の落人』を助けた『平家の隠れ里』の住人であり、鬼部家もまたその一員であった。
その際形代版天叢雲剣に魔術的に関与する機会があった。当時の形代版天叢雲剣はオリジナル版天叢雲剣を模した初代レプリカである。
天目一箇神の子孫達が作製したそのレプリカの構造を魔術的関与で知った鬼部家だったが、鬼部家は天叢雲剣を製作しようとはしなかった。
レプリカに使用された技術・要素からオリジナルに存在する構造を推測し、当てをつけたその技術を改良し、自ら開発する刀剣に組み込めないか試行錯誤し続けた。
鬼部家は天叢雲剣を作ったのは天目一箇神と考えており、日本各地に存在する伝承と合わせて『スサノオが八岐大蛇から得た天叢雲剣はかつて天目一箇神がアマテラスに献上した剣である』と断定している。
千年近くの歳月が流れ、かつて日本の至る所に存在した神秘性が薄れ行く中開発された霊装『鬼加美』特有の性質『鍛錬』はまさに天叢雲剣に使用されたであろう技術の亜種。
神の権能を再現したわけでは無い。天叢雲剣の本物(オリジナル)を作ったのでも模造品(レプリカ)を作ったのでも無い。
魔術師ならば誰もが行う独自解釈に基づく神話伝承の模倣。その極地の一つであり、鍛冶神天目一箇神が持っていたと推測される技術を別方向に開花させたものこそが鬼部亜紋が完成させた『鬼加美』である。
【特徴】
身長180センチ、体重80キロ台。30歳目前。長い黒髪をオールバック風にした後、頭部頂上付近を基点に後ろ髪を細い白布で巻き止める等色々細工を施し丁髷にしている。
丁髷の先端は城の屋根に在る鯱の尾のような反り具合。顔がでかい癖に狐のような印象を与える細い目という構造が特徴。
灰色掛かった作務衣を着用。上から各所に紅葉が描かれた山吹色の袢纏を羽織り、黒い鼻緒を据えた雪駄を履く。
アニメ大好きマンガ大好き二次元の世界があったら飛び込みたいオタク気質。実は甘酸っぱい恋愛モノが好物なのも、自分が全くモテず跡継ぎの心配をされている周囲からの哀れみの視線の影響…なのかもしれない。
【台詞】
「
この包丁…魔術的記号はどこにも無ぇが何か匂うんだよなぁ。工程を想像しちまう悪い癖だが、こういう直感は案外馬鹿にゃできねぇ。よっし。コンタクト取ってみっか!」
「イヤッホー!!今日は俺の奢りだああぁぁ!!宵越しの銭なんざいるか!!金ってのは湯水のよう垂れ流してこそ使いがいがあるってもんよ!ダッハッハ!!」
「二次元の世界って神秘的以外の何物でも無いよな。あのロマン溢れる世界に俺も入りてぇぇ」
「刀の感情、剣の感傷、刃の情動、全ては剣戟の間に語れ、尽くせ、踊れ、狂え。嗤い嘲る鬼よ…錆びを知らぬ刃紋に漣を湛え、在るがままに斬れ!!」
【SS使用条件】
特になし
最終更新:2016年05月09日 22:47