【名前】拝閲梓倫(はいえつ しりん)
【性別】女
【所属】魔術
【能力】神道版『人払い』魔術『幸魂奇魂』。一霊四魂式祈祷魔術『直霊』。『直霊』の派生魔術『天の逆手』。
【能力説明】
  • 神道版『人払い』魔術『幸魂奇魂』
出雲屋敷の仕組みに一霊四魂の理論を適応した『人払い』魔術。国造りの神大国主の逸話・権能を端に発する結界魔術とも見做す事ができる。
大量に所持する五方札を巻いた小さな円盤状の土器を東西南北に設置し、その中央に同じく小さな円盤状の土器を置き、術者が“心の中で唱える”詠唱「幸魂奇魂守給幸給」を実行し発動する。
発動すると五つの土器は大地に『還る』ように溶けていく。神道における土葬…人は土に還る理屈を応用し『幸魂奇魂』を人に適用する事もできる。この場合土器は人体に『還る』。
大まかな効果は二つ。結界内では特に陰陽師が好んで扱う風水系や家相系の魔術が機能不全に陥る。また、地脈や龍脈も遮断されそれ等を用いた魔術も当然使用不可能となる。
これは家相鬼門風水などの凶相から一切免れられる出雲屋敷の仕組みの応用である。例えば『山』や『川』などの魔術的記号は結界からの干渉による競合などで機能不全に陥る。
もう一つの効果は神道版『人払い』の効果。『幸魂奇魂』は人に存在する霊魂の内、直感的認識を司る幸魂(さきみたま)及び理論的認識を司る奇魂(くしみたま)に干渉する魔術でもある。
現実に見える効果としては幸魂の場合は右脳の働きに干渉し、奇魂の場合は左脳に干渉する術式。
雑多な人の思考・感情を一定の方向性に整える事で人の挙動を操作したり、潜在意識に働き掛ける事で特定の人物(達)に対する認識を誤魔化す事が主目的。
出雲屋敷の仕組みを応用すれば地脈や龍脈の流れを制御できる為、結界内では神道版『人払い』の効果を、結界外では風水の理論を用いた一般的な『人払い』の効果を発揮できる。
幸魂及び奇魂は用途に応じて別々に使用する事も可能。時間制限があるタイプもあれば術者の任意でON/OFFを操作するタイプ、恒常的な支配を実行するタイプなども存在する。
洗脳効果の有無の基準には宗教防壁を置いている。一般的な魔術師クラスの宗教防壁には通常の洗脳魔術は弾かれるが『幸魂奇魂』を仕掛けた土砂の中に対象を閉じ込めた上で対人間用の『幸魂奇魂』を掛ければ宗教防壁も洗脳対策用魔術もお構いなしに術中に落とせる。この魔術を発展させていく中で行き着いたのが一霊四魂式祈祷魔術『直霊』である。

  • 一霊四魂式祈祷魔術『直霊』
日本神道に伝わる対神格用伝承を『交渉術』と見做し、一霊四魂の理論を通じて対人間用・対魔術用に調整した魔術。
一霊四魂とは、神や人には荒魂(あらみたま)、和魂(にぎみたま)、幸魂(さきみたま)、奇魂(くしみたま)という四つの魂が存在し、それ等を直霊(なおひ)という霊魂が制御しているという理論である。
幸魂と奇魂は和魂の一部であり、大別的には荒魂と和魂とに分けられ、神が持つ荒々しい側面(例:自然災害などを筆頭とする神の祟りや呪い)が荒魂であり平和的な側面(例:豊作などを筆頭とする神の恩や恵み)が和魂という事になる。霊魂が邪に染まると直霊は曲霊(まがひ)となり、荒魂や和魂などは性質を邪なものに変貌させる。
“心の中で唱える”詠唱「和魂直霊守給幸給」と『対象に利のある行い』をする事を引き鉄とし、術者が敵意を抱かない事を条件とし、荒魂の側面を持つ神話伝承魔術の数々を和魂に対応する拍手(指先まで合わせる一拍手)で以て沈静化する。
つまり曲霊から直霊に、また荒魂から和魂に『属性』を変貌させる日本神道独自の祈祷を魔術に置き換え、破壊力や呪いなどを有する魔術を構成する動力源である魔力の性質や量を変化させてしまう魔術である。
術式へ干渉するのでは無く動力源の魔力に干渉するタイプ。動力源を変化させられてしまうと術式が成り立たなくなるので自動的に魔術は消滅するという構図である。
『対象にとって利のある行い』はその時々に応じて変化するが、利があれば何でもいい。傷を治す、情報を教える、援護する、投降する…etc。
とにかく拝閲から直接『利のある行い』を受けた対象はその時点から『直霊』の影響下に入る。とはいえ、術式行使においては詳細な条件が厳密には存在する。その最たる物が『一霊四魂の理論外』及び『利益と不利益による相殺』である。
『直魂』は一霊四魂の理論を使っているので神や人間以外の伝承…例えば神と同一視されない妖怪の伝承を使った魔術は全般的に無効化できない。
また、利の基準を相手の『意思』と生物学的な『構造』に置いており、効果発動後においても対象にとっての不利益が同じく対象にとっての利益のある行為とイコールないし上回ればその時点で術式が解除されてしまう。
加えて心中詠唱から3分経って初めて効果を発揮する制限が存在する。その3分以内で利益・不利益の度合いが計算され、利益が上回れば効果発動。但し、『直霊』を発動することそのものによる不利益は条件外である。
対象を救う為には、上記の詳細な条件に沿った解決策に打って出るか、敵意を拝閲に抱かせる必要がある。そうすれば『直霊』は即座に解除される。
当人の性格上困難を極めるだろうが、とにかく拝閲を刺激し続けるしかない。だが、仮にそれを成功させたとして待ち受けるのは『直霊』の派生魔術『天の逆手』である。

  • 『天の逆手』
“心の中で唱える”詠唱「荒魂曲霊呪給祀給」を引き鉄とし、術者が敵意を抱く事を条件とし、和魂の側面を持つ神話伝承魔術の数々を手の甲を逆にした一拍手で以て凶暴化させる。
「平和的な神でも貶せば祟られる」。『天の逆手』は一霊四魂の理論を応用し、神の恩恵の曲解に確固たる裏付けを与え、和魂の側面を持つ神話伝承魔術に強靭な攻撃性を付加させている。
この事から拝閲は八百万の神々が持つ伝承に対する造詣が深く、様々な穏健的神話伝承魔術を凶暴化させて行使する。
曲霊の元和魂から荒魂に変貌する際の神の祟りは凄まじいという理屈を用いている為、穏やかで恩恵溢れる神話伝承であればある程曲解の強度が跳ね上がる。

本来詠唱というのは口に出す必要がある。ノタリコンと呼ばれる暗号を用いた簡略的詠唱でも言葉にする必要があるのだ。
しかし拝閲の“心の中で唱える”詠唱の場合は黙祷の宗教的意味を一霊四魂の理論を通じて抽出した末の産物である。
黙祷には宗教的意味が無いなどとされているが、心中であろうと祷りには確かな宗教的意味があり、神や人の内面である一霊四魂は心の疎通を意味する。
その為、逆に言葉を発している最中に“心の中で唱える”詠唱は不可能である。例えばダメージを負い堪らず呻き声を発してしまっている間は心中詠唱を行使できない。
【概要】
国内最大規模の魔術結社と謳われる『神道系出雲派』に所属する魔術師。魔法名『神秘を守護する番人(Negotio054)』。50代後半。
大小様々に存在する神道系列の各結社の魔術師と折衝を持ち、『交渉』によって出雲派の神秘性を守護する結社きっての『交渉人』。
情報を漏らさない出雲派において他結社の人間と折衝を持つと聞けば首を傾げるかもしれないが、ようは出雲派にとって重要な情報が漏れ出た場合の『始末人』である。
他の神道系結社が出雲派の情報を探ろうとしなくても不慮の出来事で出雲派にとって重要な情報が外部に漏れ出てしまう可能性は存在する。可能性が具現化した場合拝閲を中心にチームが組まれ、情報の流出先を捕捉・掌握する。
神道版『人払い』魔術『幸魂奇魂』の対人用効果の行き着く先は、『幸魂奇魂』を仕掛けた土砂の中に対象を閉じ込めた上で対人間用の『幸魂奇魂』を掛ける事による恒常的な支配である(例:脳に『自分は出雲派の魔術師&出雲派に忠誠を誓う人間である』という記憶を刷り込み、齟齬を生む関連記憶を改竄する。回復魔術と同じく一度改竄されたら復元は不可能である)。
今の出雲派には拝閲による『交渉』によって他の神道結社から引き抜いた魔術師が一定数存在する。
上記の事からわかる通り、拝閲は厳格な神秘主義保持論を唱える魔術師である。唯、生来の性格故なのか魔術師らしいとでも称すべきなのか拝閲の感性は常人とは相当にズレている。
例を挙げると、情報が外部に漏れ出た場合流出先に対して抱く感情は敵意では無く哀れみである。「出雲派の情報を得ただなんて絶対許せない。必ず潰さないと」では無く「出雲派の情報を得てしまっただなんてなんと運の悪い可哀想な方々なのでしょう。わたくしめが救ってあげましょう」という具合である。
およそ敵意という感情を抱く事は無く、唯々哀れみを抱いて事に対処する。己の行いが対象の救いに繋がる事を信じ切っているタイプの人間。
本来出雲派の重要な情報を知った外部の人間は処刑して然るべき意見がある中で支配という顛末に落ち着かせる事で対象の命を救っているので形式的には救済になっている事実が余計にややこしい。
もし拝閲が敵意を抱いて事に対処しようとすれば、それは『交渉』では無く『始末』でも無く、容赦の欠片も無い『殺戮』に発展するであろう。
神々が荒魂を具現化するように人々に強大な祟りを差し向けたのと同じように。扱う魔術も性格も極端な二面性を有する、それが魔術師拝閲梓倫の生き様である。
【特徴】
身長170センチ。もじゃもじゃしている白髪が特に目立つ。老婆らしく体の至る所に皺が見られるが、大木の年輪を表現していると錯覚してしまう程の深みを見る者に与える。
黒のアンダーシャツの上から深緑のミリタリーブルゾンを着用。純白のプリーツスカートの上から灰色掛かった透け素材のチュールスカート(巻きタイプ)を身に付けている。黒のサイドゴアショートブーツを履く。歳を取ってもオシャレには気を使っている独身貴族。
『交渉』時にチームを組むのは、如何にして対象を『直霊』の影響下に置くかを考えての事。チームに攻撃させている対象を拝閲が助ける事で発動条件を満たすのがいつものパターンだが、何事も拝閲の想定通りに動くわけが無い事も考慮している。
時には拡声器を使用してこちらの目的(=情報)を大々的に伝える事で発動条件を満たしたり、設置した『幸魂奇魂』を解除する事で対象が龍脈・地脈などを用いた魔術を発動できるようにする事で逆に『直霊』の発動条件を満たすなど工夫を凝らしている。
時にはハッタリを効かす為に出雲派において飛び抜けた戦闘能力を持つ直接戦闘担当、『怪童』と称される魔術師をチームに入れてわざと拝閲へ向けて攻撃を仕掛けさせ対象に接近する手管を使用する事もある。
【台詞】
「以前から申し上げているように、わたくしめは出雲派の情報流出に繋がるような行いには断固反対です。わたくしめの心労にも少しばかり配慮して下さっても罰は当たらないでしょう?」
「あちらには3人、向こう側には2名ほど魔術師が潜んでいるようです。どうしてあなた方を狙っているのかは皆目見当も付きませんが、どうやらわたくしめもあなた方に巻き込まれてしまったようです。…(和魂直霊守給幸給)…お気になさらず。これでも一端の魔術師ですので。実は“あなた方が都合の良いタイミングで現れたわたくしめを警戒している”事など百も承知なのですよ」
「敵対?何を仰います。わたくしめは唯々心配なのでございますよ。あなた方の身の上に何かあってはならないと肝に命じ、双方に利のある平和的な話し合いができればと、はい」
「(幸魂奇魂守給幸給)……おや、どうしました?頭が痛みますか?大丈夫です。“同じ出雲派の魔術師”じゃないですか。ささっ、わたくしめに看せてごらんなさい」
「(荒魂曲霊呪給祀給)……さてさて。魔術使用の縛りから解放されて、現在のあなた方はさぞ勇み立っているのでしょうね。その姿勢が勇み足に繋がっている事に気付かずに。わたくしめにこの手段を採らせてしまったのはあなた方にとって救いなのかどうか。…あらあら。このような物言いは現在のわたくしめには相応しく無い…か。では……救いを拒んだ者の末路をその身に刻みやがれクソ野郎!!」
【SS使用条件】
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最終更新:2016年05月09日 22:58