とある日の裏路地…
「風紀委員ねぇ…あなたは失格よ?」
「や、やめろ!!うわぁぁぁぁ!!!」
一人の少女が風紀委員の少年に危害を加えた。
12月22日、冬休み初日の朝、稜と正美の部屋にて…
「え?風紀狩り?」
「…ああ、名前、学校、挙句の果てには能力まで不明と来た」
稜と正美は朝食の焼いた食パンを食べながら話していた。
「手掛かりは?」
「黒い服に胸辺りまである赤色交じりの髪の毛を緑の髪留めでツインにして、腕には大量に風紀委員の腕章を、顔にはお面を着けてるって事だけだな」
「す、すごく分りやすい見た目だね…」
「…お、時間だな…じゃ行ってくる」
「あ、行ってらっしゃい!気を付けてね?」
「ああ」
稜は、部屋を出て、176支部に向かった。
その数分後だった。
正美が、掃除をしていたら、稜の勉強机に風紀委員の腕章が置いてあった。
「ん?あ!稜ったら…しょうがないな~」
正美は制服に着替え、稜の腕章を持って部屋を出た。
街中にて…
「結構遠いな~…稜と一緒なら短く感じるのに…」
「ねぇお姉ちゃん」
「ん?」
正美は小さい女の子に声を掛けられた。
「ウチのかばんを探して欲しいんだけど…」
「ごめんね?お姉ちゃんは、風紀委員じゃないのだから…他の人に頼んでみてね?」
「うん…」
しかし、今の正美は、一刻も早く、腕章を届けなければならないため女の子の頼みを断った。
そして、正美はその後から、後ろを誰かにつけられている気配を感じ、少し広めの裏路地へ逃げ込んだ。
その瞬間…
「ねぇ、あなたって風紀委員?」
「え?これは、稜に届けるためで…わたしは風紀委員じゃないから…」
「ふ~ん…ウソつき」
「え?…!?」
正美は驚愕した。
今彼女の目の前にはつい先ほど、稜と話していた人物にそっくりだったからだ。
同時刻176支部にて…
「んじゃあ巡回に…って…やべ、腕章忘れた…」
「まったく…取りに行ってきなさい!もしかしたら正美が届けに来るもよ?」
「かもしれませんね…じゃあ行ってきまぁす!」
稜は支部を出た。
再び裏路地にて…
「あっそ~…制服まで来てるのに?」
「でも違うの!!」
「じゃあ…焼印を刻むか、腕章を私にわたすか、それとも…首を差し出すか…選んで?」
お面の少女はそう言うとポケットから鉄でできた焼印を取り出した。
「じゃあ、一生の残るように烙印にしてあげるね?」
「いや…あ、そうだ!稜に…きゃあ!!」
少女は正美の携帯を熱した焼印で飛ばして破壊し、正美を地面に押し倒した。
「応援を呼ぼうとしても無駄よ?」
「いや…助けて…稜!!!」
正美は、稜の名前を叫んだ。
「来るわけないでしょ!!」
「いやああああ!!!」
少女は正美の右の首筋に、熱した『風紀委員失格』の焼印を、押し付けた。
「う…そ…」
「はい、出来上がり…うれしいでしょう?使えない風紀委員の烙印が押されるなんて?」
「何してんだ?お前…」
「ん?」
少女は、声のした方を向くと、稜が立っていた。
「正美!!」
稜は正美に駆け寄ると首筋に刻まれている文字が目に留まった。
「『風紀委員失格』…かぁ…そうかもな…俺の不注意で、正美にこんなひどい目にあっちまったもんな…」
稜は正美から腕章を受け取った。
「稜…ごめんね…」
「気にすんなって」
そう言うと、稜は正美を寝かせ、正美の携帯の近くに落ちている焼印を拾いなが立ち上がり、少女に方に身体を向けた。
「俺が風紀委員だ!ま、お前から見たら『不良風紀委員』って言ったほうが正しいか…」
「っと!」
稜は焼印を少女に向かって投げたが、避けられた。
「で?俺を殺るのか?」
「ええ」
「あっそ、じゃあ…殺れるもんなら殺ってみろ…」
稜は威圧をかけるような目つきで少女を睨んだ。
「!!(なに?この威圧…)」
「どうする…」
「…いいわ?今日は見逃してあげる…けど…次は覚えていなさい!!」
少女はその場から逃げるように、走っていった。
「病院行こうぜ?」
「う、うん!」
稜は正美の右側に立つと正美の手を握って歩き出した。
とある病院にて…
「う~ん…少々厄介だね…」
カエル顔の医者は、正美の首にある焼印の痕を見ながら言った。
「治せるんですか?」
「いったい僕を何だと思っているんだい?」
「だってよ?」
「お願いします!!」
「じゃあすぐに治療を始めよう…君はそこで待っててほしい」
「はい」
正美は治療室へ連れて行かれた。
稜は待合室のベンチに座って待っていた。
そこへ…
「神谷君!!」
「狐月?どうしてここが?」
「貴方がなかなか戻ってこないもので、何かが起きたと踏み、ここへ来てみたという訳だ。」
「なるほどな…」
「ところで…風川さんの身になにが起きたと言うんだ?」
「風紀狩りに会った…」
「それで、彼女が犠牲に…」
「…」
「神谷君…まさか、自分を責めているのか?」
「ああ、俺の不注意で正美に苦しい思いをさせた…風紀委員失格だな…」
「そんなことはない。貴方は事件解決方法を考えていてそうなったんだ。だから…」
「犯人は俺が捕まえる…風紀委員の名に掛けても!」
「稜!お待たせ!」
治療室から正美が出てきた。
「治ったのか?」
「うん!ほら!」
正美は、稜に右の首筋を見せた。
そこは、きれいに焼印の痕が消えていた。
「よかったぁ~…」
「え!?稜!?」
「病院で倒れるって…」
稜は安心したせいか、待合室のベンチで倒れた。
「なるほど…バカップルとはこのことか…」
狐月は聞こえない声で、ぼそりと呟いた。
END

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最終更新:2011年12月23日 10:16