12月24日、この日はクリスマスイブだ。
さすがはクリスマスと言うだけあって、街中は学生カップルでいっぱいだった。
その街中で映倫の制服を着ている男子生徒二人がいた。
「神谷君、そろそろあきらめたらいいのでは?」
「ここまで来て引き下がれっか?」
「それはそうだが…」
それは、稜と狐月だった。
二人は何かを探しているようだ。
事の始まりは時間を少々遡り2時間前
176支部でのことだった。
「え?第14学区のチャイルドエラーの施設でクリスマス会、ですか?」
「そう、たまたまボランティアで施設に行ったら…『サンタを探して!』って子供たちに頼まれて…」
「サンタって…探して見つかるもんなのか?…」
「子供らしい…考え方ですね…」
「神谷先輩…」
「あ?なんだ?葉原」
「サンタって居ないですか?」
「は!?…えっと…」
「居るわけがない。」
返答に困った、稜の代わりに、狐月が答えた。
「ちょ…おま…」
「そ、そう…で、で、でででです…よ、よね!…」
「うわ…純情な子の心を折った…」
「狐月先輩…最低…」
「こんの残念イケメン!!脳まで残念なのね!」
「可愛い女子の純粋な心にヒビを入れるとは…」
176支部のメンバー全員が狐月から引いた。
そんな時…
「ヤッホー!!正美と一緒にお邪魔しまーす!!」
「お邪魔します!」
元気な声と共に麻美と、正美が入室してきた。
「勝手に入るなって言っただろうが…」
「私がここに来て神谷に迷惑をかけたァ?」
「浮河 真白(ふかわ ましろ)まで…たく…」
「なにィ?それとも、もしかして、善良な一般人を乱暴に追い出しちゃうのかなッ?ン?」
「チェ…好きにしろ…」
「そ、そう言えばさっきまで名に話してたの?」
険悪な空気に耐えられなくなったかのように麻美が話題を切り出した。
「『サンタクロースを探してくれ』って依頼だ」
「ん?だったらいい案あるじゃん!!」
「どんな?」
「ふふん…あたしと正美がサンタになっちゃえばいいじゃん!!」
「あ!!その手があった!じゃあ!あたしも!!コスプレもあるしぃ!」
と言って雅はロッカーからスカートの丈が極端なほど短いサンタの衣装を取り出した。
「じゃーん!!」
「…」
「おお!大胆!!」
「大きいお友達が釣れそうですね…」
「こんなの…稜の前でしか…」
「「「「「「「「「え!?」」」」」」」」」
「あ…」
正美は自分が爆弾発言をしたことに気付き、自分の手で自分の口を塞ぎ、頬を赤らめた。
「神谷君…君とはいつか、きちんと話をしなければならないな。」
「こんな純粋な彼女にそんなことを…」
「…女の敵ですよ?…稜先輩?」
「…ヘンタイ…」
「神谷先輩…不潔です…」
「残念イケメンが…」
「神谷も落ちたもんだねェ?ン?」
「稜…サイテー」
「ちょ…」
「でも正美先輩のスタイルにあの衣装…うおぉぉ!!!俺は!!!ぶっ!?」
妄想に浸った丞介の頭に、稜は、こぶしを落とした。
そして…
「丞介…お前…何妄想してんだ?」
稜は、目だけが笑わない満面の笑みを浮かべ、いかにも殴りかかるような体制で丞介の前に立っていた。
「え、えっと…あの…」
丞介はじりじり後ろへ下がり背中を壁につけた。
「さてと…遺言は?」
「えっ~と…正美先輩!!聖夜は水着サンタでお願いしま…ギャアアアアア!!!!!」
176支部中に丞介の断末魔が響いた。
「それじゃあ探すか、サンタが似合いそうなおじさんを…さ。」
「じゃあ、私と神谷君は管轄外へ向かいましょう腕章をしまえば大丈夫だろう。」
「だな…管轄内はそっちで頼むわ」
こうして二人は外へ出た。
再び現在にて…
「しかし、探すといねぇもんだなぁ」
「待ちなさいですの!!」
「ん?」
二人は声のするほうに身体を向けると風紀委員の少女が逃げている犯人を追っかけていた。
「なぁ、ここって」
「177支部の管轄区域だな。」
「どけお前ら!!ごふっ!?」
稜は逃げてる犯人の腹部に右フックをめり込ませた。
犯人は腹部を抑え、その場で蹲った。
「悪いな…俺たちも『これ』なんだけど?」
稜は腕章を倒れた犯人に見せた。
「すみませんですの…って、あなた方、他の支部の方ですわね?」
「ああ、176支部だ」
「ではなぜ管轄外へ?」
「ちょっと人捜しでな…」
「一体誰を?」
「笑わない出で聞くってなら話すけど…」
「笑いませんですのよ?」
「そうか…実は…」
稜と狐月は177支部の少女に、これまでの成り行きを話した。
「…というわけで、適役な人が居れば教えてほしいんだ」
「そうですの…チャイルドエラーの施設でそういうことが…う~ん…」
そしてしばらく時間がたった。
「じゃあ、神谷君そろそろ行くか。」
「だな、悪かったな?時間潰しちまって」
「え、ですが…」
「あぁ~…その犯人そっちで対応な?」
そう言って二人は街中へ向かった。
「ん~」
「何考え込んでんだ?狐月?」
「私たちでやれないのか?」
「サンタ役を?」
「ああ。」
「それいいかも」
「では報告するか。」
狐月は雅に連絡をし、二つの返事で施設のほうも了承を得た。
翌日、第14学区、チャイルドエラー施設にて…
「今日1日みんなのお世話をしてくれるお兄さんとお姉さんたちよ!」
「よろしくおねがいします!!!」
ボランティアに来たメンバーは、稜、狐月、正美、麻美、雅の5人だった。
五人も会釈をした。
「今日はクリスマスなので、サンタさんが来てくれます!」
「やったー!」
「だってよ?…狐月?」
「う…」
そう、狐月と稜は、ここに来る途中に、どっちがサンタクロースになるかでもめていたので、潔く、じゃんけんで決めたのだった。
「じゃあ、お姉ちゃんたちと狐月お兄ちゃんはパーティーの準備があるから、稜お兄ちゃんに遊んでもらっててね?」
「…(しょうがねぇ…)よぉしみんな!!お兄ちゃんが遊んであげるから、何したい?」
「鬼ごっこ!」
「かくれんぼ!!」
などさまざまな意見が飛び交った。
「じゃあ、全部やろう!」
「うん!」
こうして稜は子供たちを園庭、に連れ出した。
「これでよしっと…それじゃあ始めましょう!」
「「「「はい!」」」」
園庭にて…
「それ~逃げろ~!(なんで俺がこんなこと…)」
「捕まえた!」
「おっとじゃあ次はおにいちゃんが鬼か…ほ~ら、捕まえちゃうぞ~!」
「にげろ~!!」
「…」
そのとき、稜の頭に、『あの』ときの記憶が浮かんでいた。
『もともとあいつは、チャイルドエラーだった…そして、俺は知り合いの研究施設であいつを見掛け、要らないと言われたから俺が引きとった、テレパス系の能力は手元にあったほうがいいからさ!だがあいつは、人を傷つけたくないと俺の命令には従わなかった!!どんなに蹴りを入れても、どんなに殴っても、あいつは一回も能力を人に向けることはなかった!!それで俺はあいつから今までの記憶をコピーし、破壊した、スパイとして使うために!』
「…(チャイルドエラーか…また、正美みたいなやつが出るのかな…)
稜は、そう考えると胸が苦しくなっていた。
再び、中にて…
「メリークリスマス!!」
いよいよ、子供たちが楽しみにしていたクリスマス会が始まった。
「あれ?稜?」
「ん?どうした?」
「いや、なんか表情暗い感じがするから…」
正美は、稜の顔を覗きこみながら言った。
「そんなことねぇよ…」
「ふ~ん…」
「じゃあ、みんなでサンタさんを呼んでみよう!せ~の…」
「サンタさ~ん!!」
「は~い!フォッフォッフォッフォ、メリークリスマス!!」
「ぶっ!(違和感がねぇ…)」
「「「クスクス…」」」
こうして無事(?)にクリスマス会は終わった。
その帰り道にて…
「どうだった?狐月?」
「ちょっと疲れましたよ。」
麻美と狐月は、並んで帰っていた。
「…」
狐月は意を決した。
「あの!火川さん!」
「ん?どうしたの?」
「好きです!」
「え?」
「貴女の事が好きです!」
麻美は、狐月を見て頬を赤く染めた。
「ふ、ふ~ん…でも、あたしは言葉だけじゃ付き合えないわよ?」
「え…」
「フフッ」
麻美はいたずらっぽい笑みを浮かべた。
「態度で見せて?」
麻美はそう言うと、狐月に抱きつき、キスを待つように目をつぶった。
「…」
「…ん…」
狐月はそれに応えるように、麻美にキスをした。
「ありがと!これからもよろしくね?」
「こちらこそ!麻美さん?」
こうして、二人もカップルになった。
END

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最終更新:2011年12月24日 12:22