1月10日、冬休みも終わり、3学期始まりの日だ。
「おはよう!みんな!いい正月だったか?」
クラスの生徒のうち稜と狐月以外のせいとは、雄介の質問に反応していたが、二人だけは机の上で突っ伏しになっていた。
「あれ?お前ら二人はどうしたんだ?」
「風紀委員は休みだろうと稼動してました…」
「休みなく…」
「…そ、そうか」
そんな二人も始業式に参加し、学校も終わった。
下校途中にて…
稜は、正美と一緒に帰っていた。
「稜、本当に大丈夫?」
「ああ、また明日から普通授業なんだ、気持ち切り替えねぇとな」
「そうだね!」
そんな時…
「よぉ!兄ちゃんたち!サボり?」
二人は、5人の不良グループに囲まれた。
「映倫もとんだ不良生徒持ってやがんなぁ」
「今日始業式なんだけど?」
「あっそぉ?じゃあさ…俺たちに金貸してくんない?」
「…『いやだ』て、言ったら?」
「きゃ!稜!!」
「正美!!」
正美はグループの一人に羽交い絞めにされ、ナイフを顔の近くに突き付けられた。
「お前の可愛い彼女の顔に…傷がついちゃうぜぇ?」
「ふ~ん…でもあんたらも…カツアゲするやつ間違えたな…」
「何言って…!?」
稜は腕章を腕に着けた。
「風紀委員だ!恐喝罪で、お前ら全員務所ぶち込むぞ!」
「おい…こっちには人質が…ひぃ!!」
稜は閃光真剣を鞭のように振るい、正美に突き付けられていたナイフを、吹っ飛ばした。
「やべぇぞ!こいつ…おい!逃げるぞ!!」
「待ってくれよぉ!!!」
不良のグループは走ってどこかへ去っていった。
「大丈夫か?」
「うん!平気!」
そんなやり取りをしている二人を一人の男が見ていた。
「…バカバカしい…」
男は、吐き捨てるようにそう呟いてどこかへ行った。
翌日、映倫中にて…
「今日から授業かぁ~」
「そうだね」
二人は仲良く横に並んで廊下を歩いていた。
「ねぇ、稜」
「ん?」
「どうしてここでは手を繋がないの?」
「はぁ…いや~なやつに間を通られて嫌な目で見られるからな…あ、前見ろ?俺の言った意味が解るから」
「え?」
正美は、稜の言われたとおり、前を見た。
すると手を繋いで歩いている、前方のカップルの間を一人の男性教師が通り過ぎて行った。
そして…
「私の目の前で不埒な行為はやめなさい…」
そう言うと男性教師はどこかへ行った。
「ひどい…」
「生徒のほとんどから嫌われている『キツネ』に睨まれるんだよな…俺もあいつだけは嫌いだ…」
『キツネ』と呼ばれているその教師の名前は希河 鎌(きかわ れん)、顔の見た目からそう言われているのだった。
「でも、校則に『恋愛禁止』なんて無いよね…」
「あいつが勝手にそうしているだけだ…」
「それに教師からも嫌われているらしい。」
「マジか…って、狐月!?」
「おはようございます。神谷君。」
「お~お、相変わらず挨拶だけは他人行儀だな」
「ヤッホ~稜!」
「麻美?お前らまさか…くっついたのか?」
「はい。」
麻美は狐月の腕に抱きついていた。
「ほ~…よかったな」
こうして四人は教室に入った。
そして1時間目の休み時間のときだった…
「神谷君に風川さん」
「はい?」
「なんでしょう?希河先生」
「応接室に来てくれますね?」
二人は応接室に連れて行かれた。
「話とは?」
「…不埒な行為をやめて欲しい」
「いやです…」
「わたしも、先生のご都合のために、稜と別れるのはいやです!」
「本当にいやなのですか?…なら私の前でそれを証明してください」
「はい!…ん…」
「な!?」
正美は稜に、キスをした。
「…これで…いいですか?行こう、正美」
「うん!失礼しました!」
二人は応接室を出て行った。
「そうですか…なら、いいでしょう…」
鎌は不敵な笑みを浮かべた。
そして昼休みにて…
「あ!」
「どうした?」
「弁当忘れちゃた…」
「マジ?」
「うん…お昼買ってくる」
「お、おう」
正美は昼食を買うため、食堂へ向かった。
「これで間に合うかな…ん?」
「風川さん、ちょっといいですか?」
「これを買ったらいいですよ?」
正美はパンを買っていると、鎌に捉まった。
応接室にて…
「わたしになんのようですか?」
「フッ…簡単な頼みです…神谷君と別れてください」
「いやです!」
「そうですか…彼の荷物になっていると知っていてもですか?」
「え…」
鎌の質問に正美は目を丸くした。
「君が彼のそば居ることにより…彼は思うように犯人を捕まえることができない…」
「そんなこと…」
「では昨日、なぜ彼はあの不良たちを追わなかったのですか?」
「それは…」
「君が近くに居たからです!君が彼の邪魔をしているんです」
「そんな…」
「別れますか?」
「稜はそんな事言いません!!」
「そうですか…ではいいことを教えてあげましょう」
「え…」
「君が彼と別れないのであれば、彼の点数を0にしましょう」
「え?やめてください!」
「では、別れてくれますね?」
「はい…」
「それでは、今日の放課後屋上で別れてもらいます、私が隠れて見届けます」
「失礼しました…」
正美は応接室を出ると、人気の無い理科室へ入った。
「稜…わたしどうしよう…いやだよ…別れるなんていやだよ…」
正美は一人しゃがみこみ泣き出した。
そしてそのまま午後の授業には現れなかった。
放課後にて…
稜は、教室で正美を待っていた。
「神谷君、そろそろ出ないと遅刻になってしまうぞ。」
「ああ」
「そんなに心配?」
「当たり前だろ…ん?メール?正美から!?」
そのメールには『屋上で待っています』とだけしか書いてなかった。
「どう言うこと?」
「行けば分る先に行っててくれ…」
「わかった。」
稜は、屋上へ向かった。
屋上にて…
「正美!お前今まで何やってたんだよ!!来ねぇと思ったらこんなところに呼び出して…」
「話があるの…」
「?」
「…別れよう?」
「…お前…それ本気か?…冗談だろ?…」
「ごめん…『別れたい』…これがわたしの本心なの…だから…さよなら…」
「…」
そう言うと、正美は、屋上から出て行った。
稜はその後姿を、ただ呆然と、見詰めることしかできなかった。
下駄箱にて…
「これで、稜の点数を保障してくれるんですね?」
「ええ」
「…」
正美は無言で学校を後にした。
「ごめんね…稜…」
正美はそう呟くと涙を流していた。
END

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2011年12月29日 14:48