2月14日、この日は男女にとって決戦の日でもある。
稜と正美の部屋にて…
「早く出ねぇと遅刻するぞぉ!!」
「ごめーん!!先に行ってて!」
正美は、何かを隠すかのように身支度をしている。
「ったく…鍵掛けて来いよ!…行ってきます…」
稜は、玄関の扉を開け、学校へ向かった。
「はぁ…麻美の言ったとおり、先に行っちゃった…」
話は少々遡り、数日前の帰り道でのことだった…
「え?朝は稜に渡しちゃいけないの?」
「うん、あいつ性格がああだけど意外とモテるのよ?」
「まさか、チョコを渡されるのが苦手なの?」
「ううん…渡されるところを見て欲しくないのよ、きっと稜のやつ、それを見られて嫉妬されるのが嫌なんでしょ?あたしの前でもそういう姿見せないし」
「嫌なんだ、誰かに嫉妬の目で見られるのが…」
「そういうこと!」
再び現在にて…
「稜って…モテるんだ…わたしが彼女で良いのかな…」
その頃稜は、というと…
「ハクション!!!うぅ、さむ…」
「おはようございます!神谷君!」
背後からハイテンションで朝の挨拶をしてきたのは、狐月だった。
「朝からテンションたけぇな…」
「そうでしょうか?!今日は年に一度のイベント、バレンタインですよ!こんな気分で迎え入れることができるなんて、私は幸せ者ですよ。」
「へ~…ところで麻美は?」
「それが先に行っててくれと言われた。」
「あっそ…」
稜はそっけなく反応し、学校へ向かおうとした。
「あの…神谷先輩!」
「ん?なんだ?」
一学年の映倫の女子生徒が、稜に声を掛けてきた。
「あの、これを先輩に…」
女子生徒は、綺麗にラッピングされたチョコを、稜に渡した。
「あの、私はこれで!!」
と言って、女子生徒は走って行った。
「相変わらず、モテてますね?先輩?」
「はぁ~…今度はお前かよ…」
稜に声を掛けたのは、城茶菓 真人(きさか まこと)と言う少女だ。
「先輩、わ、私の、つつつ作ったチョコも…受け取ってください!!」
「あ~はいはい、ありがとさん」
稜がチョコを受け取ると、真人は、幸せそうな表情で、歩いて行った。
「あんだ?あれ」
「本当、貴方は色男だな。紙袋でも用意して行ったらどうだい?」
「イヤミのつもりか?」
「いいえ?私はただ提案しただけだが?」
わざとらしい素振りで、狐月は返答した。
「はぁ~…「おーい稜!!狐月!!」
「「ん?」」
稜と狐月は、声のした方を振り向くと、麻美と正美が走ってきている。
「「はぁ…はぁ…」」
「走って来なくてもいいだろ」
「いや~だって、遅刻しそうだったし…」
「げ!?もうそんな時間!?」
「急がなくては!」
4人は走って、ギリギリで間に合った。
「あ~…疲れた…」
そしてクラス担任の雄介が、教室に入ってきた。
「…朝のホームルーム始めるぞ!!畜生!!!」
「おぉお、すいぶんやけだな…」
「うるせっ!世間はバレンタインバレンタインって浮かれやがって!!チョコをもらえない男の気持ちが分るかぁ!!!」
「学園都市外に奥さんがいるんじゃないすか」
その瞬間、ピキッと音を立て、場の空気が凍った…
「…」
「…(やべ!地雷踏んじまった!?)」
稜は完璧に地雷を踏んでいることに気付いた。
「ああ!!そうだよ妻が浮気をしてて離婚だよ!!バレンタインがなんなんだよぉ!!うおぉ!!!」
雄介は教卓に突っ伏して、豪泣している。
「神谷君…とりあえず謝ったほうが…」
狐月は、稜のわき腹をつつきながら、ボソリと囁いた。
「すみませんでした、先生…」
「もう良い!!どうせお前は朝っぱらからチョコ貰ってんだろ?!しかも2学年の二人から!!」
「マジ!?やるぅ!!神谷!」
そして、なんやかんやで、1日の授業が終わった。
「今日は大変でしたね?麻美さん」
「主に綺羅川先生がね?あとはい、これ稜に」
「もうチョコはいいや…」
「!?ひどい…あたしの何もこもってない、ただ買っただけのチョコはいらないのね?」
「じゃいいじゃねぇか」
「!?…りょ、稜…あそこ…」
正美は何かにおびえるかのようにドアの奥を指差した。
「あ?…げ!?」
そこには魅羽がいかにも『殺す』と言わんばかりのオーラを放って、稜を睨んでいた。
「かァァァァみやクゥゥゥゥゥゥゥン!!!!!!!!!」
「やべぇ…」
「痺れる時間だぜェ!!!」
「クソ…って壁かよ?!!」
後ろに下がりきった稜に、逃げ場などなかった。
そして…
「悪ィが!!!こっから先は電流街道だァ!!!逆流不能ッてなァ!!!」
魅羽の右手には電気が溜まっている。
「大人しく尻尾巻き繋いでェ!!!無様な姿で痺れやがれェェェ!!!!!!!」
「おいおい嘘だろ?!!!」
放たれた電流は、稜に向かってまっしぐらに飛んできた。
「うわぁぁ!!!!!…」
稜は電撃をモロにくらい、気絶した。
「さ!麻美!帰ろ?」
「う、うん…でも…」
麻美は怯えながらも、狐月を見た。
「(やれやれ…)私には風紀委員の仕事がありますし、そこで気絶している彼の穴も埋めなきゃなりませんし…お二人でどうぞ。」
「ごめんね?狐月」
「いいえ、気にしません」
麻美と魅羽は、教室を出て、学校を後にした。
「はぁ~…さてと…神谷君を保健室に運びます、風川さんは彼の看病をお願いします」
「うん…ごめんね?斑くん…」
正美は、申し訳なさそうに謝った。
「これは仕方がない、あれだけの威力の電流を直撃したら、誰であろうとこうはなります」
「ありがとう」
こうして狐月は、稜を保健室に運び、176支部へ向かった。
保健室にて…
「…?…なんで俺が保健室に…確か…水代の電撃食らって…」
「あ、稜!よかったぁ!斑くんがここまで運んでくれたんだよ?」
「そっか…悪いな…」
「でも、斑くんが、今回のことは仕方がないってフォローしてくれたよ?」
「実際よけきれるだけのスペースは無かったしな…」
「そうだね…はい、稜」
正美は、稜に、綺麗にラッピングされたチョコを渡した。
「手作り…って感じがするな」
「うん!結構大変だったよ」
「そうか…開けて良いよな?」
「うん、いいよ?」
包みを開けると、箱の中からは、少し歪なハート型のチョコが五つほど入っている。
稜はそれをひとつ手に取り、食べた。
「甘(うま)い!」
「よかったぁ…あ、もっとおいしくなる食べ方があるよ?」
そう言うと正美は、稜が持ってる箱の中から、チョコをひとつ取り出し、自分の口に含み、微笑んだ。
「正美?…ん…」
「ん…んん…」
正美は、稜にキスをすると、そのまま自分の舌を、稜の口内に侵入させ、口の中で溶けたチョコを、稜の口内に少しずつ流し込んだ。
「…どう?おいしかった?」
「ビックリしたよ…」
「いつでもこうしてあげるからね?」
そう言うと、正美は無邪気な笑顔で、稜を見た。
「…もっと甘いのが食いてぇな…」
「え?…きゃ!!」
正美は、稜の言葉の意味を理解する前に、片腕を掴まれ、ベットへ引っ張りこまれた。
「ちょっと稜!…」
すると稜は、正美を後ろからそっと抱きしめ、正美の耳元へ、口元をもって行った。
「 」
「え?」
稜の小さな囁きを聞いた正美は、頬を紅潮させた。
「いいか?」
「うん…でも…丁寧に…ね?」
「努力はしてみる」
「よろしく」
「ああ」
その後、二人が学校を後にしたのは、この時から2時間後だった。
この日、多くのカップルは、楽しい一日を過ごしたに違いないだろう。
END
最終更新:2012年02月14日 23:39