とある日の学園都市、映倫の寮では3年生が、慌しく修学旅行の荷作りをしている。
稜と正美の部屋にて…
「えぇっと…洗面用具と、下着と、私服と…」
「…財布と、隠し金と…」
「え!?」
「どうした?正美」
「か、隠し金?」
「財布取られたとき、全部なくなったら洒落になんねぇだろ?」
「う、うん…たしかに」
「だからバックの底にひっそりと隠しておくんだ」
「あ~、なるほど~」
「学園都市外だからな」
「でも楽しみだね?」
「まぁな」
そして翌日、バス乗り場にて…
「よし、全員集まったか?…じゃあ乗るぞ!」
3学年全員は、クラスごとで別のバスに乗車した。
『それではこれより出発いたします』
「1泊2日かぁ…結構良いな」
「え?そうなんすか」
「ああ、お前ら全員、能力者だからな、規制がいろいろと厳しいんだ」
「無暗に能力は使いませんよ…ただでさえ、戦争が起きようとしてんのに…」
「神谷…気にすんな!きっとデマだろ?」
雄介は、笑いながらそう言った。
「ねぇ!この4人でトランプしよ!!」
「やるか、暇だし…正美は?」
「うん!いいよ」
「じゃあ決まり!」
そして数時間後…
「あぁ…2ペア」
「勝った、フルハウス!」
「甘いわね?狐月、あたしは4カード!稜はどう?」
「…ロイヤルストレートフラッシュ…」
「「な!?」」
「…悪いな…じゃあそのガムもらうぞ」
「あ~!あたしの7色変化ガムがぁ!」
「悔しかったら取り返してみろよ?」
「むぅ~次は大富豪!!」
さらに数時間後…
「八切の5出して上がり」
「また神谷君か…さっきは風川さんで、交代交代で大富豪だな?」
「ちょっと如何様してない?」
「別に?」
「もうつまんない!」
「連続大貧民だもんな?」
「う、うるさい!」
「もうすぐ目的地に着くぞぉ!!」
「お!」
「さすが外って感じですね?」
「うわあ!」
「すてき」
周りは山だらけと神秘的な場所の旅館に到着した。
「なんか古臭さを感じますね…」
「外だからな…仕方ねぇだろ?」
「ええ、まぁ」
「部屋割り決めるぞぉ!!旅館の部屋は寮部屋の隣どうしだ!!」
「って事は…私たちのところは3人か。」
「ただし!!例外の部屋があるぞぉ!神谷!!お前の部屋だ!!」
「やっぱ?」
「え?どう言うこと?」
「つまり、俺の部屋だけいつもと変わらないってことだ」
「じゃあ、私は…」
「あたしと一緒ってことよ」
狐月は麻美と一緒の部屋になることになった。
「なお!部屋に着いたら荷物を置いて私服に着替えて入り口前に班ごとで集合だ!!」
「はい!!」
稜と正美の部屋にて…
「疲れた~…」
「早く私服に着替えよう?」
「だな…」
入り口前にて…
「お、貴方らしい服そうだな。」
「ほっとけ…」
稜の私服は、下はジーンズにスポーツブランドのマークが入った黒のスニーカーで上は黒を基調とした服装だ。
「正美は?」
「あと少しで来る」
「お待たせ~!!」
「「「…」」」
正美の私服は、下はデニムのプリーツスカートに白と黒の縞模様のニーソックスに水色のラインが入ったオールスターのOXタイプのスニーカーで上は薄水色のブラウスの上に厚めの黄色いパーカーという服装だ。
「あれ?みんなどうしたの?」
「なんか…」
「センスが高いというか。」
「負けた…」
麻美の私服は、下はホットパンツに赤ラインが入ったオールスターのHIタイプのスニーカーで上は胸の辺りがはだけている薄ピンクのシャツに薄手の白いカーディガンという露出度が割と高めの服装だ。
「まぁ狐月はいかにも『金持ちの息子』って感じに服装だよな?」
狐月の私服は、下はズボンに皮製のスニーカーで上は青いチェックのブラウスに紺色のベストという服装だ。
「ええ、まぁ、外見をそれなりにしないと学園都市のイメージになりますからね」
「そうだな」
「ねぇ…稜…」
「ん?どうした?」
「なんか…あちこちから視線を感じる気が…」
「お前がそんな服装してるからだろ?」
「恥ずかしいよぉ…」
正美は頬を赤くしながら、稜の腕にしがみついた。
「なんで正美ばっかで、あたしにはそういう目が飛んでこないの?」
「お前はそういうやつを睨み返すだろ…」
「う…」
「火川さん…その服装、似あってますよ。」
「ありがとう!!狐月ぅ~!!」
麻美は狐月に勢いよく抱きついた。
「う、うあ?!!は、ははは、離れて、くく、く、ください!!」
「あっはっは!!狐月可愛い!!!」
「か!からかわないでください!!」
狐月は混乱しながら言った。
「あいつ極端に弱いよな…」
そして修学旅行は、班ごとに自由行動で観光を始めた。
「地図だとこの辺だよな?」
「ええ、確か…」
「なんもないよね?」
「地図逆に見たんじゃないの?」
「それはありません。」
稜たちは、大通りの四つ角の前で立ち止まっていた。
「くっそぉ…ツリーダイアグラムがあればGPS機能が使えたのによぉ…」
「壊れたものに頼るな。」
「へいへい…」
「ちょっと道を尋ねたいのである」
「あ?」
4人の前から十字架の絵が書いてある白のポロシャツを着た大男が現れた。
「学園都市はどこに向かえばいいのであるか?」
「なんで学園都市に用が?」
「幻想殺し(イマジンブレイカー)の少年に用があるのである」
「(ずいぶん変わった名前だな…)え~っと、学園都市は…」
稜は懇切丁寧に学園都市の場所を教えた。
「すまないのである」
「いいって、いいって」
この後、この大男がその学園都市で暴れたことを、稜たちは知る由もなかった。
旅館に戻ると、3学年全体で夕食を摂り、それぞれの部屋へと戻っていった。
稜と正美の部屋にて…
「温泉♪温泉♪」
「そんなに楽しみか?」
「うん!だって初めてだし!!」
「あせって浴衣忘れんなよ?」
「分ってるよ!」
二人は、同時に部屋を出て、浴場へ向かった。
浴場入り口にて…
「ここ集合な?」
「うん!またあとで!!」
「こけるなよ?」
「こけないよ!!」
女湯にて…(野郎の温泉会話なんて誰得だ?)
「ふぅ~…」
正美は、ラクな姿勢で浸かれる場所でのんびりとしていた。
「まぁさみ!!」
「あ、麻美!」
「あれれ?すこし大きくなったんじゃない?」
「そ、そんなことないよ」
正美と麻美は横に並んで浸かっている。
「まったく、正美のこれだけのプロポーションを見て、稜は何も感じないのかしら?」
「…稜は…見ないふりをしてるよ」
「なんで?…あ!まさか!!」
「うん…きっと間違いが起きないようにしてくれてるんだよ…わたしが、あまりに無防備なことをするから…」
「かぁ~!うらやましい!!あんなのが彼氏なんて!」
「え?」
「あたしっ!!実のところあんたに嫉妬してるんだからね!!」
「え!?(斑くんじゃないの?)」
「どうせ狐月のことが好きとか思ってんでしょ?それは合ってるわ、でも…」
「でも?」
正美の聞き返しに、麻美は戸惑った。
「…あたしも…あいつのことが、ううん…稜のことが、好きだから…」
「麻美…」
「あ~あ!!狐月のやつ、早くあたしの心を奪ってくれないかなぁ?」
「期待してるんだね?斑くんに」
「そうよ、でもそのためには条件があるんだよね~」
「条件?」
「うん、それは…言葉よりも、態度で告白をしてもらうこと!じゃないと、割り切れないから!あたし」
「麻美…」
「でも!まだあたしも、稜のことあきらめたわけじゃないから!!隙があったら奪いに行くわよ?」
「絶対!そんなことさせない!」
こうして二人は浴場を後にした。
浴場入り口にて…
稜と狐月が、備え付けのベンチに座って待っていた。
「長風呂だったな」
「乙女のお風呂は長いのがつき物よ?」
「ごめんね?稜、ちょっと麻美と、ね?」
「あ、そうだ!みんなであれ飲みましょう!」
狐月が指を指した方向には牛乳が入ったビンのボトルが置いてある冷蔵庫があった。
「一気飲み対決、しますか?」
「良いね!!やろうよ!」
「面白そうだね!」
「つーか…普段からサイダー一気飲みとかしてるからな…」
「自信ありかい?」
「まぁな…」
こうして四人は、牛乳を買った。
「「「「3!2!1!…」」」」
4人はいっせいに牛乳瓶の口を自分の口に近づけ身体をそらした。
「…(あと少し…ほかのみなさんは…)ブ~!!!」
「キャー!!ちょっと狐月!!!汚いって…狐月!?」
狐月は鼻から牛乳と鼻血が混ざったものを垂らしながら、倒れてていた。
「何を見たんだ?」
「…(火川さん…わざとだ、ぜったいわざと…浴衣から肩を…)」
「斑くん…どうしたんだろう?」
「さぁ?(よっし!作戦通り!!)」
麻美は、心の中でガッツポーズを決めながら浴衣の肩の部分を着なおした。
「どうしたんだ?お前ら」
騒ぎを聞きつけた雄介が4人のところに駆けつけてきた。
「狐月が…」
「…免疫力がないな、こいつは…ん?電話?ちょっと失敬」
雄介は携帯を開き、通話ボタンを押した。
「おぅ!なんだ?…は!?当たり前だろ?俺は明日の夜まで家にいないって言っておいただろ?!…そうか、じゃあよろしくな?」
雄介は通話を切った。
「今の口調だとぉ…娘さんですか?」
「お、よく分ったな?」
「先生子供居たんだ」
「なんだ?その意外みたいな反応はよ…」
「いやてっきり子供嫌いかと…」
「おまえ…子供嫌いで教師が勤まるかっての!」
「どんな感じの娘さんなんですか?」
「そうだなぁ…身の回りの世話をしてくれっけど、俺をクソ親父呼ばわりするくらかなぁ~」
「寂しくないですか?そう呼ばれて」
「いや、そんなことねぇよ!むしろ嬉しいんだ!!」
雄介は、妙なほど明るかった。
「え?まさか先生…そういう趣味?」
「ちげぇよ、ファザコンになってくれなくてほっとしてるのさ」
「でもいつか自立して、親の元を離れる…」
「それでもいいさ!確かに寂しい気分にはなるが、いろんなものが見れるいい機会ができるんだぞ?親として嬉しくないわけがない!」
このとき3人は思った、雄介は親バカだと。
こうして、狐月の回復を待ってから、それぞれは、部屋へと戻っていった。
稜と正美の部屋にて…
「じゃあ、電気消すよ?」
「ああ」
正美は、電気を消すと布団に潜り込んだ。
「…?正美?」
正美は、自分の布団を抜け出し、稜の布団の中に入ってきていた。
「えへへ、一回やってみたかったんだ」
「あっそ…」
「えいっ…」
「正美?」
正美は、稜の背中に抱きつき、稜の背中に自分の額を軽く押し付けた。
「広くて、あたたかい…(稜はこの背中で、たくさんの人を助けてきたんだね)」
「そうか?普通の背中だと思うけどな」
「そんなことないよ…あのね…稜」
「ん?」
「お願いがあるの」
「お願い?」
「うん、これからも…ずっと私の傍に居て?」
「傍に?」
「うん」
正美は、稜の背中に抱きついている腕に力を入れた。
「正美…当たり前だろ?」
「約束だよ?」
「ああ、約束する」
「じゃあ、お休み?」
「お休み」
こうして二人は、仲良く眠った。
そして翌日、一泊二日の修学旅行が、無事に終わった。
END

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最終更新:2012年03月18日 21:45