今流行の焼肉屋『根焼』主催、“ステーキ3キロ10分以内に完食したらボーナスGET!!大会”が開催されるまで後10分。
参加者達は各々指定の席に案内され始める。荒我達は最後の方の参加者だったらしく、案内されるのも最後であった。

「ふぅ、ようやく席に座れるなあ」
「ずっと立ってたからオイラ疲れたでやんす」
「俺達、荒我兄貴を応援する横で焼肉定食食べてますから、頑張って下さい!」
「ここの焼肉定食は旨いぜ。この斬山が保証する」
「本当ですか。あ~、でも私ダイエットを始めようと思っているんですよね~」
「たかだか1食くらい問題ないって、ゆかりっち」

荒我達は店の中に入る。従業員に案内されて指定の席に向かう。とそこで・・・


ドン!!


「あ、ごめんなさい」
「あぁ!?いってーな。どこ見てやがんだよ、ボケが!」


自分達の席に気を取られたのか、葉原が隣の席に座ろうとしていたスカジャンを着た男―菅内破堂―にぶつかってしまったのである。

「ちょっと!!ちゃんと謝ってるじゃない!その言い草は無いんじゃあ」
「あぁ!?この女の連れか、テメェ?連れなら人様に迷惑を掛けねぇようちゃんと見張っとけよ、馬鹿野郎」
「な、何ですって~!」
「緋花ちゃん、もういいって。私が悪いんだし」

焔火と菅内の間に険悪な空気が流れる。そんな時に荒我が首を突っ込む。

「よぉ、たかだがぶつかられたくらいで一々キレてんじゃねぇよ。小せぇ男だなあ」
「・・・何て言った、テメェ」
「荒我・・・」
「肝っ玉の小せぇ男だって言ったんだよ。ビビリか、お前。小心者の典型例じゃねぇか」
「ブッ飛ばされてえのか、テメェ」
「ああ、いいぜ。ステゴロで闘ろうぜ。お前のひん曲がった根性を叩き直してやらぁ」
「おい、拳!」
「荒我さん。駄目ですよ!」

今度は仲裁に入った筈の荒我と菅内が戦闘モードに入ってしまった。慌てて止めようとする斬山と葉原だったが、2人は聞く耳を持たない。
一触即発の空気が店中に流れる。他の参加者も怪訝な目線を向ける。そして・・・

「二度とそのふざけた口を利かせねえようにしてやらぁ!!」
「上等だ。オラァ!!」
「あの~、いい加減にしてくれないかな~。君達ぃ~」
「「なっ!!?」」

今まさに殴り掛かろうとした荒我と菅内の間に、突如として割り込む1人の男。
その肥満体型からは想像できない速度で2人の首根っこを捕まえる。

「もうすぐ極上のステーキが来るんだよねぇ~。なのに君達が暴れちゃったら、この大会もオジャンになっちゃうんだよねぇ」
「そ、それがどうしたってんだ!んなことより俺はこのリーゼント野郎を」
「ス・テ・ー・キ・を・食・べ・れ・な・く・なっちゃうじゃないかあああああぁぁぁぁぁ!!!!!」
「うおっ!?そ、その白目を俺の顔に近づけるんじゃねぇ!!気色悪いぃぃ!!」
「君もそう思うよねえええええぇぇぇぇぇ!!!リーゼントク~~ン!!!!!」
「ぎゃあああ!!涎を垂らしながら俺にその顔を近付けるんじゃねえぇぇ!!!」

絶叫する荒我と菅内。何せデカイ顔+白目状態+涎を垂らしまくりの男が大声を挙げながらその顔を近付けてくるのである。
如何に強気な2人でも、その気色悪さには耐え切れなかったようだ。

「わ、わかった!!おとなしくする。おとなしくするからその顔をくっ付けてくるなああ!!」
「お、俺も!!冷静になる。冷静になるからいい加減に解放してくれえぇぇ!!」
「・・・・・・ホント?」
「「ホント、ホント」」
「はぁ~、よかった。ちゃんと仲直りしてくれたんだね~。ボク、君達が強面だからちょっと恐かったんだよ~」
「「(いや、俺の方が恐かったよ)」」

心の中でツッコミを入れる荒我と菅内であったが、そんなこととは露知らず、その男は爽やかな笑顔を浮かべながら自分の席に戻って行った。
途端に各席から漏れ出てくる笑い声。さすがに恥ずかしくなった2人は、さっさと自分の席に戻る。

「大丈夫っすか、荒我兄貴?」
「だ、大丈夫だ。ちょっと冷や汗が出まくったけど」
「あの白目男、一体何者でやんすかね」
「さぁな。フードファイターって奴じゃねぇか?食に厳しいっつーか」
「ごめんなさい。私のせいでこんな騒動に」
「ゆかりっちのせいじゃ無いよ。荒我の言う通り、あんなことでキレるあのスカジャン野郎がバカなのよ」
「(あの男・・・何処かで)」

そうこうしている内に、店の奥から今日の目玉である高品質のステーキが出て来た。その香りだけで、食欲が湧き立ってくる。

「うおお!こりゃあ旨そうな肉だなあ」
「美味しそう!あ~ん、早く食べたい~」

荒我と焔火が少々興奮する中、斬山は忠告も兼ねたアドバイスをする。

「もう一度確認しとくが、これは1キロ分だ。まだ2キロ分が別にある。3キロ全部を10分以内で完食できなきゃあ自腹だぞ。わかっているな?」
「ええ、もちろん」
「大丈夫っすよ!」
「あ、オイラ達の焼肉定食も来たでやんす」
「これは旨そうだなあ」

梯達が注文していた焼肉定食もテーブルに運ばれて来た。そして・・・

「え~、これより“ステーキ3キロ10分以内に完食したらボーナスGET!!大会”を開催しま~す。ルールは事前に説明があった通りでぇす!!
10分以内に完食できれば懸賞金GET!!できなければ自腹!!天国と地獄、その分かれ目は・・・ズバリ貴方達次第でぇす!!
では、開始の合図は私と親交が怪しい意味で深く、またこの大会の応援を買って出てくれた駒繋女史にお願いグハッ!!」
「誰が怪しい親交だ、誰が。私はそんな不健康な親交はしていません!!」
「さ~すが、駒繋女史のツッコミはキレッキレで~す・・・」

サングラスを掛けた店長の短い挨拶の後に、ツインテールの少女がツッコミを重ねながら出てくる。いよいよ決戦の火蓋が落とされるのだ。


「皆、余り無茶はせずにね!そして、思いっきり楽しんで賞金ゲットを目指して下さいねー!!では・・・よ~い、スタート!!」

continue・・・?

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最終更新:2012年05月07日 00:05