死の恐怖を和らげるために、意識を異世界へと移す安楽死キットが発明された。
使用者にとって理想的な世界が形成され、現実の肉体が滅んでも異世界で生き続けることができる画期的な発明だった。
”劣化のび太”の異名を持つ究極の駄目人間シロサキは、何もかも上手くいかない人生に絶望して安楽死キットの購入を決意する。
一般的な方法では購入できず、裏のルートから入手するには莫大な金がかかるが、自殺を支持する親の援助によって無事に手に入れられた。
シロサキは家族が見守る中、キットを装着し首を吊って異世界へと身を投じる。
憧れだった中世ファンタジーのような異世界。興奮したシロサキは思わず手から無数の光の針を放った。
魔法のような力に驚いて尻もちをつき、自分にとてつもない攻撃能力を得たことを知って有頂天になる。
しかし問題が生じた。シロサキの身体は女になっていたのだ。しかも幼児体型。
異世界に一番期待していたのは美形となって女に囲まれた生活を送ること。何なんだこれは?
最大の望みが叶わず憤慨するシロサキの前に異型の化物が現れる。
化物は非常に高密度なエネルギーの塊をシロサキに向けて発射してきた。
シロサキは間一髪で避けて光の針で化物を倒す。衣服の一部が溶解してしまったが怪我はない。
超人的な能力を得たシロサキでもあの塊に直撃したらひとたまりも無さそうだ。
自分にとって理想の世界のはずなのに、なぜ危険な目に遭うのか。
もしかして……? シロサキはある可能性を見出す。
安楽死キットは不良品で、生成されたこの異世界はバグっているのではないか?
それは正解のようだった。
出会う人々は皆、行動と発言が支離滅裂でまったく会話にならない。それに化物の存在。バグ以外の何物でもなかった。
この世界でまともに生きていくにはバグを潰さなねばならない。
シロサキは美形男子になってハーレム生活を送るため、遠くに見えるバグの根源っぽい場所を目指した。
最終更新:2018年07月30日 18:34