story1 平方根の求め方
「次は数学か。ホント、学校って嫌になるよな」
そういって頭を抱える黒髪の少年。
それを見つめる茶髪の少女。
「そんな事言うなら休めば良いじゃない?」
少女がそう言うと少年は「分かってないな」、と首を横に振る。
「休みたいさ。でも休んだら、入試に響くってのが本音だ。欠席日数によっては自己推薦できないからな。
そのくらい分かってるだろう?咲麗(さくら)」
「分かってるわよその位ッ!ただ言ってみただけよ」
「まぁ、咲麗の様な秀才とは違って、俺は頭悪いから、健康管理にも気を回さなければいけない。その分秀才は得だよなぁ?」
イヤミっぽく少年はその台詞を少女に向けた。
すると少女は顔を真っ赤にし、歯を食いしばる。
相当頭にきているようだ。その言いっぷりが気に入らなかったのだろう。
「何よ何よッ!勉強もせずに頭悪い、点取れない、って喚いているアンタが悪いんじゃないのッ! 休みたければ休めば良いじゃないの。とにかく私はそこまで言われる筋合いは無いッ!」
熱くなりすぎたのか、少女が椅子から立ち上がると、雑談で賑わっていた空気が一瞬にして静寂に変わったが、
その静寂は長くは続かず、すぐに幕を閉じたのだがそれとほぼ同時に二人に対する野次が飛ぶ。
「お熱いねぇヒューヒュー!」的な台詞が辺りから聞こえてくる。
無論二人にそんなつもりは無い。それは誰しも知っている。
だが単純な二人は野次を真っ向に受け、二人して顔を真っ赤にしながら弁解している。
「私はそんな気は一切ないから。何で大体笹崎(ささざき)なんかと・・・・」
「俺だって咲麗なんかにそんな気は無い。いや、無いに決まっている。あったら可笑しいって」
だがそんな弁解をしたところで、この野次は収まることは無い。
それは誰もがわかりきっていることである。
ゴーン
授業の開始を知らせるチャイムが鳴り響き、それとほぼ同時に数学の教師がドアを開けて教室に入ってくる。
そしてさっきまでのことが嘘のように空気は静寂に包まれた。
「授業始めるぞ。ホラ、あいさつ」
「あ、はい。気をつけッ、宜しくお願いします」
『宜しくお願いします』
ガタン
椅子に座り、パラパラとノートを開く、おそらく前回の内容を思い出しているものが大多数を占めているだろう。
だがしかし、笹崎、笹崎神夜(ささざきかぐや)はノートの使い方が根本的に違った。
ページの隅に1ページごとに少しずつ違った絵を描き、それをパラパラとめくる。所謂(いわゆる)パラパラマンガだ。
「えーとぉ?前回の授業はなんだったかな?」
迷わず咲麗が発言する。
「前回は平方根についてでした。」
「おぉ、そうだったな。ではそこの復讐といくか。ルート9の平方根は?」
無論、教師は「3ッ!」という答えを期待していたわけだが、聞こえてきたのは廊下からの奇怪な音だった。
最終更新:2008年07月31日 22:12