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story1  怪魚釣り

「全然来ないな」
 広大な海にぽつんと小さな一艘の船。
 どうやら少し前から釣り糸をたらしているようだ。
 しかし、引っかかる気配は無い。それどころか魚がいるのかさえも分からない。
「ロジャーさん、引っかかる気配ないですよ?やめません?」
 銀髪の少年。その顔にはまだ少女のようなあどけなさが残っている。
 その少年が紅いバンダナをつけた男にあきらめさせようとするのだが、そんな素直に聞く筈が無い。
 「もう少し。あと少し」その言葉を何回聞いただろうか?
「もうそろそろ・・・・」
 銀髪の少年がそう言いかけた時だった。
 竿が急に強い力で引っ張られたのだ。
「おおっ!?」
 いきなりの獲物に豆鉄砲を喰らったような表情になる。
 しかし、食いついたからには絶対に逃がしたくは無い。
 男は力一杯その手で竿を振り上げた。
 するとどうだ。家ほどの大きさもある怪魚がそこから現れたのだ。
 怪魚は激しいうなり声を上げ、バンダナの男に襲い掛かる。
「ほう、お前を釣り上げてやった俺様に歯をむくとは、いい度胸だな?ん?」
 しかし怪魚のうなり声はやむ様子も無く、むしろ増している。
 今にもバンダナの男に食いつかん勢いだ。
 銀髪の少年はかなり慌てている。
 こういう状況は初めてのようだ。
「はぁ~ん。生きたままで調理されたいか、お前。それならそうと、早く言ってくれればよかったのによおっ!!」
 声を発すると同時に腰のレイピアを引き抜き、怪魚を切り刻む。
 しかも上手に刺身のように切れている。
 そこらの料亭で出されてもなんら違和感は無いだろう。
 銀髪の少年は「おおっ!お見事」と言わんばかりに手を合わせ、目を輝かせている。
 バンダナ男も調子に乗り、「なぁに、ちょろいもんよっ!」などと言い始める。
「さて、喰うか」
 先程斬った怪魚を一つ一つ綺麗にたいらげていく。
 しかもおいしそうに。
『ご馳走様ッ!!』
 二人の声が重なり合い、飯は終わる。
 「あぁ喰った喰った」と腹を叩きながらバンダナ男、ロジャーは陸へ上がる。
 もちろん銀髪の少年も後ろについている。
「さぁてどこに行くかなっと。む?」
 何故か彼等の前に警備員のような男が駆け寄ってくる。
「何か俺等に用か?」
「そこは船を止める場所ではないが?」
「まぁまぁ。あれを船というのか?あれを」
 自分で蔑むのもおかしいのだが、船といえば船なのだが、客船や海賊船には程遠く、
 木のまんまの、カヌーの様だ。
「ふむ・・・・。まぁ、よしとしよう」
「気が利くじゃんか。オッサン」
「そうであろう?私ぐらいでないと許可は下されんぞ」
 と警備員のおっさんが自画自賛をしたにもかかわらず、ロジャーと少年は気にせずに町のほうへ歩いていく。
 すると銀髪の少年はホッとしたような表情でこう言った。
「いい人で良かったじゃないですか、ロジャーさん」
「何言ってるんだシャク。あのオッサンは基本的にはいい人じゃない。だが、屁理屈を重ねたり、上手くおだてると図に乗るタイプだ」」
「そうなんですか?」
「多分恐らく」
 確信はもって無かったのか、少し気を落とした。
「何をモタモタしている?早く来いッ!!」
「は、はいっ」
最終更新:2008年08月02日 22:18