氏名 |
所属 |
職種 |
社会人経験年数 |
山内一典 |
株式会社ポリフォニー・デジタル |
ゲームデザイナー |
23年 |
経歴
株式会社ソニー・ミュージックエンタテインメントに入社した。
ソニー・ミュージックエンタテインメントはその社名の通り音楽や映像を製作する会社であり、本人はこの会社においてCGを使った映像製作、あるいはマルチメディア製作の部門に入りたいと考えていた。しかし当時、この社内にはEPIC・ソニーレコード・ニューメディア部という小さなビデオゲーム部門があり、山内氏は希望に反しこの部門に配属されることとなってしまった。彼はこの部署数年ぶりにしてただ一人の新入社員だった。
EPIC・ソニーレコード・ニューメディア部は任天堂やセガ向けのゲームを製作していた部署であり、山内氏曰く「意外に不真面目」な所であったが、後にそのフロアにソニー本社から久夛良木健氏を始めとするハード部隊数十人が引っ越してくる。久夛良木氏は「プレイステーション」生みの親として知られる人物であり、ソニーの中に適切な居場所がないと見て飛び出してきたところだった。
久夛良木氏は後にソニー・コンピュータエンタテインメントを設立し、山内氏もそこに出向を命じられる。そこで山内氏は「なにかゲームを作れ」との指示を受けた。
山内氏は幼少のころから根っからの車好きであり、そこで彼は夢だった「現実にある車が登場し、リアルな物理演算によって動作するレースゲーム」を作ろうと企画したが、当時としてこれは常識外かつマニアックに過ぎる企画であり、この企画には誰も興味を示さなかった。そこで彼はとりあえず予算だけは確保しようと、見た目だけはマリオカートのようにコミカルで取っ付きやすい車を登場させつつ、内部では物理演算を用いたリアルな自動車の挙動を再現するゲーム、「モータートゥーン・グランプリ」を手がける。モータートゥーン・グランプリは2作が発売され、その実績が認められて彼はようやく夢見た「現実にある車が登場し、リアルな物理演算によって動作するレースゲーム」を製作することができるようになった。
そうして彼は当時としては類の無い車種、台数の多さ、美しいカメラアングル、物理演算によるリアルな挙動を実現したレースゲーム、「グランツーリスモ」を発売し、これは全世界で1085万本の爆発的なヒットを記録する。
ソニー・コンピュータエンタテインメントはこのゲームのヒットや技術力、製品精度などを評価し、山内ら制作チームの独立を認めた。こうしてソニー・コンピュータエンタテインメント100%出資の子会社、「ポリフォニー・デジタル」が設立され、山内氏はその代表取締役を務めることとなる。
グランツーリスモシリーズはその人気から、収録車種やリアルさを増やしつつ次々と続編が発売されており、累計5000万本以上の出荷を記録。現在も新作「グランツーリスモSPORT」が開発中である。
業務内容
「グランツーリスモ」シリーズの製作が主な業務であるが、近年では日本カーオブザイヤーの選考委員を務めたり、現実の自動車レースに出場したり、試乗・システム開発などの形で現実の車開発に関わったりなど、自動車全般にまつわる業務をこなしている。
やりがい
自分たちが開発した物理演算が、作った本人たちさえ予測しないようなリアルな挙動を再現する瞬間がある。このように、そう計算して作ったわけではないが、結果として素晴らしいものが出来上がる瞬間に喜びを覚えるとのことである。
仕事への姿勢/考え方
完璧主義者として知られ、「(やり残したことを悔いるあまり)新作を出すたびにストレスがたまる」と発言するほど。新作発売のたびにその時点で最高のものを作ろうとする姿勢から、発売日を延期することもたびたびであるが、これは「もしこの作品が最後になっても恥ずかしくないものを作りたい」という意思からである。
私生活
転機
今後の目標
近年、ビデオゲーム機の性能向上はいよいよ頭打ちを迎えており、またグランツーリスモで行われる物理演算も現実の挙動をほぼ完璧に再現できる段階に到達している。
そこで山内氏はグランツーリスモシリーズにおいて、今までのように現実に近いものを実現していくだけではなく、現実に率先して影響を与えていこうと考えている。すなわちGTアカデミーというプロジェクトによりグランツーリスモシリーズの優秀なプレイヤーを現実のレーシングドライバーとしてデビューさせ、現実のレース業界に影響を与えたり、日産GT-Rという車のメーター開発に参加して現実の車開発に影響を与えたり、というものである。
このような現実とゲームの相互作用によって、新しい面白いものが生んでいくことこそが、これからのグランツーリスモがめざす「営み」になるとのことである。
参考URL
感想①
「グランツーリスモ」シリーズは私が小さなころから熱中して遊んでいたゲームの1つであるが、その製作者がこのゲームの発売にこぎつけるまでに上記のような経歴があったとは思いもよらなかった。グランツーリスモシリーズが今後さらなる発展を遂げていくことに期待している。
関連記事
最終更新:2024年05月17日 10:57