カーニヴァル

バフチン用語。

人々の間に通常存在する社会的、身分的な距離が取り払われ、
無遠慮な人々の交わりが見られる。
また、民が国王に扮して国王の衣装を着たりする、価値倒錯の世界でもある。

古代より、広場はカーニバル性をもった場所であった。
特に中世の人々は、規則にがんじがらめの生活と、
カーニバル性を持った広場における生活との、
2重生活を送っていたという。
カーニバル広場においては、不謹慎、神聖なものに対する冒涜や格下げなど、
あけっぴろげな生活が見られたという。

文学とカーニバルの関係は古代においてはルキアノスやセネカなどの文学に如実に見られる。
ルキアノスをその代表者とする、古代のメニッピア(メニッポス流の風刺)と呼ばれる文学が、カーニバル文学の源流である。
メニッピアの文学においては、オリンポスの神々の格下げが見られたり、地獄の顕著なカーニバル化などが見られる。
(地獄は地上のあらゆる地位の人たちを対等化することから、典型的なカーニバル空間である)

国王の戴冠と奪冠(同時に起こる)、地位や役割の交代や変装、
両義性、シニカルで無遠慮な言葉、などに見られるものである。
価値倒錯の世界を創り出す効果を持つ。
また、中世によく見られた笑いを隠れ蓑にしたパロディーにも、強いカーニバル性が見られる。
中世においても笑いによってならば、聖なるものを俗的に扱うことが許されたのである。
聖と俗の交わりや交代、否定(嘲笑)と肯定(歓喜)、死と再生、両義的な笑いの中で行われた。
笑いは社会風刺のために、無くてはならない要素であった。
カーニバル文学においても、笑いは極めて重要な要素である。

代表例としては、フランソワ・ラブレーやセルバンテスの著作がある。
特に、ドン・キホーテをカーニバル文学屈指の名作。
そして、ドストエフスキーの文学は、古代より続くカーニバル文学の系譜に忠実であり、
同時に進化させたものである。
いわばドストエフスキーの文学は、現在までのところ、カーニバル文学の最高峰にある。

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最終更新:2009年10月08日 12:54