「西野~僕西野の事好きや~」
「宇治の事好きやで~」
「殺すぞボケがぁ!!!」
なんで俺だけ・・・こんな扱いなんや!
『むっちゃ好き!』
「なぁ・・・井本~」
いつもの如く雑誌を読んでいる井本に声をかける。
「・・・」
当然といえば当然か・・・。
返事は返ってこない。
「井本!」
「なんやねん!うっといわ~」
声を荒げ、雑誌を取り上げてようやく返事をした。
「なんか俺に言う事無いか?」
俺は満面の笑みで言ってみる。
多分・・・恐らく・・・いや千分の一の確立でも"あの言葉"を言ってくれると信じて。
「・・・」
井本は考える動作をしてくれた。
それは、躊躇ってる様に見えて・・・。
もしかして・・・と俺は一人盛り上がっていた。
「コーヒー買ってきて」
「違うやろ!?」
見当違いも甚だしかった。
なんや、俺の目は節穴かいな。
「じゃあタバコ」
「・・・あんな~・・・」
俺が期待してたのはこんな漫才みたいな言葉やない!!!
それを言い返そうと一歩前に踏み出ると、井本の嗜める手が出てきた。
「分かってるて。俺そんなアホちゃうやろ?」
いや・・・そうでもないかな?
一瞬そう思ってしまった自分がいる。
だが馬鹿正直にいっても音速のフックが飛んでくるのは目に見えている。
「・・・うん」
ものすっごい罪悪感感じます。
はい。
「今めちゃくちゃ失礼な事考えたやろ」
見透かされた様な言い方に、冷や汗ダラダラだが、そこはポーカーフェイス。
「いえいえ・・・滅相もありません」
でも、顔は完全無表情やったかも・・・。
「ごめんな~。連絡するの忘れてたんやて」
…?
「はっ?連絡・・・?」
きっと、今の俺の頭には?マークだらけだろう。
「いや~ゴタゴタしてて・・・って、キャンプの事ちゃうんか?」
手を合わせてすまなさそうに話す井本だったが、俺が素っ頓狂な声を上げたのには気づいたようだ。
途中で真顔に戻り、逆に聞き帰してきた。
「ちゃうわ!ってかもういったんか!?」
見当はずれな事いいやがって!というイライラとキャンプもういったんかい!というイライラ。
…特にキャンプの方はえらいむかついてるで・・・。
「ちっ・・・いらん事いうたな・・・」
しまったという顔をした井本は、俺の手から雑誌を奪い取ると、早々に楽屋を出ようとした。
「なんやそれ!ちょっとは反省しろや!」
出て行こうとする井本の腕をがっしりと掴み、今日ばかりはと怒鳴る。
「お前こそその態度なんや!別にお前に報告する必要なんかないやろ!」
…今思えば、こん時に抑えとけばよかったんやな。
俺もどうかしとったな。
井本につっかかるなんて命知らずもいいとこや。
「なんやそれ!約束守らんかったくせに逆ギレか!」
しかし、そん時の俺はそんな事考える暇もなくて、言ってしまった。
破滅の呪文を・・。
「黙れゴラァ!!!」
音速を超えた神速のボディーブローが・・・。
「うっ・・・」
俺は、そのまま楽屋の床に倒れる。
こいつ本気で殴りよった・・・。
「ボディーは禁止やいうたやろ・・・」
そんな捨て台詞を言いながら、俺は気を失った。
~舞台袖~
「いった~・・・」
まだ横腹が痛む。
一撃が重すぎやて・・・。
「悪い言うたやろ!ネチネチしつこいやっちゃな!」
はいはい・・・どうせ俺は陰険ですよ
「あ、藤原」
「なんやねん・・・」
まだまだ痛む横腹をさすりながら、後ろを振り向く。
「好きやで・・・むっちゃ///」
聞く事ができないと思っていた言葉。
諦めかけたその言葉が・・・聴けるなんて
「・・・へ?」
聞こえてたのに、聞き返してみる。
「・・・・・///」
黙りこくってるし・・・。
絶対もっかい言わせたる・・・!
「ちょ・・・もっかい言うてや」
もう出番も近いのに、井本の近くまで寄っていき、肩を抱く。
「嫌や!」
目を合わせようとしないが、顔が赤いのが横顔からでも分かる。
かわえぇ~ww
「頼むわ~一回だけでええからぁ!」
「しつ・・・っこいねん!アホが!」
ぴったりくっついていた井本の手から、零距離のフックが飛んでくる。
「だぐふぉぁ!!!」
何とかガードしたものの、予想以上に衝撃が強かった。
「次はザ・ちゃらんぽらんさんです!どうぞ~」
舞台袖の事など露知らずの中説をしてくれてる若手が、俺らを呼び込む。
「ほら、いくで」
井本は、俺に手を差し伸べる事すらせずに歩いていった。
『好きや』だけより、ちょこっとだけ豪華な感じがして、俺的には舞台中も鼻血を抑えるので精一杯やった。
この責任はとってもらわんとな^^
最終更新:2007年07月10日 22:34